第9話 集結
◆ マノトノ食堂 ◆
深まる夜。
食堂は多くの客で賑わっていた。
店員「らっしゃい!」
アルジ「……」
店員「お!旦那!来てくれましたか!!」
アルジ「?」
店主「ナシリ、知り合いか?」
店員「まあ、そんなもんですわ!
さあ、こっちに!」
アルジたちを案内する店員。
通されたのは店の奥の席。
大きな仕切り板に囲まれている。
そのため、外から席が見えない。
アルジとエミカは椅子に座る。
店員「へへへ…」
アルジ「あんた、もしや…」
店員「お察しのとおり」
店員は顔に着けていたものをはがす。
それは、肌とほとんど同じ色。
柔らかく、薄いもの。
慎重にすべてを取り終える。
見たことのある顔が現れる。
アルジ「オオデン!」
オオデン「しっ!ここでその名前を呼ぶな」
アルジ「なんでだ?」
オオデン「ここで働いていることは秘密なんだ」
アルジ「それでそんな変装を?」
オオデン「おう。こいつは獣の皮で作った。
よくできてるだろ?」
アルジ「……」
エミカ「ナシリという名前は?」
オオデン「この店でのオレの名前だ。
店主も常連客もオレをナシリと呼ぶ。
この店じゃオレはオオデンじゃない。
ナシリという男だ。気をつけろ」
アルジ&エミカ「………」
アルジは切り出す。
アルジ「決起会を始めようか。ナシリ」
オオデン「待て。あと少し仕事がある。
終わったらここへ来よう。
それよりも、まずはとっておきだ」
アルジ「とっておき?」
オオデンは皮を顔に貼りつける。
小走りに持ち場へ戻っていった。
アルジ「あの人も大変だな」
エミカ「素顔も本名も隠して生きていく。
相当な覚悟がいるだろう」
アルジ「それでもこの町を出ていかないのは…」
エミカ「復讐のため…だろうな」
しばらくしてオオデンが戻ってくる。
両手に大きな鍋を抱えて。
もくもくと湯気が上がっている。
食欲をそそる香りがする。
アルジ「うまそうだな!」
オオデン「当たり前だ。
さっき獲ったヨイノシシの鍋料理だ。
熱いうちに食べろ」
オオデンは再び持ち場へ。
ガヤガヤと声が聞こえてくる。
団体客の入店だった。
アルジとエミカは鍋料理を食べ始める。
アルジ「あ、うまい」
エミカ「うん…まあまあだな」
鍋料理を半分ほど食べた頃。
オオデンが戻ってくる。
オオデン「待たせたな。今仕事が終わった」
アルジ「その皮、もう取ったらどうなんだ?」
オオデン「まだだ。まだこれで行かせてくれ」
アルジ「…?」
団体客の声が大きく響く。
笑い声、叫び声が店中に。
エミカは仕切り板の間から様子を見る。
迷惑そうな顔で。
エミカ「あれはワノエ警備隊か」
オオデン「…ご名答」
アルジ「よく来るのか?」
オオデン「ああ、この店の常連だ。
オレはあいつらに合わせる顔がない」
アルジ&エミカ「………」
オオデン「まあ当然だ。
あれだけの失態をすれば」
アルジ&エミカ「………」
オオデン「しんみりするな。さあ、決起会だ」
アルジ「ああ。なかなかうまいぜ。これ!」
ヨイノシシの肉をほおばるアルジ。
オオデン「当たり前だ。
このオレが仕込んだんだからな」
エミカ「狩人であり料理人でもあるわけだ」
オオデン「そうだ。戦士ではない…がな。
ははははは…」
アルジ「オレはそうは思わない」
オオデン「何…?」
アルジ「ヨイノシシを仕留めたときの動き…
近づくときの身のこなし…素早い剣の突き…
あれは、戦士の動きだったぜ」
オオデン「フッ…よせ!」
エミカ「今も鍛錬を続けているんだろ」
オオデン「当たり前だ。復讐のために…な。
オレはあの日の屈辱を決して忘れない。
それを晴らすため、今、オレはここにいる」
アルジ&エミカ「………」
オオデン「さあ、料理を食べるぞ。
冷めたらまずくなる」
アルジ「ああ」
ヨイノシシ鍋をアルジたちは食べ終える。
それから、オオデンは果実を持ってくる。
その果実はシズミという。
大きさはアルジの握り拳ほど。
ワノエ名産の赤くて甘い高価な果実。
皮もそのまま食べられる。
たっぷりの果汁がアルジたちの喉を潤した。
アルジ「うまかったぜ。ありがとう」
エミカ「ごちそうさまでした」
オオデン「満足してくれたようだな」
アルジ「なんだか力が湧いてきた」
オオデン「フ…それは結構なことだ。
力が湧いたところで、やろうじゃないか。
作戦会議を!」
アルジ「カクノオウ退治の…だな!」
オオデン「…もちろん」
エミカ「居場所は分かるのか?」
オオデン「もう突き止めてある」
アルジ「どこだ?」
オオデン「ダブカという場所だ。廃村だ」
エミカ「ダブカ…。聞いたことはある」
廃村ダブカ。
ワノエから東へ少し進んだところにある。
かつてそこはのどかで小さな村だった。
20年ほど前、その村を1頭の魔獣が襲う。
青い鱗で全身を覆われた巨大な魔獣が。
魔獣の猛威に村人はなす術もなく逃げ惑う。
そして、一夜にして村は壊滅した。
それ以来、魔獣はダブカの地に住み着く。
人々は警戒し、近づかなくなる。
そんな中、討伐隊が結成された。
ワノエの警備隊と猟師たちによって。
激しい戦いの末、魔獣を討伐。
地域に平穏が戻り、人々は安堵した。
だが、ダブカに人々は戻らなかった。
魔獣の再来を心配したために。
アルジ「廃村って…そんな場所にいるのか」
オオデン「弟子たちと空き家で暮らしている」
エミカ「弟子たち…」
オオデン「強盗団には厳しい上下関係がある。
カクノオウを頂点に組織的に活動している。
カサナ家襲撃のときもそうだった。
オレはこの目で見た。弟子はかなりの数だ」
アルジ「そんな悪人によくついていくもんだぜ」
オオデン「荒くれ者どもが憧れて、
弟子入りを志願するようだ。
ただ強いだけじゃない。魅力があるんだろう。
指導者としての魅力が。カクノオウには…」
アルジ「指導者としての魅力か…」
オオデン「教えることが得意らしい」
アルジ「………」
オオデン「どうやらカクノオウには
過去に経験があるようだ。
人を教育するということに関して…。
弟子たちに基礎から戦い方を指導している。
ゆえに弟子1人1人の力が侮れない」
エミカ「だから、こっちも数が必要なわけか」
オオデン「そうだ。1人や2人じゃ挑めない。
人手がいる。オレはずっと探していた。
ともに戦ってくれる仲間を」
アルジ「それで3人で乗り込むってわけか」
オオデン「…いや」
アルジ「?」
オオデンは席を立つ。
仕切りの外へ歩いていく。
騒ぎながら食事をする警備隊。
彼らのそばで立ち止まる。
オオデン「あ!ノゴウの旦那!」
ノゴウ「よう、ナシリ」
オオデン「とっておきの品物がありまして…」
ノゴウ「品物?なんだ?」
オオデンはノゴウを連れていく。
アルジたちの席へ。
そして、4人は対面した。
オオデン「こいつも行く。3人じゃなく4人だ」
アルジ「分かった」
ノゴウ「オオデンさん!集まったんですね!」
オオデン「ああ。ともに戦ってくれる仲間だ。
剣士のアルジと魔術師のエミカだ。
どちらも戦力的に申し分ない…って、
ここでオレの本名を呼ぶな!」
ノゴウ「ごめんなさい…。つい…」
ノゴウはアルジとエミカの方を向く。
ノゴウ「初めまして。僕はノゴウ。
ワノエ警備隊の隊員だ。よろしく」
アルジ&エミカ「よろしく」
ノゴウ「オオデンさんにはお世話になった。
僕の面倒を見てくれたオオデンさんのため、
僕は裏で活動し続けて情報を集めてました。
カクノオウの居場所について。能力について。
腕っぷしにはあまり自信ないけど、
どうぞよろしく」
◇ ノゴウが仲間になった。
作戦会議は続く。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 4
◇ HP 145/145
◇ 攻撃 8★★★★★★★★
◇ 防御 4★★★★
◇ 素早さ 4★★★★
◇ 魔力 1★
◇ 装備 勇気の剣、革の鎧
◇ 技 円月斬り
◇ エミカ ◇
◇ レベル 4
◇ HP 127/127
◇ 攻撃 2★★
◇ 防御 2★★
◇ 素早さ 5★★★★★
◇ 魔力 7★★★★★★★
◇ 装備 術師の杖、術師の服
◇ 魔術 火球
◇ オオデン ◇
◇ レベル 10
◇ HP 336/336
◇ 攻撃 4★★★★
◇ 防御 4★★★★
◇ 素早さ 3★★★
◇ 魔力 2★★
◇ 装備 鉄の短剣、錆びた鎧
◇ ノゴウ ◇
◇ レベル 6
◇ HP 63/63
◇ 攻撃 3★★★
◇ 防御 2★★
◇ 素早さ 4★★★★
◇ 魔力
◇ 装備 鉄の剣、鉄の鎧
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療薬 9