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アルジ往戦記  作者: roak
62/300

第62話 伝言

アルジは宿を出て通りを歩く。

やがて大きな看板が見えてくる。



◆ ネルコの宿 ◆

入口の前に立つ。

一見すると、そこはただの民家。

トントンと戸を叩く。

老婦が出てくる。


老婦「なんだい、あんた。泊まるのかい?」

アルジ「いや、エミカを迎えに来たんだけど」

老婦「………」


老婦は警戒している様子。

宿の奥から声が聞こえる。


エミカ「アルジ」


エミカがやってきた。


老婦「あら、エミカ。知り合いかい」

エミカ「はい、一緒に旅をしていて…」

老婦「ああ、さっき言ってたお仲間の1人だね」

エミカ「はい、そうです」


老婦の顔がにこやかになる。


エミカ「どうした?」

アルジ「そろそろ飯の時間だ」

エミカ「ああ、そうか」


エミカは老婦の方を向く。


エミカ「私、そろそろ失礼します」

老婦「またいつでもおいで」

エミカ「ありがとうございます。

 すっかり長居してしまいました」


奥の方から老夫もやってくる。


老夫「またいつでも来なさい。

 今日は助かったよ。ありがとう。

 魔術ってのはすごいもんだな。気をつけて」

エミカ「はい。

 こちらこそありがとうございました。

 お邪魔しました。失礼します」

老婦&老夫「はいよ」


アルジとエミカは高宿に向かって歩き出す。


アルジ「ネルコの宿…か」

エミカ「リネさんから聞いたのか?」

アルジ「ああ。頼まれたんだ。

 迎えに行ってくれって」

エミカ「そうか。手間をかけさせたな」

アルジ「いいんだぜ。

 前はあの宿に泊まったんだな?」

エミカ「そうだ。

 あの宿にはとてもお世話になった。

 研究所へ行くときも、ワノエに帰るときも」

アルジ「そっか」

エミカ「あの宿はさっきのご夫婦が営んでいて、

 食事がおいしいし、部屋も綺麗だし、

 小さいながらも人気の宿なんだ」

アルジ「普通の家に見えたぜ」

エミカ「あの看板がなかったら私もそう思った。

 大雨で困ったとき、偶然あの看板を見つけた。

 安く泊めてくれて本当に助かったんだ。

 今日は挨拶とお礼がしたくなって」

アルジ「できてよかったな」

エミカ「うん、よかった。喜んでもらえた。

 いろいろ話してたら長居してしまったけど。

 朝食を作るのも手伝わせてもらったんだ」

アルジ「へえ。何か料理を作ったのか?」

エミカ「うん。火を出したりして…」

アルジ「魔術を使ったのか」

エミカ「ああ」

アルジ「そういう使い方もあるんだな」

エミカ「生活を便利にするのも

 魔術の大事な役割だ」

アルジ「そっか。

 でも、エミカの火の魔術は強いから…

 材料を焦がしたりしなかったのか?」

エミカ「!!…何を言うんだ!

 ちゃんと加減する」

アルジ「そっか、そうだよな」

エミカ「そうだ…!」

アルジ(この様子…何かしでかしたのかもな)


高宿が見えてくる。


エミカ「その服はどうしたんだ?」

アルジ「ガヒノ警備隊にもらったんだ」

エミカ「ああ、昨夜広場で話してた…」

アルジ「そうだ。今朝もらった」

エミカ「なかなか似合ってるじゃないか。

 それに丈夫で軽そうだ。いい服だな」

アルジ「そうだろ。

 もらうときちょっといろいろあったけどな」

エミカ「何があったんだ?」

アルジ「悪い警備隊長を締め上げたんだぜ」

エミカ「またケンカしたのか!」

アルジ「ケンカじゃない。

 悪党を成敗しただけだ」

エミカ「悪党って…。

 これ以上は聞かないどくよ」

アルジ「オレも話すのが面倒だ。

 とにかく最後は丸く収まった。

 それは間違いない」

エミカ「………」

アルジ「さあ、着いたぜ」


高宿へ入っていくアルジとエミカ。

宿泊客が朝食会場の前に集まっている。


ミリ「アルジ!エミカ!」

アルジ「よう」

リネ「アルジさん、宿の場所は大丈夫でした?」

アルジ「ああ、すぐに分かった」

リネ「大きな看板ですものね」

エミカ「遅くなりました。

 つい長居してしまって…」

リネ「いいんです。恩人には感謝なさい」

エミカ「はい」

ミリ「2人の分まで食べようと思ってたのに」

アルジ「おいおい、そうは行かないぜ」

ミリ「わはは」

エミカ「始まるようだぞ」


朝食会場の戸が開く。

係員が出てきて、客を招き入れる。

次々と人が流れ込む。

アルジたちも入っていく。

端の空いている席に座る。

会場の中央には卓が並ぶ。

その上にさまざまな料理。

大皿の上に盛られている。

ほかの客たちは立ち上がる。

皿を手に料理を次々と盛る。


エミカ「自分で取ってくるのか」

ミリ「好きなだけ持ってきていいんだね」

アルジ「こいつはちょうどいい。

 腹が減ってたしな!」

ミリ「せっかくだし、たくさん食べなきゃね」

アルジ「ああ。思い切り食おうぜ」


席を立ち、料理を取るアルジたち。


ミリ「エミカ、こっちのお皿がいいよ。

 ほら、たくさん盛れる」

エミカ「私はこのお皿でいいよ」

ミリ「それじゃちょっとしか盛れないよ。

 せっかくなのに。もったいない」

アルジ「好きなだけ取っていいんだぜ!」

ミリ「うんうん。遠慮は無用なんだからね」

エミカ「あんまり食べると…太るから…」

ミリ「………」

アルジ「…そっか」

エミカ「…うん」

アルジ「でも、オレは気にしないぜ!

 エミカが多少太っても」

エミカ「私が気にするんだ!」


名産品のマレヤギの肉、乳。

近くの畑で収穫された野菜。

新鮮な食材が丁寧に調理されていた。


ミリ「おいしかった」

アルジ「ふー。食ったぜ」

リネ「たくさん食べましたね」

アルジ「しばらく腹は減らなそうだ」

ミリ「本当だね」

エミカ「2人とも朝からよく食べたな」

ミリ「エミカだって」

リネ「いつもより食べたんじゃないの」

エミカ「おいしかったので、つい」

リネ「とてもいいことだと思います。

 長旅するのに栄養補給は大切ですから。

 しっかり食べて体力を付けていきましょう」

アルジ「ちょっと休んだら出発するか」

リネ「ええ、そうしましょう。天気も…」


アルジたちは窓の外を見る。

どんよりとした雲に空が覆われている。


エミカ「今にも雨が降りそうですね」

リネ「大雨になる前に距離を稼ぎたいですね」

ミリ「頑張りどころだね」


アルジたちは客室に戻り、支度をした。

そして、高宿の前で集まる。


アルジ「行こうか」

エミカ「ああ、行こう」

ミリ「行こう!」

リネ「ラアムとナアムを…」

アルジ「あれ…」

エミカ&リネ&ミリ「………」


アルジは気付く。

歩いてくる親子の姿に。

父、母、その間に子。

3人が並んで歩いてくる。

タジヤとその両親だった。


タジヤの母「昨日はありがとうございました」

アルジ「ああ、いいんだぜ!」

タジヤの母「出発する前に…

 お会いできてよかったです。

 高宿に泊まっていると聞いたものですから」

アルジ「わざわざ見送りに来てくれたのか?」

タジヤの父「伝えたいことがあって来ました」

アルジ「なんだ?伝えたいことって…」

タジヤの父「タジヤ」

タジヤ「うん」

タジヤの父「さっきの話をお兄さんたちに」

タジヤ「…うん」

アルジ「なんだ?」

タジヤ「女の人がいたんだ」

アルジ「女…」

タジヤ「森に女の人がいたんだ。

 オレは言ったんだ。森は危ないって。

 言ったんだ。でも、行っちゃった。

 その人は森に入っていったんだ」

アルジ「………」

タジヤ「だから、オレは追いかけた」

リネ「それで…迷子になった…?」

タジヤの父「はい。そんな経緯だったようで…」

アルジ「その女は何者だ?」

タジヤの父「分かりません」

タジヤ「黒い服を着てた。ひらひらした服。

 腕とか、脚とか、ぐにゃぐにゃしてて。

 変な服だった」

リネ「それは…もしかして…」

エミカ「魔術衣…でしょうか…?」

タジヤ「?」

リネ「その森にいた女の人だけど…」

タジヤ「うん」

リネ「服に…白い模様が入ってなかった?

 蝶々みたいな形が胸の辺りになかった?」

タジヤ「…あったかもな!」

リネ「…!」

エミカ「………」

アルジ「…どうしたんだ?」

エミカ「黒くて、胸に蝶のような模様…」

リネ「それがあったとすれば、間違いありません」

エミカ「北土の魔術研究所の魔術衣…」

リネ「上級魔術師だけが着ることを許される…」

エミカ「特別な…本当に特別な魔術衣…」

アルジ「なんなんだ?その魔術衣って…」

リネ「エミカも知ってるでしょ。

 その魔術衣の名前」

エミカ「はい。もちろんです。

 その魔術衣の名前は…」

アルジ「名前は…?」

エミカ「八多等守護衣やたらしゅごい…!!」

アルジ「やたらしゅごい…」

ミリ「変な名前…」



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 15

◇ HP   772/933

◇ 攻撃

  25★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★

◇ 防御

  22★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★

◇ 素早さ 16★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  4★★★★

◇ 装備  勇気の剣、雅繊維戦衣がせんいせんい

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り


◇ エミカ ◇

◇ レベル 13

◇ HP   630/630

◇ 攻撃  9★★★★★★★★★

◇ 防御  12★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 12★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  22★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★

◇ 装備  魔樹の杖、深紅の魔道衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火


◇ ミリ ◇

◇ レベル 10

◇ HP   522/522

◇ 攻撃  4★★★★

◇ 防御  7★★★★★★★

◇ 素早さ 10★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  24★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★

◇ 装備  魔石の杖、紺碧の魔道衣

◇ 魔術  氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷


◇ リネ ◇

◇ レベル 26

◇ HP   921/921

◇ 攻撃   7★★★★★★★

◇ 防御

 18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 13★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、創造の杖、聖星清衣せいせいせいい

◇ 魔術  雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療薬 25

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