第57話 同郷
暗い森の中。
安全に帰る術がない。
途方に暮れるアルジたち。
タジヤ「帰ろうよ」
リネ「ごめんね、少し待って」
タジヤ「帰りたい」
ミリがタジヤの前でしゃがむ。
目を見て話しかける。
ミリ「大丈夫だよ。大丈夫だから。
ちゃんと家まで連れてってあげるから。
お父さんとお母さんのところにね」
タジヤ「…んー…」
ミリ「だから、静かにしててくれる?」
タジヤ「…しょうがないな」
ミリ「ありがとう」
アルジ「………」
エミカ「とは言え…」
ミリ「………」
エミカは辺りを見回す。
エミカ「リネさん、ここで少し休みましょうか。
魔獣ももう出てこなさそうですし」
リネ「そうですね」
ミリ「そんなに寒くもないしね」
リネ「岩弾は1度消えると復活しません。
でも、しばらく休めば光玉は出せます。
その光を頼りに森を歩きましょうか…」
エミカ(かなり深くまで来た。
迷ってしまわないだろうか…)
アルジ(オレがベキザルを1人で倒してたら
リネも王雷を使わないで済んだのに…)
リネ「アルジさん、気にしないで」
アルジ「…ああ」
リネ「私たちはよくやりました。
アルジさんもいい戦いぶりでした」
アルジ「そうかな」
ミリ「うんうん」
エミカ「ベキザルの頑丈さが異常だったんだ」
アルジ「そうかな。…あれ?」
エミカ「どうした?」
アルジは小さな足音を聞く。
アルジ「………」
エミカ「アルジ」
アルジ「何か…来るぜ…!」
エミカ&リネ&ミリ「…!」
タジヤ「………」
遠くから手を叩く音。
木々の間から3人の女が現れた。
女A「やるじゃないか」
頭上で浮遊するのは光玉。
彼女も光の魔術の使い手。
リネ「あなた方は…」
女A「私はキャモ。魔獣猟師だ」
続けて、ほかの2人も名乗る。
女B「私はカナミ。同じく魔獣猟師」
女C「私はルノ。同じく」
エミカ「………」
エミカは思い出す。
彼女たち3人の顔を。
エミカ「あなたたちは物産館にいた…」
キャモ「そうだ。私たちは魔獣専門の狩人。
獲物を求めて来てみたら、この有様だ」
カナミ「何者なんだい?あんたたち」
リネ「魔術師です。旅をしています」
ルノ「魔術師が旅を…」
リネ「北土の魔術研究所を目指しています」
キャモ&カナミ&ルノ「………」
キャモたちの表情が曇る。
アルジ「…?」
キャモ「さぁ、帰ろうか」
ルノ「そうだな」
カナミ「ここにいたってしょうがない」
リネ「あの」
キャモ「ん?」
リネ「差し上げますよ」
キャモ&カナミ&ルノ「………」
リネ「仕留めた魔獣はあなた方に差し上げます。
肉も…毛皮も…すべて…」
カナミ「…ふん」
ルノ「なめられたものだな」
キャモ「…流儀に反する。
他人の戦利品をもらうなど」
リネ「………」
ルノ「キャモ、頼む」
キャモ「任せろ。あんたたちもついてきな!
森の外まで連れてってやる」
リネ「ありがとう」
キャモたち3人は歩き出す。
ついていくアルジたち。
キャモ「光る石ころがいくつも落ちてた。
あれはあんたらの仕業か」
リネ「私の魔術です」
キャモ「そうか。でも、すっかり消えたな。
さっきの雷術で魔力を使い切ったんだろ」
リネ「はい」
ルノ「魔力が尽きるまで戦うなんて…
いかれてるね…」
キャモの指先に巻きついているもの。
それは、光の帯。
森の中、それは細く長く伸びている。
木の幹に当たっては屈折。
先へ、先へと伸びている。
キャモたちが歩いた経路を示している。
その帯を回収しながら森の中を進む。
光帯。
キャモが編み出した光の魔術。
これを使えば迷わず帰れる。
キャモ「最近増えまくってる」
アルジ「何が増えてるんだ?」
キャモ「なんだろうな」
アルジ「………」
エミカ「魔獣か」
キャモ「当たりだ」
カナミ「駆除が追いつかなくなってきた」
ルノ「私たちも手一杯」
キャモ「同業の知り合いもみんな忙しい」
リネ「何か原因があるのでしょうか?」
キャモ「それを探してる」
カナミ「こっちも黙っちゃいられない」
ルノ「必ずいる。黒幕が」
アルジ「黒幕…か」
キャモ「そいつを潰さない限り…
状況はよくならない」
森を歩き続けるアルジたち。
タジヤが遅れる。
暗闇を怖がってぐずり出す。
ミリがなだめる。
アルジが背負う。
左腕の火傷が痛む。
だが、顔には出さない。
ミリ「あなたたちは魔獣を捕まえに来たの?」
カナミ「ああ」
ルノ「黒幕の手がかりがあれば…とも思った。
だが、ここにはどうやらなさそうだ」
ミリ「………」
キャモ「最初はただの迷子だと思ってた。
気の毒に思いながらも遠くから眺めてた。
あちこち探し回ってる町の人たちを。
そしたら、ぞろぞろ森から帰ってきた。
警備隊が、迷子も見つけられず。
なんの成果もなく戻ってきた。
それを見て、何かあるって思った。
森の中に入ってみたら、大当たり。
魔力を感じた。やけに荒々しい。
魔獣だった」
暗い森の中を歩き続ける。
アルジ「あ…ここは…」
そこは警備隊を助けた場所。
キャモは大きなため息をついて歩く。
キャモ「あんたたち…
よくもやってくれたよね」
エミカ「何を…?」
カナミ「森だよ。この森のこと」
ルノ「こんなに焼いて」
リネ「モムリソウがたくさん咲いていたので」
キャモ「ほかにやり方はなかったのか?」
ルノ「迂回するとか」
カナミ「防毒布で顔を覆ったり」
リネ「………」
キャモ「魔術の威力が高いのはいいことだ。
でも、壊しちゃだめだろ。草も花も木も。
あんたらは森を傷つけ過ぎた」
リネ「人の命がかかっていたものですから。
速く先へ進む必要があったものですから。
気分を害したのなら、ごめんなさい」
キャモ「…ふん」
さらに森を歩く。
歩きながらキャモは考える。
キャモ(ベキザルの群れ…ベキザルの長…。
もしも、私たちが遭遇していたら?
どうだっただろうか?倒せただろうか?
もしかすると、やられたかもしれない。
そうなったら、あの子は助からなかった…?
この連中のこのやり方は気に食わない。
だが、実力は本物。それは認めざるを得ない)
遠くに町の明かり。
アルジたちは森を抜ける。
キャモの光帯がぷつりと消えた。
タジヤ「やっと着いた…!」
ミリ「よかったね」
森の外で立っていたのは2人の男。
男A「よう、帰ってきたか」
キャモ「なんだ。そんなところにいたのか。
森の中に来てると思ってた」
男A「暗いからな。やめといた」
男B「獲物は?」
ルノ「とられた」
男A「とられた?」
男B「お前たちが?」
男A「考えられんが…」
カナミ「でも、いいもの見れたよ」
ルノ「あんな魔術…見る機会はなかなかない」
男B「ほう…」
キャモ「戦闘力だけで言えば…
私たちといい勝負かも」
男A「本当かよ」
男B「はっ、まさか…」
最初に声をかけてきた男はゴタンジ。
もう1人の男の名前はゲンダ。
どちらも魔獣狩り専門の猟師。
彼らとキャモ、カナミ、ルノの5人は仕事仲間。
一緒に狩りに出かけては、成果で競い合う。
強い魔獣がいれば、力を合わせて立ち向かう。
互いに実力を認め合う関係。
アルジは男たちとすれ違う。
ゴタンジ(この男…)
ゲンダ(かなりやるな…)
アルジ「なんだ?人をじろじろ見やがって」
ゴタンジ「名乗れよ」
アルジ「アルジだ。お前たちは?」
ゴタンジ「オレはゴタンジ」
ゲンダ「オレはゲンダ」
アルジ「ゴタンジに、ゲンダか」
ゴタンジ「お前、剣士だな?」
アルジ「そうだ。この剣がオレの…」
ゲンダ「おい、お前…もしや…」
アルジ「なんだ?」
ゲンダ「ナキ村から来たのか?」
アルジ「え…?そうだが…」
ゲンダ「おいおい、なんだ、なんだ。
こんな場所で同郷の者と会うとはな!」
アルジ「あんたもナキ村から来たのか?」
ゲンダ「ああ。もう10年くらい前のことだ。
村を出て、猟師になって、ずっと帰ってない」
アルジ「10年前か…。
あんたのことは知らないな」
ゲンダ「お前が託されたのか。その剣を」
アルジ「ああ」
ゲンダ「お前とはまたどこかで会うだろう」
アルジ「どうかな」
ゲンダ「そんな気がする」
アルジ「どうだか…」
ゲンダ「…ふん」
そして、アルジたちはガヒノの町へ。
タジヤを連れて歩いていく。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 15
◇ HP 16/933
◇ 攻撃
25★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 防御 7★★★★★★
◇ 素早さ
17★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 4★★★★
◇ 装備 勇気の剣
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り
◇ エミカ ◇
◇ レベル 13
◇ HP 403/630
◇ 攻撃 9★★★★★★★★★
◇ 防御 12★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 12★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
22★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★
◇ 装備 魔樹の杖、深紅の魔道衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海、王火
◇ ミリ ◇
◇ レベル 10
◇ HP 315/522
◇ 攻撃 4★★★★
◇ 防御 7★★★★★★★
◇ 素早さ 10★★★★★★★★★★
◇ 魔力
25★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 装備 魔石の杖、紺碧の魔道衣
◇ 魔術 氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
◇ リネ ◇
◇ レベル 26
◇ HP 751/921
◇ 攻撃 7★★★★★★★
◇ 防御
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 13★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、創造の杖、聖星清衣
◇ 魔術 雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療薬 25




