表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルジ往戦記  作者: roak
66/300

第66話 交替

1人の男がアルジたちの席にやってくる。

彼はこの茶屋の創業者、マギトシ。


マギトシ「ユムヤ茶房へようこそ」

アルジ&エミカ&リネ&ミリ「………」


突然の挨拶。

少し戸惑うアルジたち。


マギトシ「お菓子をお気に召してくれたようで」

リネ「はい。とてもおいしくいただいています」

マギトシ「光栄です」


茶屋を始めてかれこれ10年。

妻と二人三脚で営んできた。


エミカ「お菓子のおかわりいいですか?」

マギトシ「かしこまりました。

 ご注文ありがとうございます。

 この店1番人気のお菓子でございます」

ミリ「どうやって作ってるんですか?」

マギトシ「ええ,」


にっこり笑って見せるマギトシ。


マギトシ「そのお問い合わせに

 完全にお答えするとなると、

 少し長くなってしまいますが…」

リネ「簡潔にしてもらえませんか?」

マギトシ「できなくもない」

エミカ「では、簡潔に教えてください」

マギトシ「分かりました」


マギトシは話し始める。

その菓子が誕生した経緯について。


マギトシ「私はこのコナスナ村に生まれました」

アルジ(生まれたとこから話すんかい…)

マギトシ「家は茶農家。

 よく手伝いをしたものです。

 小さな頃から茶には親しみがありました」

リネ「でも、継がなかったのですね」

マギトシ「茶屋を開いてみたい。

 そう思っていたので」

エミカ「お菓子を作ろうと思ったのは?」

マギトシ「特別なものが欲しかったのです」

ミリ「特別なものって?」

マギトシ「この大茶屋通りで茶屋を出す。

 普通の茶屋ではだめです。

 すぐに埋れて潰れます。

 ほかとは違う何か。

 それを探し求めていました」

リネ「それがこのお菓子?」

マギトシ「そのとおり」

ミリ「ほかのお店じゃ食べられないってわけね」

マギトシ「ええ。

 このお菓子こそ、うちがよそと違うもの」

エミカ「作り始めたのはいつですか?」

マギトシ「学校を卒業して

 私はナラタの国へ行きました。

 お茶についてもっと専門的に学びたい。

 そう思ったのです。

 親は私を応援してくれました。

 高い学費を出してくれました。

 おかげで名門校で学べました。

 クユの国にはありません。

 あのような学校は、残念ながら」

リネ「よかったですね」

マギトシ「ええ。

 それに、知識だけではありません。

 貴重な実習の機会もいただきました」

ミリ「何をするんですか?」

マギトシ「実際に働いてみるのです。

 茶農家や茶屋で。限られた期間ですが。

 そこで私は辛さも楽しさも学びました。

 中でも印象的だったのは都での実習です」

アルジ(実習で都に…)

マギトシ「約半年間、都の茶屋で働きました。

 そこでお菓子作りも一緒に学んだのです。

 私はそこで出会いました。

 このお菓子の原型に」

リネ「原型…ですか?」

マギトシ「はい。アマシロの夕焼け。

 この名に聞き覚えは?」

リネ「ないですね」

エミカ&ミリ「………」

マギトシ「お菓子の名です。

 お世話になった茶屋で出されていた、

 赤くて、半透明で、ちょうどこのような…」

アルジ「真似したってことか」

マギトシ「ま…真似じゃない!」

アルジ&エミカ&リネ&ミリ「………」


突然の大声に静まり返る茶屋。


ほかの客たち「………」

マギトシ「失礼しました…。

 アマシロの夕焼け。作り方は門外不出。

 私はその見た目、味わいに感動しました。

 なんとかして再現してみたい。

 そう思いました」

リネ「再現に成功したのですね」

マギトシ「それが…」

エミカ「うまく行かなかったんですか?」

マギトシ「ええ…失敗の連続です。

 ですが…最後はうまく行きました」

アルジ&エミカ&リネ&ミリ「………」

マギトシ「支えてくれたのは妻でした。

 うまく行かず落ち込んでいた私を。

 私たちは実習先で知り合いました。

 当時、妻は従業員でした。

 お世話になった茶屋の。

 そこで菓子作りを任されていました。

 今はこの店で作ってくれています。

 『コナスナの夕暮れ』を」

アルジ&エミカ&リネ&ミリ「………」


そのとき、マギトシの妻が店の奥から現れる。

エミカに追加の菓子を出す。


マギトシの妻「同じものではありません」

エミカ「え…?」

マギトシの妻「都にあるアマシロの夕焼け。

 それとは違うのです。

 私が任されていたのは一部の工程。

 全部じゃない。…似せようとはしてます。

 見た目も味わいもなるべく近づけるように。

 しかし…これが…なかなか…。

 あっちはあっちで、素敵なお菓子です」

エミカ「そうなんですか」

マギトシの妻「はい。都へ行かれた際はぜひ」

エミカ「はい。食べてみたいです。

 お話、ありがとうございました」


アルジたちは茶屋を出た。

村の外れで立ち止まる。

目の前にはトウオウ道。

クユの国の国境に向かって伸びている。

日は西へ傾き始めていた。


リネ「国境まで一気に行きましょう」

エミカ「ヤッタカ村とトドナ町は寄らずに…

 ということですね?」

リネ「今のあなたたちならできるでしょう?」

エミカ「やってみます」

ミリ「まだ行けます」

リネ「暗くなる前に国境まで行きたいので」


リネはラアムとナアムを出す。

それから、提案した。


リネ「ねえ、エミカ。交替しない?」

エミカ「交替…?」

リネ「私とミリがラアムに乗る」

エミカ「ということは、私がアルジと…」

リネ「そう」

エミカ「それって…」

リネ「どうしたの?」

エミカ「大変じゃないですか!」

アルジ「……!」

リネ「特訓だと思って」

アルジ(…オレはお荷物か…?

 でも、まあ、実際そうだよな…。

 魔生体を動かす魔力なんてないし)

エミカ「うーん…」

ミリ「エミカ、特訓しなきゃ。特訓だよ」

エミカ「…分かった。リネさん、やってみます」

リネ「そう来なくちゃ」


走り出すラアムとナアム。

ラアムが先を行く。

ナアムは後ろから追いかける。


アルジ「重たくないか?」

エミカ「…大丈夫だ」


エミカが前に座る。

移動に必要な魔力。

そのほとんどをエミカが注ぐ。

アルジは後ろで景色を眺める。

遠くには1本の虹。


アルジ「綺麗だ」

エミカ「え…?」

アルジ「ほら、向こうに虹が」

エミカ「ああ、そうだな」

アルジ「………」

エミカ「でも、今は余裕がない。

 ゆっくり景色を見てる余裕が」

アルジ「ああ、ごめんな」

エミカ「いいよ。別にいいから」


じわりじわりと遅れていくナアム。

魔力の差を考えれば、それは必然。

ラアムには前にリネ、後ろにミリが座る。

ミリはリネに何か熱心に話している様子。

しばらくして、2人は肩を揺らして笑う。

彼女たちの声はアルジたちに聞こえない。

距離がもう大分離れていた。


アルジ「楽しそうだな」

エミカ「…すごく余裕がありそうだ」


懸命にナアムを動かすエミカ。

アルジも意識を集中させる。

ナアムを動かすことに。


アルジ(やってみたはいいが…

 これ、意味あるのか?)

エミカ「ありがとう」

アルジ「…?」

エミカ「さっきより少し楽になった」

アルジ「そっか、それはよかった」

エミカ「だけど、無理しないでくれ」

アルジ「………」

エミカ「魔術のことは私に任せてほしいんだ」

アルジ「そうか…?」

エミカ「ああ、それにこれは特訓だからな」

アルジ「そっか、なら…せめて応援したい」

エミカ「?」

アルジ「行けー、エミカ、行けー!行けー!」

エミカ「やめろ」

アルジ「………」

エミカ「声援はいらない」

アルジ「そうか…?」

エミカ「気が散るから」

アルジ「ああ…」

エミカ「気持ちだけで大丈夫だよ」

アルジ「そっか」


エミカはナアムを懸命に動かし続ける。

しかし、ラアムとの差は広がるばかり。

ラアムの姿は豆粒ほどの大きさに見える。


アルジ「どんどん行くぜ。あの2人」

エミカ「これでも飛ばしてるんだ」

アルジ「厳しい先生だな」

エミカ「リネ先生は、たまにとても厳しい人だ。

 弟子入りしたばかりのときは、

 いろんなことで叱られた」

アルジ「そうなのか」

エミカ「でも、先生のことは好きだ。

 出会えてよかった。

 先生に魔術を習ってよかった。

 心からそう思ってる」

アルジ「そっか。それはよかったな」

エミカ「それから、ミリも」

アルジ「………」

エミカ「あの子は遠慮のないところがあるけど」

アルジ「あいつ、たまに頭に来るよな」

エミカ「そういうところがいいんだよ」

アルジ「…そうかな」

エミカ「うん。だから…」

アルジ「だから…?」

エミカ「この旅が終わるのは、

 少しだけ寂しい気もするんだ」

アルジ「………」

エミカ「…ごめん。

 アルジは早く終わらせたいよな。

 安定の玉を早く取り返さなきゃならないのに。

 村へ持ち帰らなきゃいけないのに。

 変なことを言ってしまったな。ごめん」

アルジ「いや、いいぜ。気にするなよ」

エミカ「………」

アルジ「オレもこの旅、結構好きだぜ」

エミカ「…そうか」


エミカはほほえむ。

ラアムの姿が見えてくる。

大きな岩のそばで立ち止まっている。

リネとミリが待ってくれていた。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 15

◇ HP   933/933

◇ 攻撃

  25★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★

◇ 防御

  22★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★

◇ 素早さ 16★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  4★★★★

◇ 装備  勇気の剣、雅繊維戦衣がせんいせんい

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り


◇ エミカ ◇

◇ レベル 13

◇ HP   630/630

◇ 攻撃  9★★★★★★★★★

◇ 防御  12★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 12★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  22★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  ★★

◇ 装備  魔樹の杖、深紅の魔道衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火


◇ ミリ ◇

◇ レベル 10

◇ HP   522/522

◇ 攻撃  4★★★★

◇ 防御  7★★★★★★★

◇ 素早さ 10★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  24★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★

◇ 装備  魔石の杖、紺碧の魔道衣

◇ 魔術  氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷


◇ リネ ◇

◇ レベル 26

◇ HP   921/921

◇ 攻撃   7★★★★★★★

◇ 防御

  18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 13★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、創造の杖、聖星清衣せいせいせいい

◇ 魔術  雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療薬 25

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ