第37話 噂話
エオクシは問いかける。
エオクシ「倒したのはおめえか?答えろ!」
アルジ「………」
アルジは思う。
アルジ(これは隠しても…無駄だな。
大前隊、第一隊、三頭、エオクシ…。
ごまかすことは…できない!)
エオクシ「おい!!!答えやがれ!!」
アルジ「…そうだ」
エミカ&リネ&ミリ「!!!?」
エオクシ「どうして倒した?」
アルジ「村のみんなが…困っていたからだ」
エオクシ「オレたちが来るってこと…
知ってたんじゃねえのか?」
アルジ「ああ」
エオクシ「ならどうして倒した!?」
アルジ「………」
エオクシ「………」
にらみ合う両者。
アルジ「オレたちなら…やれると思った」
エミカ(アルジ、何考えてる!死ぬ気か!?
もっと気の利いた言い方はないのか!?)
エオクシ「やれると思ったぁ!?」
次の瞬間、ビシッと音がする。
アルジの腕に伝わるわずかな振動。
アルジは脇に抱えていた牙を見る。
ヤマエノモグラモンの牙を。
それには、深い切り込み。
アルジ「…!?」
エオクシは剣を手にしている。
エオクシ「見えなかっただろ?」
アルジ「………」
エオクシ「これが力の差だ」
アルジ「………」
エオクシ「おめえ、自分を強いと思ってんだろ?
だがな…弱えー…おめえは弱えよ」
アルジ「……くっ!」
リネが前へ出る。
リネ「あの、よろしいでしょうか…?」
エオクシ「あ?」
リネ「エオクシさん、大前隊のみなさん…
ごめんなさい」
エオクシ「おめえは誰だ?」
リネ「リネと申します。魔術師をしています。
私たちは…急いでいたのです。目的地まで。
トウオウ道が通行止めになっていることを
サルヤマさんから聞いて…
化け物がいることも教えてもらい…
つい、思い上がったことをしてしまいました。
あなた方が気分を害されるのも分かります。
それでも、目的地へ急ぐ必要があったのです。
北土の魔術研究所へ…
急いで行く必要があったのです」
エオクシ「…!」
リネは研究所の名前を口にした。
エオクシの顔がわずかに強張る。
それは、大前隊のほかの2人も同じ。
リネ「ですから…今回のことは大目に…
お許しいただけないでしょうか?」
エオクシ「………」
エオクシはリネの顔を見る。
それから、アルジの顔を見る。
不満の表情を浮かべて。
アルジ「………」
息が詰まるような視線の送り合い。
そこに言葉は1つもない。
1つの声も入り込む余地はない。
そんな重苦しい空気。
エオクシ「おめえは弱過ぎる…斬る気が失せた」
エオクシはひらりと身を翻す。
ガシマとオンダクのところへ戻っていく。
エオクシ「帰ろう」
ガシマ&オンダク「………」
エオクシ「アヅミナ、カルスを出せ」
魔術師の女、アヅミナはカルスを出した。
小さな黒い髪飾りのような物体。
彼女がそれに魔力を込める。
すると、それはすぐさま巨大化。
巨大化したカルスに4人は跳び乗った。
地面からふわりと浮き上がり、たちまち上昇。
そして、都の方へ飛んでいった。
ぐんぐん小さくなっていく黒い影。
そこに居合わせた者たちは黙って見届ける。
すっかり見えなくなると、人々は安心した。
アルジたちも肩の力が一気に抜ける。
アルジ「ふう…」
エミカ「ふう…じゃない!」
アルジ「ああ…」
エミカ「死ぬところだったぞ!」
アルジ「ああ、かなりやばかったな。
あんな強いやつらがいるとは…」
エミカ「だから言っただろう…」
リネ「ミリ?」
ミリ「は…はっ…」
アルジ「どうした?」
ミリ「緊張で…息がうまくできなかった…」
アルジ「らしくないな」
ミリ「なんでだろう」
アルジ「まぁ気にするなよ。
あいつらを倒すのはまた今度にしようぜ」
ミリ「うん。そうしよう!」
エミカ「あのな…!」
リネはミリを静かに見ていた。
リネ(それは…ミリ、あなたは学んだから。
強敵と出会い、本当の恐怖を知ったから。
さっきまでここにいたのは…紛れもない強者。
あなたのその反応は…とても自然なもの…。
あなたは身につけた。正しい恐怖の感情を。
ヤマエノモグラモンとの戦いの中で…
本当の恐怖を知り、成長することができた。
この恐怖を克服して…
立ち向かっていく勇気を養えば…
あなたは…もっと…もっと…)
アルジはサルヤマのところへ歩いていく。
彼はうずくまり、顔を伏せていた。
そんな彼を取り囲み、見下ろす人々。
アルジは彼らの中へ入っていった。
アルジ「サルヤマさん…」
サルヤマ「申し訳ねえ!!申し訳ねえ!いや!
本当にすまなかった!このとおりだぁ!!」
アルジ「いいんだ。あんたは何も悪くない。
魔獣を勝手に倒したのはオレたちなんだから」
サルヤマ「……!」
アルジ「教えてほしいことがあるんだ」
サルヤマ「………」
アルジ「大前隊も…北土の魔術研究所について…
何か探っているのか?」
サルヤマ「!!!!」
サルヤマの体はビクリと動く。
うずくまり、顔を伏せたままで。
アルジ「さあ、立ってくれ」
サルヤマ「ああ…」
サルヤマはゆっくりと立ち上がる。
袖で何度も拭く。
泣きはらした顔を。
サルヤマ「あんたらは…
あの研究所を目指してたのか…」
アルジ「そうだ。
奪われた星の秘宝を取り返すため、
オレたちは旅をしている」
サルヤマ「…ほう」
アルジ「故郷の村の宝が奪われたんだ。
安定の玉という。
強い魔力が込められた星の秘宝の1つだ」
サルヤマ「…そいつは災難だったな」
アルジ「村に現れたのは、3人の魔術師…。
何か知ってるか?
大前隊は何を探ろうとしているんだ?」
サルヤマ「…悪いな。
はっきりしたことは何も言えねえ」
アルジ「………」
エミカ、リネ、ミリもアルジのそばへ。
彼女たちもサルヤマの話に耳を傾ける。
サルヤマ「だが…聞いたことはあるぜ。
前もって言っとくが、
本当にこれはただの噂話だ。
その程度のもんだと思ってくれ。
都の、ある役所の中で、ふと耳にした話だ」
アルジ「噂話…。なんだ?それは」
サルヤマ「大君から極秘命令が下されてる…。
そんな話だ…」
アルジ「極秘命令…?」
サルヤマ「オレも都じゃそこそこの地位にいる。
そういう話も耳に入っちまうんだ。
いいか…誰にも言うなよ?
オレの口から漏れたことが分かったら、
今度こそオレは一巻の終わりだ!」
リネ「命令とは、なんなのですか?」
サルヤマ「北土の魔術研究所を探れ…
そういう命令だ」
アルジ「やっぱりそうなのか」
サルヤマ「経緯はよく分からねえ。
研究所の連中を…研究員も…所長も…
一斉にしょっぴいちまうんじゃねえか…
そんなことも言われてらぁ…!!」
アルジ&エミカ&ミリ「!!?」
リネ「そんなことが…」
サルヤマ「まあ…」
次の瞬間。
サルヤマの身に信じられないことが起こる。
サルヤマ「グポ!?」
アルジ&エミカ&リネ&ミリ「…?」
サルヤマ「ウポラピププフープラピピパピポ!
ポピパラピロプラピポピポパプピパプラプ!」
アルジ「なんだ…?おい、どうした!?」
白目をむいて泡を吹くサルヤマ。
直立し、姿勢はまっすぐなまま。
その様子にアルジたちは言葉を失う。
サルヤマ「ピプラポーパラパラピロピラプロパ
ピロピぺピレポロポラポロポロポラポリプロ
ポロポロピープルポロポペレピアポロポロポ
ポーロポポッポポポポポポポポッポッポポッ
ポッポオポポポポポポピーピピピッピピイピ」
そして、サルヤマは崩れ落ちる。
まるで壊れた人形のように。
リネが彼の瞳孔を見て、脈をとる。
リネ「死んでる…!!」
アルジ「な…何!?」
近くにいたほかの役人たちが駆け寄ってきた。
役人A「下がれ!下がれ!!」
役人B「サルヤマさん!!サルヤマさん!!」
アルジたちはサルヤマから遠ざけられる。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 11
◇ HP 494/494
◇ 攻撃
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 12★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 3★★★
◇ 装備 勇気の剣、銀獣の鎧
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃
◇ エミカ ◇
◇ レベル 10
◇ HP 403/403
◇ 攻撃 8★★★★★★★★
◇ 防御 12★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 10★★★★★★★★★★
◇ 魔力
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 魔樹の杖、深紅の魔道衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹
◇ ミリ ◇
◇ レベル 8
◇ HP 315/315
◇ 攻撃 4★★★★
◇ 防御 7★★★★★★★
◇ 素早さ 9★★★★★★★★
◇ 魔力
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 魔石の杖、紺碧の魔道衣
◇ 魔術 氷弾、氷柱、氷乱
◇ リネ ◇
◇ レベル 24
◇ HP 751/751
◇ 攻撃 7★★★★★★★
◇ 防御 16★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 11★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
27★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、創造の杖、聖星清衣
◇ 魔術 雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療薬 25




