第262話 補足
ラアムは都を駆ける。
城に向かって。
跳ねるように。
アルジ「人がいっぱいいるぜ!!」
エミカ「大丈夫だ!」
するりするりとかわして進む。
人も、建物も。
道に置かれた誰かの荷物も。
曲がり角を素早く曲がる。
アルジ「すげえな。
リネよりうまくなったんじゃないか?」
エミカ「…どうかな」
城が近くに見えてくる。
城門の前でラアムは止まる。
降りて、2人は駆け出す。
城門の向こう側、城に向かって。
最上階、シノ姫の間を目指して。
◆ シノ姫の間 ◆
中央にエオクシとアヅミナが立っている。
奥にはシノ姫が座っている。
右と左に2人ずつ従者を立たせて。
アルジとエミカが到着する。
アルジ「シノミワさん、入るぜ!」
エミカ「失礼します」
布をまくりあげ、前へ進む。
エオクシ「早かったな」
アルジ「エミカが飛ばしてくれた」
エミカ「重大な情報って…」
アヅミナ「それはこれから聞くところ。
あたしたちもさっき来た」
シノ姫は静かに言った。
シノ姫「そろいましたね」
アルジ&エミカ&エオクシ&アヅミナ「………」
1度小さなため息。
シノ姫「悪いんだけど…
あなたたちのお休みは、もうおしまい」
アルジ&エミカ&エオクシ&アヅミナ「………」
シノ姫「おしまいです」
従者の1人が1枚の紙をシノ姫に渡す。
その従者は、メイニナ。
城宿を手配してくれたシノ姫の助手。
シノ姫は渡された紙を広げて床に置く。
それから、そっと前の方へ突き出した。
シノ姫「手紙です」
アルジ&エミカ&エオクシ&アヅミナ「………」
シノ姫「さっき届きました」
アルジ&エミカ&エオクシ&アヅミナ「………」
シノ姫「差出人は、巨方庭の管理人です」
アルジ(巨方庭って…古代遺跡の…)
エミカ(魔真体の…起動装置がある遺跡…)
エオクシ(ハイラさんとソネヤさんか…)
アヅミナ(何かあった…。巨方庭で…)
シノ姫は手紙の内容をアルジたちに伝えた。
シノ姫「夜明け前、巨方庭に敵が攻めてきた。
警備は万全…のはずでした。
警備隊、防衛隊、大前隊。
周辺地域から集めた強者たち。
彼らが守ってくれていましたので。
ですが、敵は強かった。
あれよあれよと倒された。
『このままでは、突破されてしまいます』
手紙の最後には…そう書かれていました」
アルジ「その敵を…倒してくればいいんだな」
シノ姫「…はい」
アヅミナ「敵とは、何者でしょうか?」
シノ姫「よく分かっていません」
エオクシ「ラグアか?」
シノ姫「その可能性が高いでしょう」
エミカ「創造の杖は取り返したのに…
どうして…」
シノ姫「どうしてか。それは私も分かりません」
エミカ「………」
シノ姫「先に巨方庭を攻略するつもりかも。
起動装置を占拠してしまうつもりかも。
それから、奪いにくるつもりなのかも。
創造の杖を…」
アルジ&エミカ&エオクシ&アヅミナ「………」
短い沈黙ののち、アルジは言う。
アルジ「とにかく…行って、倒せばいいんだろ」
エオクシ「そういうこったな」
アヅミナ「カルスを飛ばすね」
エミカ「私も動かす」
アヅミナ「ありがとう。
あたしたちの力なら夕刻には着ける」
エオクシ「早速出発だ」
アルジ「おう」
シノ姫が声を上げる。
シノ姫「あなたたち」
アルジ&エミカ&エオクシ&アヅミナ「………」
シノ姫「出発する前に…補足と提案があります」
アルジ「…なんだ?」
シノ姫はこくんとうなずいてから話した。
シノ姫「まずは…補足の方からです」
アルジ&エミカ&エオクシ&アヅミナ「………」
シノ姫「これは…
言うか言わないか迷ってたんだけど…
何しろこのことは…事実かどうか…
はっきりしないことだから…
推測の域を出ないから…
言うか言わないか迷いました。
でも、やっぱり言うことにしました…。
敵について…少しでも知ってもらうために」
エオクシ「なんでしょうか?」
シノ姫「…手紙に書いてあったのです。
現れた敵は…少数ながら非常に強い者たちと。
その中でも…7人の戦士たち…
彼らは抜群に強いと」
エオクシ「7人の戦士…」
シノ姫「女が1人…男が6人…」
エオクシ「………」
シノ姫「女は剣士。火術を使う。
真っ赤に燃える刃の剣で戦っていた…」
エオクシ「………」
アルジ「へえ…そんな技を…」
エミカ(ガシマさんのような魔術技か)
アヅミナ「………」
シノ姫「男の1人は光術を使う。
光を身にまとい、長剣で技を繰り出す。
警備の戦士たちを圧倒していた」
アルジ「光術…そいつがラグアか?」
シノ姫「おそらく」
エオクシ「…ほかは?どんな戦士ですか?」
シノ姫「格闘家…」
エオクシ「………」
シノ姫「長く鋭い爪を装着し、殴って、蹴って、
巨方庭の警備を倒しまくっていた」
アルジ「そんなやつもいるのか…。
厄介そうだな!」
エオクシ「ほかは…?」
シノ姫「魔術を使う剣士。
火術、雷術、光術を使う。
斬られて傷を負っても、自分で治してたとか」
エオクシ「………」
シノ姫「槍使いもいたそうです。彼も魔術を使う。
白い鎧を装備していて、氷術と雷術を使う」
アルジ「魔術を使う戦士が多いんだな…」
エオクシ「………」
シノ姫「あとは、棒使い。
長く大きな棒を持っていて…」
エオクシ「シノ姫様」
シノ姫「…何?」
エオクシ「…分かりました」
シノ姫「………」
アルジ「…え?」
アヅミナ「………」
エミカ(…エオクシさんの様子がおかしい)
アルジはエオクシに問いかける。
アルジ「今の話で何が分かったんだ?」
エオクシ「…大前隊だ」
アルジ「え…?」
エオクシ「おそらく…一隊の戦士たちだ」
アルジ「何言ってんだ…?
一隊って…ラグアにやられたんじゃ…」
エオクシ「さぁな…知らねえ…」
アヅミナが声を上げた。
アヅミナ「精神操作じゃない」
アルジ&エオクシ「………」
アヅミナ「死んではいなかった。
ラグアに挑んだ戦士たちは。
殺される直前、生かされた。
そして、精神操作を受けた。
それで…ラグアとともに巨方庭に行った…。
こんなところじゃないかな」
エオクシ「…あるかもな!」
今度はエミカが声を上げる。
エミカ「変態魔術じゃないんですか?」
アルジ「…!」
エオクシ&アヅミナ「…?」
シノ姫「………」
エミカ「精神操作よりも恐ろしい魔術」
アヅミナ「精神操作よりも…?」
エオクシ「なんだ?そいつは」
エミカ「死者を生き返らせる。
心を壊して、力を与える…」
アルジ「まさか…その魔術を…」
エミカ「…うん」
アヅミナ「…なんなの?」
エオクシ「なんなんだ?エミカ」
エミカはエオクシとアヅミナに告げる。
改めて、その魔術の名前を。
エミカ「変態魔術です」
エオクシ&アヅミナ「………」
アヅミナがエミカに問いかける。
アヅミナ「どんな魔術なの?」
エミカ「闇の魔術だ。
大遊説の3人、その1人、マスタス。
彼が得意にしていた魔術…。
私の先生の蘇生魔術を真似して、発明した」
アヅミナ「精神操作とどう違うの?
心を壊し、力を与えるって?」
エミカ「死人を生き返らせる…。
思考も…行動も…変えてしまう…。
恐ろしい…本当に恐ろしい魔術だ…」
アヅミナ「………」
アルジは深刻な顔で語る。
アルジ「オレの学校の先生がかかっていた。
先生は3年前…殺された。
魔獣化したヤマグマと戦って…。
それから、マスタスに見つかって、かけられた。
変態魔術をかけられて、生き返ったんだ」
エミカ&エオクシ&アヅミナ「………」
アルジ「オレの先生は…
そんなに武術が得意じゃなかった。
魔術も…そんなに得意じゃない。
いや…さっぱりだった。
でも、熱心で…いろんなこと教えてくれて…。
そんな先生が…変態魔術で変えられた…。
剣術が格段に強くなっていて…
雷術を使えるようになって…
エミカとオレに襲いかかってきた…」
エオクシ「強くなっただと?」
アヅミナ「雷術を使えるようになった?」
アルジ「ああ…変態魔術は強くする。
人を、悪く、強くする。
変態魔術は…そういう魔術だ」
エオクシはニヤリと笑う。
エオクシ「だとしたら…あいつらもちっとは…
オレと張り合えるようになったのかもな…」
アヅミナ「巨方庭の守りは…
本当に突破されてしまうかも」
エミカ「だから、急ごう」
アルジたちはシノ姫の間を出ていこうする。
そのとき。
シノ姫「待って」
アルジ&エミカ&エオクシ&アヅミナ「………」
シノ姫「私の提案…」
アルジ「…ああ」
シノ姫「提案の方も…聞いてくれる?」
アルジ「そうだった…。提案ってなんだ?」
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 33
◇ HP 4234/4234
◇ 攻撃
52★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 素早さ
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 魔力 15★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、闘主の鎧
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、
壮刃破竜斬撃、雷刃剣
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 30
◇ HP 2821/2821
◇ 攻撃 11★★★★★★★★★★★
◇ 防御
31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
53★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火弾、火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
天火
◇ エオクシ ◇
◇ レベル 40
◇ HP 4488/4488
◇ 攻撃
56★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 素早さ
52★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
◇ 装備 壮刃剣、戦究防護衣
◇ 技 天裂剣、地破剣、天地双竜剣
◇ アヅミナ ◇
◇ レベル 39
◇ HP 509/509
◇ 攻撃 1★
◇ 防御 2★★
◇ 素早さ
49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 魔力
54★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 大法力の魔杖、漆黒の術衣
◇ 魔術
火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火
氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷
暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、
酷死魔術
獄火
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 50、活汁 12
◇ 創造の杖




