温室の妖精 第1話
大正2年。さる宮家の親戚にあたる公爵家の屋敷にご令嬢の誕生日会が行われました。級友達が集まりテーブルの料理が並べられ華やかな祝賀会が行われました。ここで3人のお嬢様を紹介致します。
まずは1人目成田紫乃さん。女学校の新入生でございます。
私の名前は成田紫乃。今年女学校に入学したばかりの1年生。今日は1学年上の春江様の誕生日会に招待されている。春江様の事入学式の時にお見かけ致しました。壇上で私達新入生のためにピアノを演奏して下さったのです。華やかな桃色の振り袖に紺の女袴で軽やかな音色を奏でる春江様に弾かれていました。
私は妹と弟が多く母から世話をあまり活動の少ない華道部に所属しました。華道部は上級生のお姉様が多く1年生は私1人でした。
「貴女が新入生?」
声をかけてきたのが春江様でした。
「この倶楽部お姉様が多いでしょ?」
2年生も春江様1人だそうです。
「わたくし、ピアノの稽古ばかりだからあまり活動日数のないこの部に入ったのだけど仲良くしましょうね。」
それが春江様と初めて交わした言葉でした。
倶楽部は毎週火曜日に行われます。上級生のお姉様達が来る前に春江様と準備をするのが日課でした。私は毎週その時間が楽しみで仕方ありませんでした。
「宜しければいらっしゃらない?」
春江様から頂いたのは招待状です。
「今週の日曜日誕生日ですの。」
春江様の誕生日のお祝いに招待状されたのです。
そして今私は春江様のお屋敷にいるのです。お祝いには同じ学年の娘も何人か招待されていたようで、同じ教室の見知った顔もいれば会った事のない娘もいました。私含むて10人でしょうか。
春江様は入学式の時の袴ではなくサテンの桃色のドレスという洋装でピアノを奏でて下さいます。
演奏が終わると拍手喝采を浴びながらドレスの裾をつまみお辞儀をします。
「皆様。」
春江様は私達に提案しました。宝探しをしようと。
「昨日このお屋敷にどこかに3枚のカードを隠しましたの。」
カードは3種類。桜の花のカード、すみれの花のカード、そして薔薇の花のカード。
「3枚とも白い封筒に入っているわ。見つけた方はわたくしの妹にして差し上げますわ。」
私達の間で歓声が起きる。妹というのは血の繋がった姉妹ではありません。女学校には上級生と下級生の特別な関係があるのです。その上級生に取って下級生は妹のような物なのです。春江様は宮家とも縁がある公爵家のお嬢様、そして入学式でピアノの腕前を見事に披露したお姉様。憧れてる新入生も多いのでしょう。
「あの春江様1つ宜しいでしょうか?」