第84話 戦士
ホジタは語る。
大遊説をしていた3人について。
ホジタ「深淵の闇魔術師マスタス、
自在の魔調教師ロニ、
そして、無欠の魔道戦士ラグア。
この3人だ」
リネ「マスタス、ロニ、ラグアの3人…ですね」
ホジタ「いずれもノイ地方生まれのノイ民だ。
この研究所に在籍していた」
アルジ(その名前…確かに覚えたぜ。
マスタス…タラノス先生が言ったとおりだ。
ナキ村に来たあの3人の中にマスタスはいた。
ロニは…ヤシズ湖にいた女の魔術師だよな。
やはり、あいつもか。人違いじゃなかった。
あとの1人。ラグア。3年前…そいつもいた。
ナキ村に来ていた。
でも、どんな顔だったっけ?)
ホジタは目を細めた。
ホジタ「また魔波が不穏な動きを見せたな」
リネ「………」
ホジタ「これは…そうだ…。
強い怒り…怒りの感情。
そういうものだ…」
アルジ(見抜いてやがる…!)
エミカ(アルジ…!)
ホジタ「まぁいい。大遊説でラグアたち3人は、
八多等守護衣を身にまとい大陸各地を巡った。
研究所を辞めた連中だ。普通なら許されない。
八多等守護衣を着て外で事件を起こしたら、
研究所の名に傷がつくからな。
だが、私は止めなかった。
それは、絶大な信頼を置いていたからだ。
彼らの能力を高く評価していたからだ」
リネ「マスタスはともかく…ロニとラグア。
この2人はどのような魔術師なのですか?」
ホジタ「知らないか。…無理もない。
2人ともいなかったからな。
君が研究所にいた頃は。
君が研究所を去って3年近く経った頃。
まず、ロニが当研究所に入所した。
5年くらい前のことだ。
なんの魔術も使えないさえない女。
最初はそんな印象だったと
当時の指導担当者は言っていた。
だが、あいつだけは見抜いていた。
ロニの類まれな素質を」
リネ「あいつとは…」
ホジタ「ラグアだ」
リネ「ラグア…」
ホジタは興奮気味に話す。
ホジタ「ラグア…あいつは逸材だ。
逸材の中の逸材。
おそらく…研究所始まって以来の。
…おっと、今はロニの話だったな」
リネ(ホジタ所長にそこまで言わせる魔術師…
そんな人がいたこと…知らなかった…)
ホジタ「ラグアが見出したロニの魔術。
それは、獣魔術という種類のものだった」
リネ「獣…魔術…」
ホジタ「通常の訓練では使えるようにならない。
どうしたら習得できるのか。
どんな効果があるのか。
出回っている魔術書にも、その記述はない。
だが、ラグアはおよそ10日間、
ロニに付き合い、1対1の特訓を行い、
そして、ついに、ロニは目覚めた。
ロニの獣魔術が目覚めたのだ。
素晴らしい成果だった。
これだけで魔術書が書けてしまうくらいの」
リネ「…素晴らしい」
アルジ「………」
ホジタ「獣に魔力を与え、操る魔術…操獣。
複数の獣を合わせ、獣を生み出す魔術…創獣。
彼女はこの2つを使いこなす。
世にも珍しい魔術だ。
研究所の実演室で見せてもらった。
本当に素晴らしかった。
こんな魔術があるのかと私は大変驚いた。
興奮のあまり体の震えが止まらなかった」
リネ「希少な魔術をご覧になり、
感動されるホジタ所長も…
魔術師として、理想的なそのお姿…
見習いたく思います」
アルジ「………」
ホジタ「はっは!
いつまでも…そうだ、いつまでも…
好奇心と探究心は持っていたいものだな」
部屋の扉が叩かれる。
ホジタ「入りなさい!」
入ってきたのは、ホジタの秘書。
盆を持っている。
盆の上には湯飲みが5つ。
熱い茶が入っていた。
ホジタの机の上に1つを置く。
さらに、アルジたちにも渡そうとする。
リネ「私たちは結構です」
ホジタの秘書「………」
秘書は部屋から出ていく。
4つの湯飲みを盆に乗せたまま。
ホジタ「…よいのか?」
リネ「はい」
ホジタは茶を少し飲む。
ホジタ「…好奇心と探究心の話だったな。
そうだ、失いたくないものだ。
いつまでも持ち続けたい。
新しいものに興味を失うこと、
新しいものを拒絶すること、
それは、本当の意味で老いることだと思う」
リネ「素晴らしいお考えです」
ホジタ「彼も…ラグアもそうだ」
リネ「無欠の魔道戦士…でしたね?」
ホジタ「そうだ。彼もまたそういう類の人間。
…底知れない探究心…あふれ出す好奇心…
戦士でありながら…彼は…」
リネ「…戦士なのですね」
ホジタ「もともとはな。戦士だった」
アルジ(戦士が…魔術…)
ホジタ「武術のことなど私はよく知らないが、
ノイ地方で1番の剣士と評されていたそうだ。
それと同時に魔術の才覚にも恵まれていた。
並外れたものがあった。
それゆえ彼は無欠なのだ。
武術も魔術も両方をあれほどまで高めた者…
私はほかに知らない」
リネ「…それは素晴らしいことです」
アルジ「………」
リネ「ラグアが研究所に来たのはいつですか?」
ホジタ「彼が来たのも君が去ってからのこと。
あれは6年前。ロニよりも1年早く彼は来た。
ラグアはそのとき、すでに21歳。
研究所に入所する者の平均年齢は15、16歳。
そう考えると、彼の入所はかなり遅かった」
リネ「私が入ったのも16歳でした。
21歳というのは、かなり遅い方ですね」
ホジタ「さらには、魔術師という風体ではない。
入所時のあいつの姿はまさに戦士だった。
剣を携え、槍を背負い…。
あの姿は今でも忘れられない。
こいつは本当に大丈夫なのか?と思った」
リネ「………」
ホジタ「魔波はそれなりに感じたが、
果たして研究所でやっていけるのか。
正直かなり疑問だった。
だが、フタを開けてみれば…」
リネ「成果を上げたのですね」
ホジタ「うむ。
これがとんでもない素質の持ち主だった。
メキメキと魔力を高めていった。
そして、彼は10日ほどで光術に目覚めた」
リネ「光術…。素晴らしい」
アルジ「………」
ホジタ「そして、さらに10日後、
彼は火術にも目覚める」
リネ「2種類。…しかも、光術と火術。
それはなかなかいませんね。珍しいことです」
アルジ「………」
リネも興奮気味になる。
そんな彼女を見てホジタはニヤリと笑う。
ホジタ「さらに、およそ10日後のことだ。
彼は雷術、岩術にも目覚めた!」
リネ「!!!」
リネは口を小さく開けたまま固まった。
ホジタ「あいつが4種の術を習得したとき…
私は確信した。彼は研究所にとって…いや!
今後の魔術界にとって不可欠な人材になると」
リネ「…恐ろしい素質です」
ホジタ「だが…突然、研究所を去った。
ロニを連れて」
リネ「…それはもしかして…」
ホジタ「…大遊説を始めたのだ。
ラグア、マスタス、ロニ…。この3人が。
ラグアとロニが出ていったこと。
それは、研究所にとって大きな痛手だった。
本当に、大きな、大きな痛手。
しかし、ラグアは言った。
あれはそうだな…彼らが大遊説を始めて
1年が経った頃のことだ。
ラグアたち3人はふらりと研究所に現れた。
そのとき、ラグアは言った。私に向かって。
大遊説の成果は、必ず研究所に還元する、と。
彼は確かに言ったのだ…」
リネ「成果は…還元する…ですか」
ホジタ「どういうことか。よく分からない。
尋ねたが、それ以上は話してくれなかった。
とにかく、還元すると。約束すると。
言ったきり再び大遊説に出かけたのだ。
3人は」
リネ「…そうですか。成果を…還元…。
彼らの活動が研究所の発展に繋がるなら…」
ホジタ「ああ!そうだ!素晴らしいことだ!
星の秘宝!魔真体!
それらから得られる魔力がいかほどか!
いくら研究しても、し尽くすことはない!
これはもう、胸の高鳴りが止まらんよ…」
アルジ「………」
ホジタは湯飲みの茶を一気に飲み干す。
そして、空にした湯飲みの底を強く叩きつけた。
石でできた机の天板に。
大きな音が鳴り、ミリの体がピクリと動く。
ホジタ「…なんだ?」
リネ「…!」
ホジタ「なんだ?お前!!さっきから…!!」
ホジタはにらみつけている。
彼がにらみつけているのはアルジ。
アルジ「………」
ホジタ「さっきから胸糞悪い魔波を私に向けて!
なんだ?貴様!おい!なんなんだ!!
無礼だぞ!!!」
アルジ「………」
リネ(アルジさん…!)
エミカ(アルジ…!)
さらに2度、ホジタは机に叩きつける。
湯飲みを、力強く。
ホジタ「言いたいことがあるなら言え!!」
アルジ「………」
ホジタ「どうした!!おい!!言え!!
おい、リネ!!なんなんだ!!この弟子は!!
一体なんなんだ!!無礼にもほどがあるぞ!
お前の教育がなってないんじゃないのか!?」
リネ「…!!」
リネが血相を変えてアルジの方を向く。
すると、アルジは立ち上がる。
ホジタの顔をまっすぐに見据えて。
アルジ「…そうだ。ああ、そうさ…。
オレは…言いたいことがある。
あんたに言っておきたいことがある。
いや、言っておかなきゃならないことがある。
今、ここで。だから、言わせてもらう」
ホジタ「…おう…言え!…言ってみろ!」
リネ「……!」
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 23
◇ HP 2277/2277
◇ 攻撃
34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 素早さ
28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 魔力 5★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、雅繊維戦衣
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り
◇ エミカ ◇
◇ レベル 19
◇ HP 1452/1452
◇ 攻撃 9★★★★★★★★★
◇ 防御 12★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
33★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 魔樹の杖、深紅の魔道衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海、王火
◇ ミリ ◇
◇ レベル 16
◇ HP 1008/1008
◇ 攻撃 4★★★★
◇ 防御 7★★★★★★★
◇ 素早さ
17★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 魔石の杖、紺碧の魔道衣
◇ 魔術 氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
◇ リネ ◇
◇ レベル 27
◇ HP 1011/1011
◇ 攻撃 7★★★★★★★
◇ 防御
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、創造の杖、聖星清衣
◇ 魔術 雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療薬 25




