第80話 灰色
◆ アマシロの国 上空 ◆
1機のカルスが飛んでいる。
エオクシ、アヅミナ、カタムラを乗せて。
間もなく日の出の時刻。
昨日、虚構街での調査を終えた3人。
そのまま都へ帰還するところだった。
カルスは夜通し飛び続けていた。
3人の間に言葉はない。
カタムラ(クソッ!虚構街ではないのか?
起動装置のある場所は…
青珠の準備には3日はかかる…クソッ!)
アヅミナの額に汗が浮かぶ。
強い風を受けてカルスは大きく揺れた。
カタムラ「ひっ!!」
都が見えてくる。
カルスはゆっくりと降下していく。
そして、ひっそりと野原に着陸。
3人はカルスから跳び降りた。
日は上り、空が明るくなっていた。
カタムラ「さあ、報告です!
シノ姫のところに行きましょう」
エオクシ&アヅミナ「………」
◆ 都 シノ姫の間 ◆
エオクシは帰ったことを告げる。
垂れ下がる布の前で。
エオクシ「ただいま戻りました」
シノ姫「入って…」
エオクシが布をまくり上げる。
3人はシノ姫の間へ入っていく。
彼女は部屋の奥で静かに座っていた。
シノ姫「だめだったようですね」
カタムラ「虚構街ではありませんでした」
シノ姫「次がありますから…頑張って…。
今回の旅…ご苦労様でした」
カタムラ「は!」
カタムラは足早に去ろうとする。
シノ姫が呼び止める。
シノ姫「待って」
カタムラ「………」
シノ姫「言いたいことがあります…」
エオクシ&アヅミナ「………」
シノ姫「あなたたち…もっと仲良くしなさい」
カタムラ「!」
エオクシ&アヅミナ「………」
シノ姫「子どもに言うようなことを言って、
申し訳ないけど…。
現地で大分…もめたようですね?」
エオクシ&アヅミナ「………」
シノ姫「分かるのですよ。私には…。
特にカタムラ。あなたの言葉…
許されるものではない」
カタムラ「も…申し訳ない…」
シノ姫「私にではなく2人に謝りなさい」
カタムラ「…!」
エオクシ&アヅミナ「………」
カタムラ「申し訳…ありませんでした…」
シノ姫は静かな口調で言う。
シノ姫「大切な任務なのです…。
力を合わせるのです…。
力を合わせて…初めて成し遂げられる。
そういう任務なのです…。
だから…もうケンカはしないでくれる?」
エオクシ&アヅミナ&カタムラ「は!」
シノ姫「帰ってよい」
シノ姫は目を閉じる。
カタムラ「失礼!」
そそくさとカタムラは去っていった。
エオクシとアヅミナは出ていかない。
シノ姫は目を開ける。
シノ姫「…何?」
エオクシ&アヅミナ「………」
シノ姫「言ってくれる?
…言いたいことがあるんなら」
エオクシ「虚構街で…」
シノ姫「虚構街で」
エオクシ「怪物に会いました」
シノ姫「怪物に…会いました…」
エオクシ「あんなのは見たことがねえ」
シノ姫「見たことがねえ…」
エオクシ「シノ姫様…」
シノ姫「…何?」
エオクシ「オレたちは…
一体何をしてきたんですか?」
シノ姫は目を閉じる。
シノ姫「知る必要はありません」
エオクシ「……!」
シノ姫「少なくとも…今のあなたたちは…」
エオクシ&アヅミナ「………」
シノ姫「エオクシ…特にあなたはね…」
エオクシ「………」
シノ姫は目を開け、アヅミナの方を見る。
シノ姫「アヅミナ」
アヅミナ「はい」
シノ姫「明日…また行ってくれる?
例の研究所へ…。
ナラタの国の…魔術研究所へ…」
アヅミナ「はい」
シノ姫「今度は…ガシマとオンダクと…
そうね…あと3人…。
一隊の者を連れて行ってきてくれる?
誰にするかはあなたに任せるから」
アヅミナ「…は」
シノ姫「返事が小さい」
アヅミナ「は!」
エオクシ「………」
シノ姫「エオクシ…
あなたは都にいてちょうだい」
エオクシ「は!」
シノ姫「こういうとき…
あなたは近くにいてもらいたい」
エオクシ「………」
シノ姫「では、ご苦労。帰りなさい」
エオクシ&アヅミナ「は!」
シノ姫の間を出て大君の城を後にする。
門を抜けたとき、アヅミナが大きくよろめく。
エオクシ「大丈夫か?」
アヅミナ「うん」
エオクシ「カルスで5人も行けんのか?」
アヅミナ「今日、ゆっくり休めば…」
エオクシ「………」
アヅミナ「行けなくて残念だったね」
エオクシ「いいんだ。んなこた!」
アヅミナ「あたしのことは心配しないで」
エオクシ「………」
◆ オノレノ ◆
アルジたちは宿の部屋に集まる。
集まったのはリネが泊まった部屋。
リネ「アルジさん、話したいことって?」
アルジ「マスタスのことだけど…」
リネ「なら、岩壁を…」
アルジ「それはいい。
変なことを言うつもりはないから…」
リネ「………」
アルジ「考えたんだ。オレなりに。
どうしたらいいか」
エミカ「どうするんだ?」
アルジ「話し合おう」
エミカ「それでいいのか?」
アルジ「ああ。まずは話し合いだ」
リネ「ありがとう」
アルジ「それで…
どうにもならなくなったら戦うんだ」
リネ「ええ」
ミリ「………」
アルジ「安定の玉がどこにあるのか。
まず、これを聞き出さなきゃな。
いきなり戦って倒してしまったら…
分からないままだからな」
リネ「そうね」
アルジ「だから、話し合いが大事だ」
エミカ「宝の場所を教えるとは思えない」
アルジ「それは…オレも思う。
でも、まずはやってみないか」
ミリ「そうだね」
アルジ「マスタスと話すのは…
リネに任せていいか?」
リネ「分かりました」
エミカ&ミリ「………」
アルジ「オレが話すと冷静でいられないと思う。
ヤシズ湖でロニを見たときも…
怒りが収まらなかった」
エミカ「そうだったな」
ミリ「マスタスと戦うときはどうするの?
作戦は?4人で力を合わせないと」
アルジ「とりあえず…それはあとで考えようぜ」
ミリ「でも、どこかから急に出てきたら?」
アルジ「そのときも話し合いだ」
エミカ「できるか?」
リネ「私が説得してみせます」
エミカ&ミリ「………」
リネ「私がいれば大丈夫。
いきなり攻めてくることなんてない。
私が真剣に対話を望めば…
彼はきっと話をしてくれるから。大丈夫」
アルジ&エミカ&ミリ「………」
リネ「ね、私に任せて」
アルジ「戦うときの方法は…
とにかくあとで考えよう。
完璧な作戦を考えようとすると
時間はいくらあっても足りない気がするし。
あれこれ考えてばっかりで…
前に進めないことが1番まずいだろ。
まずは研究所の所長から話を聞いてからだ。
作戦は…それからでも遅くはないと思う」
エミカ「そうしようか」
アルジ「ああ。まずは所長の話を聞きに行こう。
せっかくここまで来たんだ。オノレノの町に!」
リネ「そうですね。
新たな情報が聞けるかもしれない。
マスタスの魔術ついて。
それからでもいいかもしれません。
具体的な作戦を考えるのは…」
アルジ「そうだ、それだ!
あいつの闇魔術がどんなものか分かれば、
いい作戦が思いつくかも」
エミカ「ホジタ所長との対話も頑張らないとな」
アルジ「ああ、そういうことだ」
ミリ「頑張ろう!」
支度をしてアルジたちは宿を出る。
そして、北土の魔術研究所へ歩き出した。
空はどんよりとした灰色の雲に覆われていた。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 23
◇ HP 2277/2277
◇ 攻撃
34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 素早さ
28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 魔力 5★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、雅繊維戦衣
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り
◇ エミカ ◇
◇ レベル 19
◇ HP 1452/1452
◇ 攻撃 9★★★★★★★★★
◇ 防御 12★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
33★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 魔樹の杖、深紅の魔道衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海、王火
◇ ミリ ◇
◇ レベル 16
◇ HP 1008/1008
◇ 攻撃 4★★★★
◇ 防御 7★★★★★★★
◇ 素早さ
17★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 魔石の杖、紺碧の魔道衣
◇ 魔術 氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
◇ リネ ◇
◇ レベル 27
◇ HP 1011/1011
◇ 攻撃 7★★★★★★★
◇ 防御
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、創造の杖、聖星清衣
◇ 魔術 雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療薬 25




