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アルジ往戦記  作者: roak
276/300

第276話 開会

戸を叩く音。

アルジとエミカは目を覚ます。


エミカ「うーん…」

アルジ「…なん…だ?」


気がつけば眠っていた。

2人は慌てて体を起こし、顔を見合う。

戸を叩く音はやまない。


アルジ「行ってくる」

エミカ「アルジ…」


アルジは素早く布団から出て立ち上がる。

寝巻きを身にまとい、出入口まで行く。

そして、戸を開ける。

宿の従業員が立っていた。


従業員「おはようございます。

 朝食の時間を過ぎたので、お持ちしました。

 どうぞ。よろしければ召し上がってください」

アルジ「ああ、そっか。ありがとう」


渡されたのは、2つの黒い箱。

中にはぎっしりと料理が詰められている。

立ち去ろうとする従業員。

アルジは声をかけて引きとめる。


アルジ「…今は朝なのか?」

従業員「もうお昼になりますよ」

アルジ「!!!」


部屋に戻る。

エミカが大慌てで身支度していた。

アルジも彼女にならう。

顔を洗い、荷物を整え、鎧を着る。


アルジ&エミカ「………」


支度を終えると、強い空腹感。

箱の料理を食べることにする。


アルジ&エミカ「!」


フタを開けると料理の香りが一気に広がる。

肉料理、魚料理、野菜料理。

どれもまだ温かい。

急いで食べるアルジとエミカ。


アルジ「うまいな!」

エミカ「もう時間が…」

アルジ「持っていくぜ!!」


まだ半分も食べていない。

アルジは箱にフタをして、抱える。

急いで2人で宿を出た。

空は曇っていた。

どんよりとした雲が都の空を覆っている。


アルジ「走るぜ!!」

エミカ「ラアムに乗っていこう」

アルジ「…そうだな!」


ラアムを取り出すエミカ。

巨大化させて、上に乗る。

走り出そうとした、そのとき。


アルジ「大政堂って…どっちだっけ?」

エミカ「えっと…」


近くの大通りから駆けてくる女の姿。

メイニナだった。


メイニナ「アルジさん!エミカさん!!」

アルジ「おう!!」


息を切らして彼女は言う。


メイニナ「来ないのではないかと…!

 道に迷ってるのではないかと…!!」

アルジ「悪いな!

 一緒に乗ってくれないか!

 案内してくれ!」

メイニナ「はい!!」


ラアムは軽快に進んだ。

都の中をするすると。

橋を渡り、商店街を抜ける。

屋敷が並ぶ通りを駆ける。

表通りから裏通りへ。

道はかなり細くなる。

だが、ラアムは難なく駆け抜ける。


メイニナ「次は右に曲がってください」

アルジ「さっきからすごい道だな」

メイニナ「すみません。

 でも、この道が最も近いのです。

 …それにしても素晴らしい操縦です」

エミカ「ありがとうございます」

アルジ「さすがだぜ!エミカ」


エミカの目に涙が浮かぶ。


エミカ(夢じゃなかった…。

 昨日のことは…夢じゃなかったんだ)


相変わらず空はどんよりと曇っていた。

いつ雨が降り出してもおかしくない。

そんな天気だった。



◆ 大政堂 ◆

建物の前には人々の行列ができている。

大政会に出席しようと彼らは朝から並んでいた。

大陸の危機について重大発表が行われる。

その情報は都中に広まっていた。

広めたのは、政府の役人たち。

彼らは日の出とともに手分けして手紙を撒いた。

人目がつくところに立て看板を立てて回った。


メイニナ「関係者の出入口はあちらにございます」


ラアムから降りて、歩いていく。

メイニナが前を歩き、アルジとエミカが続く。

建物裏手の目立たない場所。

そこにその出入口はあった。

屈強な3人の男たちがその前に立っている。

メイニナが話しかけ、1枚の紙を提示した。

アルジたちは通される。

細い通路をしばらく進み、扉を開ける。

広い廊下に出る。

それは、昨夜も歩いた廊下。

中央大会議場に3人は入る。


アルジ「あれ…?」

メイニナ「どうされましたか?」

アルジ「奥の…上のところ…」


正面の舞台のような広い台。

その上の壁。

高いところ。

横長の四角い大きなへこみ。

昨夜来たときはなかった。

そのへこみは、部屋。

中央大会議場を見下ろせる特別な部屋。

アルジの背後と左右の壁から張り出した中二階。

それより少し高い位置にその部屋はある。

昨夜は閉ざされていた壁の扉。

それが開けられていたのだった。

開いたところから部屋の中の様子が見える。

真ん中に黒くて大きな椅子が置かれていた。


メイニナ「あれは大覧席たいらんせきでございます」

アルジ「大覧席…なんだ?」

メイニナ「大君が大政会をご覧になる。

 そのためのお席でございます」

アルジ「大君が…。そうなのか」

メイニナ「はい。さぁ、参りましょう」


奥の台へと進んでいく3人。

台の上には、シノ姫とリイノとガオス。

3人で並んで立っていた。

歩きながらアルジはメイニナに聞いた。


アルジ「…大君も何か話すのか?」

メイニナ「いいえ。

 大君が話されることはございません。

 国家をまとめる者として

 政府と民の話し合いを見届ける。

 それが大政会での大君の役割でございます」

アルジ「誰かが…

 気に食わないことを言ったらどうするんだ?」


小さく笑い、メイニナは答える。


メイニナ「そんなことはあり得ませんよ」

アルジ「なぜだ?」

メイニナ「そのために前会議を行うんですから」

アルジ「…そっか」


アルジとエミカは台の上に立つ。

台の上には整然と長机と椅子が並べられている。


アルジ(もっと参加者がいるってことか…)


シノ姫が問いかける。


シノ姫「よく眠れましたか?」

アルジ「まぁな。城宿はすごい宿だ。

 素晴らしい部屋を用意してくれてありがとう」

シノ姫「大したことではありませんよ。

 あなた方がやってくれたことに比べたら」


シノ姫は穏やかにほほえんだ。

リイノがアルジに問いかける。


リイノ「お席はどちらにしますか?」

アルジ「え?」

リイノ「どこにお掛けになるのか決めてください。

 この台は政台せいだい

 政府の者がここに集い、発言します。

 証言者はこの台の外、

 『民の席』から発言していただきます。

 どこの席がよいか。決めてください。

 円滑な進行のために」


整然と並んだ長机と椅子を見て、アルジは言う。


アルジ「どこにするか…」

リイノ「あまり悩むことではありませんよ。

 あなた方が何を話すのか。

 もう決まっているのですから。

 どの席から話をするのか。

 それはあまり重要ではありません」

アルジ「ああ…」

リイノ「それに発言者の声はよく聞こえます。

 どこの席からでも」

アルジ「そうなのか?」

リイノ「魔術が使われます。

 魔音響という仕組みです。

 ある程度の大きさの声で話せば、

 声は勝手に増幅されます。

 それで会議場全体に響く仕組みです」

アルジ「そうか」


ガオスが近くの席を手で示す。


ガオス「証言者はあの辺の席に座るのが一般的だ」

アルジ「近いな」

ガオス「近い方がいい」

アルジ「そうかもな」

ガオス「ああ」

アルジ「………」

ガオス「?」

アルジ「…どうだろうな」

ガオス「………」

アルジ「あそこでもいいか?」


アルジは指し示す。

その席は、中二階にあった。

政台と向かい合う壁。

そこから張り出した中二階。

その最も手前、真ん中の席。


シノ姫&ガオス&リイノ「………」

アルジ「あの席がいい」

ガオス「あんな席…」

リイノ「どうして…」

シノ姫「いいでしょう」

ガオス&リイノ「………」

アルジ「ありがとう」

シノ姫「発言を求める際はお名前を呼びます。

 アルジさんとエミカさん、あなた方のお名前を。

 いいですね?」

アルジ「分かった」

エミカ「はい」


アルジとエミカは政台から下りる。

アルジは台の方へ振り返って聞いた。


アルジ「もう座ってていいんだよな?」

シノ姫「はい。間もなく開場となります。

 そのまま席で待っていてください」

アルジ「分かった!」


メイニナがアルジたちを案内する。

会議場を1度出て、廊下を左へ進む。

階段を上り、扉を開け、再び会議場に入る。


アルジ「なかなかの眺めだな」

エミカ「………」


中二階に長机はない。

椅子だけが整然と並ぶ。

細い通路を進み、アルジとエミカは座る。


メイニナ「私はこれにて」

アルジ「ありがとう。いろいろ案内してくれて」

エミカ「ありがとうございました」

メイニナ「あまり緊張なさらずに」

アルジ「任せとけよ」


アルジはメイニナに笑いかけた。


メイニナ「無用な心配のようですね」


メイニナは去っていく。

小さな声でエミカはアルジに問いかける。


エミカ「どうしてこの席にしたんだ?」

アルジ「聞かせたい」

エミカ「………」

アルジ「みんなに。

 オレの話を聞いてもらいたいんだ。

 魔音響っていうのがあるから、

 声は聞こえるらしいけどな。

 それでも、場所はここがいい。そう思った。

 みんなに話を聞かせるなら、この席がいい。

 オレがここでする話は…そういう話だから」

エミカ「…何を話すんだ?」

アルジ「敵を倒した。魔真体を阻止した。

 あとは…」

エミカ「あとは?」

アルジ「楽しみにしててくれ」

エミカ「何を…」

アルジ「昨日考えた。何を話したらいいか」

エミカ「それって前会議で話してないだろ」

アルジ「話すわけないだろ。真剣勝負なんだから。

 事前に何を話すか決めておくなんて

 イカサマだぜ。任せてくれよ。

 エミカは席に座ったままでいい。

 オレの話を聞いててくれ。

 きっとすべてがうまくいく」

エミカ「………」


そして、大政会が始まる。

大政堂の正面玄関の扉が開く。

多くの民が流れ込む。

中央大会議場の席は次々と埋まっていく。

アルジとエミカの隣の席も。

すぐに満席になった。

定刻を知らせる鐘が鳴る。

政台の上に政府関係者が集う。

まず、シノ姫、ガオス、リイノ。

政台の中央に置かれた3台の椅子。

それぞれに腰掛ける。

続いて、魔術院の魔術師たち。

さらに、学術院の学者たち。

政台上の椅子に腰掛ける。

そして、最後は大政会事務局の役人たち。

政府関係者は皆「民の席」の方を向く。

そして。


アルジ&エミカ「!」


アルジとエミカが座る席。

その真正面の壁、上部、大覧席。

大君トキノナガが現れ、座る。

シノ姫が立ち上がる。

集まった民に告げる。


シノ姫「これより大政会を開会します」



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 34

◇ HP   4787/4787

◇ 攻撃

 59★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 55★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 54★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、闘主の鎧

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、

     壮刃破竜斬撃、雷刃剣

◇ 魔術  雷動


◇ エミカ ◇

◇ レベル 32

◇ HP   3388/3388

◇ 攻撃  11★★★★★★★★★★★

◇ 防御

  32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★

◇ 魔力

  58★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、濃色魔術衣

◇ 魔術  火弾、火球、火砲、火樹、火海、王火

      氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷

      雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術

      天火


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 30、活汁 4

◇ 創造の杖、安定の玉


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