第244話 作戦
ラッセイムスラを倒す。
アヅミナの言葉。
それを聞き、大声を出したアルジとエオクシ。
首を傾げるアヅミナ。
アヅミナ「…何?どうかした?」
エオクシ「いや、なんでもねえよ」
アルジ「倒せるかもな。その魔術なら…」
アヅミナ「………」
エミカ「…?」
それから、アルジたちは支度した。
西雲郷へ旅立つため。
廃墟となった宿をあとにする。
町の外へ出て開けた荒野に立つ。
曇った空の下、冷たい風が吹いている。
アヅミナがカルスを展開する。
アルジたち4人はそれに乗る。
浮上するカルス。
アヅミナは向かうべき場所を確かめる。
その確認は容易い。
遠くに大陸最高峰タフカフ山が見えていたから。
西雲郷は、その中腹。
前へ、前へと動き出す。
アヅミナ「お昼には着ける。
みんなはゆっくり休んでて。
アルジ君もエオクシも見張りありがとう」
アルジ「いや、大したことなかったぜ」
エオクシ「大分眠そうにしてたけどな」
アルジ「ぐ…!お前も眠そうだぜ」
エオクシ「ああ、眠いな。だから少し寝る」
アルジ「オレも寝るか…」
それぞれ毛皮に包まって横になる。
エミカ「アヅミナさん」
アヅミナ「大丈夫。魔力は十分回復したから。
最後まで行ける。交替の心配はしなくていい。
エミカちゃんも休んでて」
エミカ「それなら…」
アヅミナはちらりと見た。
エミカが両手で抱えているものを。
それは、リネの論文。
アヅミナ「…そっか。
あなたも早く習得してね」
エミカ「間に合わせる。
ラッセイムスラと戦うまでに…」
アヅミナ「期待してる」
アヅミナはほほえんでから前を向く。
カルスは加速する。
アヅミナは考えた。
今後どうすべきかについて。
アヅミナ(ラッセイムスラを倒す…
それはいいとして、問題はロニの方…。
彼女を…どうするか。もちろん侮れない。
どんな魔術を使ってくるか分からない。
だから、全力で倒しにいく必要がある。
だけど、もしも…あれができるのなら…)
どんよりとしていた空は晴れていく。
タフカフ山に近づくにつれて。
日がすっかり上ったとき。
アルジが目覚める。
エオクシ「よう。起きたか」
アルジ「…ふぁ…」
エミカ「よく休めたか?」
アルジ「ああ、よく寝た…」
体を起こすアルジ。
エオクシ「見ろ。タフカフ山はすぐそこだ」
アルジ「そうか…!」
エミカ「もう少しで西雲郷に到着だ」
アルジ「気合い入ってきたぜ!!」
エミカ&エオクシ「………」
アヅミナが前を見たまま話す。
アヅミナ「アルジ君」
アルジ「ああ」
アヅミナ「エオクシとエミカちゃんには
さっき少し話したんだけど…」
アルジ「どうした?」
アヅミナ「ロニは…生け捕りにする」
アルジ「!!そんなこと…」
アヅミナ「難しいと思う」
アルジ「ああ…あいつの王獣は…半端じゃないぜ」
アヅミナ「それも…
どんな魔術かエミカちゃんから聞いた」
アルジ「………」
アヅミナ「だけど…やってみる。
やってみる価値がある」
アルジ「価値…もしや…」
アヅミナ「ええ。ホジタのように捕まえる。
それで…精神操作を使って情報を引き出す」
アルジ「…!!」
エミカ「そのために何をするか。
さっき話し合ってたところだったんだ」
アルジ「何をするか…か」
エオクシ「普通に斬るわけにはいかねえ」
アルジ「…そうだな」
アヅミナ「だから、魔術を使う」
エミカ「私の雷術と…」
アヅミナ「あたしの闇術で」
アルジ「雷術と闇術…」
アヅミナは前を見たまま告げる。
アヅミナ「作戦は…こう」
アルジ「………」
アヅミナ「まず、ラッセイムスラを撃破する」
アルジ「ああ」
アヅミナ「そのあと、ロニと戦う」
アルジ「おう」
アヅミナ「まず、あたしが獄火を出す」
アルジ「さっきの…新しい魔術だな」
アヅミナ「うん。だけど、それはおとり」
アルジ「おとり…」
アヅミナ「エミカちゃんが雷弾を当てる。
あたしの獄火にロニが気を取られてる隙に」
アルジ「雷弾を…」
アヅミナ「その雷弾は、絶妙な力加減が必要」
エミカ「………」
アヅミナ「ロニをしばらく痺れさせる強さで、
それでいて、あたしの獄火の魔力に隠れる…
それくらいの弱さ」
アルジ「しばらく痺れさせる強さ…
獄火に隠れるくらいの弱さ…か」
アヅミナ「ロニが分からないようにする。
獄火がおとりで…雷弾の攻撃が本命だと。
そして、雷弾は素早く出す。
目にも止まらない速さで」
エミカ「一瞬で当てる」
アルジ「できるのか?そんなこと…」
エミカ「さっき少しだけ練習した」
アヅミナ「出して見せたら?」
エミカは指先に雷弾を生み出す。
バチバチと音を立て、それは現れる。
エミカの握り拳よりも少し小さな玉が。
アヅミナ「…お見事。ちょうどその大きさ。
もう感覚はつかめたね」
エミカ「うん。…ありがとう」
それから、エミカは雷弾を飛ばす。
カルスの後方に向けて飛ばす。
その玉は、目にも止まらない速さで遠くへ消えた。
アルジ「…!!!」
アヅミナ「あれを本番でも出せたら十分」
アルジ「すごいな…」
エミカ「アヅミナさんが教えてくれたんだ。
どうやったら雷弾が速く飛んでいくか。
どうやったらうまく力の加減ができるか。
さっき教えてくれたんだ」
アルジ「そっか。アヅミナさんも雷術を…?」
アヅミナ「いいえ。あたしは使えない。
でも、火弾や氷弾の扱いと似てるから。
少し助言したら、すぐにできるようになった」
エミカ「アヅミナさんの教え方がよかったんだ」
アヅミナ「いいえ、そうじゃない。あなたの…」
エオクシ「おい、続きに行こうぜ」
エミカ&アヅミナ「………」
エオクシ「作戦にはまだ続きがある。そうだろ?」
アヅミナ「…うん」
アルジ「続き…そうだよな。
雷術で痺れさせて…それで…
最後はどうするんだ?」
アヅミナが力強く答えた。
アヅミナ「あたしがロニに精神操作をかける」
アルジ「…!!」
アヅミナ「痺れてるうちに素早くロニに近づく。
暗球を出して、当てて、精神操作をかける」
アルジ「ロニに近づく…?
さっきみたいに…
玉を飛ばすことはできないのか?」
アヅミナ「できない」
アルジ「…なんで…」
エオクシ「精神操作ってのは…そういう魔術だ」
アルジ「そうなのか」
アヅミナ「精神操作は強い魔術。
強い反面、対象者から離れると効果が消える。
術者は対象者の近くに行かなきゃいけない」
アルジ「どこまで近づかなきゃならないんだ?」
アヅミナ「あたしが腕を伸ばして、
指先で触れられる範囲」
アルジ「そんな近くまで…。
それで…本当に大丈夫なのか…?」
エオクシが立ち上がる。
壮刃剣を握りしめて。
エオクシ「アルジ」
アルジ「ああ」
エオクシ「大丈夫じゃねえときは…
オレたちが行くんだ」
アルジ「………」
エオクシ「そんときゃあ生け捕りじゃねえ。
オレたちで斬る。それも含めての作戦だ」
アルジ「…そうか。分かった」
エミカ「………」
アヅミナ「あれかな…」
アヅミナが西雲郷を見つける。
そこには、石でできた建造物がいくつも並ぶ。
壁だけが建っていて、天井は残っていない。
空から見ると、石の網がかかっているかのよう。
アルジ「思ってたより広い遺跡だな…。
しかも…建物の壁が…こんなに綺麗に…」
アヅミナ「ここはかつて地中に埋まっていた。
大量の灰の下に。だから保存状態がよかった。
資料によれば、そういうことらしい」
エミカ「着陸はどこにする?」
アヅミナ「遺跡から離れた平地にしよう。
あの辺がいいかな」
エオクシ「あとは歩いて探索ってわけだな」
アルジ「…よし、行くぜ!!」
カルスは高度を下げて着陸する。
アルジたち4人は降りる。
アヅミナはカルスをしまう。
薄い雲の間から日の光が降り注ぐ。
空気は冷たく、薄い。
アルジたちは歩き出す。
武器を手に、遺跡に向かって。
厚い毛皮を体にまとって。
アヅミナ「エミカちゃん」
エミカ「うん…」
アルジ&エオクシ「………」
エミカ「感じる…強い魔波を…いくつも…!」
立ち止まることなく進み続ける。
西雲郷での戦いが始まる。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 31
◇ HP 3753/3753
◇ 攻撃
48★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 防御
45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 素早さ
44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★
◇ 魔力 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、闘主の鎧
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、
壮刃破竜斬撃、雷刃剣
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 27
◇ HP 2415/2415
◇ 攻撃 10★★★★★★★★★★
◇ 防御
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火弾、火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
◇ エオクシ ◇
◇ レベル 38
◇ HP 4027/4027
◇ 攻撃
52★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 素早さ
48★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 魔力
◇ 装備 壮刃剣、戦究防護衣
◇ 技 天裂剣、地破剣
◇ アヅミナ ◇
◇ レベル 36
◇ HP 460/460
◇ 攻撃 1★
◇ 防御 2★★
◇ 素早さ
42★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★
◇ 魔力
48★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 装備 大法力の魔杖、漆黒の術衣
◇ 魔術
火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火
氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷
暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、
酷死魔術
獄火
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 80、活汁 24