第72話 怪奇
◆ ヤシズ湖 ◆
アルジたちは湖の方へ。
トウオウ道から外れて進む。
美しい湖が遠くに見えている。
リネ「観光客がたくさん訪れる場所です。
今日もいてもおかしくないのですが…」
アルジ「あれか…」
草むらにバタバタと倒れていた。
ヤシズ湖を訪れた人々が。
その体はどれもひどく損傷している。
死んでいるのは明らか。
湖の上には、1人の女の姿。
魔術師が水面に立っている。
足元からいくつも波紋が生じる。
アルジ「あれも魔術か!」
ミリ「水の上に立つ魔術…?」
エミカ「いや…」
リネ「…下です。水面の下に何かいるようです」
ミシダム「許さん…!あいつは…許さんぞ!!」
アルジたちはさらに湖の方へ。
ほとりまで進むと見えてくる。
魔術師の顔が、はっきりと。
アルジは腹の底が熱くなる。
その顔には見覚えがあった。
3年前の記憶。
ナキ村に現れた魔術師たち。
その中の1人。
女の魔術師と同一人物。
確信する。
アルジ「あいつだ…!!」
アルジたちをにらみつける女魔術師。
黒の魔術衣。
胸には蝶のような模様。
その模様は、八多等守護衣の印。
リネ「間違いありません…。
あの魔術衣は…八多等守護衣。
北土の魔術研究所で…
上級魔術師として認められた者…
ごく一握りの魔術師だけが…
身にまとえる特別な魔術衣…
八多等守護衣です!」
リネは声を震わせる。
平静を保てていない様子。
リネ(私が属していた北土の魔術研究所…
そこの魔術師が…こんなことをして…
一体何を…何を企んでいるの…?)
女魔術師「………」
彼女は杖を振り回した。
長い杖をぶんぶんと勢いよく振り回す。
杖の両端には大きな牙の飾り。
女魔術師「愚か者どもめ…」
ミシダム「貴様!!関所を破っておいて!!!
なんだその言い草は!!許さんぞ!!」
女魔術師「貴様は関所の…。
なんだ…生きていたのか…。
弱者は黙っていろ…」
魔波を周囲に放つ。
その勢いは圧倒的。
ミシダム(こいつ…!!絶対に許さん!!
オレの仲間を!!だが…!!この魔力…!!
倒せるのか!!?オレに!!
このオレに倒せるのか!!…いや!
アルジたちがいる!!アルジたちがいれば…!
いや!!アルジたちでも…!
この魔力に対抗できるのか!!?)
ぐんぐん勢いを増していく敵の魔波。
ミシダムは震えた。
怒りと恐れの感情で。
リネ(恐ろしく激しい魔波…。
さすがは上級魔術師だけある…。
エミカやミリの魔術では対抗できない…。
私でも1人じゃ無理…!合わせなければ…!
力を合わせなければ…!立ち向かえない…!)
ミシダムは槍を振り上げる。
ミシダム「うおおおおお!!!」
薄笑いを浮かべる女魔術師。
エミカ、リネ、ミリの3人を見る。
女魔術師(あの3人…なるほど…そうか…。
そこそこできる…。倒されるわけよ…。
道理で私の子たちが倒されるわけよ…。
ここで…潰しておくか…。だが…)
リネが問いかける。
リネ「あなたは…何者なんですか…!?」
女魔術師「………」
リネ「私たちは旅しています!
北土の魔術研究所を目指しています!
あなたのその服は…北土の魔術研究所の…」
女魔術師「私の名はロニ…。獣魔術師ロニ…」
リネ「獣魔術師…」
ロニ「ヤマエノモグラモンも…ベキザルも…
ノイオオカミも…私が生んだ大切な子たち…。
それらを倒してここまでやってくるとは…。
どうやら貴様らは…邪魔になるようだ…」
リネ「邪魔…ですって?」
ロニ「私たちの計画の邪魔になるようだ…」
リネ「…計画?なんの話をしてるの?」
ロニ「計画とは…変える計画のことだ。
この大陸を…変えていく計画のことだ。
この大陸のあり方を…根本的に変える。
その大事な計画のことだ…。
邪魔する者は潰す…。1人残らず潰す…。
貴様らも…ここで私が直々に潰してやる」
リネ(変える…?この大陸を根本的に…?
分からない…。さっぱり分からない!
この人が一体…何をしようとしてるのか…!)
アルジが前へ踏み出す。
剣を握りしめ、大声を上げる。
アルジ「おいっ!!!てめえ!!!!!!」
ロニ「?」
アルジ「オレはナキ村の剣士!!アルジ!!!!
どこへやった!?安定の玉を!返しやがれ!」
ロニ「くくく…」
アルジ「何がおかしい!盗人が!」
ロニ「…試してみるか…」
アルジ「!!!」
次の瞬間、解き放たれる強い魔波。
リネ(来る…!)
エミカ(なんて魔波だ!)
ロニ「出でよ…!」
アルジ「!!!!!」
ロニは杖を高く振り上げる。
水面の下から巨大な魔獣が現れた。
ロニはその魔獣の頭の上。
彼女はずっと立っていた。
水面ではなく、魔獣の頭の上に。
魔獣の姿を水面の下に潜ませて。
彼女は魔力を注ぎ、呼び覚ます。
その魔獣を。
立ち上がる魔獣。
ロニはその名を明かす。
ロニ「行くぞ…!スイオウジャ…!!」
その魔獣の大きさに息を飲むアルジたち。
その高さは、まるで小さな塔。
ロニ「ふははっ!!どうだ!!
倒せるものなら倒してみろ!!」
スイオウジャ。
その姿は怪奇。
頭部は蛇、胴体は魚。
甲殻類のような脚がいくつも生えている。
それぞれの脚の先端には鋭い爪。
ミリ「何あれ…気持ち悪い…」
エミカ「目障りだ。さっさと倒そう」
リネ「みんな、注意して…。
この魔波…今までの魔獣とは格が違う」
ロニ「………」
ロニは自信に満ちた顔。
ミリの体を冷気が包む。
ミリ「リネさん。格が違うのは分かります」
リネ「!!」
ミリ「でも、私の魔力だって…」
ロニ「……ほぅ」
ミリ「耐えられる…?」
王氷を出す。
使うたび磨きがかかっていく。
速さも、強さも。
湖の水が凍りつく。
ロニとスイオウジャを強力な冷気が飲み込んだ。
◇ スイオウジャに2082のダメージ。
◇ ロニに1053のダメージ。
ロニ(!!やるじゃないか…!
これほどの氷術を使うとは…!)
ミリ「…!!?」
アルジ(あの女…!
ミリの魔術を食らっても立ってやがる…!)
ミリ(完璧に当たったのに…!)
ロニ(ここで殺してマスタスさんに引き渡すか?
変態魔術で生き返らせれば…
まずまずの戦力になってくれるだろう)
動き出すスイオウジャ。
アルジたちに襲いかかる。
湖底を蹴って、勢いよく飛び出す。
いくつも爪を激しく振り回しながら。
ミシダム「みんな避けろ!!!!」
素早く後退。
だが、間に合わない。
スイオウジャの長い脚からは逃れられない。
いくつもの爪がアルジたちを傷つけた。
◇ アルジに171のダメージ。(HP933→762)
◇ エミカに377のダメージ。(HP630→253)
◇ リネに402のダメージ。(HP921→519)
◇ ミリに411のダメージ。(HP522→111)
◇ ミシダムに239のダメージ。
(HP1002→763)
ミリ「いったー…!」
アルジ「くっ…そ!」
ミシダムは痛みをこらえ、体勢を立て直す。
槍を構え、スイオウジャに向かっていく。
ロニはそんな彼の姿を見て、不敵に笑う。
ミシダム「これがオレの力だ!!突撃!!!」
全力で走り、槍を突き出す。
スイオウジャの胴体を深く刺す。
スイオウジャ「ゴーオオォォ!!」
ミシダム「どうだ!!?」
ロニ「話にならん」
◇ スイオウジャに1276のダメージ。
スイオウジャの反撃。
2本の鋭い爪がミシダムを襲う。
ミシダム「うああ!!!」
右腕と左脚を深々と切られ、その場に倒れ込む。
◇ ミシダムに684のダメージ。
(HP763→79)
エミカは杖に魔力を込めて王火を撃ち込む。
スイオウジャではなく、ロニに向かって。
ロニ「!!!」
ロニは避けきれない。
巨大な炎がぶつかる。
彼女の体は激しく燃えた。
エミカ「…やった!!」
だが、ロニは倒れない。
顔をゆがませ立ち続ける。
スイオウジャの頭の上で。
大きくよろめき、うめく。
ロニ「ふぅうう…!」
◇ ロニに1483のダメージ。
エミカ(そんな…!!直撃したのに…!?)
炎は消える。
ロニは耐え抜いた。
エミカの王火を。
リネ(なんて耐久力…!)
今度はミリが狙う。
ロニの体に王氷を撃ち込む。
ロニは一瞬考えて、決心する。
スイオウジャの頭から跳んだ。
宙に投げ出されるロニの体。
それを横から捕まえる1羽の鳥。
滑空してきたノイワシだった。
王氷は当たらない。
巨大な冷気の塊は空中で消えた。
ロニは飛んでいく。
かぎ爪に引っかけられた状態で。
ロニ「面白い…!貴様ら…面白いぞ…!!
くくく…くくくく…
ははは…はっはっはぁああ…!!」
大声で笑いながら遠くの空へ消えた。
残されたのは、スイオウジャ。
スイオウジャ「フゴォオ!!」
リネ「こっちはまだまだ元気みたい…」
スイオウジャ「グォオア!!!」
エミカ(ミリの王氷も…ミシダムさんの槍も…
ほとんど効いてない…。倒せるのか…?
王火も…王氷も…もうそんなに撃てない…。
リネさんの王岩と王雷も…
どれほど効くか分からない…。
うかつに近づけば、爪で攻撃される…!
私たちは…この魔獣を本当に倒せるのか!?)
スイオウジャは、湖から出てこようとする。
いくつもの脚を動かして。
町で暴れまわったら、一大事。
誰の目にも明らか。
アルジ「…オレがやる」
エミカ「アルジ…?」
アルジ「…下がっててくれ」
アルジは1人、前へ出る。
腹の底で渦巻く激情。
その激情に勇気の剣が呼応する。
エミカ「アルジ…」
アルジ「計画…?大陸を変える…?
なんだそれは…?そんなの知らねえ…!」
剣を大きく振って空を斬る。
もう一回。
今度は横に大きく振る。
もうろうとした意識の中、ミシダムは思う。
ミシダム(アルジ…なのか?…
あいつは…本当にアルジ…なのか?
急に…!さらに…!強くなった気がする…!)
勇気の剣は光を放つ。
鮮やかな赤い光を。
ミリ「アルジ…?」
リネ「アルジさん…」
エミカ「もう止められない…」
リネ&ミリ「……?」
エミカ「アルジがああなったら…
もう誰も止められないよ…」
アルジはたった1人で前へ出る。
スイオウジャを見上げる。
蛇のような頭部。
丸い目が2つ。
ぐるりと動いてアルジを見下ろす。
アルジ「オレは倒す。ロニも…!マスタスも…!
安定の玉を取り返すため、負けない!
オレは誰にも負けない!」
スイオウジャ「ゴォオオ!!!」
アルジ「スイオウジャ!!
まずは手始めに…お前を斬る!」
スイオウジャ「ゴォオオアア!!!」
アルジは高く、力強く振り上げた。。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 18
◇ HP 3220/3220
◇ 攻撃
39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、雅繊維戦衣
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り
◇ エミカ ◇
◇ レベル 15
◇ HP 253/910
◇ 攻撃 9★★★★★★★★★
◇ 防御 12★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
25★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 装備 魔樹の杖、深紅の魔道衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海、王火
◇ ミリ ◇
◇ レベル 12
◇ HP 111/703
◇ 攻撃 4★★★★
◇ 防御 7★★★★★★★
◇ 素早さ 12★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 装備 魔石の杖、紺碧の魔道衣
◇ 魔術 氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
◇ リネ ◇
◇ レベル 26
◇ HP 519/921
◇ 攻撃 7★★★★★★★
◇ 防御
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 13★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、創造の杖、聖星清衣
◇ 魔術 雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ ミシダム ◇
◇ レベル 27
◇ HP 79/1002
◇ 攻撃
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 2★★
◇ 装備 鋼の長槍、鋼の防護服
◇ 技 突撃、猛撃、銀葉の舞、吹雪の舞
◇ 魔術 氷弾
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療薬 25
◇◇ 敵ステータス ◇◇
◇ スイオウジャ ◇
◇ レベル 31
◇ HP 22146
◇ 攻撃
22★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★
◇ 防御
23★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★
◇ 素早さ
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔術 雷弾、雷砲、王雷
氷弾、氷砲、王氷
◇ ロニ ◇
◇ レベル 35
◇ HP 3555
◇ 攻撃 12★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
24★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 素早さ
38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 超獣長重杖、八多等守護衣
◇ 魔術 操獣、創獣、人体獣化術




