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アルジ往戦記  作者: roak
277/300

第277話 出番

事務局員が立ち上がり、告げる。

今回の大政会が有効であることを。

大君と1名以上の総合統合官。

そして、2名以上の本院長。

それが大政会の成立に必要な出席者。

トキノナガ、シノ姫、リイノ、ガオス。

条件は満たされていた。


男の声「今回はやけに少ねえな」


アルジの隣の席から聞こえた。

座っているのは中年の男。

小さな声でアルジは彼に問いかける。


アルジ「少ないってどういうことだ?」

中年の男「いつもはずらっと並ぶんだよ。

 本院の院長さんたちが。

 それが今日は2人だけだ。

 総合統合官もいつもは2、3人で来るんだが」

アルジ「そうなのか」

中年の男「しかも、今回はまたずらっと並んで…」

アルジ「何が並んでるんだ?」

中年の男「魔術師と学者だ。

 あんな人数で来たことねえ」

アルジ「そうなのか」

中年の男「あんた、大政会は初めてだろ」

アルジ「ああ…まあ…」

中年の男「見たことねえ顔だもんな」

アルジ「あんたはよく来るのか」

中年の男「毎回来てる」

アルジ「毎回…」

中年の男「あんたのいるその席はオレの席だ」

アルジ「は…?」

中年の男「いつもそこに座ってんだ。オレは」

アルジ「そうなのか」

中年の男「どうやってその席に座った?

 あんた受付の列にいなかっただろ。

 オレは前の方にいたんだぞ」

アルジ「並んでない」

中年の男「どういうことだ?」

アルジ「オレは関係者だ。今回の大政会の」

中年の男「…は?」

アルジ「証言することになってる」

中年の男「何…?そいつは本当か…?

 こんな席で…」

アルジ「あんたも聞いててくれ」

中年の男「…なんだと?」

アルジ「伝えたいことがあるんだ。

 台の上の人たちだけじゃない。みんなだ。

 みんなに伝えたい。

 だから、オレはこの席を選んだ」

中年の男「………」

アルジ「そんなわけで…

 今日はこの席を使わせてもらうぜ」

中年の男「…せいぜい頑張りな」

アルジ「ああ」


いつもと異なる台上の顔ぶれ。

民の席にいる者たちは感じる。

この大政会は異例だと。


シノ姫「…疑われることから、

 私たちは北土の魔術研究所、

 所長のホジタを逮捕しました」


最初にシノ姫が話す。

大陸の危機について。

ホジタの逮捕。

大遊説の3人による犯罪計画の判明。

魔獣による都の襲撃。

大陸各地における古代獣の発生。

そして、ラッセイムスラを使った国潰し。

彼女は順を追って話していった。

参加者たちを特に驚かせたのは犯罪計画の内容。

星の秘宝と魔真体のこと。


シノ姫「星の秘宝というものがございます。

 これには未解明の不思議な力が込められており、

 この力を悪用することで、人も、町も、国も、

 大陸のすべてを破壊できてしまうそうなのです」

民の席の者たち「………」

シノ姫「専門家から話してもらいましょう」


リャクドが立ち上がる。


リャクド「学術院のリャクドと申します。

 古代国家に関する研究を行っております。

 みなさんは破壊の矛をご存じでしょうか。

 イゴウセ博物館に展示されています。

 古代国家の大変貴重な遺物として。

 あの矛には恐ろしい力が秘められている。

 一部の学者たちはそう考えていました。

 ホジタの話によれば、あれも星の秘宝の1つ。

 ほかには安定の玉、創造の杖。

 星の秘宝は全部で3つ。

 その3つを集めて、

 ある場所へ行き、あることをすると、

 恐ろしい破壊装置が動き出すそうなのです。

 大陸の秩序を完全に壊してしまう兵器です。

 非常に恐ろしい兵器です。その名も魔真体」

民の席の者たち「………」

シノ姫「魔真体。

 そんなものが本当にあるのでしょうか。

 あまりに非現実的。

 にわかには信じがたいものです。

 ですが、考えてみてください。

 今まで実際に起きたことを。

 都の襲撃、古代獣の発生、

 そして、国潰しという大凶行。

 非現実的なことが起きているではありませんか。

 私たちはホジタから詳しく聞き出しました。

 どこで、何を、どうしたら、

 魔真体は起動するのか。

 最悪の事態を避けるために」

民の席の者たち「………」


シノ姫は学者たちに問いかけた。


シノ姫「魔真体はどうやったら起動しますか?」


ゼリが立ち上がり、答える。


ゼリ「はい。巨方庭という古代遺跡がございます。

 そこに魔真体の起動装置があるのではないか。

 ホジタの話によれば、そういうことでした。

 起動装置の名前は古王の祭壇」

シノ姫「その装置に何をしたら…

 魔真体は目覚めるのですか?」

ゼリ「はい。捧げるのです。3つの星の秘宝を。

 そうすることで魔真体は動き出します。

 ホジタはそのように話していました」

シノ姫「みなさん、ここまでよろしいですか。

 マスタス、ロニ、ラグアは企んでいたのです。

 3つの星の秘宝を集めて、

 魔真体を起動させることを。

 大陸の秩序を破壊するために」

民の席の者たち「………」

シノ姫「星の秘宝さえ敵の手に渡らなければ、

 魔真体が目覚めることなどないのではないか。

 起動方法のことなど

 調べなくてもよいのではないか。

 そのようなお考えの方も多いことでしょう。

 ここでみなさんに打ち明けなければなりません」

民の席の者たち「………」

シノ姫「星の秘宝はすべて奪われてしまいました」


ざわめく民の席の者たち。


シノ姫「ですが、ご安心ください。

 今は取り返しています。

 3つとも。悪党の手から。

 ですので、ご安心ください」

民の席の者たち「………」

シノ姫「国家の平和維持に関わることですから。

 すべてをつまびらかに話すことはできません。

 しかし、はっきりとここでお伝えしておきます。

 数日間、本当にごく短い期間ではありますが、

 3つの星の秘宝はすべて敵の手に渡りました。

 イゴウセ博物館にあった破壊の矛も含めて。

 大遊説の3人は非常に狡猾。

 それに、強欲で、凶暴な者たち。

 卑劣な手段で秘宝を盗み、奪い、集めたのです」


再びざわめく民の席の者たち。

不安に駆られて隣の者と顔を見合う者もいる。


シノ姫「魔真体なんてでたらめだ。空想の産物だ。

 実在するか分からないもの。恐れるに足りない。

 まだそのようなお考えの方もいることでしょう。

 ここで1つ…

 大胆な仮説をみなさんにお聞かせします」

リャクド「つじつまが合うのです」

民の席の者たち「………」

リャクド「どうして古代国家は滅んだのか。

 なぜ古代文明は失われたのか。

 なぜ暗黒時代が訪れたのか。

 それは…魔真体が目覚め、壊してしまったから。

 古代国家を魔真体が壊してしまったから。

 そう考えると、実につじつまが合うのです」

民の席の者たち「………」

リャクド「環境変動説では説明できない疑問。

 そういったものに矛盾なく答えられるのです。

 遥か昔、魔真体を使った戦争があった。

 そのように考えていくと」

民の席の者たち「………」

シノ姫「魔真体は絶対に起動させてはなりません。

 私たちは精鋭部隊を秘密裏に立ち上げました。

 そして、まず、創造の杖を取り返します。

 古代獣を生み、操り、国潰しを行った極悪人。

 ロニを捕まえて、創造の杖を取り返したのです」

民の席の者たち「………」

シノ姫「続いて、巨方庭の警備を強化しました。

 魔真体の起動装置に賊を近づけさせないために。

 ですが、こちらはうまくいきませんでした。

 大遊説の主導者ラグア、そして、その部下。

 彼らの侵入を許してしまったのです。

 多数の戦士を集めて警備させていました。

 ですが、ラグア一派の力が上だったのです」

民の席の者たち「………」

シノ姫「ラグア一派は…

 古王の祭壇に行ってしまいました」

民の席の者たち「………」

シノ姫「ですが、ご安心を」

リャクド「そのとき、

 彼らが持っていた星の秘宝は2つだけ。

 魔真体を復活させるには

 3つの星の秘宝が必要です。

 2つを捧げたとしても、

 すぐに目覚めることはありません」

シノ姫「ですから、ご安心を」

民の席の者たち「………」

シノ姫「とは言え見過ごすわけにはいきません。

 祭壇を賊に占拠させるわけにはいきません。

 そこで、私たちは特別な作戦を実行しました。

 とても強く、勇ましい者たち…

 彼らを巨方庭に送りました。

 そして、彼らは見事倒してくれたのです。

 ラグア一派を」

民の席の者たち「………」


民の席は安堵に包まれる。

ここで業院長リイノが挙手をする。


シノ姫「リイノ院長、どうしましたか?」

リイノ「リャクドさん、

 さっきあなたは言いました。

 魔真体を復活させるには

 3つの星の秘宝が必要だと。

 2つを捧げたとしても、

 すぐに目覚めることはないと」

リャクド「はい」

リイノ「どういうことですか?

 『すぐに』というのは。

 長い時間が経てば、目覚めることもある。

 そういうことですか?」

リャクド「はい。お考えのとおり」

民の席の者たち「………」


民の席は不安に包まれる。


リャクド「魔真体を起動させるのは、未解明の力。

 まだまだ研究中の謎めいた力であります

 分からないことも多いのですが、

 取り返した星の秘宝を確かめたところ、

 失われていました。その未解明の力が。

 ごっそりと抜き取られていたのです。

 ラグアたちが持っていた安定の玉と破壊の杖。

 これらに込められた力が失われていたのです。

 ロニから取り返した創造の杖は無事でした。

 このことは、間違いありません」

リイノ「それはつまり…」

リャクド「ラグアたちは…

 安定の玉と破壊の矛を捧げた。

 古王の祭壇に。そう考えるのが自然でしょう」

リイノ「それでは、いつ目覚めるのですか?

 魔真体は」

民の席の者たち「………」


リャクドは力強く答えた。


リャクド「数百年後のことになるでしょう」

リイノ「まだ先ですね」

リャクド「それも相当短く見積もっての話です。

 もしかすると数千年後になるかもしれません」

リイノ「そうですか」

リャクド「今日、あるいは明日、

 目覚めるなんてことはありません。

 安定した力が必要ですから。

 魔真体を目覚めさせるには。

 2つの秘宝だけでは行えないのです。

 安定した力の供給が」

リイノ「では、永遠に目覚めないのでは?」

リャクド「いいえ。

 永遠に目覚めないとは言えません。

 何かの拍子で力の流れが変わる。

 …そういうことはあるからです。

 突然、不安定な力から安定した力に変わる。

 …そういうことがあるのです。

 この現象はまだほとんど解明されていません。

 ですが、確率的にほとんどない。

 非常にまれなことです。

 ですから、私はさっき言ったのです。

 数百年後、数千年後のことになると」

リイノ「それなら、私たちは準備をしましょう。

 もしものときに備え、魔術の研究を進めます。

 大陸猟進会の組織強化も行いましょう。

 新たな兵器の開発も積極的に取り組みます。

 魔術界、学術界、産業界…

 一体となって進めましょう」

シノ姫「警備隊、防衛隊、大前隊…

 3つの隊の連携強化も大陸規模で行います。

 魔真体は大陸全土に及ぶ問題ですから。

 私たちは一丸となって備える必要があります」

リイノ「ところで…」

シノ姫「財源は?」

ガオス「確保しましょう。

 平和はかけがえのないもの。

 任せてください。

 財源はなんとしても確保しましょう」

リイノ「それでは、

 政府は具体的な計画を立てていきます。

 数百年後、数千年後の魔真体復活に備えて。

 民のみなさんには…

 次回の大政会で計画案をお示ししましょう」

シノ姫「それでいいでしょう」

民の席の者たち「………」


シノ姫は十分な間を置いてから告げる。


シノ姫「それでは最後に…」

民の席の者たち「………」

シノ姫「証言をいただいて、

 この会を終えることとします」

民の席の者たち「………」

シノ姫「証言してくれるのは、

 巨方庭へ乗り込み、戦った2人。

 彼らはラグア一派を倒し、

 魔真体を阻止してくれました。

 今、この会議場に来ていただいています。

 彼らから証言をいただいて、

 この会を終えることとします」

アルジ(出番か…)

シノ姫「クユの国、ナキ村のアルジさん。

 同じくクユの国、ワノエ町のエミカさん。

 どうぞ、証言を」


アルジは立ち上がり、口を開いた。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 34

◇ HP   4787/4787

◇ 攻撃

 59★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 55★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 54★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、闘主の鎧

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、

     壮刃破竜斬撃、雷刃剣

◇ 魔術  雷動


◇ エミカ ◇

◇ レベル 32

◇ HP   3388/3388

◇ 攻撃  11★★★★★★★★★★★

◇ 防御

  32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★

◇ 魔力

  58★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、濃色魔術衣

◇ 魔術  火弾、火球、火砲、火樹、火海、王火

      氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷

      雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術

      天火


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 30、活汁 4

◇ 創造の杖、安定の玉

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