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アルジ往戦記  作者: roak
48/300

第48話 坂道

アルジとエミカは宿へ戻る。

部屋ではリネとミリが座って茶を飲んでいた。


リネ「朝食はまだだそうです」

ミリ「配達が遅れたんだって」

アルジ「配達…?」

リネ「食材が届かなかったそうです。

 マレヤギの乳が」

エミカ「そうなんですか」

アルジ「マレヤギ…」

ミリ「女将さんに言ったんだけどね。

 別にいいよって。でも、聞いてくれなくて。

 おいしいからどうしても食べてほしいって」

エミカ「ガヒノ町のマレヤギは有名だからな」

ミリ「おいしいんだ」

エミカ「すごくおいしい」

ミリ「どんな料理?」

エミカ「前に食べたのは丸くて、白くて、

 ツルツルしてた」

ミリ「なんなのそれ?食べてみたい。

 どんな味だった?」

エミカ「そうだな、例えるなら…」


ガヒノはオケアの隣町。

高原にあり、酪農がさかん。

マレヤギという家畜がたくさん飼われている。


アルジ「オレは風呂に入ってくるぜ。

 ちょっと汗かいたし」

リネ「ええ、行ってらっしゃい」


1人風呂へ行くアルジ。

そこには昨日の老夫がいた。

湯に浸かり目を閉じている。

アルジが湯に浸かると、気づいて目を開ける。


老夫「おや…」

アルジ「また会ったな」

老夫「おお、ほっ、ほっ…」


嬉しそうに笑う老夫。


アルジ「…?」

老夫「昨晩より顔がすっきりしておる」

アルジ「そうかな」

老夫「見つめ直し…壁を越えたのではないか?」

アルジ「まあ、そうだな」

老夫「あんたのその顔が何より物語っておる!」

アルジ「ありがとう。あんたのおかげだ」

老夫「感謝されるようなことじゃない」

アルジ「また一つ、強くなれた」

老夫「それはよかった。だが、忘れるでない」

アルジ「何を?」

老夫「青年剣士よ、忘れるでない。

 戦い続ける限り、死はすぐそばにある」

アルジ「…ああ」

老夫「ワシの1人息子も剣士だった」

アルジ「………」

老夫「故郷を出て、都へ行き…

 政府の戦闘部隊に入った」

アルジ「まさか…大前隊?」

老夫「ほっほっ、そんな立派なもんじゃない。

 三隊だ。最も下の三隊だ」

アルジ「三隊…」

老夫「だが、あいつは誇りを持っていた。

 自分の仕事に誇りを持って取り組んでいた。

 正義感の強い剣士だった。わしにはない。

 そういうのは。母親に似たのかもしれん」

アルジ「今も都にいるのか?」

老夫「死んだ」

アルジ「………」

老夫「今から20年以上も前のことになるか。

 ノイ地方で戦乱があった」

アルジ「ああ…」


ノイの乱。

23年前、ノイ地方で起きた政府への反乱。

ノイ地方の民による大規模な武装蜂起。

政府は多数の兵を動員し、これを鎮圧。

反乱の原因は、重い税と激しい取り立て。

この事件を契機にノイ府の警護は強化された。


老夫「そこであいつは死んだ」

アルジ「………」

老夫「ノイ民の戦士と戦って敗れた」

アルジ「戦い続ける限り、

 死はすぐそばにある…か」

老夫「そうだ。その言葉を忘れるでない」


老夫は風呂から上がり、浴室から出ていく。


アルジ(…少しのぼせてきたな)


アルジも湯から上がる。

それから、水風呂にどっぷり浸かる。


アルジ「うお!!」


冷たさに驚く。

両手で自分の頬を叩く。


アルジ(リネも言ってたな…。

 この先どんな敵が出てくるか分からないって。

 これからも…気を引き締めていかないとな!)


部屋に戻るアルジ。

中から声が聞こえてくる。


ミリ「へえー!会うのが楽しみです」

リネ「髭が似合うとても素敵な方だから」

エミカ「年齢はすごく上だけど」

アルジ(髭が似合う…?年齢が上…?)


盛り上がっていた。


アルジ「戻ったぜ。なんの話をしてたんだ?」

リネ「所長の話です」

アルジ「所長…」

エミカ「北土の魔術研究所のホジタ所長だ」

アルジ「ああ…」

ミリ「とてもかっこいい人なんだって。

 魔術ができて、人望もあって、すごいよね」

アルジ「そうなのか」

エミカ「いつも不機嫌そうで私は苦手だったな」

リネ「研究所長は激務ですから。

 気が張り詰めていて、そう見えただけかも。

 本当は気さくで話しやすい人だから…」

アルジ「オレも髭を生やしてみようかな」

ミリ「だめだめ、似合わない」

エミカ「…やめときな」

アルジ「………」


女将がやってくる。


女将「お待たせしました。

 朝食の用意ができました。

 遅くなって本当にごめんなさい。

 でも、とてもおいしくできました。

 どうぞ、さあ、お楽しみください」

リネ「ありがとう。ところで配達の遅れとは…

 一体何があったのでしょう。こんな晴天で…」

女将「人手を取られているようです。

 配達人も詳しく教えてくれませんでしたが…」

アルジ「なんだろうな」

ミリ「なんだろう?」

エミカ「また化け物じゃなきゃいいけど…」

リネ「…何もないことを願いましょう」


アルジたちは朝食を食べた。

蒸した野菜、焼いた川魚、ゆでた豆。

どれも美味。

そして、最後に運ばれてきた料理。

それは、白く、丸く、表面が滑らか。


アルジ「なんだ?これは…」

エミカ「ああ、これだ!これを食べたんだ」

リネ「あら、綺麗じゃない」

ミリ「わぁー」

女将「こちらはマレヤギの乳から作りました。

 なかなか届かず、遅くなってしまいましたが、

 どうしても食べていただきたくて…

 ご賞味あれ!」


アルジたちはサジですくって食べ始める。

滑らかな表面は弾力のある食感。

中はとろりとしている。

まろやかな甘味が口の中に広がる。


アルジ「……うまい!」

エミカ「そうだろう」

ミリ「こんなの初めて。面白くておいしい」

リネ「待っていてよかったです」

女将「そう言っていただけて光栄です。

 お弁当も用意したので、どうぞ持っていって。

 旅の続きもお気をつけて」

アルジ「ああ、ありがとう。女将さん」


アルジたちは宿を出る。

宿代はリネが支払った。

4人は再びトウオウ道を進む。

ラアムとナアムに乗って。

北土の魔術研究所に向かう。

登り坂が続き、ミリはすぐに音を上げた。


ミリ「きっついなー」

エミカ「これも魔術の訓練だ。頑張ろう」

ミリ「リネさん、もうあんなところに…」

エミカ「…あれこれ言うな。追いつくんだ。

 私たちの魔力で。坂の終わりは見えてるだろ」

ミリ「歩かない?」

エミカ「………」

ミリ「降りて歩いた方が楽だよ。これなら」

エミカ「………」

ミリ「ねえ、エミカ。歩こうよ」

エミカ「…そうしようか」


エミカとミリはナアムから降りた。


アルジ「2人とも降りたぜ」

リネ「確かにこの坂道…

 歩いた方が楽かもしれない」


4人は並んで坂道を歩く。

昼になると弁当を食べた。

宿でもらった弁当を。

見晴らしのいい場所で。

遥か遠くには海が見えた。


ミリ「外で食べるとおいしいよね」

エミカ「そうだな。景色がいいと一層おいしい」

ミリ「空気もおいしい。やっぱり外っていいな」

リネ「ミリはなかなか外出できなかったものね」

ミリ「移動は大変だけど楽しいです」

アルジ(ミリは…そうか…そうだよな。

 表向きは死んだことになってるんだよな)


弁当を食べ終えて歩き出す。

登り坂は次第に緩やかになる。

3人の旅人たちが地面に座り込んでいた。

仲間の1人が転んで足をくじいたのだった。

リネが治療魔術で治す。

旅人は彼女に感謝する。


アルジ(人を喜ばせる光の魔術があれば、

 人を苦しめる闇の魔術もある…。

 魔術って…いろいろあって不思議だ)


アルジたちは再び歩き出す。

連なる建物と広い牧場が見えてきた。


ミリ「町だ!」

エミカ「マレヤギもたくさんいるな」

リネ「ガヒノに着きましたね。

 ここで休憩しましょう」

アルジ「ああ、そうしよう」



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 11

◇ HP   494/494

◇ 攻撃

 18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御  14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 12★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  3★★★

◇ 装備  勇気の剣、銀獣の鎧

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り


◇ エミカ ◇

◇ レベル 10

◇ HP   403/403

◇ 攻撃  8★★★★★★★★

◇ 防御  12★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 10★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  魔樹の杖、深紅の魔道衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹


◇ ミリ ◇

◇ レベル 8

◇ HP   315/315

◇ 攻撃  4★★★★

◇ 防御  7★★★★★★★

◇ 素早さ 9★★★★★★★★

◇ 魔力

  19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  魔石の杖、紺碧の魔道衣

◇ 魔術  氷弾、氷柱、氷乱


◇ リネ ◇

◇ レベル 24

◇ HP   751/751

◇ 攻撃   7★★★★★★★

◇ 防御  16★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 11★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、創造の杖、聖星清衣せいせいせいい

◇ 魔術  雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療薬 25

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