第91話 待機
アルジは静かに立ち上がる。
古い宿の、狭い部屋で。
ほかの３人は寝ている。
アルジ（とうとう来たんだ…。
マスタスのいる町に…）
すっかり目が覚めていた。
１人で部屋から出る。
宿の外は真っ暗。
空を見上げても星の１つも見えない。
アルジ（いくつ町を越えて来たっけ）
指折り数える。
そのとき、アルジは指先が一瞬光るのを見た。
アルジ「…！」
瞬きして、もう１度手を見つめる。
しかし、光はそれきり出てこない。
アルジ（気のせいか？でも…今、確かに…）
エミカ「アルジ」
アルジ「おう」
エミカも宿から出てきた。
アルジ「起きたのか」
エミカ「眠れなくて」
アルジ「そっか」
エミカ「このままじゃまずい」
アルジ「分かってる」
エミカ「…決めよう」
アルジ「決めるって？」
エミカ「合図だ」
アルジ「合図」
エミカ「私たち４人だけが分かる合図を」
アルジ「………」
エミカは周辺をくるくる見回す。
エミカ（魔波は…ないな…）
アルジに近づき、声を潜める。
エミカ「戦いを始める合図だ。
誰かがそれをやったら全員で戦う」
アルジ「誰かがって…」
エミカ「リネさん、あるいは…」
アルジ「リネにやってもらおう」
エミカ「でも、リネさんはやってくれないかも」
アルジ「………」
エミカ「こういうのはどうだ？
つま先で床を１回蹴る」
アルジ「床を１回…」
エミカ「それを合図にする。
蹴ったら、全員で戦う」
アルジ「うまくいくのか」
エミカ「やるしかない」
アルジ「………」
エミカ「私とミリでよく見てる。
マスタスの魔波を。
少しでも不穏な感じがしたら、合図をする。
それで、行こう」
アルジ「分かった。不穏な感じ…か」
エミカ「どんな上級魔術師でも…
出てしまうものがある」
アルジ「出てしまうもの？なんだ？」
エミカ「それは、助走のようなもの。
大きく跳び上がる前の助走みたいなものだ。
強い魔術を使うとき魔波が微かに実体化する。
火術使いなら火が一瞬現れる。そんなふうに。
魔術が強ければ強いほど、長く実体化する。
その不穏な魔波を見逃さない。
私とミリならできる」
アルジ「………」
エミカ「この作戦…ミリには私から伝える」
アルジ「ああ、分かった」
エミカは小さく笑って言う。
エミカ「マスタスがどんな魔術を使うのか。
分からないから、余計に怖い」
アルジ「オレだって怖くないわけじゃないぜ」
エミカ「でも、やらなきゃならない」
アルジ「ああ。やろうぜ」
ミリ「床を…１回だね」
ミリの声。
アルジとエミカは振り向く。
エミカ「ミリ」
ミリ「私も眠れなくて」
エミカ「…そっか」
ミリ「分かったよ。床を１回。つま先で」
エミカ「そうだ」
アルジ「オレには感じ取れないと思う。
その微妙な魔波の実体化を。
だから、エミカとミリの合図で戦う」
エミカ「それで十分だ」
ミリ「十分」
アルジはうなずく。
そして、ついさっき起きたことを思い出す。
アルジ「そういえば、さっき…」
エミカ「なんだ？」
アルジ「指先が光ったんだ。
魔波が実体化したのかも」
エミカ「光った…。気のせいじゃないのか？」
アルジ「いや、見たぜ。この目で」
ミリ「本当かな」
アルジ「本当だ」
エミカ「私は７ヶ月かかったんだ」
アルジ「え？」
エミカ「魔力で火を出せるようになるまで」
アルジ「…そうなのか」
エミカ「だから、そんな簡単にできたら悔しい」
アルジ「そうか」
ミリ「もしも…もしもだよ。
光が出たのが本当なら…アルジは光術かな？
そしたら、リネ先生と一緒だね」
エミカ「…どうだろう。
あんまり光術使いって感じじゃないけど」
アルジ「おい、待ってくれ。どういうことだ？
感じじゃないって…」
エミカ「そういう感じじゃないってことだ」
アルジ「だから、その感じじゃないって…」
ミリ「アルジ、しつこいよ」
アルジ「………」
エミカ「今日はもう寝よう。
少しでも体を休めなきゃ」
ミリ「そうだね」
アルジ「明日…だしな！」
エミカ「ああ」
アルジたちは部屋へ戻り、布団に潜った。
リネを起こさないようにひっそりと。
◆ 都 センケン通り ◆
二隊の隊員たちが次々と倒される。
そんな中、１人戦い続けるエオクシ。
センケン通りの火事は広がっていく。
都の火消し隊が続々と駆けつける。
エオクシ（食らえ！！）
ヤマエノモグラモン「ファウアアアア！！！」
地破剣を見舞う。
◇ ヤマエノモグラモンEに10121のダメージ。
◇ ヤマエノモグラモンEを倒した。
エオクシはすぐに剣を構え、次の標的を定める。
また１人、崩れ落ちる二隊の隊員。
駆けつけて、敵を斬りつける。
ヤマエノモグラモン「ファウアアアアアア！！！」
天裂剣を繰り出した。
◇ ヤマエノモグラモンFに8998のダメージ。
直後、長い腕による反撃を受ける。
防ぎきれない。
突き飛ばされ、エオクシは激しく転倒する。
エオクシ「…くっそ！！」
◇ エオクシに205のダメージ。
（HP3692 → 3487）
すぐに起き上がり、走り出す。
そして、斜めに大きく敵を斬り裂いた。
◇ ヤマエノモグラモンFに6632のダメージ。
◇ ヤマエノモグラモンFを倒した。
エオクシ（こんなことになるんなら…
しゃべってねえで…
もっと飯を食っとけばよかった…！）
火消し隊が消火活動を行う。
数人の氷術使いが先頭に立ち、鎮火を試みる。
だが、燃え広がった炎は簡単に消えない。
◆ 都 大君の間 ◆
そこは、城の最上階。
壁に、天井に、装飾が施された特別な部屋。
最高権力者、大君のいる部屋。
集められたのは９人の戦士。
彼らは大前隊第一隊の隊員たち。
立ったままシノ姫と向き合っている。
シノ姫「よく来てくれました」
隊員たち「………」
彼女は部屋の中央に座っている。
その奥には大君トキノナガ。
シノ姫「大変なことが起きています」
集められた隊員たちはすでに知っていた。
ヤマエノモグラモンによる都の襲撃を。
この緊急事態に彼らは現場に向かおうとした。
しかし、その直前。
シノ姫からここへ呼び出されたのだった。
ガシマ（早く出動命令を！）
オンダク（前置きなどいらん！！）
シノ姫の口調は落ち着いていた。
緊急事態とは思えない。
シノ姫「ガシマ、オンダク、ユイ、
ヒデイシャ、オノク、スゲチ、ミチマサ、
ロクヤン、シンモク」
第一隊の隊員たちの名前を呼ぶ。
シノ姫「あなたたちは、選ばれた戦士たちです」
隊員たち「………」
シノ姫「このような状況だからこそ、
すぐに命じたかった。
あなたたちを集めて、直接、
私の口から命じたかった」
隊員たち「………」
シノ姫「特別な力を持った
大切なあなたたちだから」
ガシマ（魔獣討伐の命令は？早く命令を…）
オンダク（何をゆっくり話しているんだ！）
シノ姫「いいですか。これから、命じます」
隊員たち「………」
シノ姫「命じますよ」
ガシマ（早く言え！現地へ行けと！戦えと！
オレたちはいつでも行ける！）
オンダク（迷うことなどないはずだ！）
焦る隊員たち。
その様子を見てほほえむシノ姫。
ガシマ「命令を！シノ姫様！！ご命令を！！」
シノ姫「そう急かさないで」
シノ姫は大君を見てほほえむ。
大君は部屋の奥、暗がりの中にいた。
オンダク「準備はできております！ご命令を！」
シノ姫「あなたたちに出す命令…」
隊員たち「………」
シノ姫「それは、待機です」
隊員たち「…！？」
待機。
その命令に隊員たちは呆気に取られた。
ユイ（…待機？）
ヒデイシャ（冗談だろ？）
オノク（何言ってんだ？）
スゲチ（オレの聞き違いか？）
ミチマサ（待機って…確かに言ったよな）
ロクヤン（意味が分からん）
シンモク（クソめ…！！）
◇◇ ステータス ◇◇
◇ ガシマ ◇
◇ レベル 33
◇ HP 2178/2178
◇ 攻撃
36★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
27★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 素早さ
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 魔力 10★★★★★★★★★★
◇ 装備 練磨の大斧、金剛武道着
◇ 技 激旋回斬、大火炎車
◇ 魔術 火弾、火砲
◇ オンダク ◇
◇ レベル 35
◇ HP 2841/2841
◇ 攻撃
28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 防御
39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 ９★★★★★★★★★
◇ 装備 竜牙の長槍、超重装甲
◇ 技 竜牙貫通撃、岩撃槍
◇ 魔術 岩弾、岩壁
◇ ユイ ◇
◇ レベル 33
◇ HP 1711/1711
◇ 攻撃
31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★
◇ 防御
24★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★
◇ 素早さ
29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 魔力
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 煌石剣、連花戦闘衣
◇ 技 千刺連撃、炎舞剣
◇ 魔術 火弾、火砲、火柱
◇ ヒデイシャ ◇
◇ レベル 31
◇ HP 2157/2157
◇ 攻撃
27★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 防御
31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 6★★★★★★
◇ 装備 長大破壊棒、堅守闘衣
◇ 技 豪快破壊撃、痛快三点打、
爽快一点打、凍結打
◇ 魔術 氷弾、氷砲
◇ オノク ◇
◇ レベル 36
◇ HP 2337/2337
◇ 攻撃
34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 素早さ
27★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 魔力 ３★★★
◇ 装備 真鋭の爪、真衛の道着
◇ 技 勇壮連打、苛烈瞬風蹴り（かれつしゅんぷうげり）、
縦横無尽破壊拳
◇ 魔術 岩弾
◇ スゲチ ◇
◇ レベル 31
◇ HP 1933/1933
◇ 攻撃
31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★
◇ 防御
33★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
25★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 魔力
17★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 聖鋼の槍、白鋼の鎧
◇ 技 輝乱気嵐撃、嵐身乱心撃
◇ 魔術 氷弾、氷柱
雷弾、雷砲
◇ ミチマサ ◇
◇ レベル 32
◇ HP 1159/1159
◇ 攻撃
17★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御 16★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
◇ 装備 正道の剣、正道の鎧
◇ 技 正位斬撃
◇ ロクヤン ◇
◇ レベル 35
◇ HP 3002/3002
◇ 攻撃
33★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
35★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 １★
◇ 装備 六刃大剣、完防六甲
◇ 技 華美六連撃、巨撃大送、破壊刃来迎
◇ 魔術
◇ シンモク ◇
◇ レベル 34
◇ HP 1693/1693
◇ 攻撃
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
20★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 魔波集攻剣、魔布戦闘着
◇ 技 火炎剣、雷断剣、炎雷剣
◇ 魔術 火弾、火球
雷弾、雷砲、雷刃
光球、治療魔術
◇ エオクシ ◇
◇ レベル 37
◇ HP 3487/3692
◇ 攻撃
49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 防御
44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★
◇ 素早さ
46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 魔力
◇ 装備 壮刃剣、戦究防護衣
◇ 技 天裂剣、地破剣
◇◇ 敵ステータス ◇◇
◇ ヤマエノモグラモン ◇
◇ レベル 24
◇ HP 3636
◇ 攻撃
20★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★
◇ 技 ホリホリカミカミ
◇ 魔術 岩弾、岩砲
