第26話 蘇生
茶屋でくつろぐアルジたち。
茶を飲み、団子を食べた。
アルジ「今日はどこまで行くんだ?」
リネ「オケアの町まで行こうと思ってます」
エミカ「結構行きますね」
ミリ「それってどの辺?」
リネ「地図を出します」
リネは荷物入れから1枚の地図を出して広げる。
リネ「今、カリヤですから…」
ミリ「2つ村を抜けるんだ」
エミカ「そうだね」
アルジ「結構進むな」
リネ「この速さなら3日ほどで行けます。
北土の魔術研究所まで」
入ってくる複数の客。
彼らは、織物を売り歩く商人の一団。
商人A「ふー、参ったぜ」
商人B「思いがけない足止めだ」
店主「どうしたんですか?」
商人A「化け物が現れたらしい」
店主「化け物ですか」
商人B「人食いの化け物だ」
商人A「とんでもなくでかいらしい」
店主「それはそれは…」
彼らの話に耳を傾けるアルジたち。
リネは商人の1人に尋ねた。
リネ「近くで化け物が出たんですか?」
商人A「おう。あんた、旅の者か」
リネ「はい。北土の魔術研究所まで…」
商人B「そいつは残念だったな。
トガワの村で通行止めだ」
トガワとは、カリヤの先にある小さな村。
目標としていたオケアの町はその先にある。
リネ「通行止め…」
商人B「中央政府から調査隊も来ていた。
あの様子じゃいつ通れるようになるか。
この一件、ただごとじゃねえようだ」
リネ「…そうですか」
商人A「あんた…もしや大魔術師様か…?」
リネ「ええ、リネと申します」
商人A「やはりそうか!
ワノエの大魔術師様がどうして旅なんか…」
リネ「魔術の修行です」
商人A「そいつぁ結構なことです。
どうかお気をつけて!」
リネ「はい、ありがとう」
リネはアルジたちに言う。
リネ「ひとまずトガワまで行ってみましょう」
アルジ「そうだな」
エミカ「さすが有名人ですね」
リネ「一応、大魔術師ですから」
ミリ「かっこいい」
リネ「あなたたちもなれますよ。
もっともっと魔術を磨けば。
さてと、そろそろ出ましょうか」
茶と団子の代金をリネが支払う。
アルジも金を出そうする。
アルジ「警備隊から結構もらったんだぜ」
リネ「気持ちだけいただきましょう」
アルジ「…そうか」
アルジたちは再びラアムとナアムに乗る。
アルジとリネがラアムに。
エミカとミリがナアムに。
リネ「さっきよりも少し速度を上げますよ。
いいですね?」
エミカ&ミリ「はい!」
走り出すラアムとナアム。
ラアムが前を行き、ナアムがその後ろに続く。
歩いている旅人たちを追い越してぐんぐん進む。
混み合ったところでは速度を落とす。
2頭は縦に並んでゆっくり進む。
旅人たちは好奇の目で見ていた。
魔力で動くラアムとナアムを。
ラアムを巧みに操りながらリネは話す。
リネ「警備隊からお金をもらったんですね」
アルジ「ああ」
リネ「あなたへの悪行の償いでしょうか」
アルジ「カクノオウを倒した礼らしいけど…
本心はそんなところかもな」
リネ「隊長のナンダスという男…
彼は本当にひどい人でした。
ですが、あまり悪く思わないでくださいね。
ワノエ警備隊のことは。
みんながみんなあんな人ではないので」
アルジ「………」
リネ「それから、2人のことも」
アルジ「2人って…」
リネ「オオデンとノゴウです」
アルジ「知ってるのか」
リネ「はい。2人とも面識があります。
私のところによく相談に来ていました」
アルジ「そうだったのか」
リネ「彼らの悩みごとを聞いたり占ったり。
そういうことを私はしていました」
アルジ「そっか」
リネ「最初に来たのはオオデン。
ある頼み事をしてきました。
ですが、私は断りました。
断ることしかできなかったから」
アルジ「どんな頼みだ?」
リネ「生き返らせてほしいというものです。
カクノオウに殺された警備隊員を。
そして、カサナ家の人たちを」
アルジ「生き返らせる…!」
リネ「はい。私は蘇生魔術が使えます。
そのことをどこかで聞いたのでしょう。
表向きにはしていないのですが…」
アルジ「蘇生って…そんな魔術があるのか」
リネ「はい。あります。
蘇生魔術は光の魔術で最も高度なもの。
使える人はごく一部の魔術師に限られます」
アルジ「光の魔術…。
昨日、エミカとオレに使ってくれたのも…」
リネ「そうです。
光の魔術は傷や病を癒します。
治療魔術をずっと強くしたもの。
それが蘇生魔術です。
蘇生魔術の効果は素晴らしいものですが、
気軽に使えるものではありません。
大きな代償を伴いますから」
アルジ「どんな代償だ?」
リネ「私の命が削られます」
アルジ「………」
リネ「だから、気軽に使えません。
それに、死んでから時間が経っていると
効果はなく、生き返りません。
体の大事な部分が失われている場合もです。
頭部や胸部のない死体は生き返りません。
死んだ直後で大事な部分が残っている死体。
それに多くの魔力を注ぎ、自分の命を削り、
やっと1人を救える。そういう魔術です」
アルジ「………」
リネ「だから、断るしかありませんでした。
オオデンからの依頼は」
アルジ「そっか」
リネ「続いて、私のところに来たのはノゴウ。
彼は犯した過ちを深く悔いている様子でした。
そんなノゴウへ私からの助言は1つだけ。
できることをしなさいということでした」
アルジ「………」
リネ「それで、彼はオオデンと手を組み、
カクノオウの館へ潜入したのです。
情報を得るために…」
アルジ「オオデンは…」
リネ「占いました。どうするのがよいことか。
占って、彼に伝えました」
アルジ「どんなことを?」
リネ「ナキ村よりあなたの協力者が現れる…。
夜、トノク峠に出ていなさい、と」
アルジ「あんたが仕組んでたのか…!」
リネ「仕組んだなんて…人聞きが悪いですね」
アルジ「ごめん。でも、まあ、そうだな。
結果的にオレはあれでよかったと思う。
タラノス先生にも会えたしな」
リネ「なら…よかったです」
アルジ「タラノス先生もオオデンもノゴウも…
死んでしまったのは残念だけどな…」
リネ「そうですね」
村を通り過ぎる。
ナキ村と同じくらい小さな村を。
アルジ「なあ」
リネ「はい」
アルジ「マスタスってどんな魔術師なんだ?
タラノス先生をあんな目に遭わせて…
ナンダスみたいな悪党なのか?」
リネ「いいえ。彼はそういうのとは違います」
アルジ「違うのか」
リネ「はい。あとでお話させてください。
エミカもミリも聞いているときに。
私とマスタスの過去について。
これは大事なことなので」
アルジ「そっか、分かった」
アルジはエミカが言ったことを思い出す。
リネとマスタスが恋人同士だったことを。
リネ「アルジさん、あなたには…」
アルジ「ん?」
リネ「あらかじめ伝えておきましょう」
アルジ「なんだ?」
リネ「マスタスについて」
アルジ「ああ」
リネ「彼はナンダスとはまったく違います。
私たちとも違います。研究所の誰とも違う。
彼は深い闇の中にいる」
アルジ「………」
リネ「それはもう…深い深い闇の中に…」
アルジ(…一体どれだけ深い闇なんだ?)
しばらくすると、トガワの村が見えてきた。
ラアムは減速し、後ろにいたナアムと並ぶ。
ミリ「リネさん!休もう。もうヘトヘトです」
リネ「そうね。そうしましょう」
ラアムとナアムから降りる。
アルジたちはトガワの村に着いた。
よく晴れた空が広がっている。
日は西へ傾き始めている。
村には不穏な空気が漂っていた。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 8
◇ HP 347/347
◇ 攻撃 12★★★★★★★★★★★★
◇ 防御 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 12★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 2★★
◇ 装備 勇気の剣、銀獣の鎧
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃
◇ エミカ ◇
◇ レベル 6
◇ HP 192/192
◇ 攻撃 7★★★★★★★
◇ 防御 12★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 7★★★★★★★
◇ 魔力 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 魔樹の杖、深紅の魔道衣
◇ 魔術 火球、火砲
◇ ミリ ◇
◇ レベル 5
◇ HP 144/144
◇ 攻撃 4★★★★
◇ 防御 7★★★★★★★
◇ 素早さ 6★★★★★★
◇ 魔力 16★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 魔石の杖、紺碧の魔道衣
◇ 魔術 氷弾、氷柱、氷乱
◇ リネ ◇
◇ レベル 23
◇ HP 678/678
◇ 攻撃 6★★★★★★
◇ 防御 16★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 11★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、創造の杖、聖星清衣
◇ 魔術 雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療薬 25、魔力回復薬 16




