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アルジ往戦記  作者: roak
79/300

第79話 屋台

◆ オノレノ ◆

すっかり夜が深まった頃。

アルジたちは町に着いた。

北土の魔術研究所がある町に。

移動と戦闘でみんな疲れていた。

大通りを歩いて宿を探す。

出歩く人々の姿はまばら。

ほとんどの店が閉まっている。

街路にはいくつも細い柱が並ぶ。

それらの上端には球状の発光体。

青く柔らかな光を発している。


アルジ「あの光は…」

エミカ「魔灯火だ」

アルジ「魔灯火」

エミカ「特別な器に魔力を注いで光らせるんだ。

 1度魔力を注げば朝まで光を発してくれる」

アルジ「へえ…。そうなのか」


大通りを抜けたとき。

大きな宿を見つける。

入っていくアルジたち。

奥から受付係が出てくる。

小さな声で話す細身の男だった。


店主「泊まるのかい?」

リネ「ええ」

店主「部屋はどうする?

 ちょうど4部屋空いてますが」

リネ「全部使わせてください」


リネが鍵を受け取り、3人に配る。

アルジたちは別々の部屋で寝ることに。

薄暗い廊下を歩き、部屋の戸を開ける。


リネ「朝、待合室で会いましょう。

 おやすみなさい」

エミカ&ミリ「おやすみなさい」

アルジ「おやすみ」


リネの部屋の戸が閉まる。


エミカ「…疲れた。今日はもう寝よう」

アルジ「そうだな」

ミリ「明日はとうとう研究所だね」


アルジたち3人もそれぞれの部屋へ。

部屋の中はどれもほぼ同じ。

白い壁に黒い床。

簡素で清潔な部屋。

アルジたちは寝支度をして眠る。

真夜中の時間は静かに過ぎていく。


アルジ「……!」


アルジは突然目覚める。

布団をめくり上げ、体を起こす。


アルジ「…腹が減った」


着替えて外に出る。

空は白み始めていた。

大通りを少し歩いて立ち止まる。

魔灯火の光を見上げる。


アルジ(魔灯火か…。

 こんな便利なものがあるんだな)


腹が鳴り、アルジは再び歩き出す。

しかし、開いている店は見つからない。

細い通りに入ったときだった。


アルジ(いい匂いがする!)


匂いのする方へ歩く。

1軒の屋台を見つける。

もくもくと湯気が上がっている。

中をのぞき、店主に声をかける。

店主は、太い声で話す大柄な女。


アルジ「やってるのか?」

店主「客かい」

アルジ「そうだ」

店主「どこでも座りな」

アルジ「ああ」


木製の小さな丸椅子が並んでいる。

丸椅子は全部で5脚。

客は1度に5人まで。

アルジのほかに客はいない。

真ん中の椅子にアルジは座る。


店主「何にするんだい?」

アルジ「これと、これと…これをくれ」


四角い鍋の中、煮込まれている具材。

アルジは食べたいものを指で示した。

肉や野菜が整然と並ぶ。

辛い汁で煮込まれている。


アルジ「…うまい!」


熱々の根菜を食べて思わず声が出る。

店主はニンマリ笑う。


アルジ「こんな時間でもやってるんだな」

店主「ああ、うちは夜から朝までやってる」

アルジ「そんな時間で客が来るのか?」

店主「夜中はたくさん来てくれるよ」

アルジ「そうなのか」

店主「あんたみたいな学生が来るのさ」

アルジ「そうなのか…って、

 オレは学生じゃないぜ」

店主「そうかい。そうだな。

 よく見ると学生じゃないな」

アルジ「剣士だ」

店主「珍しいね。ここは魔術の町だ。

 あんたみたいなのが…

 もしかして、大前隊の人か?」

アルジ「いや」

店主「そうか。そうだな。

 大前隊って感じでもないな」

アルジ「来るのか?大前隊が」

店主「この前来たんだ。物々しい連中が。

 でかい魔生体に乗って、空から」

アルジ「魔生体…空から…」

店主「…どうした?」

アルジ「いや…」


注文したものをすぐに食べてしまう。

追加でさらに3品注文した。

すると、新たな客がやって来る。


店主「いらっしゃい。…って、エミカ!」

アルジ「!!」

エミカ「あ…!」

アルジ「よう」

エミカ「アルジ」

店主「知り合いか?」

アルジ「まあな」

エミカ「はい」


店主はアルジに話して聞かせた。

エミカが研究所にいた頃のこと。

店に来たときのことを。

彼女の相談相手になったことを。


店主「それでエミカったら、

 たまった研究課題を…」

エミカ「その話はやめてください!」

メデナ「おっと!はっは!やめとこうか!」

アルジ「…?」


店主の名前はメデナ。

オノレノで生まれ、オノレノで育った。

彼女はアルジたちに1品ずつおまけした。

空腹だった2人にはありがたかった。


エミカ「やっぱりおいしい」

メデナ「そうだろ。またいつでもおいで」

エミカ「はい」

アルジ「うまかったぜ。ごちそうさま」


店を出て宿に戻るアルジとエミカ。

空は大分明るくなっていた。

大通りを並んで歩く。

大きな荷車を引く老夫とすれ違う

その荷車には、大量の野菜。

とても細い体で軽々と引いて歩く。

不思議そうにアルジはその姿を見る。


エミカ「魔術だ」

アルジ「魔術…」

エミカ「車輪を魔生体のように動かしてるんだ。

 少し魔波を感じなかったか?」

アルジ「ああ、確かに」

エミカ「さっきのメデナさんも魔術を使うんだ」

アルジ「そうなのか」

エミカ「ああ。あの人はいつも魔術を使ってる。

 料理を作るときの火とか、

 食材を運ぶときの冷気とか」

アルジ「火も冷気も使うのか」

エミカ「どっちも使える人なんだ」

アルジ「そんな人もいるのか」

エミカ「たまにいる。オノレノは魔術の町だ。

 町の人はいろんな場面で魔術を使ってる。

 住民の半分くらいは魔術を使える。

 そんなふうにも言われてる」

アルジ「半分もか」

エミカ「北土の魔術研究所があるくらいだから」

アルジ「そっか、そうだな」

エミカ「この町にはいろんな魔術師がいる」

アルジ「闇の魔術師も…か?」

エミカ「いる」

アルジ「マスタスもいたりしてな」

エミカ「どうかな」

アルジ「今日も説得しようぜ」

エミカ「うん。改めてリネさんを説得しよう。

 必ず勝てる作戦を立てなきゃいけない。

 リネさんも分かってくれるはず」

アルジ「そうだな」


アルジは菓子屋を見つける。

できたての団子が売られていた。

いくつか買う。

リネとミリへ持っていくことにした。

やがて宿が見えてくる。

リネとミリが立っていた。


リネ&ミリ「おはよう」

アルジ&エミカ「おはよう」


和やかな表情のリネとミリ。

昨日の疲れはとれた様子。


ミリ「リネさんに町を案内してもらったんだ」

エミカ「よかったな」

ミリ「こんないい町にエミカも住んでたんだね」

エミカ「研究所に入れば住めるから」

ミリ「頑張っちゃおうかな」

アルジ「今日、所長に魔力を見せてやれよ」

ミリ「そうだね」

アルジ「凍死させない程度にな」

ミリ「死んだらリネさんにお願いする」

リネ「ちょっと、ミリ」

アルジ「…はは」

リネ「ふふ…」

ミリ「ははは」

エミカ「………」


いつものミリに戻っていた。

アルジもエミカも安心する。


ミリ「あれ?その袋…何持ってるの?アルジ」

アルジ「ああ、みやげだ」

ミリ「みやげ」

アルジ「腹減ってないか」

ミリ「まあね」

アルジ「ほら」


アルジから袋を受け取り、中をのぞくミリ。


ミリ「…団子だ!ありがとう」

アルジ「リネも食べてくれ」

リネ「モカナ屋の団子じゃない。ありがとう。

 できたてでおいしそう。みんなで食べよう」

アルジ「オレはいいぜ。腹減ってないし」

エミカ「私も」

リネ「食べてきたの?」

エミカ「はい、メデナさんのお店で。

 私が行ったらアルジが先に来てて…」

リネ「なんだ、そうだったの」

アルジ「うまかったぜ」

リネ「そうでしょ。

 メデナさん元気だった?」

エミカ「はい。とても」

リネ「よかった。久しぶりに会ってみたいな」

ミリ「私も行ってみたいです。

 連れてってよ。エミカ」

エミカ「残念だけど今は閉まってる。

 夜しか開いてないんだ」

ミリ「夜しか…不思議な店だね」

エミカ「普通の屋台だよ」

ミリ「屋台なんだ。行きたい」

エミカ「今度連れてくよ」

ミリ「お腹空かせていく。ごちそうして」

エミカ「たくさんおまけしてもらおう」

ミリ「さすがエミカ!」

リネ「ふふ…」


目を輝かすミリ。

ほほえむリネ。


アルジ(エミカもリネも…

 この町に住んでたんだもんな。

 店とか、いろいろ知ってるよな。

 和んだところで…始めるか。

 オレが今考えてることを…

 今ここで…話しておかなきゃ)


アルジが声を上げる。


アルジ「なあ、みんな」

エミカ&リネ&ミリ「………」

アルジ「昨日、考えてみたんだ。

 オレたちは、どうすればいいのか」

エミカ&リネ&ミリ「………」

アルジ「マスタスと…戦うのか。

 話をするのか。どうしたらいいのか。

 オレなりに考えてみたんだ。

 それで、話したいことがある。

 少し時間をもらってもいいか?」

エミカ&リネ&ミリ「………」


エミカ、リネ、ミリは静かにうなずいた。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 23

◇ HP   2277/2277

◇ 攻撃

 34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

  26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 素早さ

 28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 魔力  5★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、雅繊維戦衣がせんいせんい

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り


◇ エミカ ◇

◇ レベル 19

◇ HP   1452/1452

◇ 攻撃  9★★★★★★★★★

◇ 防御  12★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  33★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  ★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  魔樹の杖、深紅の魔道衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火


◇ ミリ ◇

◇ レベル 16

◇ HP   1008/1008

◇ 攻撃  4★★★★

◇ 防御  7★★★★★★★

◇ 素早さ

  17★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  魔石の杖、紺碧の魔道衣

◇ 魔術  氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷


◇ リネ ◇

◇ レベル 27

◇ HP   1011/1011

◇ 攻撃   7★★★★★★★

◇ 防御

 18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、創造の杖、聖星清衣せいせいせいい

◇ 魔術  雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療薬 25

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