第249話 双竜
獄火の球は強い熱を発して回転する。
アヅミナはさらに魔力を込めていく。
ロニ「フーッ…!フーッ…!!」
アヅミナ(もう少しで隠せる…!)
さらに大きくなる獄火。
ロニ(…見てきた!!私は見てきた!!!
マスタスがあの魔術で…!!
人を焼くところを…!!
悲惨だった!!一瞬で!!
真っ黒になって!!悲惨だった!!
ああ…!!私も…!
ああなって死ななければならないのか!?)
エミカは雷弾を作る。
ロニから見えないように。
その雷弾には込められていた。
今残されているエミカの全魔力が。
ロニはまったく気づいていない。
獄火の後ろにそれが隠されていることを。
アヅミナ(必ず…成功させる…)
アヅミナが獄火を消した瞬間。
エミカは飛ばした。
雷弾を恐ろしい速さで。
ロニの腹に命中する。
小さな閃光が起き、バチンと音が鳴る。
◇ ロニに246のダメージ。
ロニ「……あだっ!!」
体を大きくよじらせ、倒れ込む。
倒れたあとも体をガクガクと震わせる。
エミカの雷弾はロニの動きを完全に封じた。
エミカ「アヅミナさん!」
魔力を使い果たし、よろめく。
膝からも肩からも力が抜けていく。
倒れ込むエミカ。
アヅミナ「あとは任せて…」
駆け出す。
ロニの元へ。
素早く、静かに、影のように。
あと数歩というところ。
アヅミナはふらついた。
精神操作1回分。
それ以外の魔力をすべて使った代償。
そして、そのふらつきが大きな誤算。
右手に暗球を出す。
精神操作をかけようと腕を伸ばす。
倒れているロニの頭に。
そのとき。
ロニが動き出す。
雷弾による全身の痺れから解放されて。
アヅミナの腕をつかむ。
素早く地面に押し倒した。
アヅミナ「…あ!」
エオクシ「アヅミナ!!!」
エミカ「アヅミナさん!!」
ロニは立ち上がり、大声を上げる。
ロニ「どうだっ!!!」
恐怖から解放され、感情が爆発。
ロニ「ヒャァアアアア!!!!!」
蹴る。
アヅミナの腹を。
何度も蹴る。
うつ伏せになってアヅミナは耐える。
今度は踏みつける。
背中を、頭を、荒々しく。
アヅミナは歯を食いしばって耐え忍ぶ。
さらに、ロニは馬乗りになって何度も殴打。
アヅミナの頭を。
素手で、激しく、力任せに。
鈍い音が荒野に響く。
アヅミナ「うっ…うっ…あっ…」
さらに、髪をつかんで引っ張り上げ、打ちつける。
地面に、顔面を。
何度も、何度も。
しゃがれた声でロニは叫ぶ。
ロニ「嫌いだ!!」
アヅミナ「うっ……あ…うっ…!」
ロニ「お前のその態度!!
涼しい顔で!! 偉そうにして!!
気取っていて!!いけ好かない!!」
アヅミナ「あっ…!うっ…!」
ロニ「潰れろ!!」
アヅミナ「うあ…!!」
アヅミナの目から涙がこぼれる。
◇ アヅミナは392のダメージ。(HP460 → 68)
エオクシ「くそっ…!アヅミナッ!!!!」
エミカ「アヅミナさん…!!」
エミカもエオクシも動けない。
できるのは呼びかけることだけ。
そのとき、1人の声が辺りに響く。
アルジ「ロニ!!!!!!!!!!!」
ロニ「…!!」
アルジ「こっちだ!!!!!」
ロニはアヅミナから手を放して振り向く。
声が聞こえる方へ。
そこには剣を振り上げるアルジの姿。
ロニ「ひっ…!!!」
アルジ「食らえ!!!!」
アルジは雷刃剣を振り下ろす。
刃は当てない。
雷撃だけをロニにぶつけた。
ロニ「ぎゃあぁあぁあぁあぁう!!!!」
◇ ロニに443のダメージ。
ロニは痺れてうずくまる。
アヅミナは素早く起き上がる。
手のひらに出した暗球。
それをロニの頭に当てた。
ぐったりと動かなくなるロニ。
精神操作が決まった。
アルジ「…ふぅ…」
アヅミナ「終わった…」
アルジ「間に合ってよかったぜ」
アヅミナ「………」
アルジ「アヅミナさん…大丈夫か」
アヅミナはアルジに泣きついた。
アルジ「…!」
アヅミナ「怖かった…!怖かった…!」
アルジ「もう…大丈夫だ」
エミカ&エオクシ「………」
しばらくして彼女は我に返る。
アヅミナ「あ…」
アルジ「………」
アヅミナ「ごめんなさい…。あたし…」
アルジ「よかった。
ケガは大したことなさそうで」
アヅミナ「ロニも…
魔力切れでフラフラだったから…
あんまり力が入らなかったみたい」
アルジ「…そっか」
立ち上がるアヅミナ。
エミカの方へ歩いていく。
左右に大きくふらつきながら。
魔力回復薬を渡して飲ませる。
それから、アヅミナも飲んだ。
アヅミナ「あたしは最後でいい」
エミカ「………」
アヅミナ「アルジ君とエオクシに…
治療魔術をかけてくれる?」
エミカ「…分かった」
エミカは治療魔術を使う。
◇ エオクシはHPが2072回復した。
(HP853→2925)
◇ アルジはHPが2088回復した。
(HP775→2863)
エオクシ「助かった」
アルジ「ありがとう」
エミカ「とりあえず大きなケガを治した。
あとは休めば回復すると思う。
調子が悪かったら言ってくれ」
エオクシはその場で跳ねてみせた。
エオクシ「ああ、いい感じだ!ありがとな」
エミカ(エオクシさん…
最後の技で…腕も脚も折れて…。
筋肉も…切れていた…。
信じられない体の負荷…技の反動…。
そんな技を…どうやったら…)
アルジも肩や膝を回して確かめた。
ケガがほとんど完治したことを。
アルジ「よし!!大丈夫だ!」
エオクシ「アルジ」
アルジ「ああ」
エオクシ「折れてただろ。右脚も左腕も」
アルジ「…ああ」
エオクシ「そんな体でよく動けたもんだ」
アルジ「痛みはなかった。
いや、感じてなかった。
ロニを倒したら急に痛み出した…」
エオクシ「夢中だったってわけだ」
アルジ「ああ」
エオクシ「とにかく助かった。
おめえが行かなきゃアヅミナは…」
エミカはアヅミナを見る。
彼女はロニのそばで静かに座っていた。
アヅミナもエミカを見る。
ボロボロに傷ついた顔で。
エミカは彼女にも治療魔術をかけた。
◇ アヅミナはHPが全回復した。
アヅミナ「ありがとう」
エミカ「私の雷弾…」
アヅミナ「威力は十分だった。
間に合わなかったのは、あたしのせい。
直前でふらついたから。気にしないで」
エミカ「………」
アヅミナ「天火…できたね。
素晴らしい魔術だった」
エミカ「アヅミナさんのおかげだよ。
アヅミナさんが見せてくれたから…
獄火を…目の前で見せてくれたから。
私にもできるはずって…そう信じて…」
アヅミナ「もっとよくなる」
エミカ「………」
アヅミナ「もっと練習すれば、もっとよくなる」
エミカ「うん、頑張る」
アヅミナ「あたしも負けない」
4人はラッセイムスラを見る。
すっかり動かない。
息もしていない。
エオクシ「こいつも気の毒なもんだ」
アルジ&エミカ&アヅミナ「………」
エオクシ「勝手に作られて、こき使われて、
人を殺して、町を壊して、国を滅ぼして、
最後は…焼かれて、斬られて、死んだ。
気の毒なもんだぜ」
アルジ「それもそうだが、倒せてよかった」
エオクシ「惜しかったな」
アルジ「…?」
エオクシ「仕留め損なっただろ」
アルジ「ああ。
だが、お前が決めた。竜を…斬ってくれた。
最後の技、いい技だった」
エオクシ「なんだ、見てたのか」
アルジ「ああ。
ぶっ飛ばされたけど、ちゃんと見てた」
エオクシは少し笑う。
エオクシ「なんだ、そうか。
あの技は…おめえの技を参考にした。
剛刃波状斬撃の流れるような動きを…な」
アルジ「やっぱりそうだったのか」
エオクシ「双竜剣…でどうだ?」
アルジ「…え?」
エオクシ「さっきの技の名前だ。
オレが得意とする2つの技を組み合わせた。
まるで2匹の竜が攻めるように。
だから…双竜剣だ。
悪くねえだろ?おい!なあ!!」
アルジ「………」
アルジは考えて、問いかける。
アルジ「技の名前ってなんだ?
組み合わせたその2つの技って…」
エオクシ「天裂剣と地破剣だ」
アルジ「天裂剣と…地破剣…」
エオクシは説明する。
エオクシ「…1つは、
天を裂くように斬り上げる技。
天裂剣だ。
もう1つは、
地を破るように剣を振り下ろす技。
地破剣だ」
アルジ「そうか。天裂剣と地破剣…」
アルジは言う。
頭に浮かんだ、1つの技の名前を。
アルジ「天地双竜剣だ」
エオクシ「何…?」
アルジ「新しい技の名前は、天地双竜剣だ」
エオクシ「は…!?天地双竜剣だと…?」
エオクシはしばらく黙り込む。
それから、言った。
エオクシ「…いいな!!」
アルジ「なっ!!」
アヅミナ「………」
エミカ「何がいいんだ」
アルジ&エオクシ「いいだろ!」
エミカ「………」
アヅミナ「ふふ」
◇ エオクシは天地双竜剣を習得した。
◇ アルジたちは戦いに勝利した。
◇ アルジはレベルが上がった。(レベル32→33)
◇ エミカはレベルが上がった。(レベル28→29)
◇ エオクシはレベルが上がった。(レベル39→40)
◇ アヅミナはレベルが上がった。(レベル37→38)
◇ 創造の杖を取り返した。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 33
◇ HP 2863/4234
◇ 攻撃
52★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 素早さ
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 魔力 15★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、闘主の鎧
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、
壮刃破竜斬撃、雷刃剣
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 29
◇ HP 2415/2714
◇ 攻撃 11★★★★★★★★★★★
◇ 防御
31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
37★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
51★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火弾、火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
天火
◇ エオクシ ◇
◇ レベル 40
◇ HP 2925/4488
◇ 攻撃
56★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 素早さ
52★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
◇ 装備 壮刃剣、戦究防護衣
◇ 技 天裂剣、地破剣、天地双竜剣
◇ アヅミナ ◇
◇ レベル 38
◇ HP 68/505
◇ 攻撃 1★
◇ 防御 2★★
◇ 素早さ
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 魔力
53★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 大法力の魔杖、漆黒の術衣
◇ 魔術
火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火
氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷
暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、
酷死魔術
獄火
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 50、活汁 20
◇ 創造の杖




