表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/27

プロローグ


 中学生の頃に、今は亡き母方の祖父からPCを買ってもらった。

 本来は勉強や調べ物、機械に苦手意識を覚えない為にと与えられた物だったが、友達や同級生に影響されて、いつの間にかこっそりとゲームを始めるようになっていた。


 放課後、誰よりも早く教室を出ては急ぎ足で帰宅。一緒に遊ぶ友達は減っていき、その日にあった嫌な事、忘れたい事から逃げるようにモニター画面にかじりついた。

 誰かを殴りたくなる程の衝動も、誰かに賞賛されてみたい欲求も、誰かと一緒に歩いていたい寂しさもすべて、ゲームの世界で補完できる。


 そんな風に考える人間を、世間がどう思うかは知っている。

 だが、そのみっともない評価を受ける現実の僕なんて、僕はとっくに見放していた。だからそこに庇いたい自分など居ないのだ。


 そうしてゲームの世界へ逃げ続けて、いつの間にか十八歳。

 僕は順調に、オンラインゲーム中毒者になっていた。




◇◆◇◆◇◆◇◆




「ほらアイツ、六年前まで子役してたなんとか兄妹」

「実の妹としたんでしょ。ホントありえない」

「派手に髪まで染めてさ。承認欲求の化け物って感じ」


 どれほど小さな呟きでも、それは僕の耳に届いた。どれほど聞きたくないと拒んでも、それは僕がいる場所に現れた。どれほど間違いを正そうとしても、それは捻じ曲がって返ってきた。

 おそらく隠す気も無いのだろう。


 心機一転、新たな環境で頑張ろうと地元から遠く離れた所に行き、祖父の家から通い始めた高校生活も良かったのは最初だけ。

 僕の名前と噂はどこからともなく広まっていき、僕を傷つけるための大きな小声が流れ続けた三年間。いつまで経ってもそれに慣れることは無く、ただただ自分の名前に敏感になるだけだった。


 どこで間違ってしまったのだろうか。いつからズレてしまったのだろうか。

 そう考えない日はないが、もう挽回しようとは思わない。後悔も反省も飽きてしまった。僕はここで幸せになるのを諦めた。


「明後日クリスマスだよね、楽しみだなぁ!」

「うっわ、予定あるアピールやめて」

「家族はセーフ? セーフだよね?」


 十二月二十三日、世間は既にクリスマス一色。

 校舎の最上階からこの玄関まで、そんな話題ではしゃぐ生徒に埋めつくされていた。


「…………絶好のゲーム日和だ」


 寄り添い歩くカップル達の間を縫いながら、さっさと正門を出て帰路を辿る。連れの男友達すら居らず一人早足で歩く僕は、寂しい人間と思われているだろうか。

 実際にそうだし、家に帰っても祖父祖母とは家庭内別居状態だし、実家にでも行こうものなら玄関の鍵すら開けてくれない。


 でも、今年だけは違う。

 

 街を彩る赤白緑も、もはや見飽きたイルミネーションも、耳が覚えるほどに聞いた定番ソングも、今年だけは愛おしく思えた。


 なぜなら、数年ぶりに、今年だけは。


 クリスマスに予定があったから。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ