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アルジ往戦記  作者: roak
82/300

第82話 宝箱

魔籠は4階の高さまで上がる。

アルジたちは降りて歩き出す。

長く続く廊下を。

リネが先頭を歩いた。

迷うことなく進む。

彼女は所長室の場所を覚えていた。

アルジ、エミカ、ミリはついていく。

廊下を右に曲がり、左に曲がり、まっすぐ進む。

いくつもの研究室、資料室の前を通り過ぎる。


アルジ(でかい建物だ…)


廊下の突き当たりに所長室の扉が見える。

黒く、大きな扉が。

1体の彫像の前を通り過ぎる。

廊下の端にその像は立っていた。

玄関広間のカラタコクラよりずっと小さい。

魔術師アミラコネオ。

展示台にはそう書いてある。

アミラコネオは歴史書に登場する大魔術師。

オノレノの地で人々に魔術を教えたとされる。

学ぶ意志があれば、誰にでも、分け隔てなく。

魔術の町オノレノの礎を築いた人物と評される。

彫像の向こうにはホジタの秘書が立っていた。

小さく会釈してアルジたちを先導する。

黒く、大きな扉の前へ。

扉が静かに大きく開く。

手を触れることもなく。

開けたのは所長のホジタ。

部屋の中から魔力で開けた。

アルジたちの接近を感知して。

秘書は扉の近くで立ち止まる。


ホジタ「入りなさい」


部屋の中から響く声。

アルジたちは中へ入る。



◆ 北土の魔術研究所 研究所長室 ◆

ホジタは部屋の奥にいた。

大きな椅子に座っている。

彼の前には大きな机が1台。

部屋の中央には1脚の長椅子。

ホジタと向かい合う形で置かれている。


ホジタ「そこにかけなさい」


アルジたちは並んで座る。


ホジタ「リネ君、よく来てくれた」

リネ「ご無沙汰しておりました」

ホジタ「そう固くなるな。会うのは8年ぶりか」

リネ「はい」

ホジタ「手紙をもらって驚いたぞ」


ワノエから旅立つ前日。

リネはホジタに手紙を送っていた。

たった2行の手紙を。

挨拶で1行。

そして、伝えたい言葉で1行。

伝えたい言葉。

それは、「近いうちにそちらへ行きます」。


リネ「お元気そうで何よりです」

ホジタ「君も変わらないな。力が満ちている。

 魔波が少しも衰えていない」

リネ「ありがとうございます」

ホジタ「あれから、そうだな…長い年月が経った」

リネ「はい」


ホジタは大きな窓から外の景色を眺める。

オノレノの町を見渡すことができる。


ホジタ「当研究所は今年で創立200周年。

 前身の『北土魔術院』から数えて200年だ。

 大きな…本当に大きな節目の年だ」


それから、彼は途切れなく語った。

200周年記念式典を行う予定であること。

在籍する研究者の数が過去最多となったこと。

新たな研究施設が2年後に完成すること。

研究者の1人が画期的な発見をしたこと。

ホジタの魔術書が高く評価されていること。

リネはそんな彼の話にうなずき、返事をする。

心地よく響く声で。

心地よい言葉で。

素晴らしい。

素敵です。

お見事。

そういった言葉を次々と彼女は口にした。

ホジタの話の熱はますます高まっていく。

リネの言葉は、彼にとって燃料のよう。

ホジタは話し続けてリネは返事をする。

新たな薪を炎の中へくべるように。


ホジタ「やはり君と話すのは楽しいよ」

リネ「そうおっしゃっていただけて光栄です」

ホジタ「どうだ?200周年の式典。

 君も出席しないか?」

リネ「ええ、そうですね…」

ホジタ「名の通った魔術師を大勢呼ぶつもりだ。

 魔術師にとって刺激的な催しとなるだろう。

 それに、来賓として国首こくしゅも出席の予定だ」

リネ「国首ですか!」

ホジタ「そうだ。国首だ。驚いただろう。

 ナラタ、隣国のマタカテ、ウテナム。

 今のところ、この3国の国首は来てくれる」

リネ「すごい…」


国首とは各国政府における最高位の役職。

中央政府から派遣され、就任。

その任期は、平均3年。

長い者は10年近く在任。

大きな権限を持ち、地方政治を司る。


ホジタ「考えておいてくれ。

 招待状は送っておこう」

リネ「はい、ありがとうございます」

ホジタ「ところで、リネ君。

 今日は何をしにきたんだ?」

リネ「ええ、実は大事なお話があります」

ホジタ「何かあるようだな。一緒に来たのは?」

リネ「私の弟子です」

ホジタ「そうか、君も弟子を育てる立場か」

リネ「はい。私の優秀な弟子たちです」

ホジタ「ああ、分かるぞ。魔波で分かる。

 まだまだ粗いが、よく鍛えられた魔波だ。

 素晴らしい弟子たちじゃないか!」


机の上に身を乗り出してアルジたちを眺める。

にこやかな顔で。


リネ「おほめいただき、ありがとうございます」

ホジタ「で、話とはなんだ?」

リネ「はい。マスタスについてです」

ホジタ「マスタス。おう、マスタスか。

 どうした?あいつがどうかしたのか?」

リネ「えっと、急に彼に会いたくなって…

 彼が今どこにいるかご存知でしょうか?」


声を小さくして、リネは尋ねた。

そんな彼女を見てホジタはニヤリと笑う。


ホジタ「そうか、君たちは昔、恋仲だったな。

 会いたくなったか。会いたいなら会えばいい」

リネ「彼は今どちらに?」

ホジタ「北の小さな町で暮らしている。

 まだ結婚はしていないと思う。独り身だ」

リネ「そうですか。その町の名前は?」

ホジタ「テノハという」

リネ「テノハですね」

ホジタ「そうだ。そこにあいつは暮らしている。

 君が会いにいけば、とても喜ぶことだろう」

リネ(やった…!)

アルジ(聞き出した…。こんな簡単に…!)

エミカ(リネさん…。

 警戒させずに…自然に…お見事です。

 今でも想いを寄せているかのように…

 ホジタ所長から聞き出した!)

ミリ(リネさん、あの顔…あの声…

 本当に演技なんですか?)


ホジタの顔が急に険しくなる。

目を細めて、じっと見つめる。

アルジ、エミカ、ミリの3人を。


リネ「どうかなさいましたか…?」

ホジタ「いや、気のせいか?

 今、大きく揺らいだ…。

 君たちの魔波が揺らいだ。

 いや、気のせいではない。

 確かに揺らいだ。魔波が大きく不穏な形に」

アルジ(不穏な形…魔術で読まれてるのか?

 オレたちの心を…魔術で読んでいるのか?

 厄介だ。思った以上に厄介な人だ!)

エミカ(…ここは落ち着かないと。

 でも、こういうことを考えてると余計に…)

ミリ(なんか急に怖くなった。

 さっきまで感じのいい人だったのに)


ホジタは指の爪で机を叩く。

コン、コン、コン、コンと。

そして、口を閉ざす。

横一文字に。


リネ「弟子たちにも…

 マスタスのことは話していました」

ホジタ「………」

リネ「彼は非常に優れた魔術師だと」

ホジタ「………」

リネ「会えるのが待ち遠しいのです」

ホジタ「…そうか」

リネ「特に私の隣にいるアルジは…」

アルジ「!」


ホジタは目を見開く。

アルジの顔を見る。

にらみつけるように。


ホジタ「ほぅ…アルジ…」

アルジ「ああ、アルジだ」

ホジタ「君は魔術師ではないな?」

アルジ「ああ」

ホジタ「戦士か」

アルジ「そうだ」

ホジタ「戦士が魔術を…。

 戦士が…魔術を…ねぇ…」

リネ「魔力は十分です。

 あとはそれを形にするだけ」

ホジタ「ふむ。

 確かに魔力はそれなりにあるようだ。

 魔波の質も…悪くはない」

リネ「はい。どう成長するか。

 楽しみな弟子です」

ホジタ「戦士が…魔術を…か…」

アルジ(なんだ?さっきから。

 戦士が魔術をって…)

ホジタ「あの男を思い出すな」

リネ「あの男…どなたでしょうか?」

ホジタ「底知れない探究心と好奇心…。

 戦士でありながら…あの男は…おっと、

 懐かしくなってしまった。独り言だ。

 気にするな」

リネ「…はい」

アルジ(誰だ?マスタスじゃないよな)

リネ「アルジがどんな魔術に目覚めるのか。

 火術か、氷術か。楽しみな時期です」

ホジタ「うむ…。確かにそうだ。

 そのくらいの時期が楽しみだ。

 魔術というのは。

 自分はどんな魔術に目覚めるのか。

 火術か氷術か。はたまた雷術か。

 いやいや、岩術、光術、闇術…。

 自分の魔力が初めて形をなす。

 これはまさにあれだ。

 天から授かった宝箱を開ける。

 そんなようなものだからな」

リネ「天から授かった宝箱…素敵な表現です」


ホジタの表情に柔らかさが戻る。


ホジタ「だが、最も悲しい時期とも言える。

 人によっては」

リネ「ええ」

ホジタ「なんの魔術にも目覚めなかった。

 そういう者を私は大勢見てきた。

 本当に大勢見てきた。

 修練は大切だし、不可欠だ。

 だが、最後は素質が物を言う。

 生まれもった個人の素質が物を言うからな」

リネ「はい。おっしゃるとおりです」

ホジタ「魔術は誰もが使えるものじゃない。

 魔術を使えず、魔術をひどく毛嫌いする。

 そんな者もいる。その気持ちも分かる。

 分かる者だけ分かればいい。

 私たち魔術師側もそんな態度をとってきた。

 それに魔術は感覚的なところが多分にある。

 ゆえに、難しい。

 学ぶだけでなく、教えることも難しい。

 だが、マスタスは…」

リネ「マスタスは…?」


ホジタは黙ってうなずく。


ホジタ「あいつは、よくここに来る」

リネ「この研究所に…ですか?」

ホジタ「ああ。最近はよく顔を出してくれる」

リネ「彼は今、何をしてるんですか?」

ホジタ「魔術学校を開いて、

 生徒たちに教えている」

リネ「魔術学校…。彼が?」

ホジタ「意外だろう。

 あいつがそういうことを始めるなんて」

リネ「はい」

ホジタ「学校はうまくいっているようだ」

リネ「そうだったんですか。

 全然知りませんでした」

ホジタ「魔学校マス。そこを訪ねてみなさい。

 きっと会ってくれるだろう」

リネ「魔学校マス…ですね」

ホジタ「ああ、彼も立派な指導者になった。

 今でも魔術を磨き続けている。

 どうやったら魔術を理解してもらえるか。

 日々、新たな指導法を追求しているようだ」

リネ「素晴らしい」

ホジタ「少し前の話になるが、

 ここでも特別講座を開いたのだ。

 そこであいつは言った。

 魔術は誰にでも理解できると。

 独自の方法で丁寧に指導していた。

 大遊説を通して培ったのかもしれない」

リネ「?大遊説とはなんですか?」

ホジタ「…そうか、君は知らなかったか」

リネ「はい」

ホジタ「マスタスは長いこと

 大陸各地を巡っていたのだ。

 我が研究所の魔術師2人とともに。3人で」

アルジ(大陸各地を…3人で…)

ホジタ「あいつが研究所を去ったあとのことだ。

 2人の同志と旅をしていたのだ。

 星の秘宝を求めて」

アルジ「!!」

リネ「星の秘宝を求めて、2人の同志と…ですね」

ホジタ「ああ。そうだ。

 星の秘宝について私はよく知らなかった。

 そういう宝があるらしい。

 創造の杖、破壊の矛、安定の玉。

 それらを求めて旅をしていたそうだ。

 このことは…君に話していなかったか」

リネ「私は…知りません。

 彼が研究所を去ってからのことは。

 どこで何をしていたのか…

 ほとんど何も知りません。

 彼は…私に何も言わずに去りましたから。

 手紙のやり取りなどもしていません」

ホジタ「…そうだったか」

リネ「大遊説とはなんなのですか?

 なぜ彼は星の秘宝を?」


ホジタは語り始める。

大遊説について。

そして、星の秘宝について。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 23

◇ HP   2277/2277

◇ 攻撃

 34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 素早さ

  28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 魔力  5★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、雅繊維戦衣がせんいせんい

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り


◇ エミカ ◇

◇ レベル 19

◇ HP   1452/1452

◇ 攻撃  9★★★★★★★★★

◇ 防御  12★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  33★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  魔樹の杖、深紅の魔道衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火


◇ ミリ ◇

◇ レベル 16

◇ HP   1008/1008

◇ 攻撃  4★★★★

◇ 防御  7★★★★★★★

◇ 素早さ

  17★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  ★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  魔石の杖、紺碧の魔道衣

◇ 魔術  氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷


◇ リネ ◇

◇ レベル 27

◇ HP   1011/1011

◇ 攻撃   7★★★★★★★

◇ 防御

 18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、創造の杖、聖星清衣せいせいせいい

◇ 魔術  雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療薬 25

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