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アルジ往戦記  作者: roak
68/300

第68話 要求

関所の役人は気づく。

近くで息絶えている仲間たちに。

そして、涙を流して彼らの名を呼んだ。


役人「うおー!タイキ!ノドム!レイジ!

 ブウマ!!」


誰からも反応がない。


役人「死んだのか…」

アルジ「オレたちが来たときにはもう…」

役人「…うう…」

エミカ「魔術で手当てできたのは…

 あなただけだったんだ」

役人「…ぐ…!」


ふらりふらりと歩く役人。

アルジたちの方へ近づく。


役人「くそうっ!!」


天を仰ぎ、声を上げる。

アルジたちと向き合う。

その男の目には強い力。


役人「…ふー…ふー…」

アルジ(この迫力…。警備隊員とは違う…。

 立ってる姿にも隙がない。すごみがある。

 どちらかといえば、大前隊の連中に近い。

 この人…かなり強いんじゃないのか…?)

役人「おい、お前。名はなんという?」

アルジ「………」


アルジは倒れかけたリネの体を支えている。

彼女は目を閉じて気を失ったまま。

アルジはそっと寝かせて立ち上がる。


アルジ「オレはナキ村の剣士アルジだ。

 あんたは誰だ?」

役人「ミシダム。この関所の役人だ。

 お前たちは?」

エミカ「ワノエ町の魔術師、エミカです」

ミリ「私も。魔術師です。ミリです」

ミシダム「アルジ、エミカ、ミリ」

アルジ「あんたを治した魔術師はリネだ」

ミシダム「リネ。そうか。失いかけたこの命…。

 救ってくださったことに深く感謝しよう」


ミシダムは落ちていた自分の槍を拾い上げる。

その刃を見つめて言う。


ミシダム「…腕に覚えはある。

 数頭の猛獣などわけなく倒す自信はあった。

 だが、あの獣は…」

アルジ「あの獣は…?」

エミカ&ミリ「………」

ミシダム「強過ぎる。力も速さも普通じゃない。

 どうにも納得がいかない。強過ぎるんだ!

 あんな動きをする獣は見たことがない…」

アルジ「………」


リネが目を開け、起きようとする。


エミカ「リネさん…!」

ミリ「リネさん!!」


エミカとミリが彼女の体を支える。

よろめきながらリネは立ち上がった。


リネ「…気を失っていたようですね」

アルジ「無理するな」

リネ「ええ…」


リネはミシダムに声をかける。


リネ「お元気になったようで…」

ミシダム「魔術師のお嬢さん、ありがとう。

 深く感謝する。オレは関所の役人ミシダム」

リネ「私はクユの国、ワノエ町の魔術師、

 リネと申します。

 私は自分の力でできることをしたまで」

ミシダム「素晴らしいお力だ…。

 このとおりすっかりよくなった」

リネ「よかったです」


リネはミシダムの回復ぶりに安心する。

それから、伝えた。


リネ「ほかの方々は救えませんでした」

ミシダム「………」

リネ「私の力にも限界があります」

ミシダム「無念だが…それは仕方ない…」

リネ「強引にここを通ろうとした魔術師…

 その人物はおそらく…獣使いの魔術師…」

エミカ「………」

リネ「獣に魔力を与えたり、

 化け物を生み出したり…

 おそらく…そういった魔術を使う魔術師…」

ミシダム「獣に魔力を与える…?

 化け物を生み出す…?聞いたことがない」

リネ「私たちの推測ですが…。

 そんな魔術があること自体…

 信じがたいのですが…。

 ねえ、エミカ」

エミカ「…はい」

ミシダム「そんな魔術師が本当にいるのか?」

エミカ「ミシダムさんの話を聞いて思いました。

 どこからともなく猛獣の群れ…。女魔術師…。

 魔術によって魔獣が生み出されたのかと…」

ミシダム「信じがたい話だ…」

アルジ「化け物が出たのはここだけじゃない。

 トウオウ道に出たヤマエノモグラモンも…

 ガヒノの森にいたベキザルも…

 そいつの仕業じゃないかと思う」

ミシダム「ヤマエノモグラモン…ベキザル…」

リネ「そういう化け物がいたのです」

アルジ「ヤマエノモグラモンは…

 大前隊が倒しにきた。都からはるばる来て。

 でも、オレたちが先に倒したんだ。

 だから、そのまま帰ってった」

ミシダム「…は?大前隊が…!?

 大前隊が相手にする化け物を倒したのか!?

 お前たちは…一体何者なんだ?」

アルジ「オレたちは星の秘宝を求めて旅してる」

ミシダム「星の秘宝…」

アルジ「安定の玉っていうナキ村の大事な宝だ。

 それが奪われたせいで村が滅ぶかもしれない。

 だから、取り返そうとしてるんだ」

リネ「北土の魔術研究所。

 そこに手がかりがあるかもしれない。

 なので、私たちはここまで旅してきました」

ミシダム「そうか…。

 あの研究所に行こうってのか」

アルジ「そうだ」

ミシダム「事情は分かった。

 ここを通るのは問題ない。

 非常事態だからな。お前たちには恩もある。

 通行料はいらない。特別に免除してやる!」

アルジ「いいのか…!」

ミシダム「その代わりにと言っちゃあなんだが…」

アルジ「なんだ?」

ミシダム「オレの要求を聞いてもらおうか」


ミシダムは持っていた槍を構える。

鋭い刃が月明かりを反射する。


アルジ「なんだ…?やるのか?」

ミシダム「バカ野郎。そうじゃねえ。

 オレも戦わせろ」

アルジ「え…?」

ミシダム「女の魔術師は行っちまった。

 関所を突破して。ナラタの国の方へ。

 今はもうどこにいるのか分からねえ」

リネ(…怪しい魔波は感じない。

 とりあえず近くにはいなそう。

 女の魔術師も…役人たちを襲った猛獣も…)

ミシダム「門の向こうには橋がかかっている。

 渡ったところにまだいるかもしれねえ。

 もしも向こうで遭遇したら…

 どうするつもりだ?」

アルジ「戦う」

エミカ(アルジ…戦うのか。

 敵がどれだけ強いか分からないのに。

 それなら…私も…!)

ミリ(…やっぱりね。戦うよね!)

ミシダム「それなら話が早い。

 オレも連れていけ。オレも戦いたい。

 あの魔術師と…あの猛獣と…戦いたい。

 殺された仲間たちの敵討ちだ!!」

アルジ「ミシダムさん、

 あんたもかなり強そうだ」

ミシダム「分かるか?お前もなかなかだな。

 見れば分かる!」

アルジ「そうか」

ミシダム「さっき大前隊が来たと言っただろ」

アルジ「ああ…」

ミシダム「実はオレも大前隊だ」

アルジ「何…!?」

ミシダム「…といっても、元大前隊員。

 今は隊から脱けている。

 それにオレが所属していたのは、

 一隊ではなく二隊」

アルジ「そうなのか」

ミシダム「だが、腕は確かだ。安心しろ」

アルジ「…ああ」

エミカ(そんな人を打ち負かした猛獣…。

 この先…気をつけて行かなきゃ…)


アルジはエミカ、リネ、ミリの顔を見る。

彼女たちは静かにうなずく。

アルジはミシダムに向かって言う。


アルジ「いいぜ。一緒に行こう。

 あの橋の向こうへ」

ミシダム「よろしく頼む」


◇ ミシダムが仲間になった。


ミシダム「よし、そうと決まれば早く寝よう。

 お前たちもひどく疲れている様子だ。

 近くの手頃な宿を案内してやる」

アルジ「それは助かる。ありがとう」

リネ「1ついいですか?」

ミシダム「どうした?」

リネ「心配なことがあります」

アルジ「なんだ?」

リネ「女の魔術師は近くにいるかもしれない。

 川の向こうで待ち構えている…

 あるいは、夜襲を企んでいる…。

 そんな嫌な予感がします。

 特に根拠はないのだけど…」

エミカ(ヤマエノモグラモンもベキザルも…

 私たちの行く手を阻むかのように現れた。

 これが…ただの偶然じゃないとしたら…

 リネさんの予感は当たっているかも…)

アルジ「………」

ミシダム「念のため外を見張ろう」

アルジ「交替で見張るか」

ミシダム「それがいい。アルジ、お前とオレで」

アルジ「分かった」


ミシダムはアルジたちを宿へ案内した。

それは、関所の近くの小さな宿。

出入口の戸は、鍵がかけられていた。

ミシダムが戸を何度も叩き、声を上げる。


ミシダム「おい!頼む!出てきてくれ!

 泊めてくれ!客だ!」


男が戸を小さく開けて顔を出す。

彼の後ろには女が立っていた。

2人はその宿の若旦那と若女将。


若旦那「騒ぎは収まったんですか…?」

ミシダム「収まった。安心しろ」

若旦那「そりゃよかった…」

ミシダム「部屋は空いてるか?」

若旦那「はあ、大部屋が1部屋ございます」

ミシダム「4人だ。

 この4人を泊めてくれないか」

若旦那「はあ」

ミシダム「礼は弾む。泊めてやってくれ」

若旦那「いや、そんな…いいですよ」


ミシダムはアルジたちの方を向く。


ミシダム「ここで泊まるといい。

 オレは詰所にいる。

 アルジ、食事を済ませたら出てきてくれ。

 早速だが、見張りを始めよう」

アルジ「分かった」


アルジたちは宿の部屋に入る。

出された食事はありあわせのもの。

だが、味も量も空腹を満たすには十分。

食事中、交わす言葉はほとんどない。

エミカもリネもミリも。

ガヒノからの移動ですっかり疲れていた。

彼女たちは早々と寝支度をして布団に潜る。


エミカ「アルジ、気をつけて」

アルジ「任せとけ」

リネ「ありがとう」

アルジ「いいぜ」

ミリ「見張り頑張ってね」

アルジ「おう。よく休めよ」


部屋の明かりを消す。

彼女たちは眠りに落ちていった。

アルジは1人、宿の外へ。

槍を持ったミシダムが立っていた。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 15

◇ HP   933/933

◇ 攻撃

  25★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★

◇ 防御

  22★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★

◇ 素早さ 16★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  4★★★★

◇ 装備  勇気の剣、雅繊維戦衣がせんいせんい

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り


◇ エミカ ◇

◇ レベル 13

◇ HP   630/630

◇ 攻撃  9★★★★★★★★★

◇ 防御  12★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 12★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  22★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★

◇ 装備  魔樹の杖、深紅の魔道衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火


◇ ミリ ◇

◇ レベル 10

◇ HP   522/522

◇ 攻撃  4★★★★

◇ 防御  7★★★★★★★

◇ 素早さ 10★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  24★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★

◇ 装備  魔石の杖、紺碧の魔道衣

◇ 魔術  氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷


◇ リネ ◇

◇ レベル 26

◇ HP   921/921

◇ 攻撃   7★★★★★★★

◇ 防御

  18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 13★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

       ★★★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、創造の杖、聖星清衣せいせいせいい

◇ 魔術  雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ ミシダム ◇

◇ レベル 27

◇ HP   1002/1002

◇ 攻撃

 19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

  18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  2★★

◇ 装備  鋼の長槍、鋼の防護服

◇ 技   突撃、猛撃、銀葉の舞、吹雪の舞

◇ 魔術  氷弾


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療薬 25


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