表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルジ往戦記  作者: roak
261/300

第261話 無罪

エオクシは話を続けた。


エオクシ「それで決闘が始まった」

アルジ「決闘…?」


訓練場の床の上。

2人はそれぞれ大の字になったまま話をする。


エオクシ「当然っちゃ当然だ。

 人前で弟子に叩きのめされたわけだからな。

 当主としちゃ生き恥もいいところだ」

アルジ「でも、だからって…」

エオクシ「あの日、突きつけられた2枚の紙。

 1枚は破門状。歴史ある道場…

 その当主に恥をかかせたオレを破門にした。

 そして、もう1枚は挑戦状。

 1人の戦士として誇りをかけてオレに挑戦した。

 あれは、そういうことだ」

アルジ「………」


エオクシは天井に向かって腕を伸ばす。

高く上げ、拳を握る。


エオクシ「真剣勝負はあれが初めてだった」

アルジ「斬り合い…か」

エオクシ「おう。練習で何度か使ったことはある。

 だが、人を斬ったことはねえ。

 獣を斬ったこともねえ。

 あのとき…当主から真剣を渡されたとき…

 オレは少し震えた。当主が構える。

 『さぁ、来い』と大声を上げる」

アルジ「戦ったのか」

エオクシ「ああ、そうするしかなかった。

 門下生、当主の奥方、全員が立会人。

 オレたちの真剣勝負を見守っている。

 オレは本心じゃそんなことしたくなかった。

 みんな今までオレを育ててくれたわけだしな。

 こんな形でお別れすんのは嫌だった」

アルジ「ああ」

エオクシ「その場から逃げたくなった。

 悪い冗談だって言ってほしかった。

 だが、当主の顔は…」

アルジ「…戦士の顔だった」

エオクシ「…ああ。そうだ。

 そして、オレはそんとき悟った。

 この先、2人が生きていくことはねえと。

 当主とオレ…今、この場で、どちらかが…

 倒されなきゃならねえんだって。

 否が応でも悟らされた…!」

アルジ「戦ったのか」

エオクシ「ああ」

アルジ「勝負は…」

エオクシ「オレが当主を倒した」

アルジ「………」

エオクシ「それからはよく覚えてねえ。

 頭が真っ白になって、よく覚えてねえんだ。

 怒った何人かの門下生が斬りかかってきた。

 オレは…仕方なく身を守るため反撃した。

 何人か倒したら誰も襲ってこなくなった。

 奥方は激昂した。オレに罵声を浴びせた。

 斬り伏せられた当主の体に覆いかぶさりながら。

 オレは逃げて、逃げて、逃げた。裸足で。

 冬の都の街を駆けた」

アルジ「………」

エオクシ「やがて疲れて、さまよった」


エオクシは小さなため息をつく。


アルジ「それで、どうなったんだ?」

エオクシ「オレは逮捕された」

アルジ「逮捕…」

エオクシ「返り血を浴びて街をうろついてんだ。

 普通は何事かと思うだろ。

 通行人が警備隊に通報したそうだ。

 で、オレはお縄になったってわけだ」

アルジ「………」

エオクシ「取り調べとか、いろいろあった。

 オレはありのまま話した。

 偽りなく、洗いざらい、すべてを。

 その結果、重罪になったって構わねえ。

 そう思ってた。誰でもいい。

 あのときは、ただ話すことで救われていた。

 そんな気がした…」

アルジ「………」

エオクシ「それから、審理院で手続が始まった。

 オレの刑罰をどうするか。審理が始まったんだ。

 でけえ建物に何度も連れ出された。

 面倒な質問に答えたりした」

アルジ「それでどうなったんだ?」

エオクシ「結果的にオレは無罪になった。

 オレを慕ってくれてた道場の門下生…

 そいつらが証言してくれた。

 あの日、起きたことを。真実を…」

アルジ「よかったな」

エオクシ「…まあな。

 だが、反対に死罪になったやつもいた。

 当主に肩入れしていた門下生…

 そして、当主の奥方…全員死罪になった」

アルジ「…そうか」

エオクシ「嘘の証言があとになってバレたんだ。

 それが効いたらしい。破門状も挑戦状も…

 こっそり捨てようとしてたらしい」

アルジ「…そうなのか。

 とにかく無罪でよかったな。

 道場に仲間がいてくれてよかった」

エオクシ「あいつらには本当助けられたぜ。

 あと、それだけじゃねえ。

 審理院と取り引きしたおかげでもある。

 オレが無罪で済んだのは」

アルジ「取引…?」

エオクシ「審理の真っ最中のことだ。

 オレは審理官から持ちかけられた」

アルジ「何をだ?」

エオクシ「そいつは見ていた。

 オレが大会で優勝するところを。

 その年のアマシロの国武術大会…

 そこでオレが優勝するところを見てたんだ。

 根っからの試合観戦好きらしくてな。

 オレの試合をいたく気に入ってくれていた。

 そんなオレの力を見込んで持ちかけたわけだ」

アルジ「力を見込んでって…まさか…」

エオクシ「大前隊に入隊するなら無罪にしてやる。

 それが、オレに出された取引だ」

アルジ「そんなことがあるのか」

エオクシ「ある。

 …で、そいつがいろいろ根回ししてくれてな。

 オレは15で入隊できたってわけだ」

アルジ「それは…本当か…」

エオクシ「本当だ。嘘のわけあるか」

アルジ「…はは…」

エオクシ「…笑うんじゃねえ。

 オレの話はこんなとこだ。

 これで少しは分かったか?

 オレの強さの理由が」

アルジ「分かった気がする」


アルジは高い天井をしばらく眺めた。

それから、口を開き、話す。

話さずにはいられなかった。


アルジ「エオクシ」

エオクシ「なんだ」

アルジ「オレの話も聞いてくれ」

エオクシ「なんの話だ?」

アルジ「オレがどうして強くなりたいのか」

エオクシ「聞かせてみろよ」



◆◆ 現在 ◆◆

◆ 城宿 ◆

アルジは部屋を出て、朝食会場へ向かう。

廊下でエミカに会う。


エミカ「…アルジ」

アルジ「エミカ、昨日は…」

エミカ「昨日は悪かった」

アルジ「謝るのはオレの方だぜ」

エミカ「いや…」

アルジ「……?」

エミカ「ああするしか…なかったんだろ」

アルジ「………」

エミカ「アルジもエオクシさんも。

 あれくらいやらなきゃ気が済まなかった。

 そうだろ」

アルジ「エミカ…」

エミカ「昨日、部屋で考えて…思った」

アルジ「大丈夫だ。もうあんな試合はしない」

エミカ「…本当か?」

アルジ「ああ…」

エミカ「約束してるんじゃないのか?

 また勝負しようって」

アルジ「…あ…」

エミカ「やっぱり…!」

アルジ「はは…」

エミカ「………」

アルジ「ははは…」

エミカ「ケガしたら来い」

アルジ「…ああ」

エミカ「その代わり絶対に負けるな」

アルジ「…もちろんだ!」


アルジは朝食会場へ歩き出す。

エミカは動かない。


アルジ「行こうぜ?腹が減った」

エミカ「もう食べてきた」

アルジ「え?」

エミカ「これから部屋に戻るところだった」

アルジ「ああ、そうか」

エミカ「うん。またお昼に会おう。

 少し寝足りないから、もう1回寝る」

アルジ「そっか、おやすみ」


エミカは部屋に戻っていった。

アルジは朝食会場に入る。

そこは、広い部屋。

白い壁と白い床。

立派な造りの卓と椅子。

大きな窓から広い庭がよく見える。

静かに談笑しながら食事する多くの客。


アルジ(…客がなんだかみんな上品だ。

 国首の泊まる宿は違うな…)


係員に案内されてアルジは席につく。

出された品書きを見る。

3種類の定食のうち、どれか1つを選ぶ方式。

しばらく考えて、アルジは選んだ。


アルジ(楽しみだ…)


庭を眺めていると料理が出される。

肉料理、魚料理、野菜料理。

華やかに盛られている。


アルジ「…すげえっ!」


アルジは勢いよく食べて、食後の茶を飲んだ。


アルジ「…ふー…うまかった…」


椅子から立ち上がり、部屋に戻る。


アルジ「ごちそうさま」

係員「ありがとうございました」


廊下を歩きながら彼はふと考えた。


アルジ(すごい料理だったな…。

 あんな朝飯は初めてだったぜ…。

 国首も…ああいうのを食ってるのか。

 いい朝飯で栄養とって、休んでんのか。

 それで面倒な仕事に取りかかると…。

 オレも大陸のため真剣に考えよう。

 どうやってラグアを見つけるか…。

 どうやって安定の玉を取り返すか…。

 そして、どうやって魔真体を阻止するか…。

 真剣に考えるとするかー!)


部屋の戸を開ける。

敷かれたままの布団が見えた。


アルジ(…と思ったが、少し休ませてもらうぜ。

 今は腹がいっぱいで気分がいいからな…。

 正午に城宿の前…だよな。

 オレも少し寝ておこう)


アルジは横になり、浅い眠りに就いた。

昼になり、目を覚ます。

窓から入る暖かい日の光が心地よい。

空はよく晴れていた。


アルジ(…もう昼か。行かないとな)


支度をして、部屋を出る。

部屋の鍵を受付に預けて宿の外へ。

昨日、4人が分かれた場所。

そこにエミカは立っていた。

アルジは声をかける。


アルジ「よう」

エミカ「アルジ」

アルジ「2人はまだなのか」

エミカ「うん。もうすぐ正午だけど…」

アルジ「忘れて寝てんのかな…」

エミカ「アヅミナさんはそんなことしない」

アルジ「…そうか。

 そうだな…ならどうしたんだろうな」

エミカ「うん…」


そのときだった。

駆けてくる1人の男。


アルジ「あれ?こっちに来るぜ。

 オレたちに用かな…?」

エミカ「…そうみたいだ」


彼は城の使い。

アルジとエミカに伝える。


城の使い「アルジ様!エミカ様!

 シノ姫様がお呼びです」

アルジ「シノミワさんが?」

城の使い「はい。

 エオクシとアヅミナも行っております」

アルジ&エミカ「………」

城の使い「重大な情報が入ったとのことです」

エミカ「アルジ、行こう!」

アルジ「ああ!!」


アルジとエミカはラアムに乗って城に向かう。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 33

◇ HP   4234/4234

◇ 攻撃

 52★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 魔力  15★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、闘主の鎧

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、

     壮刃破竜斬撃、雷刃剣

◇ 魔術  雷動


◇ エミカ ◇

◇ レベル 30

◇ HP   2821/2821

◇ 攻撃  11★★★★★★★★★★★

◇ 防御

  31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  53★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、濃色魔術衣

◇ 魔術  火弾、火球、火砲、火樹、火海、王火

      氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷

      雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術

      天火


◇ エオクシ ◇

◇ レベル 40

◇ HP   4488/4488

◇ 攻撃

  56★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

  47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 素早さ

  52★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

◇ 装備  壮刃剣、戦究防護衣

◇ 技   天裂剣、地破剣、天地双竜剣


◇ アヅミナ ◇

◇ レベル 39

◇ HP   509/509

◇ 攻撃   1★

◇ 防御   2★★

◇ 素早さ

  49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★

◇ 魔力

  54★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  大法力の魔杖、漆黒の術衣

◇ 魔術

  火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火

  氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷

  暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、

  酷死魔術

  獄火


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 50、活汁 12

◇ 創造の杖

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ