第290話 生命
◆ ナキ村 資料館 ◆
村長が鍵を開け、戸を開ける。
アルジたちは中へ入る。
短い廊下を進むと閲覧室に着く。
中央には古びた机と椅子が並ぶ。
その周りにいくつもの低い書棚。
それぞれに書物が納められている。
その多くは長い間そのままにされていた。
どれも変色している。
ひどく破けてしまっているものもある。
閲覧室に入って村長は話した。
村長「少し前に整理したのだ」
アルジ「整理…?」
村長「古くて、傷んでいて、
読まれない資料がほとんどだ。
不要なものは処分したんだ」
アルジ「…そうか」
エミカもシノミワも閲覧室内を観察する。
エミカ(なんか臭いな…。
古いし…少し汚い部屋だ。
…ここを使う人はほとんどいなそう)
シノミワ(見たところ、
かなり古い資料も混ざっている…。
古代文字の書物があってもおかしくない。
だけど…どうして…この村にそのような…)
村長は書棚を指し示して言う。
村長「ここだ。この棚に入れていた。
勇気の剣の資料は」
アルジ「ほとんど残ってないぜ」
村長「この前、捨ててしまったからな…」
アルジ「…捨てたのか」
村長「大したことは書かれていなかった。
使われている金属がどうとか、
技術がどうとか…」
アルジ「…これは?」
アルジは奥に残されていた書物を手にする。
それはひどく古く、ボロボロの資料。
村長「ああ、そいつはだめだ、だめだ」
アルジ「………」
村長「古代文字で書かれているからな。
誰も読めやしない」
アルジはシノミワに渡す。
アルジ「シノミワさん、これを頼む」
シノミワ「はい」
村長「………」
呆然とする村長。
表紙を開き、読み進めるシノミワ。
その姿に村長は目を見開く。
ひどく焦り始める。
村長「あなたは…!もしや…!!」
シノミワ「古代文字が読めます」
アルジ「村長」
村長「アルジ…」
アルジ「読まれたくないことが…
書かれているのか?」
村長「すまん…アルジ…そこには…きっと…」
うめくように彼は言う。
肩を落とし、うつむき、床をじっと見る。
アルジとエミカはただ見守る。
シノミワが書物を読むのを。
シノミワ「正確に…
というわけではありませんが、
だいたいの意味はつかめました」
アルジ「何が書かれていた?」
シノミワ「大事なところだけお伝えします」
アルジ「…頼む」
エミカ(あの剣に…どんな秘密が…?)
村長「………」
シノミワは書物の内容を伝えていく。
シノミワ「その剣は、最後の望み」
アルジ「………」
シノミワ「古代獣が現れたときの…最後の望み。
対抗するための…最後の武器。
そのように書かれています」
アルジ「あとは?」
シノミワ「その剣には…
強い秘力が込められています」
アルジ「それは分かる」
シノミワ「特別な秘術が使われています」
アルジ「どんな秘術なんだ?」
シノミワ「生命力…」
アルジ「………」
シノミワ「その剣で強者と戦うとき、
剣は、持ち主の生命力を吸い上げる」
アルジ「吸い上げる…」
シノミワ「吸い上げて、強くして、持ち主に返す」
アルジ「返す…」
シノミワ「そのとき…その剣は…
持ち主の生命力をいくらか吸い取る」
アルジ「吸い取る…」
エミカ「………」
エミカの顔が曇る。
村長は頭を抱える。
シノミワ「持ち主に力を与える。
その代わりに持ち主の命を吸う。
そのような剣だと記されております」
アルジ「待ってくれ。シノミワさん。
オレはこのとおり元気だ。ほらっ!」
アルジはその場で1回、大きく跳ねる。
アルジ「何度も戦った。何度も剣は光った!
そのたびにオレは力をもらって強くなった!
でも、このとおりピンピンしてるぜ!
命を吸うなんて話は間違いじゃないのか?」
シノミワ「それは1年、あるいは、5年、10年…
時が経てば分かるのかもしれません」
アルジ「………」
エミカがアルジのそばへ行く。
彼の腕を強くつかむ。
アルジ「エミカ…?」
シノミワ「それに…」
アルジ「それに…?なんだ…?」
シノミワ「あなたが元気でいられるのは、
その剣を…まだ完全に使っていないから…
かもしれません」
アルジ「完全に…使う…?」
シノミワ「書物に書かれておりました。
『完全覚醒』と。
直訳すれば、そんな言葉になりましょう」
アルジ「完全覚醒…」
シノミワ「どこまで真実か分かりませんが…
その書物によれば、古代王国の時代、
戦った者がいたそうです。その剣を使って。
たった1人で…恐ろしい古代獣と…
勇敢に戦ったそうです」
アルジ「それで…一体どうした?」
シノミワ「その者は、戦いの最中、完全覚醒した」
アルジ「完全覚醒…」
シノミワ「古代獣に打ち勝ち…そして…」
アルジ「そして…?」
シノミワ「…死んだ」
アルジ「………」
シノミワ「その剣に全生命力を吸い取られて」
アルジ「………」
エミカ「…アルジ…」
村長「…すまん…アルジ…すまん…」
アルジは村長の方を向いて言う。
アルジ「あんたは…知ってたわけか…」
村長「すまん…アルジ…すまん…アルジ…」
アルジ「いいんだ…。オレは…別に…」
震えていくアルジの声。
そのとき。
エミカ「させない!!!!」
アルジ「………」
エミカ「私がさせない!!完全覚醒なんて!!
アルジに完全覚醒なんかさせない!!絶対に!!
絶対にさせない!!!」
アルジ「エミカ…」
シノミワ「………」
エミカ「私が魔術でなんとかする!!
なんとかするから!!
アルジを1人になんかしない!!
絶対!!絶対だ!!!」
エミカの目から涙がこぼれた。
アルジ「ありがとう。エミカ…」
エミカ「アルジ…アルジ…絶対にするな。
完全覚醒なんて」
アルジ「ああ。任せとけ」
シノミワが言う。
シノミワ「そろそろ…公会堂へ戻りましょう」
アルジ「…ああ」
資料館を出て、公会堂へ向かう。
ワノエへの2回目の飛行が始まる。
◆ ナキ村 公会堂 ◆
村長がカルスに乗る。
それから、アルジたちの方を向く。
村長「すまなかった…アルジ。
本当に…すまなかった…」
アルジ「もう…いいぜ。
おかしいと…思ってたんだ…。
こんなに急に…強くなれるなんて…。
命が吸い取られてるって聞いて…
確かにそうだって…
それくらいの代償はあるだろうなって…
ちょっと納得したんだぜ」
村長「アルジ…すまん…」
アルジ「もういいって…」
村長「………」
シノミワの顔を見て村長は言う。
村長「実はまだ…ほかにもいます」
シノミワ「…?」
アルジ「………」
村長「2人…まだ避難していない村人が…」
シノミワ「どちらにいるのですか…?」
村長「その2人は…まだ家に…」
アルジ「…分かった」
シノミワ「………」
アルジはシノミワの方を向く。
アルジ「シノミワさん、今度はオレが話をする」
シノミワ「2人というのは…」
アルジ「父さんと母さん…だろ。村長?」
村長「…そうだ」
アルジ「だから、もう1回…
悪いけど…カルスでここに来てほしい」
操縦士A「お安い御用です」
メイニナ「私も戻って参ります」
メイニナもカルスに乗っていた。
アルジ「メイニナさんは何しに避難所へ…」
メイニナ「少しだけみなさんのそばにいます。
避難所にも不安な方が多くいるので…。
秘術師としての務めを果たして参ります」
アルジ「ああ、頼む。ありがとう」
シノミワ「お願いしますね」
メイニナ「任せてください!」
そして、カルスは浮かび上がる。
ワノエに向かって飛んでいく。
日は上り、青々とした空が広がっていた。
アルジ「オレの家に行こう」
シノミワ「はい」
エミカ「ラアムを…」
アルジ「大丈夫だ」
エミカ「………」
アルジ「歩いても時間はそんなにかからない。
ここはナキ村。小さな村だ」
エミカ「そうか」
アルジ、エミカ、シノミワの3人は歩き出す。
アルジの家に向かう。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 34
◇ HP 4787/4787
◇ 攻撃
59★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
55★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
54★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、闘主の鎧
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、
壮刃破竜斬撃、雷刃剣
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 32
◇ HP 3388/3388
◇ 攻撃 11★★★★★★★★★★★
◇ 防御
32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 魔力
58★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火弾、火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
天火
◇ シノミワ ◇
◇ レベル 41
◇ HP 822/822
◇ 攻撃 4★★★★
◇ 防御
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 秘力
40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備
秘術道具(幻印、例札、思針、心糸)、高護貴帯
◇ 魔術 火弾、火砲、火刃
◇ 秘術 赤画、赤封、赤除、赤洪、赤滅
青画、青封、青跡、青結、青葬
白紋、白掃、白限、白威、白廃
黒紋、黒弦、黒貫、黒壊、黒破
◇ メイニナ ◇
◇ レベル 33
◇ HP 1947/1947
◇ 攻撃 7★★★★★★★
◇ 防御 16★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 魔力
29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 秘力
44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★
◇ 装備 秘術道具(感紙、覚布)、風雅装衣
◇ 魔術 雷弾、雷砲、雷波、雷突、雷進、王雷
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ 秘術 赤折、赤拡、赤絡、赤結、赤包
青折、青縮、青絡、青結、青包
白曲、白重、白束
黒曲、黒貫、黒巻
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 30、活汁 4
◇ 創造の杖、安定の玉




