第51話 真似
アルジはエミカたちの方へ走って戻る。
アルジ「警備隊だ!たくさんいた!
全員寝てるぜ!!」
リネ「やっぱりそうですか」
アルジ「花の匂いにやられちまったみたいだ」
リネ「近くを歩いてしまったんですね」
エミカ「モムリソウの花を知らなかったのか」
ミリ「助けよう」
リネ「ええ、もちろん。
香りが届かないところまで運び出せば、
目を覚ましてくれるかもしれません」
アルジ「担いで運び出すには数が多いぜ」
リネ「任せて」
リネが懐から袋を出す。
ラアムとナアムの入った袋を。
リネ「乗せて運び出しましょう。
エミカもミリもやってくれる?」
エミカ&ミリ「はい」
アルジ「乗せるのはオレがやろう」
リネ「香りを吸わないように気をつけて」
4人は乗る。
アルジとリネがラアムに。
エミカとミリがナアムに。
息を止めて2頭で向かっていく。
モムリソウが咲き、警備隊員たちが眠る場所へ。
アルジがラアムから降りる。
警備隊員を背負い、乗せていく。
リネのラアムに、エミカとミリのナアムに。
乗せ終えると、すぐにその場から離れる。
リネ「この辺なら大丈夫でしょう」
乗せていた警備隊員をアルジが下ろす。
再び花の咲く場所へ行き、運び出す。
何往復もそれを繰り返す。
アルジ「もう誰もいないな」
エミカ「ああ、1人もいない」
ミリ「ふー、緊張した」
リネ「お疲れ様でした」
眠っていた全員を運び出した。
しばらく様子を見ていると、彼らは目覚める。
1人、また1人と。
警備隊員A「君たち、助けてくれてありがとう」
アルジ「大したことないぜ」
警備隊員B「いつの間にか眠ってしまった」
警備隊員C「恐ろしい花だ」
警備隊員D「とんだ失態だ。申し訳ない」
警備隊員は全部で24人。
彼らに連れてこられた体力自慢の若者が3人。
幸いなことに負傷者はなかった。
だが。
アルジ「子どもはいないか…」
リネ「いませんでしたね」
警備隊員たちは口々に言う。
警備隊員D「もっと奥に行ったのかもしれない」
警備隊員C「オレたちも…かなり探した」
警備隊員B「探すのに夢中で花に気づかず…」
アルジ「分かった」
ミリ「この近くにはいないってことだね」
リネが小さくうなずいて言う。
リネ「進みましょう」
エミカ「でも、モムリソウが…」
ミリ「花は向こうまでずっと咲いてますよ」
リネ「仕方ありません。このような状況では…」
アルジ「…?」
リネ「焼くのです」
エミカ「焼く…」
リネ「エミカ、あなたの魔術で焼き払うのです」
エミカ「でも、そんなことをしたら…」
リネ「大丈夫」
アルジ「大丈夫って…火事になるんじゃないか」
ミリ「私がいるよ」
アルジ「ああ…」
リネ「そうです」
エミカ「………」
リネ「心苦しいですが、そうするしかない」
エミカは杖を強く握る。
アルジ、リネ、ミリが後ろで見守る。
警備隊員たちはさらにその後ろで見ている。
エミカ(火砲では…どうか?いや、足りない。
あのたくさんの花を焼き尽くすには…
全然足りない…。それなら…)
高まる集中力。
集まる魔力。
緊張感で空気がはりつめる。
杖を大きく振り上げる。
エミカ(吹き飛べ!!)
巻き上がる炎。
燃え盛る地面。
目の前は瞬く間に火の海に。
アルジ「すげえ!」
リネ「見事です」
警備隊員たち「!!!!?」
ミリ「私の出番だね!」
モムリソウを焼きながら広がっていく炎。
その猛烈な炎をミリが鎮める。
恐ろしく強い冷気で。
目の前に大きな冷気の渦が広がる。
ミリ(冷えて固まれ!!)
炎は冷気の渦に飲まれる。
勢いを失い、消えていく。
残ったのは、ひんやり冷えた黒焦げの地面。
近くの木々の幹や根も黒くなって冷えていた。
エミカ「あの炎をすぐに消すなんて…やるな」
ミリ「エミカもね」
アルジ「どっちの魔術もやばいな」
リネ「また成長しましたね」
◇ エミカは火海を習得した。
◇ ミリは氷渦を習得した。
アルジは警備隊員たちを見て言った。
アルジ「聞いてくれ。オレたちはさらに進む」
警備隊員たち「………」
アルジ「あんたたちはもう帰った方がいい」
警備隊員たち「………」
リネ「この先に魔獣がいるのです」
警備隊員たち「…!!」
エミカ「どれぐらい強いかは分からない」
ミリ「ベキザルがいるかも」
警備隊員たち「………」
アルジ「だから、帰った方いいぜ」
リネ「光る石を目印として落としてきました。
それらをたどれば迷わずに森から出られます」
警備隊員A「心苦しいが…」
警備隊員B「我々は…ここで帰るとしよう」
警備隊員C「そうだな…魔獣に出てこられては…」
警備隊員D「すまない。あとは任せた」
警備隊員が去ろうとしたとき。
男の声「ちょい待てやあ!!!」
体格のよい3人の男たちがやって来る。
彼らは警備隊が連れてきた若者たち。
男A「偉そうにしてんじゃねえぜ!おい!!」
男B「帰った方がいいだと?ざけんな!!」
エミカ(さっきまで寝てたくせに…)
男C「おい!偉そうになんだ!おい!!」
警備隊員A「おい…!よさないか!!」
アルジ「…ふっ」
アルジは笑った。
男A「ああ!?何笑ってんだ!てめえ!!」
その男は木剣を握り、アルジに向ける。
男A「やるか?おい!やるか?おい!!」
男B「てめえ!勝負だ!!」
男C「来やがれ!」
アルジ(こいつらは…
力で分からせなきゃだめか…)
アルジは前へ出て剣を振る。
次の瞬間、1人の男の木剣を斬り飛ばした。
男A「…は?」
木剣の断片は回転しながら地に落ちた。
アルジは新技、朔月斬りを見舞った。
警備隊員A(今…あいつが斬ったのか?
よく見えなかったが…)
男B&C「………」
アルジ「オレの攻撃が見えたか?」
男A「…!」
アルジ「見えなかっただろ。これが力の差だ」
男A「ぐ…!」
アルジ「まだやるつもりか?…やめとけ。
この先どんな化け物が出てくるか分からない。
お前たちを守る余裕なんてない」
男A&B&C「…………」
警備隊員A「さあ、ここは帰ろう!帰るぞ!」
警備隊員たちは去っていく。
警備隊員に引っ張られ、男たちも立ち去る。
エミカ「決まったな」
リネ「見事な技です」
ミリ「エオクシさんの真似だったけどね」
アルジ「…!」
ミリ「でも、よかったよ」
アルジ「…そっか。さあ、行こうぜ!」
さらに森の奥へ進むアルジたち。
焼けた土を踏んでいく。
深い森は続いている。
再び前方に白い花が見えてきた。
モムリソウだった。
エミカ「たくさん咲いてるんだな」
リネ「そのようですね」
ミリ「全部焼いて進んだら、魔力が尽きちゃうね」
リネ「待って!」
リネの大きな声で立ち止まるアルジたち。
リネ「来ます。魔獣が。向こうの方から来ます!」
ミリ「強い魔波だ!」
エミカ「何頭もいるみたいだな」
アルジ「ベキザルのお出ましか」
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 11
◇ HP 494/494
◇ 攻撃
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 12★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 3★★★
◇ 装備 勇気の剣、銀獣の鎧
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、 朔月斬り
◇ エミカ ◇
◇ レベル 10
◇ HP 403/403
◇ 攻撃 8★★★★★★★★
◇ 防御 12★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 10★★★★★★★★★★
◇ 魔力
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 魔樹の杖、深紅の魔道衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海
◇ ミリ ◇
◇ レベル 8
◇ HP 315/315
◇ 攻撃 4★★★★
◇ 防御 7★★★★★★★
◇ 素早さ 9★★★★★★★★
◇ 魔力
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 魔石の杖、紺碧の魔道衣
◇ 魔術 氷弾、氷柱、氷乱、氷渦
◇ リネ ◇
◇ レベル 24
◇ HP 751/751
◇ 攻撃 7★★★★★★★
◇ 防御 16★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 11★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、創造の杖、聖星清衣
◇ 魔術 雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療薬 25