第271話 変色
ラグアの猛攻が始まる。
三連剣撃、王攻剣、放光剣。
次々と繰り出してアルジを追い詰める。
アルジ「く…!!」
アルジは逃げ回るので精一杯。
ラグア「どうした!!!おい!!
どうした!!貴様!!!
僕を倒すんじゃないのか!!!」
アルジを追いかけ回すラグア。
アルジ(来る…!好機は必ず来る!)
ラグアは王火と王岩を立て続けに放つ。
アルジは魔波を感じとる。
駆け回ってどうにか避ける。
ラグア(魔波の感知は…
それなりにできるようだな…)
アルジは身を翻し、剣を構えてラグアと向き合う。
勇気の剣は強い光を放ち続ける。
アルジ(無欠の魔道戦士か…。
よく言ったもんだぜ。
魔術も剣術もここまで高められるもんなのか。
こいつは…エオクシでも倒せなかった…。
真っ向から剣術で挑めば…
おそらく勝ち目はない…。だが…!!)
ラグア(さっきから動きがよくなってきている。
魔力もわずかだが上がってきている。
…あの剣か?あの剣の秘力が…
やつに力を与えているというのか?
いや、まさか…)
ラグアが放光剣を放つ。
今度は逃げない。
アルジはその場にとどまり、剣を構える。
放光剣により放たれた光の刃を見極める。
アルジ「どうだ!!」
ラグア「!!」
勇気の剣を強く振る。
飛んできた刃を弾き返した。
弾かれた刃は宙で消える。
ラグアはさらに飛ばす。
光の刃を。
1枚、2枚、3枚と続けてアルジに撃ち込んだ。
ラグア「!!!」
1歩も退かずにアルジはすべての刃を消した。
剣を構えてラグアとにらみあう。
ラグア(これならどうだ!!)
ラグアは何度も剣を振る。
現れるいくつもの光の刃。
それらを一気に飛ばした。
飛んできて大きく広がる。
獲物を捕らえる網のように。
アルジ(!!こいつは消せない…!)
アルジは大きく横に跳び、回避。
ラグア(お見通しだ!!!!)
アルジ「…!!」
ラグアは素早く回り込み、王攻剣を繰り出す。
アルジはとっさに剣を前に突き出して対応。
だが、構わずラグアは剣を振る。
強く、大きく、速く。
王攻剣でアルジを攻める。
ラグア(決まりだ!!)
アルジ「…!!!」
強烈な斬撃が命中。
アルジの左腕が斬り落とされた。
勇気の剣が地面に転がっていく。
◇ アルジに1653のダメージ。(HP4577→2924)
アルジ(ここだ…!!)
ラグア「!!?」
アルジは見ていた。
エオクシとラグアの戦いを。
王攻剣。
その大技のあと、生まれる一瞬の隙を。
アルジは逃さない。
素早く踏み込む。
ラグア「!!!!!」
右手でラグアの手首をつかんだ。
全魔力を雷撃に変えて放つ。
ラグア「ぐ…あ…!!
あぁあぁあぁあぁあぁ!!!!!」
雷動。
使う魔力の量に対してその威力は小さい。
射程距離もほとんどない。
雷術としてあまりに未熟。
だが、その未熟さが功を奏した。
アルジ(無警戒だっただろ!オレの魔術は!!)
ラグア(こいつ…!雷術を…!)
アルジは思い出していた。
ラッセイムスラの討伐へ向かうとき。
カルスの上でエオクシと剣を交えたとき。
雷刃剣を使ったときのことを。
アルジ(あのとき、アヅミナさんは驚いていた。
分かっていないようだった。
オレが雷術を使えると。
エミカの魔術は細かく分析できてたのに。
…それはなぜか。弱かったからだ!
オレの雷術が!魔力が低かったからだ!!
だから、分からなかった…!!
お前もそうだろ!ラグア!!!
お前は考えてなかった!
オレが雷術を使うことを!
だから警戒しなかった!!!)
ラグアは体を大きく震わせて倒れ込む。
気絶寸前だった。
◇ ラグアに847のダメージ。
アルジは急いで剣を拾いにいく。
大きくふらつきながら。
彼もまた気絶寸前。
急激な魔力の消耗と腕の痛みのせいで。
それでも進み、剣を拾う。
ラグアを倒す。
その強い意志がアルジを突き動かした。
ラグアは再生魔術の光で全身を包む。
立ち上がる。
◇ ラグアはHPが全回復した。
アルジの姿を見て、剣を構えようとする。
だが、アルジの攻撃がわずかに速い。
アルジ「うおおおおお!!!行くぜ!!!!」
ラグア「…!!」
剛刃波状斬撃を繰り出した。
ラグアは急所をかばって致命傷を避ける。
◇ ラグアに3923のダメージ。
負った傷は瞬時に再生魔術の光で覆う。
◇ ラグアはHPが全回復した。
アルジは続けて2撃目、3撃目、4撃目と斬っていく。
◇ ラグアに3650のダメージ。
◇ ラグアはHPが全回復した。
◇ ラグアに3529のダメージ。
◇ ラグアはHPが全回復した。
◇ ラグアに3434のダメージ。
◇ ラグアはHPが全回復した。
ラグアは不敵な笑みを浮かべる。
アルジ(おい…!どういうことだ!?
…なんなんだ!?
こいつ…!倒せないのか…!?
不死身なのか…!!?
斬っても!斬っても!!
すぐに再生しやがる…!!!!
化け物だ…!!
オレは…本当に…こいつを倒せるのか?)
ラグア(この連続攻撃が止んだときを…狙う!!)
アルジ「……!」
突然、アルジの頭の中でよみがえる。
エオクシの言葉が。
それは、ラッセイムスラ退治に行くときの言葉。
カルスの上でエオクシがアルジに言ったこと。
エオクシ「…もっと全身の力の流れで斬るんだ。
体の各部の力を合流させんだ。
そんで、でかい力の流れを作るんだ。
その力の流れで振り抜いてみろ。
剣を、より大きく…」
アルジの目つきが変わる。
集中力は最高潮。
大きく素早く剣を振り抜く。
それは、体中の力を合わせて繰り出す一撃。
アルジ「ラグア!!!これで終わりだ!!!!」
ラグア「!!!!!!!!!?」
壮刃破竜斬撃が決まった。
ラグアの胴体を両断する。
◇ ラグアに19574のダメージ。
ラグア「ぐ…おおおおっ…!!!!」
アルジは疲れ切ってその場にへたり込む。
飛んでいくラグアの上半身。
ラグアの目はアルジを見ている。
薄れていく意識の中、彼は考える。
ラグア(僕は…王様になる男だ。
王様に…なるんだ…ぞ…。
なのに…どうして…こんなやつに…!
どうして…!
お前は…お前は…一体なんだ…?)
ラグアは残された魔力を振り絞る。
腕を伸ばし、手のひらに集める。
そして、魔術を放とうとする。
ラグア(道連れだ!!王雷で!!道連れだ!!)
アルジはそのことに気づかない。
もはや魔波を感知する余裕もなかった。
アルジ「…はぁ…はぁ…!」
ラグア(終わりだ!!食らえ!!!!)
そのとき。
ラグアの体は焼かれた。
超高熱の光の球によって。
焼いたのは、エミカの天火。
瞬く間に焦がされて、ラグアの体は地に落ちた。
◇ ラグアを倒した。
アルジ「エミカ…」
エミカ「…アルジ」
彼女はアルジの元へ行く。
斬られた左腕の治療を始める。
アルジ「………」
エミカ「じっとしててくれ」
アルジ「…ありがとう」
秘術空間内は静まり返っている。
大切な仲間が倒されたこと。
強敵との戦いに勝ったこと。
大きなことが重なった。
気持ちの整理が追いつかない。
アルジの傷が治っていく。
最初は2人とも不思議と落ち着いていた。
だが、次第に湧いてくる。
深い悲しみの感情が。
エミカの目からポロポロと涙が落ちた。
アルジ「…エミカ」
エミカ「どうして…どうして…」
アルジの左腕が治る。
◇ アルジはHPが全回復した。
うつむくエミカ。
アルジ「オレが突っ込んでいかなけりゃ…」
エミカはうつむいたまま激しく首を横に振る。
アルジは続きを言うのをやめた。
アルジ「エオクシとアヅミナさんも…」
エミカ「………」
アルジとエミカは立ち上がる。
歩いていき、近くで見て確かめる。
エオクシとアヅミナ。
それぞれの死を。
アルジ「これは…無理…か…」
エミカ「…再生魔術じゃどうにもならない」
涙を流しながら震える声でエミカは答えた。
アルジ「………」
それから、2人は力なく地面に座り込む。
そのまましばらくの間ぼんやりと過ごす。
何も言葉を交わさずに。
アルジ&エミカ「………」
アルジはおもむろに立ち上がる。
アルジ「…取り返そう」
ラグアの元へ歩いていく。
地面に落ちた星の秘宝を拾い上げる。
◇ 安定の玉を手に入れた。
◇ 破壊の矛を手に入れた。
それらをじっと見つめる。
アルジ「…阻止した。
これで…魔真体の復活はなくなった。
なくなったんだ…。
この玉があれば…ナキ村も救われる」
エミカも立ち上がり、じっと見つめる。
彼女が見つめるのは、古王の祭壇。
泣きはらした顔で言う。
エミカ「あんなのが…なければ…。
あんなのが…あるから…」
アルジ「エミカ…」
エミカは叫ぶように言う。
エミカ「あんなのがあるから!!争い合って!!
戦い合って!!奪い合って!!私たちは!!
大切な人たちを…!!大切な人たちを…!!」
アルジ「…エミカ!」
エミカ「わあああああっ!!!!!」
天火を古王の祭壇にぶつける。
強い光を発して、大きな音を立てて。
いくつも、いくつもぶつけた。
エミカ「う…ううう…!!」
魔力が尽きてエミカは泣き崩れる。
アルジが彼女の元へ行く。
アルジ「エミカ」
エミカ「………」
アルジ「終わったんだ。
もう…終わったんだ。戦いは」
エミカ「…悔しい」
アルジ「………」
エミカ「…悲しい」
アルジ「………」
アルジは古王の祭壇に目を向けた。
アルジ「…!!」
祭壇は無傷。
秘術空間の中央でそれは静かに立ち続けていた。
アルジ(天火があれだけ当たったのに…。
どうなってんだ…?
守られてるのか…?秘術の力で…。
…よく分からん)
エミカは涙声で言う。
エミカ「アルジ…」
アルジ「…どうした?」
エミカ「もう…嫌だ…」
アルジ「………」
エミカ「大事な人が…死んでしまうのは…」
アルジ「ああ、オレもだ」
エミカ「もっと…いたかった」
アルジ「………」
エミカ「4人で…もっと…」
アルジはエミカの肩をそっとなでる。
アルジ「なあ、エミカ」
エミカ「………」
アルジ「連れていかないか?」
エミカ「……?」
アルジ「2人を」
エミカ「………」
アルジ「エオクシとアヅミナさんを…
都に…連れて帰ろう」
エミカ「え…?」
アルジはできるだけ明るい声で言う。
アルジ「こんなこと…変かもしれないけど…」
エミカ「………」
アルジ「2人はまだ死んでない気がする」
エミカ「………」
アルジ「都に行って、魔術院とか治療院とか…
連れていったら…生き返せるんじゃないか。
そんな気がしてる」
エミカ「無理だ…。それは…」
アルジ「決めつけんなよ」
エミカ「いくら蘇生魔術でも…
体の重要な機能は戻せない」
アルジ「………」
エミカ「体の重要な機能は…
形を壊されて…失ってしまうと…
いくら蘇生魔術でも…戻ってこない…」
アルジ「それは分からないぜ。
エミカもリネもすごいけど…
都にはもっとすごい光術を…
使う人がいるかもしれないだろ」
エミカ「………」
アルジは勢いよく立ち上がる。
アルジ「さあ、行くぜ!」
そのときだった。
秘術空間が揺れる。
ガタガタと小刻みに。
アルジ「…なんだ!!?」
エミカ「…!!アルジ!!!」
アルジ「!!!」
エミカの指差す先には、古王の祭壇。
その全体が真っ赤に変色していた。
アルジ「なんだ…!?どういうことだ…?」
エミカ「壁の色も…少しずつ変わってきてる!!」
アルジ「ああ…本当だ!!」
淡く青い光を発していた壁。
薄暗い青空のような壁。
その色が変わっていく。
徐々に赤みを帯びていく。
紫に、そして、赤紫に。
壁全体の色が変わっていく。
空間の振動は収まらない。
アルジ「なんかやばそうだ!!」
エミカ「行こう!!」
アルジ「おう!!乗ってきた魔籠に乗るぜ!!!」
エミカ「アヅミナさんは…私が背負う」
アルジ「…ああ」
2人は背負う。
アルジはエオクシを。
エミカはアヅミナを。
そして、魔籠に乗り込む。
魔籠は動き出す。
地上へ上がっていく。
◇ アルジはレベルが上がった。(レベル33→34)
◇ エミカはレベルが上がった。(レベル31→32)
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 34
◇ HP 4577/4787
◇ 攻撃
59★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
55★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
54★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、闘主の鎧
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、
壮刃破竜斬撃、雷刃剣
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 32
◇ HP 3027/3388
◇ 攻撃 11★★★★★★★★★★★
◇ 防御
32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 魔力
58★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火弾、火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
天火
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 30、活汁 4
◇ 創造の杖、安定の玉、破壊の矛




