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アルジ往戦記  作者: roak
61/300

第61話 推薦

アルジは高宿へ戻る。

モクからもらった雅繊維戦衣を着て。


アルジ(まさか朝から戦うことになるなんて。

 モクたち…うまくやっていけるといいな)


いつもより胸を張り、大きく腕を振って歩く。


アルジ(それにしても…いい防具って、

 着てるだけで気持ちが引き締まるな)


空は相変わらず灰色の雲に覆われている。

だが、アルジの心は晴れやか。

高宿が見えてくる。


女の声「ふざけないでよ!!!」

アルジ「…?」


突然、遠くから声が聞こえる。

女の声。

その声には聞き覚えがあった。


アルジ(この声はリネ…?リネなのか…?

 宿の裏庭の方から聞こえてきたな)


歩いていく。

声が聞こえた方へ。

息を潜め、足音を立てず。

高宿の外壁に身を隠し、様子を見る。

裏庭にある1本の高い木。

その下で向かい合って立つ2人の女。

リネとミリ。

2人の横顔が見えた。

リネは顔を赤くしていた。

かなり感情的になっている様子だった。


アルジ(やっぱりリネの声だったか)

リネ「ふざけたこと言わないで!!」

ミリ「リネさん」


その場から立ち去るリネ。

肩を怒らせ、拳を握りしめ、大股で歩く。

険しい顔でぐんぐん歩く。

そして、アルジがいる方へ近づいてきた。

隠れようとしても間に合わない。


リネ「!!?アルジさん…!?」

アルジ「ああ」


2人は一瞬だけ目を合わせる。

リネは足早に去っていった。

アルジは裏庭の方へ向かう。

ミリの前に姿を現す。


アルジ「ミリ」

ミリ「アルジ…いたんだ」

アルジ「でかい声がしたからな。来てみた」

ミリ「さっきの聞いてた?全部聞いてた?」

アルジ「いや、最後だけだ」

ミリ「本当?」

アルジ「ああ、本当だ」

ミリ「………」

アルジ「なんの話だったんだ?」


うつむくミリ。


ミリ「………」

アルジ「言えないことだったら、別にいいけど」

ミリ「魔術の話だよ」

アルジ「そうか」

ミリ「うん」

アルジ「昨日の朝もそう言えば…」

ミリ「昨日とは違う話」

アルジ「そうなのか」

ミリ「うん」

アルジ(何か…言えないことがあるみたいだな)


ミリは笑顔を作って言う。


ミリ「勧められたんだ」

アルジ「…え?」

ミリ「魔術院に行ったらどうか?って。

 さっき、リネさんに勧められたんだ」

アルジ「魔術院って…都にある…あの…」

ミリ「そうだよ」

アルジ「すごいな」

ミリ「そうかな。

 まあ、でも、なんかすごいらしいよね。

 私もリネさんから話を聞いただけだけど。

 なんかね、魔術院に入るための推薦状は

 私が書くからって、リネさんさっき言ってて…」

アルジ「よかったじゃないか」

ミリ「よくないよ」

アルジ「そうか?」

ミリ「うん、よくないな」

アルジ「なんでだ?」

ミリ「………」

アルジ「…ミリ?」

ミリ「私、本当はあまり魔術好きじゃないから」

アルジ「………」

ミリ「研究とかも絶対嫌だな。

 勉強とか基本苦手だし」

アルジ「そうか」

ミリ「うん。だから遠慮しますって…」

アルジ「…それでか?」

ミリ「え?」

アルジ「それで、リネはあんなに怒ったのか?」

ミリ「まあ、そうだね」

アルジ「………」

ミリ「少し機嫌も悪かったのかなぁなんて…

 ははは」

アルジ「そっか」


ミリはアルジの雅繊維戦衣を指でつつく。


ミリ「ねえ、どうしたの?これ」

アルジ「もらったんだ」

ミリ「警備隊の人が渡したいって言ってたやつ?」

アルジ「ああ、それだ」

ミリ「いいね。似合ってるよ」

アルジ「そうか。ありがとう」

ミリ「これでまたバリバリ戦えるね」

アルジ「ああ、任せてくれ」

ミリ「私も頑張る」

アルジ「頼りにしてるぜ」

ミリ「任せて。

 さっきは、魔術は嫌いなんて言ったけど、

 誰かの役に立てるなら、

 魔術を使うの好きだから。

 そこんとこは、誤解しないでね」

アルジ「そっか。オレもそうだ。

 誰かのために剣を振りたい」

ミリ「これからもよろしくお願いします」

アルジ「ああ。よろしく」

ミリ「へへ」

アルジ「………」


アルジの腹が鳴る。


ミリ「でかい音だ」

アルジ「………」

ミリ「もうすぐ朝食の時間かな」

アルジ「そうだな。腹が減ったぜ」

ミリ「昨日の夜ほとんど何も食べてないしね」

アルジ「疲れて食べるどころじゃなかったしな」

ミリ「いっぱい食べたいな。

 こんな立派な宿だから朝食もきっと豪華だよ」

アルジ「ああ、そうだな。

 それに警備隊のおごりだしな」

ミリ「そっか!おごりだ、おごりだ!」

アルジ「よし、行くぜ!」

ミリ「おう!」


意気揚々と宿の中へ入っていくアルジとミリ。

朝食会場は、1階の大広間。

しかし、その出入口の戸は閉ざされたまま。

壁に開場時刻を知らせる大きな貼り紙。

朝食までまだかなり時間があった。


ミリ「お腹空いて死んじゃいそう」

アルジ「死ぬなよ」

ミリ「もうだめ」

アルジ「仕方ない。捕まえて料理してやる」

ミリ「何を?」

アルジ「マレヤギを…な」

ミリ「わあー、家畜泥棒だ!」


近くにはほかの宿泊客が何人もいた。

冷ややかな視線をアルジは感じる。


アルジ「バカ!!冗談だぜ!冗談!!」

ミリ「分かってるよ。そんなこと」

アルジ「………」


アルジたちの方へ歩いてくる1人の女。

やってきたのはリネ。


リネ「朝食、まだでしょ?」

アルジ「ああ、まだみたいだ」

リネ「ミリ…」

ミリ「………」

リネ「さっきは、ごめんなさい。

 ちょっと…なんていうか…

 カッとなってしまって…だめだな…

 私…なんか…ああ…もう…」

ミリ「いいえ、もういいですから」

リネ「…話があるの」

ミリ「はい…」

リネ「お部屋に来てくれる?」

ミリ「はい…」

アルジ「………」

リネ「アルジさんは…」

アルジ「ああ」

リネ「エミカのことを迎えにいってきてくれる?

 もう少ししたら…朝食だし」

アルジ「ああ、いいけど、あいつは今どこに?」

リネ「ネルコの宿というところに行ってます。

 エミカ、前にこの町を訪れたとき、

 その宿にお世話になったらしくて…。

 挨拶してくると言って、

 朝早く部屋を出ていったから」

アルジ「そっか、分かった!」

リネ「宿を出て、通りを右手に歩いていけば、

 見えてきます。とても小さな宿です。

 でも、大きな看板が出ているので、大丈夫」

アルジ「分かった。行ってくる」

リネ「はい」


アルジがリネたちに背を向けたそのとき。

ミリがアルジのそばへ駆け寄る。

そして、顔を近づけて小声で彼女は言った。


ミリ「アルジ…私がさっき話したこと…

 エミカには言わないでね…」

アルジ「…?」

ミリ「魔術院の…推薦の話…!」

アルジ「…ああ、分かった。言わないぜ」

ミリ「約束だからね…!」


ミリはうなずき、リネの元へ。

リネは穏やかにほほえんでいる。


リネ「なんの話をしたの?」

ミリ「もう鎧を壊しちゃだめだよって」

リネ「そういえばアルジさん素敵な服を…」

ミリ「はい、あれはですね…」


話しながら客室へ向かうリネとミリ。

アルジはぼんやりと眺めていた。

遠ざかっていく2人の後ろ姿を。


アルジ「………」


やがて彼女たちは廊下の角で曲がる。

完全に姿が見えなくなる。

それから、アルジは宿を出た。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 15

◇ HP   772/933

◇ 攻撃

 25★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★

◇ 防御

 22★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★

◇ 素早さ 16★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  4★★★★

◇ 装備  勇気の剣、雅繊維戦衣

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り


◇ エミカ ◇

◇ レベル 13

◇ HP   630/630

◇ 攻撃  9★★★★★★★★★

◇ 防御  12★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 12★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  22★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  ★★

◇ 装備  魔樹の杖、深紅の魔道衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火


◇ ミリ ◇

◇ レベル 10

◇ HP   522/522

◇ 攻撃  4★★★★

◇ 防御  7★★★★★★★

◇ 素早さ 10★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  25★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★

◇ 装備  魔石の杖、紺碧の魔道衣

◇ 魔術  氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷


◇ リネ ◇

◇ レベル 26

◇ HP   921/921

◇ 攻撃   7★★★★★★★

◇ 防御

 18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 13★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、創造の杖、聖星清衣せいせいせいい

◇ 魔術  雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療薬 25

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