第27話 実力
◆ トガワ ◆
そこは小さな村。
住人は少なく、旅人の大半は素通りする。
そんな村に今は人だかりができている。
荒々しい声が聞こえてくる。
旅人たちが役人に詰め寄っていた。
アルジたちはその様子を眺める。
旅人A「どうしてですか!」
旅人B「困りますよ!」
役人「ですから、化け物が…!」
リネは首を傾げて言う。
リネ「化け物が出た…本当のようですね」
アルジ「カリヤで商人が言ってたやつか」
エミカ「しばらくは通行止めだな」
ミリ「休憩にしようよ。もう疲れたし」
リネ「そうですね。そうしましょう」
ミリ「休んでる間に通れるようになったりして」
エミカ「だといいけどな」
アルジたちは休む場所を探す。
村の中を歩く。
夕刻になり、空が暗くなり始める。
リネ「少し早いですが…」
アルジ「仕方ないよな」
今日のこれ以上の移動を諦める。
アルジたちは1軒の小さな宿を見つけた。
そこで泊まることにする。
宿泊の手続を済ませて旅の荷物を預ける。
それから、外へ出て食事処を探した。
エミカ「リネさん。ここでどうですか?」
リネ「いいですね。ここにしましょう」
選んだのは村で最も大きな食堂。
その古びた建物には趣があった。
店員「いらっしゃい」
広々とした食堂内。
大勢の客が席を埋めている。
通行禁止の影響だった。
各食卓の上には熱々の鍋料理。
店員「空いてるところ、どこでもどうぞ」
アルジたちは薄暗い食堂の中を歩く。
4人分の空席を見つけて座った。
しばらくすると、店員がやって来る。
店員「注文は?」
リネ「何がありますか?」
店員「はい、カラミ鍋、アマメ鍋、スウハ鍋。
全部で3種ありますが」
アルジ「何が入ってるんだ?」
店員「肉とか…野菜とか…」
アルジ「………」
リネ「1つずつください。3種類を1つずつ。
お皿を4人分いただける?」
店員「はいよ!毎度あり!」
隣の席から声が聞こえる。
客A「苦戦しているらしい…」
客B「二隊も退散したとか…」
客C「となると、いよいよか。
ついに大前隊が…」
大前隊は、中央政府の戦闘部隊。
選りすぐりの戦士たちで構成される。
彼らが担当するのは重大事件。
何人もの人を殺した凶悪な獣の討伐。
国境を越えて暴れる武装集団の鎮圧。
このような任務を大前隊が引き受ける。
隊員たちは強いだけでなく、癖のある者が多い。
リネ「私に考えがあります」
エミカ「なんですか?」
アルジ「多分オレも同じ考えだ」
ミリ「え?何?」
アルジ「大陸を巡り、人と出会い、悪と戦う。
そうすることで自ずと道は開ける…だよな」
リネ「そのとおり」
アルジ「化け物退治をやろうじゃないか」
エミカ「そういうことか。いいだろう」
ミリ「私もやるよ!」
エミカ「いつまでも待ってられないしな」
アルジ「そういうことだ。リネも…」
リネ「もちろん私も戦います」
アルジ「決まりだ!
飯を食ったら掛け合ってみようぜ。
トウオウ道をふさいでる役人に」
リネ「そうしましょう」
しばらくして鍋が運ばれてくる。
濃厚な味のカラミ鍋。
あっさりしたアマメ鍋。
香り豊かなスウハ鍋。
3種類の鍋が卓の上に置かれる。
ミリ「あ、おいしい!」
エミカ「風味がいいな」
アルジ「これもうまいぜ」
ミリ「本当だ」
アルジたちの腹は満たされた。
食事代を支払い、店を出る。
そして、村の外へ。
人混みをかき分けて役人の前に立つ。
役人「なんだ!あんたらは!」
アルジ「化け物退治をしたい」
役人「だめだ、だめだ!素人が出しゃばるな!」
リネ「素人ではありません」
エミカ「見せてやりなよ」
役人「……?」
アルジは勇気の剣を構える。
危険を感じて彼の周りから離れていく人々。
アルジは目を閉じ、深く息をする。
そして、目を開けた瞬間、円月斬りを放つ。
鋭い刃が空を斬る。
ヒュオッと大きな音が辺りに響く。
役人「…!!」
辺りは静まり返った。
役人は目を丸くしてアルジに近づく。
役人「あんた…所属は?」
アルジ「ただの旅人だ」
役人「旅人だと?」
アルジ「星の秘宝を追い求める旅人だ」
役人「星の秘宝…?」
髭を生やした男が大股で歩いてくる。
髭の男「なんだ、なんだぁ、おい」
役人「あ、サルヤマさん!」
サルヤマは中央政府から派遣された調査員。
獣の生態に詳しい。
彼は政府との連絡係も担っていた。
サルヤマ「なんだ!!お前ら!」
アルジ「旅の者だ」
サルヤマ「さっきのはなんだ?」
アルジ「円月斬りという技だ」
サルヤマ「戦士なのか?お前?」
アルジ「そうだ」
サルヤマ「化け物を倒すのか?」
アルジ「ああ。協力させてくれ」
サルヤマ「気持ちはありがてえ。
だが、そいつはお生憎様だ」
アルジ「?」
サルヤマ「大前隊の出動の目処がついたんでな」
アルジ「大前隊…」
サルヤマ「紛れもねえ第一隊の連中だ」
大前隊は第一隊から第三隊までで構成される。
第二隊、第三隊も組織としては大前隊。
だが、隊員の実力は第一隊と圧倒的な差がある。
第一隊の隊員たちこそが本当の実力者。
正式に大前隊と呼べるのは、第一隊。
そのような認識が人々の間で広がっている。
そのため、大前隊といえば一般に第一隊を指す。
彼らの出動には、大君の命令が必要。
大君は、諸国を統べる中央政府の頂点に立つ者。
サルヤマ「あいつらが来たらおしまいよ。
オレもお役御免だ」
アルジ「いつ来るんだ?」
サルヤマ「さぁな…都からの移動もあるし、
もしかすると3、4日かかるかもしれねえ」
アルジ「そんなに待ってられないな」
サルヤマ「何?」
エミカ「私たちが…明日倒すと言ったら?」
サルヤマ「なんだと?」
リネ「あなたも早く都へ帰ることができる。
…都合がよいのではないですか?」
サルヤマ「何ぃ?本当にやれんのか…?」
ミリ「任せてよ」
サルヤマ「ならば、見せてみろ…」
アルジ「…?」
サルヤマ「あんたの技はさっき見た。
円月斬り…悔しいが合格だ!!
並の戦士じゃ歯が立たねえのはよく分かる。
だがな!1人で行かせるわけにはいかねえ。
相手はバカでかい化け物だ。
1人じゃ無理ってもんだ」
エミカ「力を見せればいいんだな」
サルヤマ「…そういうことだ」
アルジ「見せてやれよ」
人だかりから離れるエミカ。
意識を集中させ、魔樹の杖に魔力を込める。
エミカ(…力が湧いてくる…!
この新しい杖と…魔術衣のおかげか…?)
リネ「みなさん!離れてください!」
一斉に散っていく人々。
大きな火柱が地面から上がる。
その炎は、巨木のように太く、力強い。
サルヤマ「な!なんて炎だ…!」
誰もが炎をじっと見上げる。
サルヤマ「やべえ…!村が…焼ける…!!
もういい…!分かった!」
エミカは杖を小さく振って炎を消した。
◇ エミカはレベルが上がった。(レベル6→7)
◇ エミカは火樹を習得した。
サルヤマ「…ふぅ…」
エミカ「………」
サルヤマ「…なんて魔術だ…」
エミカ「リネさん、私はこれで精一杯です。
あの方にもっとすごい魔術を…」
リネ「あら、あなたの力はその程度なの?
分かった!やってやろうじゃない。
ケガ人が出なければいいけど」
サルヤマ「何!?もういい!もう分かった!
お前たちの実力はよく分かった!!」
アルジ「それたら、どうする?」
サルヤマは覚悟を決める。
サルヤマ「好きにしろ…!
やりたいようにやりやがれ!
ただし…オレから2つほど忠告がある!!」
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 8
◇ HP 347/347
◇ 攻撃 12★★★★★★★★★★★★
◇ 防御 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 12★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 2★★
◇ 装備 勇気の剣、銀獣の鎧
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃
◇ エミカ ◇
◇ レベル 7
◇ HP 192/253
◇ 攻撃 7★★★★★★★
◇ 防御 12★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 8★★★★★★★★
◇ 魔力 15★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 魔樹の杖、深紅の魔道衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹
◇ ミリ ◇
◇ レベル 5
◇ HP 144/144
◇ 攻撃 4★★★★
◇ 防御 7★★★★★★★
◇ 素早さ 6★★★★★★
◇ 魔力 16★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 魔石の杖、紺碧の魔道衣
◇ 魔術 氷弾、氷柱、氷乱
◇ リネ ◇
◇ レベル 23
◇ HP 678/678
◇ 攻撃 6★★★★★★
◇ 防御 16★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 11★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、創造の杖、聖星清衣
◇ 魔術 雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療薬 25、魔力回復薬 16