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アルジ往戦記  作者: roak
45/300

第45話 処分

リネはアルジたちに話す。

彼女をさらに驚かせたマスタスの行動について。



◆◆ 18年前 ◆◆

◆ 研究員寮 マスタスの部屋 ◆

変態魔術。

その新魔術を目の当たりにして驚くリネ。

マスタスは彼女に見せる。

乱れた彼女の心に追い打ちをかけるように。


マスタス「ほら、見て」


つかんだコガネカマキリを彼女の顔に近づける。


マスタス「こいつの目のところ、よく見てくれ」

リネ「!!?」

マスタス「見えたか?見えるよね。

 君ほどの魔力があれば、わけなく見えるよな」

リネ「ああ、なんてこと…」


コガネカマキリの目の奥に渦巻くもの。

それはマスタスの闇の魔力。

蘇生魔術は死んだものを生き返らせる。

生きていたときの姿を再生させる。

しかし、変態魔術はそれとは違う。

魔力を注ぎ込み、生き返らせる。

生き返らせたものの中に魔力はとどまる。

そして、その魔力を使って動かす。

生き返らせたものを、意のままに。

その性質の悪さに彼女は震えた。


リネ「うっ…」


めまいがして、よろけてしまう。

近くに置いてあった屑籠を蹴ってしまう。

屑籠が横倒しになる。

中から何かが床に撒かれた。

細かいチリやカスが大量に。


リネ「ごめん!」

マスタス「いいよ。すぐに掃除する」


マスタスは腰を落とし、手ですくう。

ぱらぱらと籠にいれる。

その大量の何かのチリやカスを。


リネ「手伝う」

マスタス「いいって」


リネもしゃがみ、手伝おうとしたそのとき。


リネ「!!これ…!」

マスタス「ああ、何度も試したんだ。

 外の虫を使ってね。

 どうやったら、うまくいくかって。

 どうやったらダメなのか…」


大量のチリやカス。

それは彼が外で捕まえた虫の体の一部だった。


リネ「う…!」


彼女は叫びそうになるが、我慢する。

ふと目に入ったのは、飼育容器。

彼が大切に飼っていた仲間たちの飼育容器。

いつものように整然と並べられている。

それらに目が行ったのは偶然ではなかった。

彼女は確かに感じ取ったのだった。

これまで気にしていなかった魔波に。

飼育容器から漏れ出ている闇の魔波に。

リネは容器越しに恐る恐るヘビの顔をのぞく。

ヘビの目の奥にもぐるぐると渦巻いていた。

マスタスの闇の魔力が。

虫もカエルもトカゲもみな同じくそうだった。


マスタス「…気づいたか」

リネ「ひどい!あなたって…!

 あなたって人は…!」

マスタス「言うことを聞くようになったんだ。

 前よりもずっと。ずっと愛らしくなった」

リネ「ミイタは?ミイタはどこ?」

マスタス「ああ、ここにいる」


彼の懐からミイタは出てきた。


マスタス「もう逃げなくなった。

 オレの手元から。だからいつもここにいるよ」


ミイタはその小さな顔をリネに向けた。

その目の奥にもマスタスの魔力が渦巻いていた。


リネ「!!最低だ!!あなたは最低!!」

マスタス「どうして…?」

リネ「帰る!私、もう帰るから!」

マスタス「そんな!待ってよ!!」


リネはマスタスの部屋から出ていった。



◆◆ 現在 ◆◆

当時を思い出し、深いため息をつくリネ。


リネ「彼は仲間たちをすべて殺してから、

 変態魔術で生き返らせていたのです」

アルジ「なんてことをするんだ…」

エミカ「ミイタも…」

リネ「はい」

ミリ「せっかくリネさんが生き返らせたのに」

リネ「その日から私たちは…

 ほとんど口を利かなくなりました。

 魔術の研究だけは一緒にやりました。

 やりかけのものがいくつかあったので。

 でも、最小限の会話しかしませんでした」

アルジ&エミカ&ミリ「………」

リネ「ですが、しばらくして…急に…

 彼から私に話しかけてきました。

 あれは…私が研究所から帰る途中…

 イシナ茶屋でお茶を飲んでいたとき…」



◆◆ 18年前 ◆◆

◆ イシナ茶屋 ◆

リネは1人、窓際の席で茶を飲んでいる。

キラキラと輝くイシナ川の水面を眺めながら。


マスタス「隣…いいかな」

リネ「!」

マスタス「だめか?」

リネ「…いいよ」

マスタス「ありがとう」


◆ マスタスも座り、茶を飲む。


マスタス「この前はごめん」

リネ「………」

マスタス「オレは間違っていたと思う」

リネ「………」

マスタス「全部、処分したんだ」

リネ「処分した?」

マスタス「燃やして捨てた」

リネ「捨てた…」

マスタス「ヘビも、虫たちも…ミイタも。

 すべて燃やして…捨てたんだ」

リネ「え…?」

マスタス「オレは間違ってた。

 あのとき、オレがあいつらを殺めた時点で、

 本当のあいつらはもう、この世にはいなくて…

 それをオレの力で生き返らせてやろうなんて…

 それは…命を軽んじる行為で…許されなくて…

 あと、何より…寮って虫とか飼うの禁止だろ。

 だから、すべて終わらせた。燃やして捨てて。

 今更なんだけどさ。ははは…」

リネ「………」

マスタス「なあ、リネ。旅をしないか?」

リネ「旅?」

マスタス「都に行ってみないか?」

リネ「都…」

マスタス「ああ。都だ。

 都はいろんな人や物が行き交っている。

 いろんなことが起きていて、

 ここよりずっと賑やかだ。

 市場で買い物してもいいし、

 何か演劇を観てもいい。

 魔術院に行ってみるのもいいかもな。

 魔術院を見に行かないか?

 オレたち魔術師だし。

 新しい刺激とか発想をもらえるかもしれない」

リネ「行ってみたい」

マスタス「ありがとう。

 あとで早速、計画を立てよう」



◆◆ 現在 ◆◆

リネの光玉が放つ光は弱くなり始める。


リネ「あのとき、おかしいと思った」

アルジ「………」

リネ「仲間をすべて処分してしまうなんて」

エミカ「そうですね」

リネ「だけど、私は同時に安心していた。

 ああ、これで普通に戻ってくれたんだって。

 もうあの虫やヘビたちがいないのなら、

 あんなひどいこともしないだろうって。

 私は安心していた。異常だと思いながら!」

ミリ「ちょっと…分かります」

リネ「彼に旅行に誘われたのも…

 初めてだったしとても嬉しかった。

 浮かれてしまった。あのときの私は…。

 それで、もうそれ以上追求できなかった。

 止めるなら、彼の変態魔術を止めるのなら、

 もう2度とあの魔術を使わないでって…

 止めるなら…あのときが、絶好の機会だった。

 でも、私は…」

アルジ&エミカ&ミリ「………」


光玉はさらに明るさを失っていく。


リネ「彼の話は…もうこの辺にしましょう。

 私の魔力も…かなり減ってきました。

 次は、これからの旅について話しましょう」

アルジ「北土の魔術研究所へ行くんだろ?」

リネ「はい」

アルジ「マスタスは研究所にいるのか?」

リネ「彼がどこにいるのかは分かりません。

 おそらく北土の魔術研究所にはいない…」

エミカ「どうしますか?」

リネ「探ります。研究所で。

 彼の居場所について。

 手がかりとなるものを。

 そのために私は…研究所長と話をします」

エミカ「研究所長…」

リネ「ホジタ所長…彼と話します」


北土の魔術研究所、所長ホジタ。

彼は大陸中にその名が通っている。

権威ある大魔術師。


アルジ「研究所長なら…」

リネ「はい、何か知っていると思います。

 彼の現在について」

ミリ「教えてくれるといいですね」

リネ「ええ」

エミカ「リネさんが…

 最後にマスタスと会ったのはいつですか?」

リネ「彼と都を旅して、帰ってきて、

 少ししてからのこと」

アルジ「それから…ずっと会ってないのか?」

リネ「はい。彼は突然、研究所を去りました。

 それから、彼の行方は分かっていません。

 研究所のほとんど誰も。

 ですが、ホジタ所長なら…」

ミリ「所長はマスタスと知り合いなんですか?」

リネ「ええ。

 私とマスタスが研究所に入ったとき、

 彼は私たちにとって指導担当者の1人でした。

 マスタスが研究所を去るときも。だから…」

アルジ「何か知ってるかもな」

リネ「そういうことです」



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 11

◇ HP   494/494

◇ 攻撃

 18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御  14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 12★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  3★★★

◇ 装備  勇気の剣、銀獣の鎧

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃


◇ エミカ ◇

◇ レベル 10

◇ HP   403/403

◇ 攻撃  8★★★★★★★★

◇ 防御  12★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 10★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  魔樹の杖、深紅の魔道衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹


◇ ミリ ◇

◇ レベル 8

◇ HP   315/315

◇ 攻撃  4★★★★

◇ 防御  7★★★★★★★

◇ 素早さ 9★★★★★★★★

◇ 魔力

  19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  魔石の杖、紺碧の魔道衣

◇ 魔術  氷弾、氷柱、氷乱


◇ リネ ◇

◇ レベル 24

◇ HP   751/751

◇ 攻撃   7★★★★★★★

◇ 防御  16★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 11★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  27★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、創造の杖、聖星清衣せいせいせいい

◇ 魔術  雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療薬 25

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