第35話 飛来
ヤマエノモグラモンを倒したアルジたち。
ラアムとナアムに乗ってトガワへ帰る。
アルジは抱えている。
ヤマエノモグラモンの大きな牙を。
剣で取り出したのだった。
討伐の証を人々に見せるために。
ラアムに乗るリネ。
その後ろにアルジが乗る。
そして、ラアムをナアムが追う。
エミカとミリを乗せて。
リネ「腕の具合はどうですか?」
アルジ「大丈夫だ。すっかり治った」
リネ「よかった」
アルジ「ありがとう。本当に」
リネ「いいえ」
アルジ「魔術って不思議だな」
リネ「使わない人には特にそうでしょうね」
アルジ「リネは傷を治せる。岩も雷も出せる」
リネ「………」
アルジ「エミカは火でミリは冷気。不思議だ」
リネ「人それぞれなんです」
アルジ「人それぞれ…なのか」
リネ「はい。
体から出てくる魔波を何に変えられるか。
それは人それぞれなんです」
アルジ「自分で決められるのか?」
リネ「決められません。
生まれ持ったものです」
アルジ「へえ」
リネ「あとは受け継ぐか…」
アルジ「受け継ぐ…?」
リネ「私は両親から魔術を受け継ぎました。
父からは岩術を、母からは雷術を。
受け継いだのです」
アルジ「そういうこともできるのか」
リネ「…はい。
だから、自分自身の光術も足すと3種類。
エミカもミリも使えるのは1種類。
でも、2人とも素晴らしい素質があります」
アルジ「それはオレにも分かる」
リネ「あなたの剣術も…」
アルジ「どうだろう…」
リネ「………」
アルジ「でも、まだまだ強くなりたいとは思う」
リネ「その意気です」
アルジ「エミカも頑張ったんだよな。
北土の魔術研究所で」
リネ「その話も聞いたんですね」
アルジ「聞いたぜ。ノソノ屋で。
大変だったみたいだな」
リネ「そのようですね」
アルジ「………」
リネ「でも、間違いなくエミカのためになった。
そう思っています。
帰ってきたあの子の魔波を感じて…」
アルジ「そっか、そうだよな。
大変な分、成長もするよな」
リネ「ええ。あの研究所に行かせてよかった。
心からそう思っています」
アルジ「魔術の研究所って…
北土の魔術研究所のほかにもあるのか?」
リネ「たくさんありますよ」
アルジ「いっぱいいるのか…?
リネみたいな魔術師が…」
リネ「それはどうでしょうか…。
北土の魔術研究所には歴史があります。
とてもとても長い歴史が。
多くの偉大な魔術師が活躍しています。
とても大きな研究所なんです」
アルジ「そっか」
リネ「大陸でも5本の指に入るほどなんですよ」
アルジ「そうなのか」
リネ「私はそこで上位の魔術師でしたから…」
アルジ「やっぱりリネはすごい魔術師なんだな」
リネ「ええ、まあ、ふふ…」
アルジ「大魔術師様ってわけだ」
リネ「そうそう負けることはありませんよ。
ですが…」
アルジ「なんだ?」
リネ「上には上がいるものです」
アルジ「上には上…」
リネ「魔術院です」
アルジ「魔術院…」
リネ「中央政府直轄の魔術研究機関です」
アルジ「学校で習ったことがあるような…」
リネ「そこでは魔術の研究や魔術師の養成に
政府の莫大な予算が投じられています。
魔術院は都にありますから、とても遠くて、
1度しか行ったことがありませんが、
そこには私と同等かそれ以上の魔術師が
何十人も何百人もいることでしょう」
アルジ「大前隊といい、魔術院といい、
都にはすごいやつがゴロゴロしてんだな」
リネ「何しろ人がたくさんいますから。
都には。いつか行ってみるといいですよ。
都に。大変よい刺激になると思います」
アルジ「ああ、そうだな。
ちょっと行ってみたくなってきた。
リネはいつ行ったんだ?魔術院に」
リネ「北土の魔術研究所にいた頃です」
アルジ「それは…結構前か?」
リネ「何年前でしょうか。
15、いいえ、16年…もっとか」
アルジ「研究所の人と行ったのか?」
リネ「彼と…」
アルジ「彼って…」
リネ「マスタスです」
アルジ「マスタス…」
リネ「あのときは彼に夢中で…ああ、やだ。
彼のことは、みんなの前で改めてお話します」
アルジ「ああ…」
アルジたちはトガワに到着する。
人々が集まってきた。
サルヤマ「おう!!戻って来やがった!!
そのデカイ牙は…倒したんだな…!?」
アルジ「ああ!」
アルジは抱えていた牙を高く掲げる。
大きな歓声が上がる。
アルジ「オレたちは倒した!
ヤマエノモグラモンを倒した!!
これでトウオウ道は通れるぞ!」
ラアムの上から高らかに報告。
村人&旅人「おおおおおおおっ!!」
沸き立つ人々。
ラアムとナアムからアルジたちは降りる。
すると、握手を求めて人々が群がった。
村人A「助かった!」
村人B「ありがとう!」
旅人A「よかった!無事で!」
旅人B「見事だ!」
旅人C「二隊でもダメだったのに…
君たち本当によくやったよ!」
サルヤマが人だかりを押しのけて歩いてくる。
サルヤマ「まさか、本当にやっちまうとはな」
アルジ「4人で力を合わせたから倒せたんだ」
サルヤマ「名を名乗れ。覚えてやる」
アルジ「アルジだ」
サルヤマ「アルジ…勇敢な戦士…アルジよ。
ますますの活躍を祈る!!」
アルジ「サルヤマさんも元気でな」
握手を交わす。
日は西へ傾き始めていた。
アルジはふと空を見上げる。
黒くて大きな鳥のような影が遠くに見えた。
アルジ「あれ…?なんだ?」
リネ「こちらに向かってきますね…」
エミカ「あれは一体…?」
ミリ「魔力だ…!強い魔力が…空から…!」
群衆も一斉に空を見上げる。
近づいてくる黒い影。
その影は、どんどん大きくなる。
サルヤマは額にじっとりと汗をかく。
サルヤマ「き…来ちまった…!」
アルジ「え…?」
サルヤマ「あれは…カルスだ…!!!」
アルジ「カルス?」
サルヤマ「魔生体カルスだ!黒くて!デカイ!
鳥の形をした飛行型の魔生体だ!」
アルジ「なんだ?魔獣じゃないのか?」
サルヤマ「魔獣ではねえ…いや、この状況…
魔獣より厄介かもしれねえや…!」
リネ「大前隊が…乗っているんですね?」
サルヤマ「そのとおりだぁ…!!」
アルジ「!!!!!」
どよめく群衆。
アルジ「大前隊が…来たのか!」
サルヤマ「どんな健脚でも歩けば20日かかる!
都から!ここまで!それをたったの1日で!
たったの1日で来ちまった!
こいつはオレも完全に想定外だぁ…!!
やはりカルスの移動力は並外れてらぁ…!!」
アルジ「あれに乗ってるのか!
大前隊が乗ってるのか!」
サルヤマ「そうだぁ…!
しかもカルスで来るってことは…
間違いねえ…!三頭だぁ…!!」
アルジ「サン…カシラ…?」
大前隊の第一隊は10人で構成される。
その中の上位3人は三頭と呼ばれる。
だが、これは正式名称ではなく、俗称。
その時代の頂点を極めた3人の戦士。
そんな3人を称えて人々が勝手に呼んでいる。
サルヤマ「お出ましでえ!!
三頭のお出ましでえ!!!」
一層沸き立つ人々。
トガワの村に興奮の渦が巻く。
サルヤマ「しかし、分からねえ!!
どういうことだ!!?
片田舎のぽっと出の魔獣を!!
どうして三頭が!!三頭様が!!
討伐しに来てくださったんだぁ!!?」
魔生体カルスは村の上空まで来ると、急降下。
そして、地面すれすれで急激に減速し、浮遊。
辺りに巻き起こる強い風。
真っ黒で巨大な魔生体の姿。
それは、大きく翼を広げた鳥のよう。
その上に乗っていたのは4人。
男が3人、女が1人。
4人はカルスから跳んだ。
トガワの地に降り立つ。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 11
◇ HP 494/494
◇ 攻撃
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 12★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 3★★★
◇ 装備 勇気の剣、銀獣の鎧
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃
◇ エミカ ◇
◇ レベル 10
◇ HP 403/403
◇ 攻撃 8★★★★★★★★
◇ 防御 12★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 10★★★★★★★★★★
◇ 魔力
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 魔樹の杖、深紅の魔道衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹
◇ ミリ ◇
◇ レベル 8
◇ HP 315/315
◇ 攻撃 4★★★★
◇ 防御 7★★★★★★★
◇ 素早さ 9★★★★★★★★
◇ 魔力
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 魔石の杖、紺碧の魔道衣
◇ 魔術 氷弾、氷柱、氷乱
◇ リネ ◇
◇ レベル 24
◇ HP 751/751
◇ 攻撃 7★★★★★★★
◇ 防御 16★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 11★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
27★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、創造の杖、聖星清衣
◇ 魔術 雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療薬 25




