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アルジ往戦記  作者: roak
58/300

第58話 親子

◆ ガヒノ ◆

町の外れを歩くアルジたち。

静まり返った家々の間を抜ける。

聞こえてくる人々の声。

町の広場が見えてくる。

広場の真ん中には大きなたき火。

その周りに集う町の人々。

彼らは話し合い、時折、天を仰ぐ。

近づいていくアルジたち。

何人かが気づく。

アルジは大きく手を振った。

彼に背負われたタジヤも。


町人たち「おおっ」


すぐさま人々に囲まれる。

いくつもの歓声が上がる。

だが、その声はすぐに収まった。

静まり返る中、歩いてくる2人。

タジヤの父と母だった。

目に涙を浮かべている。

アルジはタジヤを下ろす。


タジヤの母「タジヤ!ああ…ごめんね」

タジヤの父「よく帰ってきた…タジヤ!」


親子は抱き合う。


タジヤ「怖かった…」


3人は再会に泣いた。


ミリ「………」

エミカ「助けられてよかったな」

ミリ「…よかった」

エミカ「探すのを手伝ってよかった。

 魔術を成長させる機会にもなったしな」

アルジ「オレも成長できた。

 かなり強くなれた気がする」

ミリ「………」

エミカ「ミリ?」


ミリはタジヤと彼の両親を見ていた。

彼女の目から涙がこぼれる。


ミリ「…うっ…」


エミカはそっと彼女の肩を抱く。


アルジ「………」

リネ「アルジさん」

アルジ「なんだ?」

リネ「私は間違ってました」

アルジ「………」

リネ「先を急ぐあまり通り過ぎようとした。

 悲しみに暮れ、救いを求める声に耳を貸さず。

 迷子を助けようとせず、旅を続けようとした」

アルジ「………」

リネ「それはいけないことだった。

 間違いだった。気づかされました。

 今、ここで…はっきりと…」

アルジ「そんなふうに言わないでくれよ」

リネ「………」

アルジ「ずっと本気だっただろ。リネも」

リネ「………」

アルジ「考えて、オレたちを導いてくれた。

 それと、最後の王雷も。

 あれがなかったらやばかった。

 リネがいてくれたおかげだ。

 あの子を助けられたのは。

 だから、間違ってたとか…言わないでくれよ」

リネ「アルジさん…」

アルジ「それと…」


アルジはミリの方を見る。

彼女は肩を震わせ泣き続けている。

エミカが寄り添い、背中をさする。


リネ「なんですか?」

アルジ「会わせてもいいんじゃないかな。

 ミリを…家族に…」

リネ「………」

アルジ「会わせる前に探さなきゃいけないけど。

 会いたがるかどうかも分からないけど。

 それでも、やってみてもいいんじゃないか。

 このままでいるよりも…」

リネ「この旅が終わったら…やってみましょう」

アルジ「ああ」

リネ「そのときは力を貸してくれる?」

アルジ「ああ!もちろんだ!」


父、母、タジヤの3人がアルジたちの前に来る。


タジヤの父「本当に…ありがとう」

タジヤの母「ありがとうございました」

タジヤ「ありがとう」

アルジ「いいぜ。

 そんな大したことなかったからな。

 ベキザルとかいう化け物も」

エミカ(殺されかけたのに…)

ミリ「元気でね」

タジヤ「うん、ありがとう。お姉ちゃん」

タジヤの父「ありがとう」

タジヤの母「ありがとうございました」


タジヤと両親は繰り返し礼を言う。

そして、アルジたちの前から去っていく。


エミカ「大したことない…か」

アルジ「え?」


エミカはアルジの左腕をそっとなでる。

ベキザルの長に焼かれたその腕を。


アルジ「いてえっ!!!」

エミカ「こんな大ケガしておいて…

 大したことないとは強い男だな。アルジ」

アルジ「…まあな」

エミカ「………」

リネ「私の魔力が回復したら治療します。

 それまで我慢して」

アルジ「ありがとう。それと…だ」


アルジは身につけている銀獣の鎧に目をやる。

腹部を覆う部分に大きな穴が空いていた。


リネ「ああ…」

アルジ「せっかくもらったのに壊れちまった。

 軽くていい鎧だったのに。悪いな」

リネ「別にいいんです。

 その穴はあなたを守った証。

 あなたのような勇敢な人が着てくれて

 その鎧も本望だったことでしょう」

アルジ「そうだといいな」


宴が始まる。

星空の下、たき火を囲んで人々が踊る。

近くの食堂から料理が振る舞われた。

迷子を探すため、動き回った人々に。

アルジたちは疲れていて食欲がない。

マレヤギの乳でできた飲み物をもらう。

熱くて甘いその飲み物は体を中から温めた。

大きなたき火が放つ熱は体を外から温める。

町の人々の踊りを見てアルジたちは楽しむ。

ただそこにいるだけで思わず笑顔になる。

そんな愉快な雰囲気がその広場には満ちていた。

しばらくすると宴は終わり、たき火が消える。

警備隊がアルジたちのところへ来た。

1人が前へ歩み出て、声をかける。


警備隊員「今日はありがとう」

アルジ「…ああ」

警備隊員「ガヒノ警備隊のモクという者だ。

 昨日から捜索隊で指揮をとっていた」

アルジ「そっか」

モク「君たちは?」

アルジ「オレはアルジ。ナキ村の剣士アルジだ」

リネ「ワノエの魔術師です。リネと申します」

エミカ「私もワノエの魔術師、エミカです」

ミリ「ミリです。私も魔術師してます」

モク「剣士に魔術師。そうか。

 このたびはご苦労だった。

 警備隊一同、君たちに心から礼を言いたい」

アルジ「当然のことをしただけだ」

モク「当然だなんて…何を言う。

 あの森には我々以外誰も近づけなかった。

 化け物の噂を恐れて。だが、君たちは…」

エミカ「いたんだ」

モク「…は?」

エミカ「実際に化け物はいた。

 ベキザルがたくさんいた」

モク「何…!?」

エミカ「でも、大したことなかった」

モク「はは…。そうか。強いな。君たちは」

リネ「あなた方もご苦労様でした」

モク「いや、我々は…とんだ大失態を…」

ミリ「気持ちよさそうに寝てたもんね。

 起こしちゃいけないかもって思うくらい」

モク「…これはなんとも恥ずかしい。

 今後はあのようなことがないようにする。

 あんな森の中で寝るなんてもうまっぴらだ。

 ああ、そうだ。寝ると言えば…」

アルジ「…ふぁっ…」


アルジは大きなあくびをした。


モク「君たち、宿の手配は?」

アルジ「…してない…」


眠たそうな顔で答える。


モク「そうだったか…。なら、よかった。

 今日はもうこんな遅い時間だからな。

 君たちのために宿の部屋を確保した。

 いい宿だ。気に入ってくれると思う。

 宿代も気にするな。我々からのお礼だ」

リネ「ありがとう」

アルジ「助かるぜ。ありがとう」

エミカ&ミリ「ありがとうございます」

モク「それと…剣士の君」

アルジ「なんだ?」

モク「明朝、またこの広場へ来てもらえるか?」

アルジ「え?ああ…いいけど。なんの用だ?」

モク「受け取ってほしいものがある。

 きっと喜んでくれると思う」

アルジ「なんだ…?」

モク「君にふさわしいもの…とだけ言っておく」

アルジ「ふさわしいものか。期待しとくぜ」

モク「ふふ…」

ミリ「なんだろう?」

アルジ「分からん」

ミリ「…楽しみだね」

アルジ「欲しがってもやらないぜ」

ミリ「ふん!どうせ大したものじゃないでしょ」

モク「………」


アルジたちは宿へ向かう。

モクが案内してくれた。

その宿の名前は、高宿たかやど

大きく、どっしりとした造り。

懐に余裕のある旅人が利用する。

中央政府から要人が訪れたときも使われる。

確保された客室は2部屋。

エミカ、リネ、ミリのための大きな部屋。

そして、アルジのための1人用の部屋。

どちらも広く、ゆったりと過ごせる。

寝支度をしてアルジは布団に潜る。


アルジ(こんな広い部屋で泊まるのか。

 しかも1人で…!)


夜の静寂に包まれる。


アルジ「今夜は落ち着いて眠れそうだ!」


その言葉どおり。

目を閉じると、彼はするりと眠りに落ちた。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 15

◇ HP   16/933

◇ 攻撃

  25★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★

◇ 防御  7★★★★★★

◇ 素早さ

 17★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  4★★★★

◇ 装備  勇気の剣

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り


◇ エミカ ◇

◇ レベル 13

◇ HP   403/630

◇ 攻撃  9★★★★★★★★★

◇ 防御  12★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 12★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  22★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★

◇ 装備  魔樹の杖、深紅の魔道衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火


◇ ミリ ◇

◇ レベル 10

◇ HP   315/522

◇ 攻撃  4★★★★

◇ 防御  7★★★★★★★

◇ 素早さ 10★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  25★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★

◇ 装備  魔石の杖、紺碧の魔道衣

◇ 魔術  氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷


◇ リネ ◇

◇ レベル 26

◇ HP   751/921

◇ 攻撃   7★★★★★★★

◇ 防御

  18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 13★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、創造の杖、聖星清衣せいせいせいい

◇ 魔術  雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療薬 25

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