第30話 抑制
宿の部屋でアルジたちは食べる。
リネとミリが市場で買った物を。
リネ「少し買い過ぎたかな」
エミカ「いろいろあって楽しいですよ」
ミリ「化け物退治の前に栄養つけなきゃね」
アルジ「張り切ってるな」
ミリ「まぁね。実戦は初めてだから。
あの日を除けば…」
アルジ「…!」
エミカ「この焼いた団子おいしいですね」
リネ「こっちの干した魚もなかなかです」
ミリ「本当だ。どれもおいしい」
アルジたちは食事を済ませて支度する。
宿を出て、村を出て、進んでいく。
ヤマエノモグラモンの巣に。
サルヤマ「気をつけて行ってきな!!」
アルジ「ああ!」
サルヤマは大きな柵を除ける。
トウオウ道を封鎖していた柵を。
その場に居合わせた人々が見送る。
アルジたちは街道を進む。
ラアムとナアムに乗って。
乗り方は昨日と同じ。
ラアムにアルジとリネ。
ナアムにエミカとミリ。
アルジ「リネ、聞きたいんだけど」
リネ「なんですか?」
アルジ「蘇生魔術ってどんな魔術なんだ?」
リネ「昨日話さなかった?」
アルジ「もっと詳しく知りたくなった」
リネ「…いいでしょう。
蘇生魔術は特別な魔術です。
使うのがとても大変。
自分の命を削らなければならない。
でも、死んだ人を生き返らせることができる。
とても素敵な魔術です」
アルジ「素敵な魔術か…。そうだよな。
大切な人が死んで、生き返ったら」
リネ「ええ。特別な感情も湧いてきます。
蘇生魔術で人を生き返らせたときは」
アルジ「それはどんな感情なんだ?」
リネ「蘇生魔術で生き返らせた人は、
自分の子のような気持ちになります」
アルジ「自分の子…」
リネ「変なことを言ってるかもしれない。
私に子どもはいないのに。
でも、こういう気持ちなのかなって思う。
もしも私に子がいたら、こうなるのかもって。
守りたい。大事にしたい。強く思う。
命を削って生き返らせたその人を」
アルジ「ミリのことか?」
リネ「…聞いたんですね?」
アルジ「エミカが教えてくれた」
リネ「そうですか」
アルジ「ああ」
リネ「私は大事にしたいと思っています。
自分の子のように。ミリのことを」
アルジ「ああ」
リネ「彼女の身に災いが降りかかるなら…
身を挺して守りたい。そう思います」
アルジ「ああ」
リネ「命を懸けてもです。変でしょうか」
アルジ「いや、変じゃないぜ。
それはすごくいいことだと思う」
リネ「ありがとう」
ラアムとナアムは街道を進み続ける。
今日も空はよく晴れている。
リネ「ミリは…死んだことになっています」
アルジ「え?」
リネ「表向きには」
アルジ「………」
リネ「学校で暴れて、私が成敗して、死んだ。
死体は私の魔術で粉々になってしまった。
そういうことになってるんです。表向きは。
ミリがああして生き返ったこと…
そのことは、私とエミカだけが知っています」
アルジ「それなら…あいつの家族は?」
リネ「家族には警備隊から説明しました。
私がさっき話したことを。
最初はひどく感情的になったそうです。
ですが、最後は納得してくれたそうです。
ミリのことは死んだと思っています。
そして、ワノエを出ていってしまいました。
今はもう、どこにいるのかも…」
アルジ「そうなのか…」
リネ「あの子を…家族といつか再会させたい。
そう思ったこともあります。あるんです。
ありますが、ふと考えてしまったのです。
ミリの家族は会いたいと思うだろうかと。
ミリは魔術で人を何人も殺めてしまった。
この事実は変わらないではないかと。
そういう子に会いたいと思うだろうかと。
同じ魔術師だから分かる苦しみもある。
だから…余計に私はあの子を守りたい」
ラアムとナアムは次第に減速。
そして、ぴたりと立ち止まる。
リネは問いかける。
ナアムに乗ったエミカとミリに。
リネ「感じる?」
エミカ「はい…!」
ミリ「近づいてきてますね」
アルジ「…なんだって?」
アルジたちはラアムとナアムから降りた。
リネは素早く2体を縮めて袋にしまう。
リネ「魔波です。まだ姿は見えませんが。
確かにこちらに近づいてきています。
私たちに気づいているかも」
エミカ「ここからは歩きましょうか。
巣穴を探しながら…」
リネ「そうですね」
ミリ「そうしましょう」
アルジたちは街道を歩く。
すれ違う人の姿はない。
辺りは不気味なほど静まり返っている。
日は高く上っている。
アルジ「なあ、魔波があるってことは…」
エミカ「ああ、魔獣だ」
リネ「恐れていたことが現実になったみたい」
ミリ「魔獣だろうと関係ないよ。
私がガチガチに凍らせてやるから」
アルジ「あれ…?なんか…寒いな…」
ミリは冷たい空気を身にまとっていた。
リネ「ミリ、まだ少し抑えていて」
ミリ「はーい」
アルジ「………」
エミカは小声でアルジに教える。
エミカ「…抑制だけなんだ」
アルジ「抑制…?」
エミカ「私は魔術の使い方を基礎から教わった。
リネさんから直々に。でも、ミリは違う」
アルジ「何が違う?」
エミカ「この1年半…
ミリがリネさんから教わったのは…
魔力を抑制することだけ。
暴走しそうになる魔力をどう抑えるか。
それだけなんだ」
アルジ「…生まれながらの魔術師ってわけか」
エミカ「…そういうことだ」
リネの表情が険しくなる。
リネ「来ます!強い魔波が!
こちらに向かっています!」
アルジは勇気の剣を構える。
アルジ「おし!やるぜ!!
どんな姿か!どれほどの力か!
見せてもらおうか!!
ヤマエノモグラモンさんよ!!」
聞こえてくるいくつもの足音。
リネ「いいえ!あれは…!!
ヤマエノモグラモンではありません!!」
アルジ「………」
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 8
◇ HP 347/347
◇ 攻撃 12★★★★★★★★★★★★
◇ 防御 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 12★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 2★★
◇ 装備 勇気の剣、銀獣の鎧
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃
◇ エミカ ◇
◇ レベル 7
◇ HP 253/253
◇ 攻撃 7★★★★★★★
◇ 防御 12★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 8★★★★★★★★
◇ 魔力 15★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 魔樹の杖、深紅の魔道衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹
◇ ミリ ◇
◇ レベル 5
◇ HP 144/144
◇ 攻撃 4★★★★
◇ 防御 7★★★★★★★
◇ 素早さ 6★★★★★★
◇ 魔力 16★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 魔石の杖、紺碧の魔道衣
◇ 魔術 氷弾、氷柱、氷乱
◇ リネ ◇
◇ レベル 23
◇ HP 678/678
◇ 攻撃 6★★★★★★
◇ 防御 16★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 11★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、創造の杖、聖星清衣
◇ 魔術 雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療薬 25、魔力回復薬 16




