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アルジ往戦記  作者: roak
89/300

第89話 横顔

◆ トウオウ道 ◆

荒野の中、その道は続く。

遠くには変わった形の岩。

通行人の姿はない。

ラアムとナアムは横に並んで進む。

ラアムに乗るのはリネとミリ。

ナアムに乗るのはアルジとエミカ。


アルジ「そういえば…

 屋台で気になる話を聞いたんだ」

リネ「…どんな話?」

アルジ「物々しい連中が魔生体に乗って

 オノレノの町に飛んできたって」

エミカ「…メデナさんが言ったのか?」

アルジ「ああ。そうだ」

リネ「魔生体に乗って…」

ミリ「空から…」

アルジ「それってカルスのことじゃないか」

エミカ「乗ってたのは大前隊かな」

リネ「そうかもしれません。

 実は彼らはもう探りを入れていた。

 研究所に…。それは十分ありえます」

エミカ「ホジタ所長は…

 特に何も言っていませんでしたけど」

リネ「言う必要はない。そう思ったんでしょ。

 私たちは大前隊と関係ありませんから。

 あの人、自慢話はどんどん自分からするけど、

 政府の調査を受けてるなんて話、絶対しない」

エミカ「そうですね」

アルジ「大前隊はまた行くのかもな…。

 あの研究所に。サルヤマさんも言ってただろ。

 研究所の連中をしょっぴくとかなんとか…」

エミカ「大前隊が動いてるってことは…

 やっぱりそれなりの大事件ですよね。

 もしも…魔真体について調べてるなら…

 マスタスを追いかけてきて、それで…

 また私たちの前に現れるかも…」

リネ「どうでしょうね」

エミカ「………」

ミリ「でもさ、今度また出くわしたら…

 私たちの旅を邪魔してきたら…

 そのときは今度こそぶっ飛ばしちゃおう」

アルジ「そうだな!」

ミリ「私たちの力を見せてあげようよ」

エミカ「………」

ミリ「ねえ、エミカも。

 私たち強くなったんだから」

エミカ「その前にマスタスだよ」

ミリ「ああ…そうだね」

リネ「………」


道が分かれている。

太い道と細い道に。

左へ伸びるのは太い道。

右へ伸びるのは細い道。


リネ「太いのはトウオウ道。

 目的地へ通じるのは右の道です」


リネは細い道の方へラアムの鼻を向ける。

細い道の名前はナカミ道。

トウオウ道に比べて細く荒れている。

この先は、2頭で横に並んで歩けない。

ラアムが前を行く。

その後ろをナアムがついて行く。

日は西へ大きく傾いていた。



◆ 都 ◆

エオクシは意気揚々と歩く。

多くの店が並ぶ華やかな大通りを。

彼を慕う二隊の隊員たちを引き連れて。

休日。

彼の行動は大体決まっている。

まず、夕方まで寝て体を休める。

起きたら仲間を集めて剣術の稽古をする。

そして、その夜は仲間たちと「派手にやる」。


エオクシ「へへ…どこにするか…!」


彼の目に映るのは都の名だたる高級料理店。

通りの右にも左にも名店が並ぶ。

そのうちの1軒に入る。

ぞろぞろと彼の仲間も入っていく。


若女将「ああら、エオクシ様!!」

エオクシ「よう、今日も楽しませてもらうぜ!」

若女将「どうぞ!奥のお部屋へ!どうぞ!」

エオクシ「ああ!よろしくな!」


大きな宴会部屋に通される。

そこは特別な照明の光に満ちていた。

桃色がかったなまめかしい光に。

豪華な料理がいくつも出される。

エオクシたちは勢いよく食べる。

勢いよく飲んで、しゃべる。


エオクシ「あんなやつが出てくるたぁ

 こっちも予想外!それでだ!

 どうなったと思う!?」

二隊の隊員たち「…さぁ…」

エオクシ「化け物に突撃よ!!

 天裂剣を見舞ってやった!!」

二隊の隊員たち「…おお…!」

エオクシ「だがな!!

 そのあとがちょいと違った!!

 ほかの魔獣とは違った!!

 あんなことは初めてだ!!

 おい、レンダ、何が起きたと思う!?」

レンダ「さぁ…なんでしょう…?」

エオクシ「化け物だ!あれは本物の!!

 オレの天裂剣を食らったのに

 反撃してきやがった!!!」

二隊の隊員たち「!!?」

エオクシ「あんときゃオレもさすがに驚いた!

 でけえ槍をぶん回してきやがった!!

 だが、大したことはねえ!

 軽くかわして反撃よ!!」

レンダ「地破剣…!」

エオクシ「おう!正解だ!頭をカッ!ってな!!

 さすがにぶっ倒れて動かなくなったな!!」

二隊の隊員たち「…おおおおおおお!!!」

レンダ「エオクシさんが…

 1人で倒してしまったんですね…!

 その遺跡に出た化け物を…!!」

エオクシ「…ん?ああ。まぁアヅミナの力も…

 ちょっと借りたんだけどな。

 ほぉんの…ちょっとな!!」

二隊の隊員たち「…おお…」

レンダ「そうですか。それでも、すごいです」


天井をぼんやり眺めるエオクシ。


エオクシ(明日…か。気をつけろよ。

 アヅミナ…)


宴会部屋の外。

廊下を駆けてくる足音。

勢いよく戸が開けられる。


二隊の男「エオクシの旦那!!」

エオクシ「ナダキ!いきなりなんだ!?」

ナダキ「大変だ!!エオクシの旦那!!

 センケン通りに魔獣が!でけえ魔獣が!!

 何体も!!二隊の連中で戦ってるが…

 突破されるかもしれねえ!」

エオクシ「…なんだって?」


エオクシたちは宴会をやめる。

そして、勢いよく店の外へ飛び出した。

走りながらナダキは状況を伝える。


ナダキ「あれはおそらく…

 トウオウ道に出たのと…同じ化け物だ!!」

エオクシ「…ヤマエノモグラモンか!」

ナダキ「そうだ!それだ!!

 トウオウ道にも!!カイセン道にも!!

 サイオウ道にヤカマキ道!オンゲンノ道も!!

 続々と巨大な魔獣が現れてるそうだ!!」

エオクシ「……!!」

ナダキ「急にぞろぞろ出てきたそうだ!

 昨晩あたりから…急に!!」

エオクシ「一体…どうなってんだ…!!」

ナダキ「魔術師だ…!!化け物を生み出す…

 そういう魔術を使う女がいると…!

 あちこちから通報があった…!

 ナラタの国の関所番からも…!!

 今回のも…そいつの仕業じゃねえかと…!」

エオクシ「化け物を生み出す魔術だと…!?

 ナラタの国…!!ナラタの国といえば…」

ナダキ「ああ!北土の魔術研究所がある…!」

エオクシ「…繋がってきやがった…!!」


センケン通りに到着するエオクシたち。

5頭のヤマエノモグラモンが歩き回っていた。

二隊の隊員たちが懸命に武器を振る。

だが、防戦一方。

地面には倒れる町人、隊員の姿。

燃え盛る家屋も何軒かある。

エオクシは前へ踏み出す。

歯を食いしばり、剣を構える。


エオクシ「オレに任せろ!!!」


そして、ヤマエノモグラモンに突進していった。



◆ ナカミ道 ◆

ラアムの後ろをナアムが走る。

徐々に2頭の間隔は開いていく。

ナアムの上。

エミカの後ろにアルジは乗っている。

アルジは、後ろから声をかける。


アルジ「エミカ、疲れてきたか?」

エミカ「大丈夫。少し小さな声で話してくれ」

アルジ「…ああ」


ラアムにじりじり離される。

それは、エミカの意図したもの。

彼女はナアムに注ぐ魔力を減らす。

そして、ラアムと一定の距離を保って進む。

リネに不自然に思われない。

それでいて、話し声が聞こえない。

そんな距離を保って進み続ける。


エミカ「リネさんは…」

アルジ「リネは…?」

エミカ「マスタスのことを…

 命と引き換えにしてでも…

 倒そうと思ってるのかも…」

アルジ「…!」

エミカ「先生が言っていた奥の手…」

アルジ「ああ…言ってたな」

エミカ「それが…どんなものかは分からない。

 だけど、すごく嫌な予感がする…」

アルジ「それは…オレも思った」

エミカ「1人で全責任を負う。

 それがつまり…どういうことか」


曲がりくねった道が続く。

荒れた岩場を踏み越える。

前へ、前へ、進んでいく。

日が沈みかけた頃。

遠くに民家が見えてくる。

道がまっすぐになる。


エミカ「私は嫌だ」

アルジ「………」

エミカ「そんなのは絶対に嫌だ」

アルジ「オレもだ」

エミカ「みんなで…4人で生きて帰りたい」

アルジ「ああ」

エミカ「今回の旅は…

 大変なことがあったとしても…

 最後は笑って話せる思い出にしたい」

アルジ「ああ」

エミカ「だから…」

アルジ「オレはいつでも戦うつもりだ」

エミカ「………」

アルジ「もちろん…分からなくはない。

 リネの気持ちも。実際…拒めなかった。

 あの茶屋で…リネの願いを…拒めなかった。

 リネの本当に強い思いを感じたから。

 だけど、リネの気持ちがすべてじゃない。

 オレたちにだって考えがある。思いがある。

 そうだろ。だから、いざというときは…

 そうだ、いざというときはみんなで行こう。

 マスタスを…4人で倒しにいこう」

エミカ「アルジ…ありがとう」

アルジ「エミカも頼むぜ」

エミカ「もちろん。私も戦う。マスタスと…!」

アルジ「おう!」


テノハの町はもうすぐ近く。

エミカは懸命にナアムを動かした。

道が十分広くなったとき、ラアムと横に並ぶ。

エミカがリネの横顔を見たとき。


リネ「エミカ」

エミカ「………」

リネ「なんで泣いてるの?」

エミカ「…お腹が空いて」

リネ「…ごまかすのヘタだね」


リネの後ろでラアムにまたがるミリ。

彼女の頬にも涙のあとがあった。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 23

◇ HP   2277/2277

◇ 攻撃

 34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 素早さ

  28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 魔力  5★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、雅繊維戦衣がせんいせんい

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り


◇ エミカ ◇

◇ レベル 19

◇ HP   1452/1452

◇ 攻撃  9★★★★★★★★★

◇ 防御  12★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  33★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  魔樹の杖、深紅の魔道衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火


◇ ミリ ◇

◇ レベル 16

◇ HP   1008/1008

◇ 攻撃  4★★★★

◇ 防御  7★★★★★★★

◇ 素早さ

  17★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  ★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  魔石の杖、紺碧の魔道衣

◇ 魔術  氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷


◇ リネ ◇

◇ レベル 27

◇ HP   1011/1011

◇ 攻撃   7★★★★★★★

◇ 防御

 18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、創造の杖、聖星清衣せいせいせいい

◇ 魔術  雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 20

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