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アルジ往戦記  作者: roak
96/300

第96話 合図

◆ カルスの上 ◆

山岳地帯を越えて、さらに進む。

広い平野が見えてきた。


アヅミナ「みんな聞いて」

隊員たち「………」

アヅミナ「研究所へ行ったとき、

 注意してほしいことがある」

ガシマ「…なんだ?」


カルスは高度を下げていく。


アヅミナ「研究所の所長について。

 私たちが、これから会う男について」

ガシマ「ホジタって人だろ」

アヅミナ「ええ。

 彼の魔術には気をつけてほしい」

ガシマ「一体どんな魔術を?」

アヅミナ「闇の魔術を使う」

ガシマ「………」


カルスは少しずつ速度を落としていく。


ガシマ「闇魔術か。そりゃあ厄介だな」

アヅミナ「前回行ったときも調べてはいた。

 ホジタの情報を集めてから会った。

 強力な闇の魔術の使い手であること、

 魔力の制御が抜群に優れていること、

 そんな情報を集めてから研究所へ行った。

 だけど、実際に会ってみたら、もっと厄介。

 思っていたよりもずっと厄介な魔術だった」

ガシマ「何がどう厄介なんだ?」


アヅミナは隊員たちに告げる。

ホジタが使う闇魔術の名前を。


アヅミナ「希薄暗球型精神操作」

ガシマ「希薄暗球…」

アヅミナ「希薄暗球型精神操作。

 それが彼の得意とする魔術。

 そういう魔術があるってこと知ってはいた。

 だけど、実際に使う人がいると思わなかった。

 彼はそれを使う。暗球を限りなく薄める。

 広げる。それで、対象者を包み込む。

 精神操作を使う。暗球はとても薄い。

 だから、包まれてても気づかない」

ユイ「そんな恐ろしい魔術が…」

アヅミナ「普通はできない。

 だけど、ホジタはできる。

 あの人は、魔力を極限まで制御できる。

 本来、真っ黒な暗球。

 それを極限まで薄くできる。

 高い魔力の持ち主でも…見破れない」

ガシマ「でも、お前は分かった」

アヅミナ「同じ闇魔術師だから」

ガシマ「…前もそんなこと言ってたな」

アヅミナ「同じ闇魔術師同士だから感じ取れる。

 見破れる。そういうことは結構ある」


オンダクは顔を曇らせる。


オンダク「気をつけろと言われてもな…。

 実際に精神操作をされちまったら…」

アヅミナ「大丈夫。

 ホジタはそういう魔術を使っている。

 意識するだけでいい。

 希薄暗球型精神操作はとても弱い魔術。

 希薄というだけあって、

 強力な精神操作はできない。

 味方同士で戦わせるとか、

 そういうことはまずできない。

 心を正常に保つように注意し続けていれば、

 精神操作されることはまずないから…」

ガシマ「ホジタは何を狙ってるんだ?

 その弱い精神操作で何をしてくるんだ?」

アヅミナ「考えていることや手の内を話させる」

ガシマ「………」

アヅミナ「話させること。それこそが彼の狙い。

 前回、同行した二隊の隊員がそれにかかった。

 私にはすぐに分かった。これ操られてるって。

 そして、危うく彼は話すところだった。

 こっちの狙いを。さらにはシノ姫のことも」

ガシマ「そんなことがあったのか」

アヅミナ「彼の魔術は自白剤のように効く。

 あの人の部屋に長くいると、心が侵されてく。

 知らないうちに。彼の部屋は満たされている。

 ごくごく薄い暗球に。それは見破れない。

 普通の魔術師では…まず見破れない」

スゲチ「興味深い。そんな魔術師がいるとはな」

シンモク「そういう魔術を使いまくって、

 上り詰めたのかもしれねえな。今の地位に」


地上に町が見えてくる。

分厚い雲の下をカルスは飛び続けた。


ユイ「そのときはどうしたの?」

アヅミナ「…え?」

ユイ「前回、研究所へ行ったときのこと。

 一緒にいた二隊の人が操られたんでしょ。

 それで、話そうとしたんだよね。

 シノ姫のこととか…」

アヅミナ「ああ…」

オンダク「…どうしたんだ?知らなかったぞ。

 そんなことがあったとは。

 どうした?報告したのか?

 大君やシノ姫に」

アヅミナ「してない」

オンダク「な…!」

アヅミナ「切り抜けたから。

 結局、何事もなく済んだから」

ユイ「どうやって切り抜けたの?」

アヅミナ「私がその場で精神操作した。

 その隊員を」

ユイ「え…?」

アヅミナ「私の精神操作でその隊員を黙らせた。

 力比べなら、負けないから」

ガシマ「もっと強い精神操作で打ち消した…

 …ってわけか」

アヅミナ「そういうこと」

オンダク「なるほどな」

ガシマ&ユイ&スゲチ&シンモク(恐ろしい…)


やがてオノレノの町が見えてくる。



◆ テノハ ◆

アルジたちは待つ。

魔学校マスの前で。

しかし、マスタスは現れない。

日は上り、昼になろうとしていた。


ミリ「来ないね」

リネ「………」

エミカ「どこかで休憩しませんか?」

リネ「そうだね」


アルジたちは歩き出す。

静かな町の中を。

1軒の茶屋を見つける。

上品で開放的な外観が人目を引く。

魔学校マスから少し離れたところ。

それはひっそり建っていた。


アルジ「あの店に入るか」

ミリ「そうしよう」


店に入る。

空は急に曇ってきていた。

老年の店主が出てきて席を案内した。

小さな円卓の席を4人で囲む。

大きな窓から外の景色がよく見えた。

店主は品書きを1枚、そっと卓上に置く。

ほかの客は、老夫婦が1組。

奥の席で静かに茶を飲んでいた。


ミリ「お腹空いた」

エミカ「そうだな」

アルジ「何か食っとくか」

リネ「私はいい」

アルジ&エミカ&ミリ「………」

リネ「みんなは食べて」


店主が注文を取りにきた。

茶と焼き菓子を注文する。

奥へ消えていく店主。


ミリ「リネさん、あの…」

エミカ「ミリ」

ミリ「言おうよ。今しかない」

エミカ「…うん」


リネはエミカとミリの顔を見つめる。

小さく首を傾げながら。

声を潜めてミリは伝えようとする。

リネに、戦闘開始の合図について。


ミリ「リネさん、私たち、決めたんです」

リネ「…何?」

ミリ「合図です。私たちだけが分かる合図です」


リネは視線を落とし、卓上を見つめる。

そして、1回大きく息を吸い、吐いた。

視線を上げて、ミリの顔をじっと見つめる。

ミリは、思わず黙り込む。

彼女は見つけた。

リネの目の奥に。

怒りの炎のようなものを。


リネ「つま先で床を1回…でしょう?」

ミリ「…!」

アルジ&エミカ「!?」


窓から外をぼんやりと眺めるリネ。

小さな声で言う。


リネ「私が聞いてないとでも思ったの…?」


店主が現れる。

4人分の茶と3人分の焼き菓子が置かれた。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 23

◇ HP   2277/2277

◇ 攻撃

 34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 素早さ

  28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 魔力  5★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、雅繊維戦衣がせんいせんい

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り


◇ エミカ ◇

◇ レベル 19

◇ HP   1452/1452

◇ 攻撃  9★★★★★★★★★

◇ 防御  12★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  33★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  魔樹の杖、深紅の魔道衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火


◇ ミリ ◇

◇ レベル 16

◇ HP   1008/1008

◇ 攻撃  4★★★★

◇ 防御  7★★★★★★★

◇ 素早さ

  17★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  ★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  魔石の杖、紺碧の魔道衣

◇ 魔術  氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷


◇ リネ ◇

◇ レベル 27

◇ HP   1011/1011

◇ 攻撃   7★★★★★★★

◇ 防御

 18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、創造の杖、聖星清衣せいせいせいい

◇ 魔術  雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 20

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