表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルジ往戦記  作者: roak
93/300

第93話 回収

◆ 都 シノ姫の間 ◆

ガシマは前へ出た。


ガシマ「私は納得できません」

シノ姫「………」

ガシマ「その3人を倒すため、

 今は待機すべきだと?」

シノ姫「………」

ガシマ「誰ですか?誰なんですか!?

 その3人とは!」

シノ姫「しかるべき時が来たら教えましょう」

ガシマ「今は教えられないということですか!

 そんな者どもと戦うために今は待機しろと!?

 危機を放置しろというのですか!!?」

シノ姫「放置しろとは言ってません」

ガシマ「待機は放置も同然ではないですか!?」


次に声を上げたのは、オンダク。


オンダク「オレは行くぞ。命令がなくても。

 国を守ることこそが我らの使命なのだから!」

シノ姫「………」

ユイ「ガシマさん、オンダクさん、私も行きます」


ユイは、今年一隊に昇格したばかり。

剣術と火術が得意。

一隊の最年少はエオクシ。

彼女は次に若い。

ガシマとオンダクを見て実力を高めてきた。

ゆくゆくは三頭に。

隊の中でそんな評価もある。


ヒデイシャ「オレも行こう」

ロクヤン「オンダク、お前に賛同する」

スゲチ「オレもだ。オレもやる」

オンダク「よし、行くぞ!みんな!!」

隊員たち「オオオオオオオオ!!!」


それぞれが武器を掲げる。


シノ姫「…許しませんよ」


静まり返る部屋の中。


シノ姫「ふふふふふふ…」

ガシマ「……!」


シノ姫の不気味な笑い声が響く。

部屋の空気が変わっていく。

隊員たちの勢いが失われていく。


シノ姫「そんなことを言ってると、使いますよ」

隊員たち「…?」

シノ姫「いいんですか?使いますよ」

ガシマ「使うとは…なんのことでしょうか?」

シノ姫「あら!ご存知でしょう。

 大前隊の皆さんなら!

 もう知っているはずでしょう」

隊員たち「………」

シノ姫「秘術です」

隊員たち「…!」

シノ姫「使いますよ」

隊員たち「………」

シノ姫「死にたくないなら、言うことを聞いて。

 命令に従い、待機しなさい。

 従えないというのなら、ここで私が殺します。

 魔獣退治はさせません。

 それでも構わないのなら、どうぞ行きなさい」

隊員たち「………」

シノ姫「ふふっ…」

ガシマ(正気なのか…!!こいつは…!

 だが…死ぬ!!秘術を使われたら…死ぬ!

 それでは…元も子もない…!)


隊員たちは武器を下ろす。

1人、また1人。

オンダクもユイも武器を下ろした。

最後にガシマが力なく斧を下ろす。


シノ姫「それでいいのです」


シノ姫は右手に意識を集中させる。


シノ姫「見えますか?」


右手から光が放たれる。

青白く、怪しい光が。


シノ姫「秘術の力はなくても…

 あなたたちにも見えるでしょう」


隊員たちはじっと見ている。

危うさを感じさせる、その奇妙な光を。


シノ姫「これがただの光じゃない…

 ってことは分かるでしょう?

 秘術使いでなくても。

 命令に背く者は、この力で殺します」

隊員たち「………」

シノ姫「ですから、

 今日のところは言うことを聞いて」

隊員たち「………」

シノ姫「どうなんですか?」

隊員たち「………」

シノ姫「黙っていても分かりません。

 隊長さん。あなたはどうするつもりですか?」

ミチマサ「従います」

シノ姫「よろしい。みんなに改めて命じて。

 あなたから」

ミチマサ「はっ!」


ミチマサは命じる。

隊員たち全員の顔を順に見てから。


ミチマサ「みんな!待機だ!待機するぞ!!」

隊員たち「………」


そして、彼らは去っていく。

連なって城の中を歩く。

その足取りは力ない。

ぞろぞろと城を出る。

大前隊の待機所へと入っていく。

城の敷地内にその建物は建っている。

3階建てのその施設。

武器庫、貯蔵室、会議室、休養室…。

戦いのための設備が整っている。

隊員たちは無言で会議室の床に座り込む。

そして、目を閉じ、静かに過ごした。

現地の隊員たちの武運を願いながら。

危機の収束を祈りながら。

ガシマは歯を食いしばる。

近くに座っていたユイがそれに気づく。



◆ 都 センケン通り ◆

夜が明けようとしている。

エオクシの戦いは続いていた。

もはや満身創痍。

ともに戦う者はない。

現地で戦っていた二隊員は全滅した。

ただ1人エオクシだけが戦い続ける。

右腕を失い、左脚を折られ、頭部に傷を負って。

1歩でも前へ進めば、全身が悲鳴を上げる。

だが、彼は戦意を失わない。

戦おうとしていた。

最後の最後まで。

気を失い、体が動かなくなるまで。

剣をつかむ左手はほとんど感覚がない。

辺りに散乱するヤマエノモグラモンの死体。

その数23。

彼は、閉じかけた目で辛うじて捉える。

歩いてくるヤマエノモグラモンの姿を。

残るは1体。

じっとその場で立って待つ。

相手が襲いかかるのを。

反撃の一撃。

それですべて終わらせる。

それが彼の狙い。

もはや天裂剣も地破剣も出せない。

だが、敵の急所は分かる。

一撃で倒せる急所がどこなのか。

彼は連戦の中で完全に把握。

その急所を残りの力で斬る。

その瞬間をじっと待つ。

大きな炎がゆらりゆらりと揺れている。

センケン通りのあちらこちらで。

炎の光に照らされながら近づいてくる。

ヤマエノモグラモンが1歩、また1歩。


エオクシ「来やがれ…!!」


すっかりかすれた声で叫ぶ。

振り上げられるヤマエノモグラモンの長い腕。

身をかがめ、かわす。


エオクシ(そこだ!!!)


剣を振ろうとした瞬間。


エオクシ「…!!」


するりと剣が手から滑り落ちた。

転倒するエオクシ。

彼の背中に容赦なく降り注ぐ爪の嵐。

何度も、何度も、深く刺す。


エオクシ「…か…はっ…!!!」


そのとき。

強力な冷気がヤマエノモグラモンを包む。

近くにいた消火隊が放った氷術だった。

エオクシへの攻撃がやむ。

ヤマエノモグラモンは倒された。

ガチガチに凍った状態で。

走ってきたのは3人の魔術師。

その1人はアヅミナ。

真夜中、彼女は消火隊から支援を求められた。

強い氷術使いの力が必要とされたために。

彼女は引き受けて消化活動に参加していた。

エオクシのそばでしゃがみこむ。

彼の肩にそっと手で触れる。


アヅミナ「エオクシ…」

エオクシ「………」


彼はもはや虫の息。

目を閉じ、静かにしている。

熟睡しているかのような穏やかな顔で。


アヅミナ「エオクシ、起きて」

エオクシ「………」


ほかの2人の魔術師は炎を消しに行く。

消火活動はまだまだ必要。

そして、夜が明ける。

センケン通りに転がっている。

24体のヤマエノモグラモンの死体が。

倒された大前隊の戦士たちが。

その中にエオクシの姿も。

アヅミナは彼に寄り添い続けた。

消火活動が終わりを迎えたとき。

エオクシの死体は回収された。

シノ姫が派遣した魔術師たちによって。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アヅミナ ◇

◇ レベル 35

◇ HP   404/404

◇ 攻撃   1★

◇ 防御   2★★

◇ 素早さ

 40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 装備  大法力の魔杖、漆黒の術衣

◇ 魔術

  火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火

  氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷

  暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、

  酷死魔術


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ