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アルジ往戦記  作者: roak
59/300

第59話 意志

◆◆ 翌朝 ◆◆

1人で宿から出ていくアルジ。

町は朝の静けさに満ちていた。

遠くには広大な牧場が見える。

草原の上にはマレヤギの群れ。


アルジ(降ったのか)


地面が濡れている。

明け方に雨が降ったのだった。

空は灰色の雲に覆われている。

歩き続けると町の広場が見えてきた。

昨夜、宴のあった場所。

警備隊員のモクと約束した場所。

しかし、彼の姿は見当たらない。

駆け回る2人の子ども。

その近くで長椅子に腰かける老夫婦。

広場にいたのはその4人だけ。


アルジ(ここに来いって言ってたよな…。

 間違いないよな…。しばらく待ってみるか)


広場の端で立って待ち続ける。

近くを通った町人が会釈する。

アルジは会釈を返す。

それから、ふと空を飛ぶ鳥を見上げる。

大きく羽ばたき、まっすぐ飛んでいく。

何をしに、どこへ向かうのか。

少しの間、アルジは思いを巡らす。

そうしていると、背後から声が聞こえた。


モク「待たせた」


アルジは振り返る。

モクの手には1着の衣服。


モク「早速だが、これを君にやる」


差し出される。

アルジは受け取る。


アルジ(これは…ただの服じゃない…)


その衣服は強く、柔らかく、軽い。


アルジ「オレにこれを…?いいのか?」

モク「ああ。ずっと探していた。

 その服にふさわしい戦士を」

アルジ「オレが…ふさわしいのか…?」

モク「ああ。君以外にいない。そう思う。

 森で見せたあの技、本当に見事だった。

 それに、迷子を救うため動いてくれた。

 我々のことまで助けてくれた。

 優れた技だけじゃない。

 君は清らかで勇ましい心も持っている」

アルジ「あんまり言わないでくれ。照れるだろ」

モク「はっはっは!」

アルジ「………」

モク「その鎧も…役目を終えたところだろう。

 ちょうどよかったんじゃないのか?」

アルジ「ああ、そうだけど…本当にいいのか?

 この服、大事な宝じゃないのか?

 これは一体…」

モク「そいつは雅繊維戦衣がせんいせんい

アルジ「がせんい…せんい…?」

モク「防具職人シラギト…」

アルジ「え?」

モク「知らないか。

 大陸中にその名の通った職人なんだが。

 彼が以前この町に滞在したことがあってな」

アルジ「防具職人が…?」

モク「そうだ。都からはるばるここに来た。

 その方は大前隊の防具作りも

 任されていたことがあるとか…」

アルジ「大前隊…!あいつらの…」

モク「滞在中、マレヤギ料理に感心してな。

 そのお礼に作ってくれたのが雅繊維戦衣。

 町の工房を借りて完成させた。

 長い月日をかけて。

 どうやって作ったのか。

 詳しいことは誰も知らない。

 制作は夜間にひっそりとやっていたから。

 たった1人で。そして、何より…

 多くを語らない職人だったからな」

アルジ「この素材は…?」


光沢があり、茶褐色のその繊維。

アルジはまじまじ見て問いかける。

モク「シラギトさんは『雅繊維』と呼んでいた。

 打撃にも斬撃にも強い。

 素材はマレヤギの体毛。

 寡黙なシラギトさんもそれは教えてくれた。

 だが、体毛がどうやったらそうなるのか。

 そのことは誰にも教えてくれなかった。

 あの人だけが知る特別な技術で

 加工したんだろう」

アルジ「特別な技術…魔術か」

モク「それはないんじゃないか。

 よく分からないが。オレには…

 魔術を使えるようには見えなかった」

アルジ「………」

モク「とにかく普通じゃない方法で

 そいつは作られている。

 魔術かもしれない。

 魔術じゃないかもしれない。

 オレのような素人には推測もできない。

 だが、とにかく、高い技術で作られた。

 そいつはそういう代物さ」

アルジ「本当にオレがもらっていいのか?」

モク「ああ。アルジ、君にやる。君に託す」

アルジ「…託す」

モク「飾ってるだけじゃ意味がないものだ。

 装備する者がいてこその防具というものだ」

アルジ「そっか、ありがとう。

 大事に使わせてもらうぜ」

モク「武運を祈る」


◇ 雅繊維戦衣を手に入れた。

去っていくモク。

だが、すぐに彼は立ち止まる。


モク「…くっ!」


背が高く、肩幅の広い男が歩いてくる。


男「おい!コラ!!ざけんなっ!!!」

モク「た…隊長…!」

アルジ「…何?」


その男は、ガヒノ警備隊の隊長ダンシモ。


ダンシモ「うちの宝を勝手に人にやるたぁ、

 どういうつもりだ!?」


ダンシモは3人の警備隊員を連れていた。

3人とも森で迷子の捜索に当たった隊員たち。


アルジ(これは…どういうことだ?)


モクはダンシモに言った。


モク「ふさわしい戦士が…身に着けるべきだ。

 勇敢で…強敵と戦う…真に必要とする者が…

 あの戦闘服を着るべきだ…!」

ダンシモ「なんだと?だからって人にやるのか!

 勝手に持ち出して!勝手に人にやるのか!!」

モク「雅繊維戦衣は飾りじゃない…!!

 飾りじゃないんだ!!防具は飾りじゃない!!

 ずっと…ずっと長いこと本部に飾って…

 ただの見せ物にして…許せなかった…!!

 ずっと…オレは納得していなかった…!!

 シラギトさんも…望んじゃいないはずだ!」

ダンシモ「ごちゃごちゃぬかすんじゃねえ!!」


ダンシモはモクに蹴りを見舞った。

モクの体は吹き飛ばされた。

そして、雨に濡れた地面の上を転がる。

顔も体も泥まみれ。


ダンシモ「返せよ」

アルジ「………」

ダンシモ「返せっつってんだろ!!」

アルジ「…!」


老夫婦と子どもは急いで広場から去っていく。

声を震わせながら倒れたままモクが言う。


モク「アルジ…返す必要はない…必要ないんだ!

 もらってくれ…!そして、使ってくれ…!!

 こいつは…最低な男さ!隊長とは名ばかりで!

 態度ばかりでかくて…何もしない…!」

ダンシモ「なんだモク!!死にてえのか!?」

モク「昨日だって…そうさ!!

 こいつは…来なかった…!

 迷子の捜索で隊員たちが動いている中…

 こいつは…警備隊の待機所で…

 椅子に座り…茶を飲んでいた…!!

 物言いだけは偉そうで、何もしない…!

 言うだけ…!!いつも人にやらせて…!!

 人任せで…!口先だけ…!!

 自分が…いいように…!

 楽をすることばかり考える…!

 こんなやつに…警備隊を仕切っていく…

 いや!!町を守っていく資格なんてない!」

ダンシモ「てめえ!!!」


怒り心頭のダンシモ。

モクの頭を踏みつけようとしたそのとき。


アルジ「待て」

ダンシモ「………」

アルジ「これは返す」

モク「…!!」

アルジ「だから、もう勘弁してくれ」

ダンシモ「よこせっ!!」


ダンシモはアルジの手から奪いとる。

モクがくれた雅繊維戦衣を。


ダンシモ「さっさとそうすりゃいいんだ。

 ボケがっ!!」


立ち去ろうと背を向けるダンシモ。


アルジ「待て」

ダンシモ「あ…?」

アルジ「やっぱり、それをくれ」

ダンシモ「何…?」

アルジ「オレにくれと言ってるんだ」

ダンシモ「一体…何をぬかしてやがる…」

アルジ「やっぱり欲しくなったんだ。

 その服が。だから、くれ」

ダンシモ「いかれてんのか?ざけんなよ?

 ざけんなよ!!ガキが!!失せろ!!」

アルジ「失せる気なんてないぜ。

 さっさとくれよ。そいつを。

 今度はモクがオレにくれるんじゃない。

 オレがオレの意志でお前からもらうんだ。

 嫌と言うなら、戦ってでも奪いとる」

ダンシモ「なんだと…?」

アルジ「おい。どうする?逃げるのか?

 それでいいのか?戦士なんだろ。お前も」

ダンシモ「てめえ!!ぶっ殺す!!!」

モク「アルジ…!よせ!!そいつの強さは…!」

アルジ「…大丈夫」

モク「………」


ダンシモは剣を構えた。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 15

◇ HP   772/933

◇ 攻撃

 25★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

       ★★★★★

◇ 防御  7★★★★★★★

◇ 素早さ

 17★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  4★★★★

◇ 装備  勇気の剣

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り


◇ エミカ ◇

◇ レベル 13

◇ HP   630/630

◇ 攻撃  9★★★★★★★★★

◇ 防御  12★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 12★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  22★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★

◇ 装備  魔樹の杖、深紅の魔道衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火


◇ ミリ ◇

◇ レベル 10

◇ HP   522/522

◇ 攻撃  4★★★★

◇ 防御  7★★★★★★★

◇ 素早さ 10★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  25★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★

◇ 装備  魔石の杖、紺碧の魔道衣

◇ 魔術  氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷


◇ リネ ◇

◇ レベル 26

◇ HP   921/921

◇ 攻撃   7★★★★★★★

◇ 防御

 18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 13★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、創造の杖、聖星清衣せいせいせいい

◇ 魔術  雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療薬 25


◇◇ 敵ステータス ◇◇

◇ ダンシモ ◇

◇ レベル 16

◇ HP   685/685

◇ 攻撃  9★★★★★★★★★

◇ 防御  8★★★★★★★★

◇ 素早さ 6★★★★★★

◇ 魔力  

◇ 装備  鋼鉄の短剣、赤革の戦闘服

◇ 技   空転断鉄山千斬

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