第255話 静寂
都の中心にそびえる白く大きな建物。
壮麗な外観は人々の目を惹きつける。
城宿。
最高の設備、最高の接客。
多くの偉人、要人が泊まり、愛した。
アルジとエミカはその宿へ向かう。
エオクシとアヅミナに案内されて。
城のような建物が見えてくる。
アルジ&エミカ「………」
エオクシ「圧倒されたか?」
アルジ「…ああ」
アヅミナ「綺麗な庭があるよ」
エオクシ「デカイ風呂もな」
アルジ&エミカ「………」
城宿の近くで立ち止まる。
アヅミナは西の方を指差した。
アヅミナ「あっちは…
衣類や装飾品の高級店が並ぶ通り」
アルジ「高級…なのか…」
エオクシは東の方を指差した。
エオクシ「あっちの通りには…
劇場がいくつも並んでるぜ」
エミカ「劇場…」
目を輝かせるエミカ。
南の方を指差してエオクシは言う。
エオクシ「アルジ、
大前隊の訓練場はあの通りをまっすぐだ」
アルジ「あの通りか」
エオクシ「そうだ」
アヅミナ「エミカちゃん、夜迎えに行くから」
エミカ「ありがとう」
エオクシ「忘れずに来いよ、アルジ!」
アルジ「ああ」
エオクシとアヅミナは官舎へ帰っていく。
アルジとエミカは城宿に入っていく。
重厚な扉を抜け、広い玄関を歩く。
白い床、白い壁、やけに高い天井。
2人とも目を丸くして黙って進む。
アルジ&エミカ「………」
受付で手続を済ませた。
案内されて部屋に行く。
2部屋確保されていた。
アルジ「じゃあな」
エミカ「うん、また」
2人はそれぞれの部屋で設備などの説明を聞く。
広い寝室。
大きな風呂。
窓からは広い庭が見えた。
アルジ(国首が泊まる宿か…。
ちょっと偉くなった気分だ…)
案内人「どうぞ、ごゆっくり」
アルジ「ああ、ありがとう」
間もなくエミカが部屋にやってくる。
エミカ「アルジ」
アルジ「おう」
エミカ「………」
アルジ「どうした?」
エミカ「壁の模様、かなり違うんだな」
アルジ「そうなのか」
エミカ「でも…造りは大体一緒だな」
アルジ「ふーん、そっか」
エミカは窓の方へ歩いていった。
さらさらと爽やかな風が舞い込んでくる。
その風が彼女の髪を揺らした。
エミカ「あ、お城だ」
アルジ「本当だ」
庭の向こうに大君の城がそびえ立っていた。
エミカ「すごい宿だ」
アルジ「ああ」
エミカ「都って、やっぱりすごいところだ」
アルジ「そうだな」
エミカ「………」
エミカは楽しそうにほほえむ。
創造の杖を握り締めながら。
アルジ「よかったな。取り返せて」
エミカ「…よかった。嬉しい」
アルジ「本当によかったぜ」
エミカ「次は安定の玉だな」
アルジ「ああ、安定の玉だ」
エミカ「頑張ろう」
アルジ「ああ、絶対取り返す」
エミカ「うん、取り返そう」
2人で窓から庭を眺める。
手入れの行き届いた宿の庭を。
数人の宿泊客がのんびり散歩していた。
アルジ「天火も習得できてよかったな」
エミカ「うん、よかった」
アルジ「………」
エミカ「アヅミナさんが教えてくれたんだ。
リネさんの論文に書いてないこととか。
私1人じゃ…習得できなかったと思う」
アルジ「そっか。よかったな。すごかったぜ」
エミカ「自分でも驚いてる…。
こんな魔術があるんだって。
私にもこんな魔術が使えるんだって。
同時に…気をつけなきゃって思った」
アルジ「何を?」
エミカ「天火は…強過ぎる。
使い方を誤れば…多くの人を不幸にする…。
そんな気がした」
アルジ「何言ってんだ。エミカなら大丈夫だぜ」
エミカ「…そうかな」
アルジ「ああ、大丈夫だ!」
エミカ「ありがとう」
エミカが笑い、アルジも笑った。
エミカ「せっかく都に来たんだ。楽しもう」
アルジ「そうだな」
エミカ「いろんなお店を見に行きたい」
アルジ「いいな」
エミカ「博物館とか魔術院も見てみたい」
アルジ「行こうぜ」
エミカ「うん。3日もあれば…」
アルジ「ああ、行けるさ」
エミカ「……ふあ…」
アルジ「…ふああ…」
2人であくびをする。
エミカ「…眠くなってきた」
アルジ「オレもだ…」
大きな布団が大きな寝台の上に敷かれている。
3人は楽に寝られる大きさ。
アルジとエミカはその上に並んで仰向けになる。
ぽっかりと1人分、間隔を開けて。
アルジ「オレたち…本当に都に来たんだな」
エミカ「来てるぞ」
アルジ「しっかり楽しまないとな」
エミカ「うん」
アルジ「ナキ村の友達が…行きたがってたんだ」
エミカ「…そうなのか」
アルジ「もうずっと前のことだけど。
学校を卒業したら一緒に行こうって…
話したことがあった。
オレはそんなに行きたいわけでもなかったけど」
エミカ「そうなのか?」
アルジ「ああ。でも、オレが1番乗りしちまった」
エミカ「…そっか」
天井をぼんやり眺めるアルジ。
エミカはアルジの横顔を見て言った。
エミカ「おみやげを買ったらどうだ?その友達に」
アルジ「………」
エミカ「アルジ…?」
アルジ「…みやげか。いいな」
エミカ「うん。いいと思う」
アルジ「あとで買いに行くか…」
エミカ「一緒に行く」
アルジ「ああ、行こうぜ」
アルジはエミカに顔を向けて笑う。
アルジ「今夜はちょっと無理だけどな!
武術大会があるから」
エミカ「…アルジの喧嘩も最高潮だな」
アルジ「喧嘩じゃないぜ。大会だ」
エミカ「都まで来て戦うなんて…。
…ちゃんと生きて帰ってくるんだぞ」
アルジ「大丈夫だ。
エオクシも倒してオレが優勝だ!」
エミカ「そしたらお祝いするよ」
アルジ「やる気がみなぎってきたぜ」
エミカ「…ふあ……ダメだ…。…もう眠りそう」
アルジ「オレもだ。おやすみ」
エミカ「おやすみ」
そのまま2人は眠った。
日は西へ傾いていく。
◆ シノ姫の間 ◆
奥の方に4人。
シノ姫と3人の従者。
3人の従者のうち1人はメイニナ。
シノ姫「…どう?」
メイニナ「だめ…ですね」
シノ姫「…そう」
メイニナは飛んできた合離蝶を手にしている。
全部で3つ。
それらには1通ずつ手紙が結びつけられていた。
届いた3通の手紙には同じ内容の文章。
その内容とは、このようなもの。
「ラグアの居場所を見失った」。
シノ姫「派遣したのは選りすぐりの調査員…。
彼らをもってしても…見失うなんて…」
メイニナ「ノイ民総会後…
ずっとつかめていません」
シノ姫「ここは少し…様子を見ましょう。
…新たな合離蝶を飛ばす必要はありません。
何かあれば…向こうから便りがあるでしょう」
メイニナ「…分かりました」
シノ姫は黙って考える。
シノ姫(不穏なまでの静寂…。どういうこと…?
圧倒的優位…それは間違いない。揺るがない。
だけど…まだ…何かある気がしてくる…。
ここまで何もないと…何かある気がしてくる。
何かが起こる前の…不穏な静寂…。
これも…そうなの?
ラグアは…何かを仕掛けようとしている…?
私たちは…何かを見落としている…?
何か…そう…何か。何か…決定的で…
戦局を覆す…重大な…何かを…)
メイニナ「シノ姫様…?」
シノ姫は笑って返答する。
シノ姫「打つ手がなくなって…
悩んでいるのかもしれませんね」
メイニナ「私もそうじゃないかと思ってましたよ」
シノ姫「今は連絡を待ちましょう」
メイニナ「…はい」
◆◆ 夜 ◆◆
◆ 城宿 ◆
アルジは目を覚ます。
日が沈んでからあまり経っていない。
武術大会の開始まで時間があった。
アルジ(3時間くらい寝たかな…。
少し寝足りない気もするけど…起きよう。
とりあえず…風呂に入るか…)
ひっそりと入浴を済ませる。
エミカを起こさないように。
風呂から上がり、着替える。
そして、置き手紙を書く。
エミカに宛てた手紙を。
アルジ(部屋の鍵は受付に預けた…と)
枕元にそっと起き、鍵をかけて部屋を出た。
宿から出ると、外にはいくつも魔灯火が並ぶ。
アルジ(夜なのに…めちゃくちゃ明るい…)
昼間と変わらず、外は戦士たちが行き交う。
アルジ(あいつらも訓練場に来るのか…?)
アルジは目を向ける。
宿に入る前、アヅミナが教えてくれた通りに。
それは、衣類や装飾品の高級店が並ぶ通り。
アルジ(あのときの約束を…果たさなきゃ…。
シノミワさんがくれた金は全然使ってない。
宿もただで泊めてもらうことになったし…
これで買い物したって…大丈夫だよな)
しばらく通りを歩いて、宝石店を見つける。
少しソワソワした様子で中に入る。
高価な品物がいくつも展示されている。
アルジ(初めて来たぜ…。
こういう店…。大丈夫だよな…)
店員やほかの客の視線を感じながら奥へ進む。
そのとき。
アヅミナ「あれ…アルジ君?」
アルジ「え…」
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 33
◇ HP 4234/4234
◇ 攻撃
52★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 素早さ
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 魔力 15★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、闘主の鎧
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、
壮刃破竜斬撃、雷刃剣
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 30
◇ HP 2821/2821
◇ 攻撃 11★★★★★★★★★★★
◇ 防御
31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
53★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火弾、火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
天火
◇ エオクシ ◇
◇ レベル 40
◇ HP 4488/4488
◇ 攻撃
56★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 素早さ
52★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
◇ 装備 壮刃剣、戦究防護衣
◇ 技 天裂剣、地破剣、天地双竜剣
◇ アヅミナ ◇
◇ レベル 39
◇ HP 509/509
◇ 攻撃 1★
◇ 防御 2★★
◇ 素早さ
49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 魔力
54★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 大法力の魔杖、漆黒の術衣
◇ 魔術
火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火
氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷
暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、
酷死魔術
獄火
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 50、活汁 12
◇ 創造の杖




