第65話 任務
◆ 都 ◆
シノ姫に呼び出されたエオクシとアヅミナ。
都の中心地を駆けていく。
人だかりをするりするりとかわして。
目的地は、大君の城。
7階建の大きな城。
その最上階にシノ姫の間がある。
門番が道を開ける。
2人は駆け抜ける。
門の向こう側へ。
城の中へ入り、階段を駆け上がる。
ただひたすらその部屋を目指す。
シノ姫の間を。
◆ 大君の城 シノ姫の間 ◆
出入口に垂れ下がった1枚の大きな布。
分厚く、細かい装飾が施されている。
その布に遮られ、部屋の中は見えない。
立ち止まるエオクシとアヅミナ。
エオクシ「エオクシ、参上しました」
アヅミナ「アヅミナ、参上しました」
布越しに伝わる人の気配。
奥にシノ姫。
そして、もう1人いる。
手前の方に。
エオクシとアヅミナはその気配を感じる。
シノ姫「…入って…」
細い声。
その声の細さは、いつものこと。
エオクシは布をまくり上げ、中へと進む。
彼に続いてアヅミナも入っていく。
エオクシ「シノ姫様、どのようなご用で…」
シノ姫「………」
見知らぬ男が立っている。
シノ姫の前に。
物静かな態度。
痩せていて背が高い。
エオクシとアヅミナをじっと見ている。
エオクシ(戦士ではねえな…)
アヅミナ(魔術師ではない…)
シノ姫は座ったまま、にんまり笑う。
シノ姫「自己紹介なさい…」
男は笑顔を作る。
その表情はどこかぎこちない。
長身の男「考古学者のカタムラと申します」
エオクシ「考古学者…」
カタムラ「お耳にしたとおり…
お二方とも素晴らしい。
誠に素晴らしいお力をお持ちのようで。
私、カタムラは…お恥ずかしながら…
お察しのとおり…剣術も…魔術も…
たしなむ程度でございますが、
面と向かって、こうしてお会いして、
感激しております。感じております…。
あなた方のお力を…類まれな才能を…
たゆまぬ鍛錬の成果を…ビシ、ビシと…
この肌に感じております」
エオクシ&アヅミナ「………」
カタムラ「大前隊の…エオクシ様ですね?」
エオクシ「ああ」
カタムラ「魔術院の…アヅミナ様ですね?」
アヅミナ「はい」
カタムラ「聞いております。聞いておりますぞ。
都で最も強い戦士、エオクシ!
都で最も強い魔術師、アヅミナ!…と」
エオクシ「で、学者がオレたちになんの用だ?」
アヅミナ「…エオクシ」
エオクシ「!」
シノ姫が顔をゆがめていた。
不快感をあらわにしている。
部屋が緊張感に満たされる。
エオクシ「失礼…。なんの用でしょうか…?」
カタムラ「ええ…それは…」
カタムラはシノ姫の方へ歩いていく。
そして、彼女の隣に座る。
エオクシ(平然とシノ姫の横に座った…。
あいつ…何者なんだ…?)
シノ姫「私の口からお伝えしましょう…」
エオクシ&アヅミナ「………」
シノ姫は扇を懐から取り出す。
それを広げて自身をあおぎ、口を開く。
立ったまま話を聞くエオクシとアヅミナ。
シノ姫「カタムラは私の親縁に当たります」
カタムラ「はい、親縁です」
シノ姫「このお方は研究をしています。
大陸各地を巡り、古代遺跡を探検し、
多くの論文を書き記しています」
カタムラ「はい、古代遺跡を巡っています」
シノ姫「ですが、学術院での評価は散々なもの」
学術院は、都にある中央政府の機関。
多種多様な分野について研究する機関。
新たな研究者の養成も学術院の重要な役割。
シノ姫「彼の論文に書いてあることは誤り…。
妄想、空想、絵空事。でたらめ、でまかせ。
嘘、偽りの集合体。道理も論理もまるでなし。
そんな不当な評価に私は胸を痛めてきました」
カタムラ「私は今、ダイオ島におります。
遥か南東の島、僻地でございます。
その島の研究所で勤務しております。
とても小さな研究所です。
使える研究費も限られております。
もう十年以上も前のことになりますが、
私は学術院にも在籍しておりました。
学術院にいた頃は本当によかった。
それが今は…」
シノ姫「…これはあるまじきこと。
私がこうして言うのは、血縁があるから…
というわけではありません。
正しいことを主張する者が正しく評価される。
こと学術においてはそうでなければならない。
そのように私は信じているからです…」
アヅミナ(古代遺跡に…考古学者…。
一体…何をやらせようっていうの…?
あたしたちに…)
シノ姫「そして、最近のことなのですが、
ある重大な事実が分かったのです。
彼の研究のおかげで…」
カタムラは目を閉じ、大きくうなずく。
シノ姫「ある問題が…大事件が…
起きようとしています。
そして、それは…もしも…対応を誤れば…
この政府を…いいえ…大陸そのものを…
滅ぼすことになるかもしれない」
エオクシ&アヅミナ「………」
シノ姫「あなたたち2人には…
極秘任務を引き受けてほしい。
いいですか…?極秘任務です…。
極秘…なのです…」
エオクシ&アヅミナ「………」
シノ姫「静かに動く必要があります…。
敵に知られずに…。敵とは誰か…
もう分かっているでしょう…?
今回のこの極秘任務…大君には…
トキノナガ様には…私から伝えておきます」
カタムラ「ぜひともお願いします」
エオクシ&アヅミナ「………」
シノ姫「明日、早速出発して…。
カタムラと一緒に…。
そして、調査をしてほしい。
もしものときはお願い。
不測の事態が発生したときは、対処して。
エオクシ…あなたの剣術で。
アヅミナ…あなたの魔術で。
…よろしい?」
エオクシ&アヅミナ「は!」
◆ トウオウ道 ◆
空はすっかり晴れている。
まっすぐ伸びる、広くて見通しのよい道。
その上を、ラアムとナアムは快調に進む。
リネは後ろを振り向く。
大きな声で提案した。
リネ「もうすぐ村に着くから、
そこで少し休憩しない?」
ミリ「はい!」
エミカ「そうしましょう!」
アルジ(リネの方が先に疲れちまったみたいだ)
アルジたちは村に到着する。
◆ コナスナ ◆
そこは、ナキ村よりも大きな村。
茶葉の産地として有名。
村の西側に広い茶畑が広がる。
風味豊かな茶は人々に親しまれている。
リネ「あっちへ行きましょう」
アルジ「賑やかになってきたな」
エミカ「あれが大茶屋通りだ」
アルジ「大茶屋通り…?」
ミリ「茶屋がいっぱいあるんだね」
大茶屋通りを歩く。
風情のある茶屋がいくつも建ち並ぶ。
アルジたちは歩きながら右に左に目を向ける。
アルジ「すごい数の店だな」
エミカ「ああ、ここだ!」
アルジ「ん…?」
リネ「どうしました?」
エミカ「ここです。ここが前に来たお店です。
ここのお菓子がとてもおいしくて…
おすすめです!」
リネ「へえ、よさそうじゃない」
ミリ「ここで休みましょうか。
エミカのおすすめ楽しみ」
アルジ「上品な感じの店だな。
ナキ村にはない感じだ…」
席に着き、注文すると運ばれてくる。
熱い茶と赤い菓子が。
大きな盆に乗せられて。
とても心地よい香りが漂う。
アルジたちの気分は一気に和らいだ。
ミリ「なごむってこういうことを言うんですね」
そう言って茶の香りを楽しむミリ。
湯飲みから上る湯気に顔を近づけている。
リネ「あ、これおいしい!」
赤い菓子を食べて、声を上げるリネ。
それを見て、ミリも口に入れる。
ミリ「おいしいですね」
エミカ「このお菓子が食べたかったんだ」
リネ「…素敵な味わい。
このお菓子…なんだろう…?
甘過ぎず…ほのかな苦味があって、
とっても癖になる」
ミリ「すぐに全部食べちゃいそうだ」
エミカ「おかわりすればいいから。
前来たときは3回おかわりした」
アルジ「食べ過ぎなんじゃないか」
エミカ「大丈夫だ」
アルジ「………」
エミカ「長旅で疲れてたし…」
アルジ「そっか」
リネ「疲れたときは甘いものがいい。
それに、時として我慢はよくないから」
エミカ「そうですよね」
アルジ(確かにうまい。
でも、おかわりするほどか?)
ミリ「この赤い色も綺麗だよね。宝石みたいで」
エミカ「そうだ。この見た目もたまらないんだ」
茶を飲み、菓子を食べるアルジたち。
穏やかな時間は流れるように過ぎていく。
そんなアルジたちの前に1人の男が現れる。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 15
◇ HP 933/933
◇ 攻撃
25★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 防御
22★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★
◇ 素早さ 16★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 4★★★★
◇ 装備 勇気の剣、雅繊維戦衣
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り
◇ エミカ ◇
◇ レベル 13
◇ HP 630/630
◇ 攻撃 9★★★★★★★★★
◇ 防御 12★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 12★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
22★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★
◇ 装備 魔樹の杖、深紅の魔道衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海、王火
◇ ミリ ◇
◇ レベル 10
◇ HP 522/522
◇ 攻撃 4★★★★
◇ 防御 7★★★★★★★
◇ 素早さ 10★★★★★★★★★★
◇ 魔力
24★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★
◇ 装備 魔石の杖、紺碧の魔道衣
◇ 魔術 氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
◇ リネ ◇
◇ レベル 26
◇ HP 921/921
◇ 攻撃 7★★★★★★★
◇ 防御
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 13★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、創造の杖、聖星清衣
◇ 魔術 雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療薬 25




