第257話 開演
木剣を構えたままエオクシは言う。
エオクシ「…よう」
アルジ「なんだ?」
エオクシ「負けたら1つ…オレの言うことを聞け」
アルジ「…なんだと?」
じりじりと距離を詰めていくエオクシ。
緊張が高まる。
エオクシ「オレが勝ったらおめえは大前隊に入れ」
アルジ「!!」
エオクシ「いいな?」
アルジ「…ああ、いいぜ」
エオクシ「よし!!」
そのやりとりに耳を疑う戦士たち。
戦士たち(あいつ…隊員じゃなかったのか!)
エオクシの爆発的な一撃が飛んでくる。
アルジは体勢を崩しながらもそれをかわす。
アルジ「…!!」
エオクシ「…クソッ…!!」
アルジ(相変わらず…とんでもない攻撃力だぜ!!
一瞬でも気を抜けば…簡単に潰される!!)
素早く後退し、アルジは距離をとる。
だが、エオクシはぐいぐいと詰めてくる。
アルジ(この圧力…!
ガシマにも…オンダクにもない…。
やっぱりこいつは…1人だけ桁違いに強い!
頂点なんだ!
大前隊の…歴代最強の…戦士なんだ!!
……だが!!オレだって負けちゃいない!!)
エオクシ「おい、てめえ…」
アルジ「…え?」
エオクシ「何笑ってんだ…!?」
アルジ「…ははっ!」
上段、中断、下段。
アルジは立て続けに木剣を打ち込む。
強く、速く、稲妻のように。
エオクシは避けない。
そのすべてを木剣で弾いた。
エオクシ「ははっ!!」
エオクシも笑っている。
反撃が飛んでくる。
その一撃は、アルジの左肩をとらえた。
バシンと大きな音が鳴る。
見ていた何人かの声が上がる。
戦士たち「…ひっ…」
アルジは痛みに顔をゆがめる。
だが、崩れない。
続けて襲いかかるエオクシ。
木剣を、振り上げて、振り下ろす。
全身を躍動させて。
アルジはよく見てかわす。
次の攻撃も、その次の攻撃も。
そして、反撃。
ドン、と訓練場内に音が響いた。
エオクシ「…ぐっ!」
力強く振り下ろした木剣。
エオクシの右肩を上から叩く。
顔をゆがめ、たまらず後退するエオクシ。
アルジ「これでおあいこだ!!
一応聞いとくが…!
お前には手を抜かなくていいんだよな?」
エオクシ「バカが…!当たりめえだ!!!」
戦士たち「………」
木剣を構えてにらみ合う両者。
勝負の行方はどうなるのか。
もはや誰にも予想できない。
アルジ「…なあ」
エオクシ「…あ?」
アルジ「この勝負…オレが勝ったらどうする?」
エオクシ「ふん…
オレもおめえの言うことを聞いてやろう」
アルジ「それなら…」
エオクシ「…なんだ?」
アルジ「もしも…もしもの話だ」
エオクシ「もしも?なんだ?」
アルジ「オレたちがラグアに遭遇したら…」
エオクシ「………」
アルジ「そのときは…オレにラグアと戦わせろ」
エオクシ「…!!」
アルジ「いいな?言うこと聞いてもらうぜ」
エオクシ「好きにしやがれ。オレに勝てたらな!」
アルジ「うおおおおおおお!!!!!!」
激しく撃ち合う。
木剣と木剣がぶつかり合い、音を立てる。
アルジもエオクシも笑みがこぼれた。
互いの技量、力量に、驚き、目覚めさせられて。
エオクシ(面白え…!
こうなりゃとことんやってやる!!)
アルジ(速い…強い…恐ろしい…!
だが…!これは…面白い…!!)
そんなときだった。
男の声「てめえらぁああ!!何やってる!!!」
アルジ&エオクシ「!?」
戦士たち「!!!!????」
◆ 都 劇場が並ぶ通り ◆
エミカとアヅミナは劇場の前で立ち止まる。
そこは夜にもかかわらず人通りが多かった。
並んだ大きな看板にエミカは目を奪われる。
それぞれの看板には劇の内容を表現した絵。
作品の題名と役者の姿が大きく描かれている。
エミカ「賑やかだ…すごい…」
アヅミナ「どれがいい?」
エミカ「………」
アヅミナ「いろいろあるからゆっくり選んでね」
エミカ「アヅミナさんは?」
アヅミナ「…え?」
エミカ「何がいい?」
アヅミナ「あたし…?」
エミカ「私は…何が観たいのかもよく分からない。
劇のことも、役者さんのことも、知らないから。
こういうの…来たことないから。でも…観たい。
面白くて、感動する劇が…素敵な劇が…観たい。
だから、アヅミナさんの意見が聞きたい」
アヅミナ「なら、これはどう?」
エミカ「………」
アヅミナは近くの看板を指差した。
真ん中に1人の女優の大きな絵。
その周りに数人の男女の役者の絵。
題名は「春の夜空の星降る丘に」。
看板の下の方には小さな字で粗筋が書いてある。
真剣な顔でエミカはそれを読む。
エミカ「…面白そう」
アヅミナ「本当?」
エミカ「きっと面白いと思う」
アヅミナ「それなら、行こっか」
エミカ「うん、行こう」
窓口で観劇券を買う。
エミカ「あ、お金…。アルジが持ってた…」
アヅミナ「あたしが出すから」
エミカ「…ありがとう」
アヅミナが希望の席を窓口に伝える。
係員が金額を告げる。
エミカ「た、高い…」
アヅミナ「せっかく観るならいい席にしたい。
それに夜間公演は割安だしね」
エミカ「これで割安なのか…」
アヅミナ「うん。いい席がとれた。
ちょうど空いててよかったよ」
劇場に入る。
開演まで時間はある。
だが、客席はすでにほぼ満席。
アヅミナ「主演の女優さんが好きなんだ」
エミカ「女優さん…」
アヅミナ「あたしよりも年下で…
エミカちゃんより少し上かな」
エミカ「そうなのか」
アヅミナ「個人的に応援してる。
この前、握手もしてもらった」
エミカ「握手…」
アヅミナ「とても優雅な雰囲気がある。
それに演技がすごいんだ」
エミカ「そうなのか」
アヅミナ「彼女は間違いなく上り詰める」
エミカ「上り詰める…?」
アヅミナ「都で1番の女優さんにね」
エミカ「そうなんだ」
アヅミナ「あたしの予想だけど」
エミカ「………」
鐘の音が鳴り、客席が暗くなる。
穏やかな音楽が奏でられる。
エミカは目を見開き、背筋を伸ばす。
アヅミナはそんな彼女を見て笑う。
アヅミナ「緊張し過ぎ」
エミカ「そうかな…」
アヅミナ「まだしばらく始まらないから」
エミカ「そうなのか?」
アヅミナ「そうだよ。
あたし、今日で観るの3回目」
エミカ「!!3回も…」
アヅミナ「うん、3回も観たくなった。
だから、自信がある。
エミカちゃんも楽しんでくれるって」
エミカ「ますます楽しみになってきた」
アヅミナ「ねえ、劇が始まるまで…
少しお話してもいい?」
エミカ「え…?うん…」
アヅミナは幕の上がらない舞台を眺めて言う。
アヅミナ「あたし…
エミカちゃんの魔力が好きだな」
エミカ「………」
アヅミナ「一見、不安定に揺れていて…
でも…ちゃんと繋がっていて…
まとまっていて…力強くて…」
エミカ「私の魔力は…受け継いだものだから…」
アヅミナは小さく首を横に振ってから言った。
アヅミナ「あのときはごめんね」
エミカ「え…?」
アヅミナ「初めてあなたとお話したときのこと…」
エミカ「ああ…」
アヅミナ「あたしは…あのとき…嫉妬したんだ。
強い魔力をいくつも受け継いだあなたに…。
それをしっかり繋ぎとめてるあなたの意志に。
あなたに魔力を託した人たちの意志に…」
エミカ「………」
アヅミナ「意志…あなたの魔力には意志がある。
とっても…とても強い意志が…」
エミカ「少しでも…よくなりたいと思うからかも」
アヅミナ「………」
エミカ「私は…元々…そんなに魔術…
得意じゃなくて…」
アヅミナ「あたしも…
エミカちゃんのようになりたいと思う」
エミカ「………」
アヅミナ「宿したい。
あたしの魔力にも…意志を宿したい。
強い意志を。そう思ってる。心から」
アヅミナは真剣な顔でエミカの目を見つめた。
一瞬、エミカの息が止まる。
エミカ「………」
アヅミナ「エミカちゃんは…
どうして魔術を始めたの?」
エミカ「どうして…」
アヅミナ「うん。どうして?」
エミカ「それは…」
アヅミナ「…言ってみてもいい?
あたしが思ってること」
エミカ「………」
劇が始まる。
幕が上がる。
エミカもアヅミナも舞台に目を向けた。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 33
◇ HP 4234/4234
◇ 攻撃
52★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 素早さ
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 魔力 15★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、闘主の鎧
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、
壮刃破竜斬撃、雷刃剣
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 30
◇ HP 2821/2821
◇ 攻撃 11★★★★★★★★★★★
◇ 防御
31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
53★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火弾、火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
天火
◇ エオクシ ◇
◇ レベル 40
◇ HP 4488/4488
◇ 攻撃
56★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 素早さ
52★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
◇ 装備 壮刃剣、戦究防護衣
◇ 技 天裂剣、地破剣、天地双竜剣
◇ アヅミナ ◇
◇ レベル 39
◇ HP 509/509
◇ 攻撃 1★
◇ 防御 2★★
◇ 素早さ
49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 魔力
54★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 大法力の魔杖、漆黒の術衣
◇ 魔術
火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火
氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷
暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、
酷死魔術
獄火
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 50、活汁 12
◇ 創造の杖




