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アルジ往戦記  作者: roak
264/300

第264話 応援

カルスは着陸した。

巨方庭から離れた小高い丘に。


操縦士A「すみません」

操縦士B「私たちはここまでです」

エオクシ「十分だ」

操縦士C「これにて失礼します」

操縦士D「お帰りの際は、これを」


差し出される合離蝶。

アヅミナが受け取った。


操縦士E「都で待機しております。

 それを投げれば、お迎えに上がります」

アヅミナ「ありがとう」


アルジたちは特別機から降りた。

丘の上に並び立つ。

特別機は静かに去っていく。

アルジは見た。

遠く離れた森の中。

空に向かって突き出す岩を。

それは、巨方庭、北の頂。

とても小さく見えている。


アルジ「あれが巨方庭か」

エオクシ「ああ、あれだ」

アヅミナ「やけに静か」

エミカ「戦いは終わったのか」

アヅミナ「どうかな」

エオクシ「とにかく行ってみるしかねえ」

アルジ「早速乗り込むか」

アヅミナ「いいえ。まずは…」

アルジ「?」


頭上には青々とした空が広がる。

日没までまだかなりの時間がある。

アヅミナが杖の先端で指し示す。

巨方庭の近くに建つ、1軒の館を。


アヅミナ「管理者に話を聞こう」

エオクシ「それがいいな」

アルジ「管理者…」

エミカ「巨方庭の管理者?」

アヅミナ「そう。2人いる。

 ソネヤさんとハイラさん。いい人たちだから。

 状況を詳しく教えてくれると思う」

エオクシ「無事だったら…の話だけどな」

アヅミナ「そうだね」

アルジ&エミカ「………」


アヅミナがカルスを出す。

乗って、浮かんで、突き進む。

館の近くで減速し、降下、着陸。

わずかな時間で移動を終える。

降りるなりエオクシは館へ歩く。

アルジ、エミカ、アヅミナも彼に続く。


エオクシ「大前隊のエオクシだ。入るぜ!!」


勢いよく扉を叩き、開けた。

管理者のソネヤが慌てた様子で出てきた。


ソネヤ「ああ、あなた方…」

エオクシ「よう、無事か?

 巨方庭が攻められたと聞いた」

ソネヤ「私たちはなんともありません」


ハイラも出てくる。


ハイラ「突破されちまったよ」

エオクシ「………」

ソネヤ「巨方庭の警備は倒されました」

ハイラ「賊が勝って、侵入してしまった」

ソネヤ「まるで嵐のような戦いでした」

アヅミナ「そうなの」

エオクシ(…なんだ?2人とも様子が変だ。

 何か…隠してるような…)

アヅミナ(彼らは何かした…。隠そうとしてる。

 あたしたちに…自分たちが何をしていたのか)


エオクシとアヅミナは見逃さなかった。

悲しげな管理者たちの顔。

その表情の裏側。

透けて表れている後ろ暗い感情を。


エオクシ「突破されたのはいつ頃だ?」

ハイラ「お昼前だよ」

アルジ「そいつはまずいな」

エミカ「急がなきゃ」

ソネヤ「あなた方は?誰ですか?」

ハイラ「初めて見るね」

アルジ「ああ、オレたちは…」


エオクシが前に出る。


エオクシ「待て」

アルジ「…?」

ソネヤ&ハイラ「………」


アヅミナが問いかける。


アヅミナ「あなたたちは何してたの?」

ソネヤ&ハイラ「………」

アヅミナ「巨方庭が突破されるまでの間、

 何をしていたの?巨方庭の管理者として」

ソネヤ「この館で見てただけですが…」

ハイラ「部屋の窓から2人で見てたんだよ。

 巨方庭を守るため、懸命に戦う戦士たちを。

 侵入者も突破しようと必死な様子だった。

 私たちには目もくれずに戦っていた」

ソネヤ「残念ながら…

 警備の戦士たちは負けてしまいましたが…」


悲しげに話すソネヤ。

その顔に一瞬、微かな笑み。


アルジ&エミカ「…!?」


エオクシが壮刃剣を握りしめる。


エオクシ「本当に見てただけか?」

ソネヤ&ハイラ「………」


ソネヤは少し困った顔で答える。


ソネヤ「私たちの仕事は観察と忠告ですよ。

 排除はしません。以前もお話しましたが…」

エオクシ「んなこた分かってんだ」

ソネヤ「………」


アヅミナは微かな匂いをかぎとった。


アヅミナ「甘い…香り…」


館の中へ入っていく。

エオクシも続く。


ソネヤ「ちょっと…!」


伸ばされたソネヤの腕。

エオクシは払う。

奥の部屋へアヅミナと向かう。

戸を開けて、大きな窓のある居間に2人は入った。


アヅミナ「………」


卓の上には茶とたくさんの菓子。


エオクシ「呑気に茶を飲んでたのか」


肩を落としてソネヤは言った。


ソネヤ「いや、参りましたね」

エオクシ「どういうことだ?」

ソネヤ「我慢できなかったんです」

エオクシ「は?」

ハイラ「それだけすごい戦いだったのさ」

アヅミナ「意味が分からない。

 すごい戦いだったらお茶を飲むの?」

ソネヤ「事情があるんです」

エオクシ「どんな事情だ」


アルジとエミカも居間へやってくる。

ソネヤはしょげた様子で打ち明けた。


ソネヤ「順を追ってお話させてください」

エオクシ「話してみろ」

ソネヤ「夜明け前のことです。

 侵入者たちが現れました。

 彼らを見つけて、警備が集まってきました。

 特に話し合うこともなく、戦いを始めました。

 私たちは、この窓からそれを眺めていました。

 ちょうどここから見えるあの場所で…

 戦いが始まったのです。

 あの…ほら、あの茂みのところです!」

エオクシ「………」

ソネヤ「あそこで戦いが始まりました。

 大切に見守ってきた古代遺跡…

 その近くで人々が勝手に争い合う。

 私たちは大いに恐れ、怒りました。

 しかし、排除はできない。

 私たちにそんな力はありません。

 では、何をすべきか。

 しばらく考えた末、思いました。

 この一大事、すぐに政府に知らせなければ。

 大慌てで手紙をしたためました。

 賊が侵入する前に、警備が破られる前に、

 政府に危機を知らせなければならない。

 その一心で、必死で筆を走らせました」

エオクシ「………」

ソネヤ「手紙を送ると、やることはありません。

 なので、戦いをただひたすら見ていました。

 侵入者を倒してくれ。食い止めてくれ。

 そう願いながら。…聞こえてきます。

 窓の向こうから。苦しみと怒りの叫びが。

 殴り、殴られ、倒れていく戦士たち。

 その姿がよく見えました。

 ただ見てるだけとはいえ、

 それが私たちの仕事とは言え、

 観察を続けることは心苦しく、

 耐えがたいものでした」

ハイラ「だけど…

 それが少しずつ変わっていったのさ」

エオクシ「何がどう変わったってんだ」

ソネヤ「見てるうちに…

 心が変わっていったのです。

 少しずつ…少しずつ…変わっていったのです。

 私たちの心が…

 警備を応援していた私たちの心が。

 侵入者たちの圧倒的な力を見ているうちに。

 彼らが勇ましく戦う姿に目を奪われるうちに。

 気づけば私たちは魅了されていました。

 侵入者たちの戦いぶりに…」

ハイラ「とても華々しく、輝かしかった」

ソネヤ「光をまとい、次々と大技を出し、

 倒していく。

 彼らは…そうだ、まるで英雄に見えた」

アヅミナ「手紙に書いた人たちのこと?」

ソネヤ「そうです。7人。とても強い7人です。

 バッサバッサとなぎ倒していった。

 大前隊やら警備隊やらの戦士たちを。

 彼らだって決して弱くはない。

 いや、警備を任されたんだから、とても強い。

 なのに、侵入者は軽やかにバッサバッサと!

 あれは見事でした。

 本当に見事な戦いぶりでした…」

エオクシ「おい、

 自分が何言ってんのか分かってんのか?」

ソネヤ「…!」


厳しい顔で迫るエオクシ。

アヅミナが制止して問いかける。


アヅミナ「それで、どうしたの?」

ソネヤ「あまりに勇猛な姿に引き込まれ…

 私たちは夢中になってしまいました」

ハイラ「最後は…応援しちまったんだ」

ソネヤ「やれっ、そこだっ、行けっ、と言って…」

ハイラ「あれには、はっきり言って痺れたね。

 本当にすごいもの見せてもらったよ」

ソネヤ「あんなに熱くなったのは久しぶりだ。

 愉快で、痛快で、爽快で…

 本当に胸がすく思いだった」

ハイラ「それで…

 今まで茶を飲んで、菓子を食べて、

 浮かれた心を落ち着けようとしてたんだ」

アヅミナ(…呆れた)

エオクシ(ったく…呑気なもんだぜ)

アルジ「関係ない」


部屋に響くアルジの声。


ソネヤ&ハイラ「……?」

エオクシ「…アルジ」

エミカ&アヅミナ「………」


アルジはソネヤとハイラの方へ歩いていく。

2人を前にして言った。


アルジ「そんなのは、関係ない」

ソネヤ「…なんだって?」

アルジ「どんなに輝いて見えようが、

 英雄に見えようが、そいつらは悪党だ。

 あんたたちの目にどう見えようが、極悪人だ」

ソネヤ&ハイラ「………」

アルジ「オレは倒す。あいつらを必ず倒す。

 誰にも邪魔はさせない」

ソネヤ「あんた…一体誰だ?」

アルジ「オレはクユの国、ナキ村のアルジ。

 剣士だ。旅をしてる。

 奪われた村の宝を取り返すために」

ソネヤ「村の宝を…」

アルジ「奪ったのは…

 多分あんたたちが話してた侵入者だ」

ソネヤ「へえ…そうなんですか」

ハイラ「そっちのあんたは?誰なんだい?」

エミカ「………」


エミカもソネヤとハイラに名乗る。


エミカ「私は魔術師のエミカと言います。

 クユの国、ワノエの町から来ました」

ソネヤ「魔術師か」

エミカ「私もこの魔力で侵入者と戦います。

 そして、必ず…倒してみせます」

ソネヤ「へえ…」

ハイラ「ずいぶん腕に自信があるようで…」

ソネヤ「無理だ。彼らを倒すなんて無理だよ」

ハイラ「ああ、そうだね」

アルジ&エミカ「………」

ソネヤ「どこの馬の骨か知らないが、無理だ。

 倒す。口で言うのは簡単なことだ。

 私だって言える。『私は彼らを倒す』。

 ほら、言えた」

アルジ&エミカ「………」

ハイラ「敵の姿も見てないくせに呑気なもんだね。

 世間知らずの思い上がりとは…このことだね」

アルジ&エミカ「………」

ソネヤ「私たちは見た」

ハイラ「ああ。いかに強いかこの目で見た」

ソネヤ「実際に見てないくせに…

 大口を叩くもんじゃないよ」

アルジ&エミカ「………」

ソネヤ「彼らを倒すなんて…」

アルジ「いや…倒す」

ソネヤ「無理だ」

アルジ「倒す!」

ソネヤ「無理だ!!」

アルジ「倒す!!!」

ソネヤ「無理だ!!!!」

エオクシ「うるせえ!!!!!!!」

ソネヤ&ハイラ「…!!」

アルジ&エミカ「………」


ソネヤとハイラに向かってエオクシが言う。


エオクシ「オレたちは、今度は失敗しない」

ソネヤ&ハイラ「………」

エオクシ「今度は必ず…巨方庭を攻略する」

ソネヤ&ハイラ「………」

エオクシ「今回は…これ以上ない仲間に恵まれた」

アルジ&エミカ「………」

アヅミナ「侵入者も全員倒す。あたしたち4人で。

 アルジ君が言ったとおり…関係ない。

 あなたたちにとって英雄に見えようが関係ない。

 全員倒す。

 そのために都から再びここへやって来た」

ソネヤ&ハイラ「………」


エオクシは力強く言った。


エオクシ「そんじゃ…行くか!」

アルジ「おう!」


アルジたちは管理者の館を出ていった。

巨方庭へ駆けていく。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 33

◇ HP   4234/4234

◇ 攻撃

 52★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 魔力  15★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、闘主の鎧

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、

     壮刃破竜斬撃、雷刃剣

◇ 魔術  雷動


◇ エミカ ◇

◇ レベル 30

◇ HP   2821/2821

◇ 攻撃  11★★★★★★★★★★★

◇ 防御

  31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  53★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、濃色魔術衣

◇ 魔術  火弾、火球、火砲、火樹、火海、王火

      氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷

      雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術

      天火


◇ エオクシ ◇

◇ レベル 40

◇ HP   4488/4488

◇ 攻撃

  56★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

  47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 素早さ

  52★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

◇ 装備  壮刃剣、戦究防護衣

◇ 技   天裂剣、地破剣、天地双竜剣


◇ アヅミナ ◇

◇ レベル 39

◇ HP   509/509

◇ 攻撃   1★

◇ 防御   2★★

◇ 素早さ

  49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★

◇ 魔力

  54★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  大法力の魔杖、漆黒の術衣

◇ 魔術

  火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火

  氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷

  暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、

  酷死魔術

  獄火


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 50、活汁 8

◇ 創造の杖

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