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アルジ往戦記  作者: roak
25/300

第25話 大変

アルジ「殺したって…」

エミカ「………」


ミリが振り向き、走いてくる。

話は一旦そこで終わる。


ミリ「ねえ、もう少しで町を出るよ!」

エミカ「そうだな」

アルジ「………」


アルジたちはワノエの町を出た。

目の前に伸びるのは、1本の道。

それは、トウオウ道と呼ばれる。

クユの国を貫く、最も太い街道。

村や町を繋いで、国の外へ続く。

リネが立ち止まって言う。


リネ「これからこの道を進んでいきます」

エミカ「北土の魔術研究所まで…

 10日くらいでしょうか」

リネ「そうですね。普通に歩いていけば」

アルジ「やっぱり遠いんだな」

ミリ「長旅だ、長旅だ」


ミリが楽しそうに言う。


アルジ「気楽なもんだぜ」

リネ「でも、今回はもっと速く行けるでしょう」


リネは懐から小さな袋を出す。

その中へ手を入れて何かを取り出した。

袋から出てきたのは、2つ。

小さな粘土細工のようなもの。

色は1つが白で、もう1つが黒。

どちらも四足獣の形をしている。

それらの大きさはリネの親指ほど。

彼女は手のひらに乗せて、3人に見せる。


リネ「ラアムとナアムを使います」

ミリ「おー!」

エミカ「それなら速く行けますね」

アルジ「…なんなんだ?それは」

ミリ「ラアムとナアムは魔生体だよ」

エミカ「魔力を込めることで動くんだ」

ミリ「巨大化するんだ。モコモコって」

エミカ「私たちはそれに乗って進むわけだ」

アルジ「…なんとなく分かった」

リネ「実際に見るのが早いでしょう」


リネが魔力を込める。

2つは、みるみる大きくなっていく。


アルジ「!!」


ずんぐりとした巨大な獣。

そんな姿の魔生体が目の前に現れた。

リネは白い方の魔生体、ラアムに乗る。


リネ「さあ、アルジさんは私の後ろへ」

アルジ「ああ」

エミカ「ミリと私はナアムだね」

ミリ「頑張ろう!」


エミカとミリは黒い方の魔生体、ナアムに乗る。



◆ トウオウ道 ◆

4人はラアムとナアムに乗って進む。

見た目の割にその足は速かった。

よく晴れた、さわやかな朝の街道の上。

軽快に、ぐんぐん進んでいく。

アルジたちを乗せて。


アルジ「これはすげえ!」

リネ「ね、便利でしょう?」

アルジ「オレの全速力より速いかも…」

リネ「魔力で動いているんです。あなたと私の」

アルジ「オレのも…か?」

リネ「そうですよ。わずかながら…」

アルジ「わずかか…!」

リネ「気を落とさないで。

 あなたは魔術師ではないのだから。

 込める魔力が大きいほど速くなります。

 ラアムもナアムも」

アルジ「この速さはリネのおかげってわけか」

リネ「後ろの2人も頑張ってます」


アルジは後ろを見る。

エミカとミリがナアムに乗っている。

2人とも真剣な顔で魔力を込めている。

ラアムに遅れないように一生懸命。


アルジ「頑張ってるな」

リネ「ええ、なかなかです。

 彼女たちも強くなりました」


ゆるやかな坂道を上り、下る。

歩いてくる商人の一団とすれ違う。

天候は穏やか。

やがて遠くに小さな町が見えてきた。


リネ「あの町で休憩しましょう。

 速度を落としていきますね」

アルジ「分かった!」


後ろにいたエミカたちが追いつき、横に並ぶ。


リネ「カリヤの町で休憩です」

エミカ&ミリ「はい!」


その小さな町の名前はカリヤ。

ワノエの隣町。

朝から人々が行き交い、賑わっている。



◆ カリヤ ◆

ラアムとナアムから降りるアルジたち。

2体に込められていた魔力が消えていく。

消えていくにつれて、しぼんでいく。

あっという間に元の小さな姿に戻った。

リネは素早くそれらを袋にしまう。


アルジ(これが魔生体か。便利で不思議だ)

リネ「さあ、少し休みましょう」


近くの茶屋に入る。

小柄な男の店主が出てきた。


店主「何にしましょう」

リネ「お茶をください」

店主「茶菓子はどうしますか」

リネ「もらいましょう」


去っていく店主。


ミリ「あー、疲れた」

エミカ「ナアムを動かすのは魔力を使うな」

リネ「2人ともよくやってましたよ」

エミカ「そうですか」

ミリ「頑張ったからね」

エミカ「なんとか遅れずについていけたな」

リネ「ここでゆっくり休みましょう」

ミリ「そうしよう、そうしよう!」

アルジ「オレはあんまり疲れてないけどな」

ミリ「リネさんのおかげでしょ」

アルジ「オレだって魔力を込めてた」

エミカ「ちょっとだろ」

アルジ「ちょっとでも込めてたんだぜ!」

リネ「ふふ…そうですね。

 アルジさんもよくやりましたよ」


店の窓から広い庭が見える。

庭木の枝には澄んだ声で鳴く鳥の姿。

深い緑色の羽が美しい。

穏やかな時間が流れる。

店にはほかに客はいない。


店主「ひぃいぃいぃいぃいいいい!!」


突然、店の奥から店主の悲鳴。


アルジ「なんだ!?」

リネ「…なんでしょうね」

エミカ「見に行こう」


店の奥の調理場。

入っていくアルジたち4人。

店主が腰を抜かして倒れている。


店主「あ…ひ…はひ…」


店主の近くにいたのは1匹の虫。

黒々とした大きな甲虫が床を這っている。


ミリ「あ、ノチ虫だ」


その虫はノチ虫と呼ばれている。

黒くて大きなその姿は子どもに人気。

一方で、害虫としてひどく嫌う者もいる。


エミカ「なんだ、ただの虫か」

アルジ「人騒がせだな」

リネ「しっかりなさい」

店主「すんません。虫は苦手なもので…」

アルジ「おい、ミリ、何してる?」


ミリはノチ虫に差し伸べる。

どこかから持ってきた棒切れを。

虫はその棒切れにつかまる。


ミリ「よく見ると可愛いんだよね」

アルジ「放してやれよ」

ミリ「ほら、目がクリクリしてるんだよ」

アルジ「逃してやれって」

ミリ「ほらほら、見てよ」


ミリは棒切れを持ってアルジに近づいていく。


アルジ「よせ!!!!!!!」


あまりの大声に驚くエミカ。


エミカ「虫が嫌いなのか」

アルジ「そいつだけはどうしても苦手なんだ。

 小さい頃、そいつが偶然…オレの鍋に…

 それで…!」

ミリ「田舎者なのに虫が苦手って変だね」

アルジ「いいから、こっちに来るなよ」

ミリ「ほらー!」

アルジ「げえー!」


アルジは店の外へ出ていく。

ミリは追いかける。


ミリ「きゃはははは」

アルジ「来るな!来るな!」


庭で追いかけっこをする。

そんな2人をエミカとリネは店の中から眺める。


エミカ「子どもか…」

リネ「エミカ」

エミカ「はい」

リネ「ミリのことは?」

エミカ「…はい?」

リネ「あの子がどんな子か…

 アルジさんに伝えたの?」

エミカ「少しですけど…」

リネ「機会を見つけて教えてあげて。

 一部ではなくて全部を」

エミカ「はい」

リネ「こういうのって言いづらいじゃない。

 当事者の口からは」

エミカ「はい」

リネ「あの子の戦う姿を見たら…

 アルジさんもきっと不思議に思うはず。

 その前に…ね?」

エミカ「分かりました」


深刻な顔のエミカ。

そんな彼女にリネはほほえみかける。


リネ「私はあなたに感謝していますよ」

エミカ「……」

リネ「あなたのおかげで決心できました。

 今回の旅も。彼と戦うことも」

エミカ「私はそんな…」

リネ「いけません」

エミカ「………」

リネ「あなたは控え目になることがあります。

 普段はそうでもないのに大事なときに限って。

 もっと自信を持って」

エミカ「…はい」


リネは自分の頬に手を当てて言う。


リネ「北土の魔術研究所は最終目的地ではない。

 そこへ行って問題が解決するわけじゃない…」

エミカ「………」

リネ「研究所へ行くのは手がかりを得るため」

エミカ「はい」

リネ「彼の居場所、そして、安定の玉の行方…。

 その手がかりを得るために…行きましょう」

エミカ「はい!」


棒切れにつかまっていたノチ虫。

羽を広げて飛び立った。

遠い空へ消えていく。


ミリ「あ…」

アルジ「………」


アルジもミリも走るのをやめて立ち止まる。


ミリ「逃げた」

アルジ「逃げるさ。

 あいつも生きるのに必死だろうからな」

ミリ「…必死か」

アルジ「ああ」

ミリ「………」

アルジ「…ミリ?」

ミリ「生きてくのって大変だね」

アルジ「………」


ミリの顔から笑みが消えた。

急にアルジは不安になった。


アルジ「なあ、ミリ」

ミリ「何?」

アルジ「茶屋に戻ろうぜ。ゆっくり休もう。

 オレもなんだか走って疲れちまった」

ミリ「…そうだね」

アルジ「あー、へとへとだぜ!!まったくよ!」


勢いよく言葉を発して、最後は声が裏返る。


ミリ「あはは!何その言い方!!」


アルジはミリに笑いかけて言う。


アルジ「さぁ、休もうぜ!!」

ミリ「そうだね。休もう」



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 8

◇ HP   347/347

◇ 攻撃  12★★★★★★★★★★★★

◇ 防御  14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 12★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  2★★

◇ 装備  勇気の剣、銀獣の鎧

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃


◇ エミカ ◇

◇ レベル 6

◇ HP   192/192

◇ 攻撃  7★★★★★★★

◇ 防御  12★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 7★★★★★★★

◇ 魔力  14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  魔樹の杖、深紅の魔道衣

◇ 魔術  火球、火砲


◇ ミリ ◇

◇ レベル 5

◇ HP   144/144

◇ 攻撃  4★★★★

◇ 防御  7★★★★★★★

◇ 素早さ 6★★★★★★

◇ 魔力  16★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  魔石の杖、紺碧の魔道衣

◇ 魔術  氷弾、氷柱、氷乱


◇ リネ ◇

◇ レベル 23

◇ HP   678/678

◇ 攻撃   6★★★★★★

◇ 防御  16★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 11★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、創造の杖、聖星清衣せいせいせいい

◇ 魔術  雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療薬 25、魔力回復薬 16

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