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アルジ往戦記  作者: roak
281/300

第281話 崩落

刃と刃がぶつかり合う。

何度も、何度も。

大きな音を立てて。


エオクシ「ちっとは腕を上げたみてえだな!」

アルジ「ああ!!」


アルジは床を強く蹴って、跳び上がる。

同時に勇気の剣を下から力強く振り上げた。


エオクシ「!!」


エオクシは体勢を崩しながらそれをかわす。


アルジ「これでどうだ!!!」


今度は振り下ろす。

その斬撃はエオクシの胸部をとらえた。


エオクシ「…やるじゃねえか」


確かに斬った。

胸部を、深く。

明らかに致命的。

だが、傷口からは一滴の血も流れない。

その上、彼は余裕そうに笑っている。


エオクシ「今のはよかったぜ。

 オレの技には及ばねえが…」

アルジ「お前…なんで…!その傷…!」

エオクシ「…やれよ」

アルジ「…?」

エオクシ「魔真体にもその技を叩き込んでやれ!」

アルジ「お…おう!」

エオクシ「けどな…」


次の瞬間、勢いよく壮刃剣が振り抜かれる。

横に、大きく、一瞬で。


アルジ「げえっ!!!!」


その刃はアルジの首を深く斬り裂いた。

首を押さえてうずくまるアルジ。

頭上からエオクシの声。


エオクシ「油断は禁物だ!!はっはっは!!!」

アルジ「く…そ…!!」


目の前が真っ赤になる。


アルジ「ぐ…ぐあ…………あれ?」


気がつくと、アルジは布団の中にいた。

首を触ってみるが、なんともない。

体を起こして周りを見る。

部屋の中はとても静かで誰もいない。

窓の外は真っ暗だった。


アルジ(夢か…。

 それにしても…よくできた夢だったな)


再び眠りに就こうとする。

だが、さっきの夢のせいで寝つけない。

しばらくすると、戸を叩く音が部屋に響いた。

アルジは起き上がる。

叩く音はやまない。


アルジ「…なんだ?エミカか?」


歩いていき、戸を開ける。

城宿の従業員が立っていた。


従業員「真夜中に申し訳ございません」

アルジ「なんだ?」

従業員「お客様がお見えです」

アルジ「客…。誰だ?」

従業員「政府の方々です」

アルジ「?まだ夜中だろ。朝迎えにくるって…」

エミカ「アルジ」


廊下からエミカの声が聞こえる。

アルジは従業員を押しのけて部屋から出る。


アルジ「エミカ!」

エミカ「アルジ」


エミカは魔術衣を着て廊下に立っていた。

天界石の杖を両手に抱え、握りしめている。

彼女の目は潤んでいた。

従業員がアルジに伝える。


従業員「緊急かつ重大なお話があるそうです」

アルジ「緊急…かつ…重大…?」

エミカ「アルジ…」

アルジ「エミカ」

従業員「政府から緊急かつ重大なお話だそうです」

アルジ「へえ…。一体…なんだろうな…?」

従業員「それは直接お聞きになってください。

 まだ大っぴらにできないお話だそうです。

 どうしても、すぐに、内密にお伝えしたいと。

 あなた方だけに、特別にお知らせしたいと。

 そのようにおっしゃっておりました」

アルジ&エミカ「………」

従業員「当館の会議室にいらしてます。

 これからご案内します。よろしいですか?」

アルジ「…分かった。ちょっと支度をさせてくれ」

従業員「…はい」

エミカ「アルジ…」

アルジ「エミカ、大丈夫だ」

エミカ「………」

アルジ「きっと…大丈夫…」


アルジは部屋に戻って急いで鎧を身にまとう。

さらに、勇気の剣を手にした。


アルジ「待たせたな」

従業員「ご案内します」

エミカ「アルジ」

アルジ「大丈夫だ。行こう。

 とにかく話を聞いてみよう。

 誰が来てるのか知らないけど…」


長い廊下を歩く。

従業員の後ろをアルジとエミカはついていく。

階段を下り、右へ、左へ、廊下を曲がる。

まっすぐ進んだ突き当たりにその会議室はあった。

そこは大会社の重役会議によく使われる。

立ち止まる従業員。


従業員「こちらでございます」

アルジ「ああ、ありがとう」


城宿の中を歩く間、エミカはつかんでいた。

アルジの右腕を。


アルジ「大丈夫だ」

エミカ「………」

アルジ「心配ないぜ」

エミカ「アルジ」


不安そうなエミカの顔。

アルジが会議室の戸を開ける。


アルジ「………」


そこにはシノミワ、リャクド、ゼリの3人がいた。


シノミワ「夜中にごめんなさい」

アルジ「いや、いい。そんなことは」

シノミワ「………」

アルジ「なんなんだ?

 オレたちに知らせたいことって」

シノミワ「手紙が届きました」

アルジ「手紙…?」

シノミワ「巨方庭の管理者から」

アルジ「巨方庭…」

シノミワ「大政会が終わった直後のことでした」

アルジ「ああ」

シノミワ「その内容は驚くべきものでした」

アルジ「どんな内容だ?」

シノミワ「灰になっていくと」

アルジ「灰…?」

シノミワ「巨方庭の木々が、岩山が、

 灰になっていくと。

 手紙には、そう書いてあったのです」

アルジ「灰に…なっていく…」

シノミワ「はい。

 形を失い、崩れていき、灰になっている。

 刻一刻と、巨方庭のありとあらゆるものが。

 すべてが崩れて、白い灰になっていると。

 手紙にはそのように書かれていました」

アルジ「…信じられないな。

 そんなことが本当にあるのか?」

シノミワ「ラグアたちの侵入が…

 関係しているのかもしれません」

アルジ「ああ、そっか。そうかもな」

シノミワ「あるいは…」

アルジ「………」

シノミワ「あなた方が何かしたのか」

アルジ「待ってくれ。オレたちは倒しただけだ。

 巨方庭を攻略して、ラグアたちを倒しただけだ」

エミカ「………」

シノミワ「自覚してないだけかもしれない。

 巨方庭を攻略するとき、ラグア一派を倒すとき、

 無自覚にあなた方は何か重大なことをした。

 その可能性はないと、

 絶対にないと言い切れますか?」

アルジ「ないぜ」

エミカ「………」

シノミワ「それなら、エオクシかアヅミナが…」

アルジ「2人とは一緒だった。ずっと一緒にいた。

 だから、何をやったかは覚えてる」

シノミワ「………」

アルジ「オレたちは一緒にラグアたちを倒した。

 魔真体を阻止した。本当にそれだけだ」

シノミワ「そうですか」

リャクド&ゼリ「………」

シノミワ「それなら…

 ラグア一派が何かしたのでしょうね」

アルジ「多分そういうことだろ…」

エミカ「………」


エミカの目から涙がこぼれる。


シノミワ「エミカさん、どうしました?」

エミカ「なんでも…ありません…」

アルジ「…!!」

リャクド&ゼリ「………」

シノミワ「どうして泣いて…」

アルジ「ラグアとの戦いは厳しい戦いだった。

 体はもう大丈夫でも心の傷はまだ癒えてない。

 エミカもオレも…」

シノミワ「………」

アルジ「大丈夫か?」

エミカ「…ごめん…ごめん…」

アルジ「何言ってんだ。…謝ることじゃないぜ」

シノミワ「………」


シノミワは小さく咳払いをしてから告げた。


シノミワ「お伝えすることがもう1つあります」

アルジ「なんだ?」

シノミワ「こちらの方が深刻です」

アルジ「何か…起きたのか?」

シノミワ「はい」


シノミワはリャクドとゼリの方を見る。


アルジ「…?」

リャクド「大変なことが…」

ゼリ「クユの国で…」

アルジ「何…?」

エミカ「…!?」

シノミワ「ゼゼ山という山を知ってますか?」

アルジ「ああ、知ってる。知ってるぜ!

 オレの村の近くにある山だ。それがどうした?」

シノミワ「大きな崩落があったそうです」

アルジ「崩落…」

シノミワ「クユの防衛隊から連絡が入りました」

アルジ「村は…?ナキ村は無事なのか?」

シノミワ「はい。

 幸いにも村に被害はなかったそうです。

 ですが、いつまた崩落が起きるか分かりません。

 ゼゼ山はギシギシと音を立て続けている。

 そう聞いていますから。

 大半の村人は避難したそうです」

アルジ「大半の村人…」

シノミワ「とどまっている者がいるそうです。

 避難命令に従わずに。

 現地からの報告によれば」

アルジ「なんで…」

シノミワ「彼らは直感したのでしょう」

アルジ「何を…?」

シノミワ「これはただの自然災害ではないと」

アルジ&エミカ「………」

シノミワ「なんらかの力が引き起こしたのだと」

アルジ&エミカ「………」

シノミワ「村から離れるわけにはいかない。

 大切な村を守りたい。

 奪われるわけにはいかない。

 彼らはそのように考えているのでしょう」

アルジ&エミカ「………」


重い沈黙が訪れる。

リャクドがそれを破る。


リャクド「目撃者がおります」

アルジ「目撃者?」

リャクド「崩落の現場を見た者たちの証言です」

ゼリ「そこには、半球体があったと」

アルジ「半球体…?」

ゼリ「崩落後の斜面に…

 半球形の構造が露出していたと」

アルジ「半球形の…構造…」

リャクド「それはあまりに巨大であまりに精巧。

 ひどく不自然な形状で、明らかに人工物。

 その大きさは、大人が立ち入れるくらい。

 …ということだそうです」

ゼリ「そのようなものは自然発生しません」

アルジ&エミカ「………」

シノミワ「私たちの結論をお伝えしましょう。

 もう察してくれているかもしれませんが」

アルジ&エミカ「………」

シノミワ「反転点流が起きて、巨方庭は崩壊した。

 そして、ゼゼ山の下に眠る魔真体が目覚めた。

 斜面に露出した半球体の構造。

 その奥に…魔真体はいる」

アルジ&エミカ「………」

シノミワ「これが私たちの結論で、

 あなた方に伝えたかったことです」



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 34

◇ HP   4787/4787

◇ 攻撃

 59★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 55★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 54★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、闘主の鎧

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、

     壮刃破竜斬撃、雷刃剣

◇ 魔術  雷動


◇ エミカ ◇

◇ レベル 32

◇ HP   3388/3388

◇ 攻撃  11★★★★★★★★★★★

◇ 防御

  32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★

◇ 魔力

  58★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、濃色魔術衣

◇ 魔術  火弾、火球、火砲、火樹、火海、王火

      氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷

      雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術

      天火


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 30、活汁 4

◇ 創造の杖、安定の玉

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