第39話 感謝
次の町、オケアへ向かうアルジたち。
アルジとリネはラアムの上で待ち続ける。
しばらくして、ナアムがやってくる。
エミカもミリもかなり疲れた様子。
リネ「限界ですか?」
エミカ「もう魔力が…」
ミリ「切れてきたね…」
リネ「じっとしていて。お尻をかんであげる」
エミカ&ミリ「?」
アルジ「え…?」
ラアムがナアムの後ろへ回る。
ラアムはナアムの尻をかんだ。
連なった状態で2頭は歩き出す。
ミリ「ああ、これは楽だ!」
エミカ「ありがとうございます!」
リネ「ここは力を貸したげる。
この斜面、少しきついから。
それに、相当魔力を使ったでしょうし」
アルジ(なんだ…。
尻をかむってそういうことか)
登り坂が終わると、今度は下り坂が続く。
下り坂の終わりに目的の町、オケアはあった。
オケアの町は、浅い谷にある。
大きな川が流れ、広い耕作地が連なる。
清らかな水と豊かな土で育まれる作物。
それは、各地で高い評価を得ている。
名産品の青菜は大君に献上されたことがあった。
ミリ「私たちもビュンって飛べたらいいのに」
リネ「そうですね。旅は楽になるでしょう。
だけど、あれにはたくさんの魔力が必要。
とてもたくさんの魔力が」
エミカ「操っていた人は何者でしょうか?」
リネ「おそらく魔術院の魔術師でしょう。
大前隊に同行するように命じられた。
…いえ、彼らを現地へ運ぶよう命じられた。
そんなところでしょうか」
アルジ(魔術院か…。上には上がいる。
さっきのあの魔術師の力…そういうことか)
ミリ「あ、見えてきた!」
遠くの方にいくつも並んだ人家の明かり。
リネ「さあ、町に着いたら休みましょう。
今日はいろいろありましたから。
化け物退治に大前隊といろいろと。
オケアには温泉宿もあります」
ミリ「やった、温泉だ!」
エミカ「お腹も空いたな」
リネ「おいしい野菜や果物、魚もあります」
エミカ「楽しみです」
リネ「宿に着いたら…大事な話をさせて」
エミカ「どんな話ですか?」
リネ「ずっとしようって思ってたんだけど。
マスタスと私のこと。
そして、この旅のこれからについて」
エミカ「あ…はい」
ミリ「ぜひ聞かせてください」
アルジ「教えてくれ」
リネ「はい」
エミカ「………」
そして、アルジたちは町に到着。
◆ オケア ◆
ラアムとナアムから降りる。
宿を探してアルジたちは歩く。
川沿いに温泉宿が建ち並ぶ。
多くの部屋に明かりが灯されていた。
どこも繁盛している様子。
日が沈み、辺りはすっかり暗い。
3人の役人が向こうから歩いてくる。
役人A「おい!」
アルジ「なんだ」
役人B「お前たち、トガワの方から来たな?」
アルジ「ああ、そうだ」
役人C「通行止めのはずだが…」
アルジ「解除されてるぜ」
役人A「何!?」
役人B「魔鳥伝令は来てないが…」
魔鳥伝令はサルヤマが得意とする魔術。
小鳥に似た魔生体を使って手紙などを届ける。
トガワへの大前隊出動要請にも使われた。
アルジ「サルヤマは…死んだよ」
役人A「何!?」
アルジ「それに、化け物はオレたちが倒した」
役人B「倒した?お前らが?」
役人A「二隊でも無理だったんだ。
倒せるわけがなかろう」
アルジ「なら現地へ行ってみろよ。
死体が転がってるぜ」
役人C「なんだと…?」
役人B「信じられん…。
サルヤマが死んだというのも…」
アルジ「本当だ」
役人A「嘘つけ!」
アルジ「信じろよ。話をしてたら突然死んだ」
役人A「突然…?」
役人B&C「………」
アルジ「意味不明なことを叫んで突然死んだ。
それでトガワの村は大騒ぎになってるぜ」
役人たちの表情が凍りつく。
3人は互いの顔を見合ってうなずいた。
そして、無言のまま足早に立ち去る。
エミカ「…おかしいな」
アルジ「ああ」
リネ「今の反応で…はっきりしましたね」
リネは頬に手を添える。
リネ「彼らは何かを知っている」
アルジ「…トガワのときもそうだ。
サルヤマはオレたちの目の前で死んだ。
普通なら近くにいたオレたちが疑われる。
真っ先に…。サルヤマに何かしたって…」
エミカ「でも、役人さんたちは遠ざけただけ。
私たちを…あの人の死体から…」
ミリ「何がどうなってるの?」
アルジ「サルヤマは殺されたんだ。
何者かに。多分」
エミカとリネは深刻な顔でうなずく。
アルジ「武術でも、魔術でもない。
なんらかの方法で…!」
エミカ「私もそう思う」
ミリ「なんらかの方法って?」
リネ「それは分かりません…。だけど…」
アルジ「役人たちは知っている。
その方法が何かについて。
みんな分かってる。
それで…知られないようにしてる。
オレたちに。その方法がなんなのか」
エミカ「注意しないといけないな…」
リネ「ですが…」
アルジ&エミカ「………」
リネ「その方法というのが分からない以上、
注意のしようもありません」
エミカ「それは確かにそうですけど…」
リネ「今はただ願いましょう。
私たちにその矛先が向かないように」
アルジたちの間に重い沈黙が降りる。
それを破ったのはミリ。
ミリ「アルジ!!!」
アルジ「は!?なんだ…?」
ミリ「なんか気合いの入った言葉で
みんなを勇気づけてよ!」
アルジ「お…おう!」
深呼吸してアルジは話し始める。
アルジ「あー、えっと、じゃあ、行くぜ。
オレはアルジ…星の秘宝を追い求める者。
安定の玉を探し出して、必ず取り返す!
それまでオレは負けない!必ず勝つ!
相手が戦士だろうと!魔術師だろうと!
魔獣だろうと!お…大前隊だろうとな!!」
ミリ「おおー…」
エミカ「………」
リネ「ふふ…」
アルジ「あと…よく分からない力だろうと!!
この剣で倒してみせる!勝ってみせる!!」
エミカ&リネ&ミリ「………」
アルジ「…だけど!!」
エミカ&リネ&ミリ「………」
アルジ「今日、化け物退治ができたのは、
みんなの力があったからだ。
本当に感謝してる。ありがとう。
エミカも、ミリも、リネも。ありがとう」
エミカ&リネ&ミリ「………」
アルジ「それと、魔術ってすげーな。
改めてそう思った!オレももっと強くなる!
力をつけて、技を磨いて…。
だから、その…これからもよろしくだ!」
エミカ「ああ、よろしく」
ミリ「よろしくー」
リネ「よろしくお願いします」
アルジ「よし!!そんなわけで!!
みんな、行くぜ!!」
エミカ&リネ&ミリ「…?」
アルジ「い、行くぜ!!!!」
エミカ&リネ「???」
ミリ「おーう!」
ミリが小さく腕を上げて応える。
アルジ「おしっ!!おおおおおう!!」
力強く腕を振り上げ、大声を上げるアルジ。
近くの民家の戸が開く。
民家の男「うるせーぞ!!バカヤロウ!!」
ピシャリと戸が閉まる。
アルジ「………」
ミリ「怒られちゃったね。はは…」
リネ「アルジさん、お疲れ様でした。
気合い、入りましたよ」
アルジ「そっか、それならよかったぜ!」
リネ「さあ、温泉に行きましょう」
ミリ「はい!」
歩き出すリネとミリ。
エミカ「今度は前もって言ってくれ。
どう応えたらいいのか」
アルジ「ああ、悪かったな」
エミカ「でも、よかった。元気が出た」
アルジ「そっか」
アルジとエミカも宿に向かう。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 11
◇ HP 494/494
◇ 攻撃
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 12★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 3★★★
◇ 装備 勇気の剣、銀獣の鎧
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃
◇ エミカ ◇
◇ レベル 10
◇ HP 403/403
◇ 攻撃 8★★★★★★★★
◇ 防御 12★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 10★★★★★★★★★★
◇ 魔力
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 魔樹の杖、深紅の魔道衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹
◇ ミリ ◇
◇ レベル 8
◇ HP 315/315
◇ 攻撃 4★★★★
◇ 防御 7★★★★★★★
◇ 素早さ 9★★★★★★★★
◇ 魔力
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 魔石の杖、紺碧の魔道衣
◇ 魔術 氷弾、氷柱、氷乱
◇ リネ ◇
◇ レベル 24
◇ HP 751/751
◇ 攻撃 7★★★★★★★
◇ 防御 16★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 11★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
27★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、創造の杖、聖星清衣
◇ 魔術 雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療薬 25




