第83話 材料
ホジタは語る。
大遊説と星の秘宝について。
ホジタ「大遊説とは自分たちの考えを広める旅。
魔術の素晴らしさを大陸に知らしめる旅。
同時に、星の秘宝を集める旅でもある。
私はそのように聞いていた。
マスタスたち3人から」
リネ「魔術の素晴らしさを大陸中に…ですか」
ホジタ「そうだ。国を巡り、現地で話をする。
多くの人々から共感を得られたらしい。
マスタスは嬉しそうに話してくれた」
リネ「そうだったんですね」
ホジタ「彼らが旅先でどんなことを説いたのか。
具体的なことは知らない。
だが、悪いことじゃない。
魔術の素晴らしさを人々に広めたのであれば。
むしろ大変よいことだ」
リネ「はい、私もそう思います」
ホジタ「そして、彼らは星の秘宝を求めていた。
旅をして考えを説いて広めるとともに。
探していた。星の秘宝という名の宝を…」
リネ「どうして彼らは…
星の秘宝を探していたのでしょう?」
ホジタ「前にマスタスは言った。
大きな力を持つその秘宝…
ただの財宝ではないのだと。
特別な意味があるのだと」
リネ「特別な意味ですか」
ホジタ「変えてしまう力がある。
大陸のあり方を根本から。
マスタスはそのように言っていた」
リネ「根本から変えてしまう力ですか」
ホジタ「そうだ」
リネ(星の秘宝は…
創造の杖、破壊の矛、安定の玉の3つ。
その3つを手に入れた者は、
新たな支配者になれる。
でも、それはただの言い伝え。
どこまで本当か分からない。
親からはそう聞かされていたし、
私自身もそう思っていた。
でも…まさか…本当に…
大陸のあり方を変えるって…)
ホジタは真剣な顔で問いかける。
ホジタ「話は変わるが、リネ君。
この大陸の歴史について…
暗黒時代のことは知っているな?」
リネ「はい」
ホジタ「2000年ほど前のことだ。
古代国家が突然滅びた。
その後、およそ200年、
記録のない時代が続いたという。
その間、何が起きたのか分からない。
ほとんど何も。そういう時代が続いた。
それが暗黒時代と呼ばれる。
その時代にできたとされている。
今の国家の基礎は」
リネ「はい」
ホジタ「古代国家はどこに政府があったのか。
分かっていない。大きな遺跡はいくつもある。
だが、どれが王のいた都なのか。
未だに分かっていない。
そもそも中央政府というものはなかった。
そんな考え方もある。
小規模の国家がいくつもあった。
それだけなのではないか…と。
そういう説を唱える歴史学者も多い。
真相は分からない。
古代文字の解読ができれば…
少しは分かるのかもしれないが」
リネ「はい」
ホジタ「だが、彼らは言う。
それは確かにあるのだと」
リネ「それというのは?彼らとは…?」
ホジタ「マスタスたちだ」
リネ「マスタスたち…ですか」
ホジタ「古王の祭壇というものが
大陸のどこかにあるのだと。
マスタスたちは言っていた」
リネ「古王の祭壇…」
ホジタ「かつて古代国家を治めていた王。
その王の墓にそれはあると…」
リネ「古王の祭壇が…ですか?」
ホジタ「そうだ。話を星の秘宝に戻そう」
リネ「…はい」
ホジタ「マスタスたちは私に教えてくれた」
ホジタはちらりと窓の外へ目をやる。
それから、リネの顔を見る。
リネ「………」
ホジタ「捧げよ。星の秘宝を。古王の祭壇へ。
さすれば、魔真体、目覚めん…」
リネ「………」
ホジタ「ある古文書の一節だそうだ。
マスタスから聞いた。
魔真体とはなんなのか。
問うと、彼は答えてくれた」
リネ「なんなのですか?」
ホジタ「まあ、慌てるな。順を追って話したい。
私は1冊の歴史書をもらった。彼らから。
それは、なかなか興味深い1冊だった。
書いたのは、学術院の歴史学者たち。
3人の名が著者として記されていた。
だが、ほとんどの記述は
1人の男の手によるものらしい。
その男の名は、カタムラ」
リネ「カタムラ…」
ホジタ「彼は、いわゆる主流派の学者ではない。
暗黒時代到来の原因は、環境変動説が主流。
自然環境が激変し、古代国家は滅びた。
主流派の考えは、そういうものだ。
学校の教科書にもそう書かれている。
だが、カタムラは大胆に主張する。
その歴史書の中で。
遥か昔、大きな戦争があったのだと。
そのために古代国家は滅んだのだと。
魔術と…もう1つの力の戦いがあったのだと」
リネ「もう1つの力…ですか?」
ホジタ「秘術」
リネ「………」
ホジタ「そういう力がかつてあったのだという。
そして、その力は支えていたのだという。
古代国家の発展を」
リネ「魔術とは別の力なのですね」
ホジタ「そうだ。
だが、残念なことに著書には書かれていない。
秘術について詳しいことは。
何も書かれていないのだ。
別な章で述べると書いてあった。
だが、どこを探しても見当たらない。
それを説明する記述はないのだ。
書けなかったのか。
書くのを忘れてしまったのか、
あるいは、あえて書かないことにしたのか。
いずれにせよ魔術とは異なる力ということだ」
リネ「異なる力ですか」
ホジタ「そして、秘術は魔術に敗れた。
古代の大戦争で」
ホジタは視線を落とし、静かに語る。
ホジタ「魔術の勝利を決定的にしたもの。
それは、魔真体の存在だ。
ミオの民が生んだ究極の魔生体。
それが古代国家を破壊した。
カタムラの本には、そう書かれている」
リネ「ミオの民とは…」
ホジタは顔を上げ、リネを見る。
ホジタ「…うむ。大きく2種類に分けられる。
この大陸で暮らしている民は。
ミオの民とノエの民。
古代国家はノエの民が治めていた。
ミオの民は支配される側だった。
カタムラの本によれば」
リネ「では、今のこの国家というのは…」
ホジタ「ミオの民の国家ということになる」
リネ「ノエの民というのは…?」
ホジタ「現代においてノイ民と呼ばれている。
ミオの民の国家が築かれたとき…
彼らは追いやられた。大陸の北東部に…」
リネ「そのお話…
あまりに突飛でついていけませんが…」
ホジタ「君がそう言うのも分かる。
壮大な作り話。
でたらめをでたらめで繋ぎ合わせたような…。
だが、私は面白い説だと思う。
魔術がこの大陸を変えた。痛快な話だ。
学者たちの間では、評判が悪いようだが。
古代文字を解読できていないのに、
なぜそんなことが言えるのか。
根拠となる資料が示されていない。
妄想の産物だと。
マスタスたちがくれた歴史書。
それは、そんな問題作なのだ」
ホジタは両手の指を組み、ニヤリと笑う。
そして、リネに問いかけた。
ホジタ「さて、リネ君」
リネ「はい」
ホジタ「考える材料はそろった。
なぜマスタスたちは求めているのか?
星の秘宝を」
リネ「魔真体を目覚めさせるため…ですか?」
ホジタ「そうだ。目覚めさせて、どうする?」
リネ「大陸のあり方を…根本から変えるため?」
ホジタ「そうだ。
つまり、それはどういうことだ?」
リネ「今のこの国家を倒す…
そういうことですか?」
ホジタ「そうだ。私の考えと一致している」
リネ「ですが、ホジタ所長。
こんなことが本当に…そんなことを…
彼らは企んでいるのでしょうか?」
ホジタ「では、もう1つ。
考える材料を与えよう」
リネ「なんでしょうか?」
ホジタ「大遊説を行っていた3人。
3人には共通点がある。
魔術師であるということ以外に。
大きな共通点があるのだ」
リネ「共通点ですか?」
ホジタは窓の外を見る。
朝、空を覆っていた雲は大分消えていた。
ところどころ青空が見えている。
ホジタは視線を移し、リネの顔を見る。
ホジタ「3人はノイ民なのだ」
リネ「…!」
それから、ホジタは語る。
大遊説を行った3人の魔術師について。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 23
◇ HP 2277/2277
◇ 攻撃
34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 素早さ
28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 魔力 5★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、雅繊維戦衣
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り
◇ エミカ ◇
◇ レベル 19
◇ HP 1452/1452
◇ 攻撃 9★★★★★★★★★
◇ 防御 12★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
33★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 魔樹の杖、深紅の魔道衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海、王火
◇ ミリ ◇
◇ レベル 16
◇ HP 1008/1008
◇ 攻撃 4★★★★
◇ 防御 7★★★★★★★
◇ 素早さ
17★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 魔石の杖、紺碧の魔道衣
◇ 魔術 氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
◇ リネ ◇
◇ レベル 27
◇ HP 1011/1011
◇ 攻撃 7★★★★★★★
◇ 防御
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、創造の杖、聖星清衣
◇ 魔術 雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療薬 25