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アルジ往戦記  作者: roak
50/300

第50話 複合

アルジたちは町の外れを歩く。


子の父「もう少しです」


果樹園の中を通り抜ける。

前方に深い森が見えてきた。

それが、ベキザルの森。


子の父「お気をつけて…」

子の母「ご無事を…お祈りします」

アルジ「ああ」

エミカ「あの…1つ聞いても?」

子の父「…なんですか?」

エミカ「ほかに…伝えることは…?」

子の父「…はい…?」

エミカ「さっき…ベキザルの森は

 探してないと言いましたよね。

 でも、それは本当にそうなんですか?」

アルジ「…?」

子の父「………」

エミカ「まだ探してない…わけじゃない。

 違いますか?」

子の父「………」

アルジ「どういうことだ?」

エミカ「正しく言えば…まだ探し終えてない」

子の父「!!」

エミカ「そういうことじゃないんですか?」

ミリ「それはつまり…」


迷子の父は、震える声で打ち明けた。

迷子の母は、彼の腕を強くつかんだ。


子の父「言ってませんでした…」

アルジ&エミカ&リネ&ミリ「………」

子の父「大事なことを…あなた方に…」

アルジ「大事なことってなんだ?」

子の父「ベキザルの森は…

 警備隊が探してくれています…」

アルジ「警備隊…」

子の父「そうです。この町の警備隊の方々です。

 昨日の昼下がりから…捜索してくれています。

 体力に自信のある若い男たちも引き連れて…」

アルジ「そうだったのか」

子の母「警備隊のみなさんは、

 町へ戻ってきてません。

 昨日から1度も…誰1人として…」

エミカ「…おかしいと思ったんだ。

 広場には町の人たちが集まってたけど、

 警備隊らしき人は1人も見なかった」

アルジ「そうだな」

ミリ「それって…」

リネ「警備隊は今も捜索してるということ?」

子の父「そうです…。探してくれています。

 本部で待機している隊員の方々を除いて…」

エミカ「今も無事に捜索だったらいいけど」

アルジ「…大丈夫じゃないのか?」

リネ「ベキザルという化け物次第でしょうね」

アルジ「………」

リネ「昨日、日が暮れても帰ってこなかった。

 …やられた可能性が高いということでは?」

ミリ「あれ…。大変なことになってきたかも」

アルジ&エミカ「………」

子の父「…隠すつもりはありませんでした。

 ただ…言い出しづらくて…。

 せっかく…協力すると…言ってくれた…

 あなた方の心を…くじいてしまう…

 そんな気がして…言えませんでした…」

アルジ「そんなことでやめるわけないぜ」


リネの表情が曇った。


リネ「森の方から…魔波を感じます」

アルジ&エミカ&ミリ「…!」

子の父「?」

リネ「森の奥の方から…強い魔波を感じます。

 この荒々しい感じ…。

 これは…人のものではない。

 魔獣の魔波です…だけど…どうして…

 獣が放つ魔波にしては…

 洗練されている気もする…」

ミリ「私には…分かんないな…」

エミカ「だめだ…私も」

リネ「ここからだとあなたたちには無理…。

 私くらいの感知力がなきゃ

 分からなくて当然です」

子の父「あなた方は…魔術師なんですか?」

エミカ「そうだ」

子の父「ほ…!素晴らしい…」

アルジ「オレは剣士だ」

子の父「あ、ああ。あなたは…分かります…。

 あなた方はとても強そうだ…。

 ですが、どうか…くれぐれも気をつけて。

 ベキザルは…決して空想の獣ではありません。

 私は…そう思います」

アルジ「ああ」

子の父「ほかの町人たちも…下らない作り話、

 架空の獣と笑っていますが、心のどこかでは、

 その存在を信じていて、恐れています…。

 私も行きたいところですが…ありません…。

 私には…武術も…魔術も…。

 だから…森へ行って…手伝うことも…

 本当に…無念ですが…できません…。

 申し訳ありません…」

アルジ「無理に動かない方がいいぜ

 オレたちに任せてくれ」

リネ「息子さんのため、

 家で待ってておやりなさい」

子の父「ありがとう…。本当に…ありがとう。

 だが、どうして、こんな危険を冒してまで…?

 あなた方は一体…」

アルジ「オレたちは星の秘宝を求めて旅してる。

 通りかかった町で…人の力になれないで…

 その目的が成し遂げられるわけがない。

 そう思うんだ」

子の父「星の秘宝ですか。聞いたことがない…。

 でも、その宝の名前…。

 星の秘宝って…すごい名前だ」

子の父「あなたがたは…

 何か大きなことをやろうとしてるんですね」

アルジ「まあな。

 じゃあ、ちょっと行ってくるぜ!」

子の母「息子を…よろしく頼みます」

ミリ「任せて」



◆ ベキザルの森 ◆

アルジたちは森に足を踏み入れる。

そこに道らしき道はない。

木々の間を歩いて進む。

黒く柔らかい土を踏んで。


リネ「気ままに進むと遭難するね」

エミカ「こんなに深い森ですもんね」

ミリ「どこから来たのか分からなくなってきた」

リネ「私に任せて」


リネは指先に小さな岩石の粒を出す。

岩の魔術、岩弾だった。

それを今度は光の魔術、光玉で包む。

それを地面にポトリと落とす。


リネ「これで目印になります」


光を放ち続ける岩弾。


リネ「地面に置きながら進んでいきます。

 光はほぼ丸一日保てます。

 私の魔力が尽きない限り。

 これで夜中でも安心して帰れます」

アルジ「こんな魔術のやり方があるのか」

ミリ「素晴らしいです。

 こんな魔術があるなんて」

リネ「2つの魔術を組み合わせて使う。

 これを複合魔術と言います。

 私の研究主題でした」

エミカ「リネさんの論文研究所で読みました。

 新しい視点から深く考察されていて…

 複合魔術の新説はとても難しかった…。

 でも、感動しました」

リネ「嬉しい。照れるじゃない」

アルジ「複合魔術か。助かるぜ。

 ありがとう、リネ」

リネ「ただ1つ、知っててほしい」

アルジ「なんだ?」

リネ「この魔術は見た目以上に魔力を使う。

 今回、私はあまり強力な魔術を使えない。

 ヤマエノモグラモンに使った王雷のような…」

ミリ「つまり、私たちが頑張ればいいんだね」

エミカ「そういうことだな」

アルジ「どんな化け物だろうと倒してやるぜ。

 奥に…魔獣がいるんだよな?」

リネ「はい。魔波は…

 さっきより強くなっていますね」

ミリ「私も少し感じてきた」

エミカ「まだ誰も襲われてないといいけど」

アルジ「そうだな。先を急ごうぜ!」


複合魔術。

リネの研究主題。

森の中を歩きながらアルジはふと考えた。


アルジ(マスタスの変態魔術もそうなのか?

 死んだ人に命を与えて心を操る魔術…。

 てことは、光の蘇生魔術と…闇の精神操作…

 2つの魔術を組み合わせたものなのか…?

 いや、闇の魔術師には光の魔術は無理だ。

 昨晩、リネが教えてくれたもんな。てことは…

 そうなると…えーと…よく分からん)


木の根にアルジは足を引っかける。


アルジ「おわー!」


倒れそうになるが、どうにかこらえる。


エミカ「大丈夫か?」

アルジ「ああ、大丈夫だ」

ミリ「変なこと考えてたんじゃないの?」

アルジ「…考えてないぜ!」

リネ「ほとんど手つかずの森のようです。

 足元に気をつけて」

アルジ「ああ…」

エミカ&ミリ「はい」

アルジ(今は…考え事はやめだ…。

 魔術のことはあとでリネに聞けばいいしな!)


さらに歩き続ける。

アルジたちは見つける。

向こうにいくつも花が咲いているのを。


アルジ「花か」

エミカ「あの花は…」

ミリ「綺麗だね」

リネ「近づいてはいけませんよ」

エミカ「あの花って…」

リネ「モムリソウの花…」


モムリソウ。

深い森の中に自生している。

甘い香りを放つ、白く大きな花が咲く。

その香りには強い催眠作用がある。


リネ「香りをかいでいると

 眠ってしまうから注意して」

エミカ「はい」

ミリ「あれ?何かいませんか?」

エミカ「本当だ」

ミリ「倒れてる!何人も!」

リネ「警備隊…でしょうか?」

アルジ「任せろ。オレが見てくるぜ」


息を止め、アルジは花の方へ歩く。

地面に倒れている人々の姿を見つける。


アルジ(7人、8人…もっといる…!)


彼らは防護服を着て剣を腰に携えていた。


アルジ(…警備隊か)



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 11

◇ HP   494/494

◇ 攻撃

 18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御  14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 12★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  3★★★

◇ 装備  勇気の剣、銀獣の鎧

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、

      朔月斬り


◇ エミカ ◇

◇ レベル 10

◇ HP   403/403

◇ 攻撃  8★★★★★★★★

◇ 防御  12★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 10★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  魔樹の杖、深紅の魔道衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹


◇ ミリ ◇

◇ レベル 8

◇ HP   315/315

◇ 攻撃  4★★★★

◇ 防御  7★★★★★★★

◇ 素早さ 9★★★★★★★★

◇ 魔力

  19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  魔石の杖、紺碧の魔道衣

◇ 魔術  氷弾、氷柱、氷乱


◇ リネ ◇

◇ レベル 24

◇ HP   751/751

◇ 攻撃   7★★★★★★★

◇ 防御  16★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 11★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、創造の杖、聖星清衣せいせいせいい

◇ 魔術  雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療薬 25

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