第254話 開催
地下通路を抜け、隠し扉を開けるアルジたち。
開けると、近くにシノ姫が立っていた。
シノ姫「私の部屋に来てちょうだい」
エオクシ「は…」
アルジ&エミカ「………」
アルジたちは階段を上がり、城の最上階へ。
そして、シノ姫の間に入る。
◆ シノ姫の間 ◆
シノ姫は奥の方へ歩いていき、座る。
アルジ、エミカ、エオクシは立ったまま。
シノ姫「あなたたちを巨方庭には行かせません」
エオクシ「………」
アルジ「…え…?」
エミカ「……?」
短い沈黙。
シノ姫「行かせませんよ。
あなたたちを巨方庭には…」
エオクシ「………」
エミカ「どうしてですか…?」
アルジ「…なんでだ!?」
シノ姫「………」
シノ姫は奥で立っていた従者の1人を呼ぶ。
ひそひそと何事か伝える。
従者は外へ出ていった。
シノ姫「もう少し…ここで待っていて」
アルジ&エミカ&エオクシ「………」
遅れてアヅミナがやってくる。
アヅミナ「アヅミナ参上しました」
シノ姫「入って」
アヅミナが入ってくる。
ひどく疲れた様子。
シノ姫「ロニはどう?」
アヅミナ「調査員が面倒を見ています。
最後まで見るように頼んであります」
シノ姫「そうですか」
アルジ(最後まで…?)
アルジたちの顔を眺めてシノ姫は言う。
シノ姫「ほとんど眠ってないでしょ。あなたたち」
アルジ「………」
シノ姫「疲れが顔に出ています」
エミカ「………」
シノ姫「まずはゆっくり休んだらどうですか?
無理して動いてもろくなことになりません。
3日くらい…どうですか?休養を取っては?
アルジさんとエミカさんは…
初めての都だそうですね。
ゆっくりお店など見て回るのもいいでしょう」
アルジ「今、そんな呑気なことは…」
シノ姫「今だからこそ、ですよ。
あなたたちは強い。それは間違いない。
ラッセイムスラの討伐ではっきりした。
だけど、一方でラグアの実力は未知数です。
だからこそ、今は休むのです。
心も体も落ち着けて、次の戦いに備えるのです。
この考え…どうでしょうか?」
アルジ&エミカ&エオクシ&アヅミナ「………」
シノ姫は小さく笑って言う。
シノ姫「それに私たちは今…
圧倒的に優位な立場にいる」
アルジ「優位って…」
シノ姫「魔真体の復活には星の秘宝が必要です。
今、それらのうちの1つを取り返している。
さらに、都には鉄壁の守りがある。
私の号令で大陸各地の強者が集結しました。
その上、巨方庭の警備も強化しています。
周辺の警備隊、防衛隊の協力も得て…。
これではラグアも簡単には動けないでしょう」
アルジ「…そうかもな」
シノ姫「ですから、あなたたちには休んでほしい。
まずは疲れをとって。
戦いはそれからにしませんか?」
エオクシ「…分かりました」
アヅミナ「休ませてもらいます」
アルジ&エミカ「………」
エオクシ(そうだな…。今…動かなくてもいい。
巨方庭に先回りして…
起動装置を破壊できれば最高だが…
その方法が分からねえ…。
待ち伏せするにしたって…
ラグアがいつ来るかなんてこたあ分からねえ!
もしかすると…魔真体は諦めてるかもしれねえ。
そうなると…永久に来ねえかもしれねえ。
巨方庭に行って攻略したはいいが、無駄足…
そういう事態もねえとは言い切れねえ)
アヅミナ(巨方庭の攻略法は分かった。
戦力も十分。いつでも攻略できる。
それなら…今じゃなくてもいい。
それに…とにかく疲れた…。今は休みたい…)
シノ姫は穏やかな声で問いかけた。
シノ姫「アルジさんもエミカさんもいいですか」
アルジ「ああ」
エミカ「はい」
シノ姫(そうです…今は休みなさい…。
そして、研いで、磨いて、持ってなさい…。
あなたたちのその刃を…。
そう…あなたたちは剣…。
政府にとって、攻撃の要となる存在…。
ガシマ、オンダク、各地の大前隊…彼らは盾…。
この剣と盾があれば…負けることはない…。
そして、攻撃の要には…
ここぞというとき、動いてほしい…。
万全の状態で、最大限の力を発揮してほしい!
だから…休めるときに休みなさい…!)
シノ姫は不敵に笑う。
シノ姫「ふふふ…」
アルジ&エミカ&エオクシ&アヅミナ「………」
シノ姫「食事をしてきたら…?」
アルジ「食事…」
シノ姫「お腹が空いたでしょ?
まともな食事をしてないんでしょ?」
アルジ「…言われてみると腹が減ってきた」
エオクシ「途中から活汁ばっかだったしな」
エミカ「普通の食事が恋しい」
アヅミナ「行きましょ」
アルジ「おう」
シノ姫「行ってらっしゃい。
何かあればこちらから呼び出します」
アルジたち4人はシノ姫の間を出る。
階段を下りて、城を出る。
前庭には相変わらず大前隊が並ぶ。
ガシマとオンダクもいる。
険しい顔で部隊を指揮している。
アルジ(なんて緊張感と集中力だ…。
確かに安心だ。鉄壁の守り…
この言葉は、大げさじゃない。
ヤマエノモグラモンが100匹出てきても…
あっという間に倒してくれる…。
そんな気がする。
いや…100匹は流石に無理か?
でも50匹なら…ああ…でも…
ロニはもう獣魔術を使えないから…
魔獣とか古代獣の心配もいらないのか…)
エオクシ「さあ、行くぜ!」
アルジ「ああ」
アヅミナ「エオクシ、お店決めてよ」
エオクシ「ああ、任せとけ」
エミカ(どんなお店に行くんだろう。
都でお食事…楽しみになってきた…!)
アルジたちが城門を抜けようとしたとき。
女「アルジさん!エミカさん!」
駆けてくる1人の女。
アルジ「…え?」
女「シノ姫様の助手、メイニナと申します」
アルジ「ああ」
エミカ「助手…ですか」
メイニナ「お伝えしたいことが…」
息を切らしながら彼女は告げた。
メイニナ「あなた方のお宿のご用意ができました。
シノ姫様に頼まれて、行ってきたのですが…」
アルジ「そうなのか」
エミカ「ありがとうございます」
メイニナ「お気になさらないでください」
エオクシ「…で、宿はどこだ?」
メイニナ「城宿の特上客室を確保しました」
エオクシ「へえー」
アルジ「城宿…?」
エミカ「どんな宿なんだろう」
アヅミナ「立派な宿だよ」
エミカ「そうなんだ。その宿の…特上って…」
アルジ「すごそうだな」
エオクシ「楽しみにしとけよ。
国首が泊まるような宿だ」
アルジ「国首って…国で1番偉い…」
エミカ「そんな宿に…私たちが…いいのか?」
アヅミナ「あなたたちは…
そういうお客さんってこと」
エオクシ「ラッセイムスラも倒したしな」
アルジ&エミカ「………」
メイニナ「お代は気になさらないでください。
シノ姫様が支払うということでしたので…」
アルジ&エミカ「………」
エオクシ「よかったじゃねえか。アルジ、エミカ」
メイニナ「場所のご案内は…」
エオクシ「飯を済ませたらオレたちがやる」
メイニナ「ありがとうございます!」
メイニナは城の中へ入っていった。
アルジたちは歩き出す。
アヅミナ「あっちに行く?」
エオクシ「そうだな」
料理屋が並ぶ通りへ。
アルジ「あっちに何があるんだ?」
アヅミナ「なんでもある」
アルジ「なんでも…!?」
アヅミナ「お料理屋さんならなんでも…ね」
エミカ(…やっぱり都ってすごい)
そわそわするアルジとエミカ。
エオクシとアヅミナも緊張が解けない。
街が緊迫した空気に包まれていたために。
戦士たちの姿が視界から消えることはない。
エオクシ「おうおう…いるぜ、いるぜ」
アルジ「………」
エオクシ「戦いたくてしょうがねえ。
そんな顔のやつがわんさかいる」
アルジ「全員大前隊か」
エオクシ「警備隊とか防衛隊も混じってるな。
各地の戦闘狂が戦いを求めて集まったわけだ」
アルジ「………」
エオクシ「おっ、あの店にするぜ!」
アヅミナ「了解」
アルジ&エミカ「………」
店に入る。
今は昼下がり。
客で店は賑わっている。
店員に案内されて、席に着く。
品書きを見る。
アルジ「どれもうまそうだ…」
エミカ「お値段もお高めだな」
エオクシ「気にすんな。好きなだけ食うぜ」
エミカ「さっきから…すごくいい匂いがする」
アヅミナ「ここ…都でも評判のお店だから。
期待していいよ」
エミカ「楽しみだ」
店員を呼び、注文し、料理が来るのを待つ。
アルジ「飯を食ったらどうする?」
エオクシ「帰って寝るぜ。オレは」
アヅミナ「あたしも」
エミカ「私たちもとりあえず寝ようか」
アルジ「そうだな。宿もあるしな」
エオクシ「あとは夜に起きて訓練だな」
アルジ「訓練?夜に訓練って…?」
エオクシ「大前隊の訓練場は夜でも使えんだぜ」
アルジ「へえ、そうなのか」
アヅミナ「管理人さんに無理言ってるだけでしょ」
エオクシ「まぁ、そうかもな」
アルジ(大丈夫なのか…?)
エオクシ「アルジ、おめえも来い」
アルジ「ああ…オレは…」
エオクシ「なんだ、なんかほかに用か?」
アルジ「いや、別に用があるわけじゃない」
エオクシ「なら行くぜ!!決まりだ!
…天地双竜剣を完成させねえとな。
技の反動で負傷すんのはもうごめんだ。
おめえも壮刃破竜斬撃を練習したらどうだ?
あの技はまだまだよくなると思うぜ」
アルジ「ああ、オレも練習する」
エミカ(エオクシさん、
技の名前をすごく気に入ってそう…)
アヅミナ「エミカちゃん」
エミカ「あ、はい」
アヅミナ「あたしたちは劇でも観にいかない?」
エミカ「劇…!」
アヅミナ「今日も夜間公演やってると思うから。
切ない物語もあれば、
魔術を使った派手な演出もある。
よかったら、一緒に観にいかない?」
エミカ「行きたい…!どんなか観てみたい!」
アヅミナ「よかった。
おいしいお菓子とお茶を出すお店もあるから…
そこにも行ってみない?」
エミカ「行きたい。ありがとう!」
そして、アヅミナはエミカに時間を告げた。
宿に迎えに行く時間を。
アルジ(劇か…。ちょっと観たかったかも…。
でも、まあ、これから3日、都で遊べるしな。
明日でも、あさってでも、
別な日に行けたらいいか!)
いくつも料理が運ばれてくる。
どれも手が込んでいた。
味も、量も、見た目も申し分ない。
アルジたちは空腹を満たし、幸福感に浸る。
エオクシが店員を呼ぶ。
エオクシ「会計を頼む」
店員「はい」
金額を告げられ、エオクシは払おうとする。
アルジ「エオクシ、待ってくれ。
屋台のときおごってくれただろ。オレが出す」
エオクシ「あ?いいんだ。気にすんな。
おめえはわざわざ都に出てきてんだからよ」
アヅミナ「そうだよ。アルジ君」
アルジ「そっか…。悪いな」
エミカ「ごちそうさまでした」
そのときだった。
近くの席にいた戦士たちがやってくる。
アルジ「…なんだ?」
エオクシ「…おうおう。なんだなんだ?」
とりわけ背の高い男がにやけながら言った。
背の高い男「今…エオクシって言ったよな?」
アルジ「え…?」
エオクシは立ち上がる。
男の顔を見て言う。
エオクシ「ああ、オレがエオクシだ。
誰だ?てめえは」
背の高い男「オレはラクナンの国から来た。
トブヤってもんだ。大前隊の二隊員だ。
都にはものすげえ強えやつがいるって
聞いてたからよ。一隊のエオクシ…
どんなもんか見てみたかったぜ。
おめえがそうなのか?」
エオクシ「ああ、オレだ」
エミカ(なんか…喧嘩になりそう…)
トブヤ「なんだ、そうか。意外と小せえなぁ」
周りの戦士たち「かはははは…」
エオクシ「ふん、バカどもが…」
トブヤ「…は?」
敵意の視線を集めるエオクシ。
恐る恐る近寄ってきた店員に彼は金を渡す。
それから、言った。
エオクシ「オレと戦いてえなら今夜訓練場に来い。
いくらでも相手してやる」
トブヤは息を荒げて応じる。
トブヤ「いいぜぇ…行ってやる。後悔すんなよ?」
エオクシ「後悔すんのはてめえだぜ」
トブヤ「面白え…こいつ面白えわ…」
エオクシ「1人で来いなんて言わねえ。
仲間がいるなら、いくらでも連れてきやがれ。
全部相手して、分からせてやる」
周りの戦士たち「おお!!やってやらぁ!」
エミカ&アヅミナ「………」
エオクシ「くく…」
アルジ「エオクシ…」
エオクシ「おめえも来いよ。誰が1番か決めるぜ。
真夜中の武術大会、開催だ!!」
アルジ(大会か…。こうなりゃやるしかないな!)
エオクシは男たちに時間と場所を告げる。
戦士たちは了解した。
そして、アルジたちは店を出る。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 33
◇ HP 4234/4234
◇ 攻撃
52★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 素早さ
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 魔力 15★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、闘主の鎧
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、
壮刃破竜斬撃、雷刃剣
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 30
◇ HP 2714/2821
◇ 攻撃 11★★★★★★★★★★★
◇ 防御
31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
53★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火弾、火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
天火
◇ エオクシ ◇
◇ レベル 40
◇ HP 4488/4488
◇ 攻撃
56★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 素早さ
52★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
◇ 装備 壮刃剣、戦究防護衣
◇ 技 天裂剣、地破剣、天地双竜剣
◇ アヅミナ ◇
◇ レベル 39
◇ HP 505/509
◇ 攻撃 1★
◇ 防御 2★★
◇ 素早さ
49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 魔力
54★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 大法力の魔杖、漆黒の術衣
◇ 魔術
火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火
氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷
暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、
酷死魔術
獄火
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 50、活汁 12
◇ 創造の杖




