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アルジ往戦記  作者: roak
29/300

第29話 事件

朝になり、アルジは目を覚ます。

エミカたち3人の姿はない。

起きて宿の外へ出る。

穏やかな空の下、爽やかな朝の風が吹く。

エミカが1人で立っていた。


アルジ「おはよう」

エミカ「おはよう。やっと起きたか」

アルジ「うまく寝つけなかったんだ」

エミカ「私もだ」

アルジ「そっか。リネとミリは?」

エミカ「市場へ行った」

アルジ「市場…?」

エミカ「商人たちが村の一角で始めたらしい。

 アルジも行ってきたらどうだ?」

アルジ「そうなのか。エミカは?」

エミカ「私は魔術の練習をする」

アルジ「なんか手伝おうか」

エミカ「いいよ。1人でできることだから」

アルジ「じゃあ見てる。見学させてくれ」

エミカ「面白いものじゃないけど」

アルジ「いいさ!」


村の外れに向かって歩く。

林の中を進む。

辺りには誰もいない。

アルジとエミカの2人だけ。

林を抜けると、野原が目の前に広がる。

近くには小さな池が見える。

水面がきらきらと朝日を反射させていた。

エミカは腰の高さほどの岩を見つけて座る。

両手で杖を持ち、目を閉じる。

祈るような姿。

そのままじっとして動かない。

アルジはその様子を立ったまま見ていた。


アルジ「………」


アルジも目を閉じてみる。

穏やかに時が流れていく。

しばらくしてエミカは目を開けた。


エミカ「宿に戻ろう」

アルジ「終わったのか?」

エミカ「ああ。このくらいにしとくよ」

アルジ「一体何してたんだ?」

エミカ「願ってたんだ」

アルジ「願ってた?」

エミカ「いい魔術が使えますようにって」

アルジ「誰に?」

エミカ「自分の魔力に」

アルジ「それが魔術の練習なのか?」

エミカ「そうだ。目を閉じて願う。

 基本的で大事な訓練だ」

アルジ「そっか、基本は確かに大事だよな。

 昨日見せてくれた魔術もすごかったぜ。

 火がぼおっと出て。驚いた」


エミカは岩から立ち上がる。


エミカ「自分でも少しびっくりした」

アルジ「また上達したな」

エミカ「本当は…もっと強い炎も出せるんだ」

アルジ「あれよりもか?本当か?」

エミカ「ああ、でも、そうすると…」

アルジ「そうすると?」

エミカ「…宿に戻ろう」

アルジ「ああ…」


アルジたちは歩き出す。

林の中を歩きながら話を続ける。


エミカ「フタが外れることになる」

アルジ「フタ?」

エミカ「ああ。フタだ」

アルジ「瓶のフタとか…あのフタか?」

エミカ「うん。それに似てる。

 魔術師は誰もがフタを持ってる。

 魔力のフタを。魔力を抑えるためのフタを」

アルジ「魔力を抑える…。へえ」

エミカ「そのフタで魔力の暴走を防ぐんだ。

 心を鍛えて、制御するんだ。魔力を」

アルジ「暴走を防ぐ…か」

エミカ「強い魔術が使えたらいい

 …っていうわけじゃないんだ。

 魔力の暴走はむしろよくないことで、

 魔力を意のままに操ることが大事なんだ」

アルジ「暴走するとどうなる?」

エミカ「強い魔術を使い過ぎる。

 その結果、自分の命を縮めてしまう。

 あと、冷静な判断ができなくなる。

 全然意図してないことをしてしまう。

 そんな感じだ」

アルジ「大変だな」

エミカ「ああ。だから、魔術師は恐れる。

 フタが外れてしまうことを」

アルジ「そっか。魔力のフタか。大事なんだな」

エミカ「ミリは…」

アルジ「…ミリがどうした?」


木漏れ日を浴びながらアルジたちは歩く。


エミカ「ミリはフタを外しやすい。

 気をつけてほしい」

アルジ「外しやすい…」

エミカ「ミリのこと…昨日少し話しただろ」

アルジ「リネに殺されたって話か」

エミカ「そうだ。その話」

アルジ「一体何があったんだ?」

エミカ「うん…」

アルジ「………」

エミカ「…今でもよく覚えてる。

 あの日の夜、私はリネさんの館にいた。

 1人で留守番を任されていたんだ。

 リネさんは大急ぎで外へ出ていった。

 警備隊から依頼を受けて。緊急だった。

 魔術を使う者が大暴れしていると。

 警備隊ではまったく手に負えないと。

 こんな特殊な事件は扱えないと。

 だから、リネさんの出番になった」

アルジ「魔術を使う者が暴れてるって…」

エミカ「…それがミリだったんだ。

 ミリは当時ワノエ学校に通ってた。

 そこで上級生にいじめられていたらしい。

 私はもう卒業していたし、

 全然知らなかったんだけど…。

 ミリはあのとき追い込まれていた。

 精神的にひどく追い込まれていたんだ」

アルジ「………」

エミカ「それで、我慢の限界を超えたとき…

 ミリは覚醒した」

アルジ「覚醒…」

エミカ「ミリの体に流れている魔力。

 それが冷気となって襲いかかった。

 あの子を取り囲んでた上級生たちに。

 学校から通報を受けて、

 警備隊が駆けつけたとき、

 廊下に転がっていたらしい。

 キンキンに凍った死体が。

 いくつも、いくつも」

アルジ「……!」

エミカ「そして、警備隊は見つけた。

 魔力が暴走してしまっているミリを。

 その強い冷気を目の当たりにして、

 警備隊はすぐに分かったんだろう。

 手に負えないと。だから、逃げ出した。

 それで、リネさんに助けを求めた」

アルジ「じゃあ、そのときにリネが…?」

エミカ「ああ。リネさんは学校へ向かった。

 ミリの暴走を止めるために。

 これ以上の被害を出さないために。

 最初は生かしたまま捕まえる予定だった。

 暴走し続けるミリのことを。

 でも、リネさんでもそれはできなかった。

 ミリの魔術は思った以上に凶暴だったんだ」

アルジ「止めるには…殺すしかなかった」

エミカ「…うん」

アルジ「………」

エミカ「館に戻ったリネさんは疲れ切っていた。

 あんなに落ち込んだ姿は見たことがなかった」

アルジ「それで、ミリは…?」

エミカ「先生が背負っていた。ミリの死体を。

 最初見たとき、大きな人形かと思った。

 どうしてそんなに汚れた大きな人形を

 先生は背負っているんだろうって思った。

 だけど、近づいてよく見て、分かった。

 それが人だって。死んでしまった人だって。

 リネさんは使ってしまったんだ。

 落としてしまったんだ。雷の魔術…王雷を。

 ミリに落としたんだ。暴走を止めるため。

 それで、その人形のようなものが…

 ミリの死体だったんだ」

アルジ「………」

エミカ「それで…」

アルジ「…ああ」

エミカ「リネさんは自分の部屋に死体を運んだ。

 それで、それっきり閉じこもってしまった。

 朝になると、ミリは生き返っていた。

 とても元気な姿で。何もなかったかのように。

 ミリは…最初は記憶が曖昧だった。

 だけど、少しずつ思い出した。

 あの日、自分がしたことも…」

アルジ「そっか…」

エミカ「蘇生魔術は大きな代償を伴う魔術だ。

 命を削ってでもミリを生き返らせたい。

 リネさんはあのとき…そう思ったんだ」

アルジ「………」


林を抜けて、村に戻ってきた。


アルジ「ミリが暴走しないかよく見てる」

エミカ「私も気をつける」


宿の部屋に戻ると、リネとミリが待っていた。

卓上には2人が市場で買い込んだ品物の数々。


ミリ「買い物してきたよ。朝ご飯にしよう」

アルジ「ちょうど腹が減ってたんだ。

 ありがとう」



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 8

◇ HP   347/347

◇ 攻撃  12★★★★★★★★★★★★

◇ 防御  14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 12★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  2★★

◇ 装備  勇気の剣、銀獣の鎧

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃


◇ エミカ ◇

◇ レベル 7

◇ HP   253/253

◇ 攻撃  7★★★★★★★

◇ 防御  12★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 8★★★★★★★★

◇ 魔力  15★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  魔樹の杖、深紅の魔道衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹


◇ ミリ ◇

◇ レベル 5

◇ HP   144/144

◇ 攻撃  4★★★★

◇ 防御  7★★★★★★★

◇ 素早さ 6★★★★★★

◇ 魔力  16★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  魔石の杖、紺碧の魔道衣

◇ 魔術  氷弾、氷柱、氷乱


◇ リネ ◇

◇ レベル 23

◇ HP   678/678

◇ 攻撃   6★★★★★★

◇ 防御  16★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 11★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、創造の杖、聖星清衣せいせいせいい

◇ 魔術  雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療薬 25、魔力回復薬 16

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