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アルジ往戦記  作者: roak
243/300

第243話 獄火

宿の外に立つアルジとエオクシ。

敵が来ないか見張り続ける。

冷たい風が吹く中、毛皮を身にまとって。

空は少しずつ明るくなってきていた。


アルジ「…ふぁ…!」


アルジは眠気を抑えきれずあくびをした。

ふとエオクシの方に目を向ける。


アルジ「!!」

エオクシ「………」


エオクシの立ち姿は緊張感に満ちていた。

鋭い目つきで周囲を警戒し続けている。

剣を手に、いつ誰とでも戦える。

そんな雰囲気。

まっすぐ力強く立ち続けていた。


エオクシ「………」

アルジ(なんて集中力だ!

 もうずっとあんな感じだぜ…!)

エオクシ「…キツイか?」

アルジ「…!」

エオクシ「キツイんだろ」

アルジ「いや…」

エオクシ「顔に出てるぜ」

アルジ「くっ…」

エオクシ「そんなんじゃ…

 大君の護衛は務まらねえな」

アルジ「大君…」


エオクシは地面に座り込む。


アルジ「…休憩か?」

エオクシ「夜が明ける。もう何も来なそうだ。

 おめえも座れよ」

アルジ「………」


アルジも座った。

ふと大君と話した夜のことを思い出す。


アルジ「大君がお前のことを話してた」

エオクシ「なんだ?大君と会ったのか?」

アルジ「ああ、会った。

 この鎧はそのときもらった」

エオクシ「…そうだったのか。いい鎧なわけだぜ」

アルジ「いいだろう」

エオクシ「大事に使いやがれ。…で、なんだ?

 大君はどんなことを話されたんだ?」

アルジ「お前が…都を守ったことについて。

 ヤマエノモグラモンを倒したことを」

エオクシ「ああ、あのことか」

アルジ「嬉しかったと大君は言っていた」

エオクシ「…そうか」

アルジ「ガシマもオンダクもだ」

エオクシ「あいつらがどうした?」

アルジ「お前のことを話していた」

エオクシ「…悪口じゃねえだろうな?」

アルジ「………」

エオクシ「…おい」


しばらく考えてからアルジは話す。


アルジ「ガシマもオンダクも…

 抱えていたみたいだ。

 いろいろと、もやもやしたものを。心の中に。

 それが、お前と出会ったことで、なくなった。

 エオクシの行動が…存在が…なくしてくれた。

 2人ともそんな話をしてくれた」

エオクシ「………」

アルジ「感謝してた」

エオクシ「へえ…あいつらが…そうか」


アルジは立ち上がり、大きく剣を振った。

アルジの新技、壮刃破竜斬撃。

その技の感覚を確かめる。


エオクシ「いい振りだ」

アルジ「この技で…竜を斬る…!」

エオクシ「…いや、オレだな。オレが斬る。

 ラッセイムスラを斬るのはオレだ」

アルジ「いや、オレだ」

エオクシ「いいや、オレだな」

アルジ「いや…」

エオクシ「………」

アルジ「オレも感謝してる。ありがとう」

エオクシ「礼はまだ早ええ」

アルジ「…うらやましくなった」

エオクシ「…?」

アルジ「大君やガシマやオンダクの話を聞いて。

 オレももっと頑張ろうと思った。

 強くなって、敵に勝つ。それだけじゃない。

 何か…もっと誰かの役に立ちたい。そう思った。

 このことをお前に言っておきたかった」

エオクシ「………」


地面に座るアルジ。


エオクシ「アルジ」

アルジ「なんだ?」

エオクシ「この旅が終わったらどうするんだ?」

アルジ「この旅…」

エオクシ「取り返すんだろ。星の秘宝を」

アルジ「ああ…」

エオクシ「取り返したらどうすんだ?」

アルジ「…どうするんだろうな」

エオクシ「入れよ」

アルジ「…え?」

エオクシ「大前隊に入れよ」

アルジ「………」

エオクシ「オレが推薦する。

 すぐに一隊に上がってこい」

アルジ「オレは…」

エオクシ「十分だ」

アルジ「………」

エオクシ「今のおめえの力は…。

 二隊の上位層でも手も足も出ねえはず。

 ガシマでもオンダクでも相手にならねえ」

アルジ「………」

エオクシ「オレには及ばねえけどな」

アルジ「…なんだと!?」

エオクシ「はっはっはっ!」

アルジ「…はは…」

エオクシ「…考えとけよ。

 別にすぐに決めなくてもいい。

 だが…おめえのその力…

 大君をお守りするのに役立てるべきだ。

 オレはそう思うぜ」

アルジ「…ああ」


空はすっかり明るくなる。

エオクシは立ち上がった。


エオクシ「…そろそろいいだろ。起こしに行くぜ」

アルジ「そうだな」


アルジも立ち上がる。

宿に入る直前、エオクシは振り返る。

真面目な顔で問いかける。


エオクシ「おい、アルジ」

アルジ「なんだ?」

エオクシ「宿から出るとき…」

アルジ「…?」

エオクシ「アヅミナを見てただろ」

アルジ「あ…ああ…。見てた」

エオクシ「ぼーっとしてよ」

アルジ「………」

エオクシ「おめえ、あいつに…惚れたのか?」

アルジ「は!?…そんなんじゃないぜ!」

エオクシ「…そうか」


宿の中へ入っていくエオクシ。

彼の背中に向かってアルジは言う。


アルジ「オレは…勝手に思ってたんだ。

 アヅミナさんは冷たい人だろうって」

エオクシ「………」

アルジ「だけど、結構よく笑うから、

 それが…なんか意外で…

 よく分からなくなって、それで…

 不思議で…思わず見てた。ただ…それだけだ」

エオクシ「…そうか」


エオクシは振り返らずに返事をした。

宿に入る。

ちょうどそのとき。

宿から遠く離れたところ。

町の外、丘の上。

そこに、空から舞い降りる1人の女。


ロニ「………」


腕を翼に変形させたロニだった。

体表には硬い鱗。

口には大きな牙。

手足には鋭い爪。

頭にとがった角。

人と獣の融合体。

彼女はそんな姿になっていた。

静かにじっと見続ける。

アルジたちが夜を明かした小さな廃墟を。

そして、深くうなずき、ほほえんだ。

彼女は創造の杖を握りしめる。


ロニ「ふふふふふふふふふ…」


彼女にはよく見えていた。

アルジとエオクシの姿が。

遥か遠く離れた場所からでも。

今の彼女の視力は猛禽類を超える。


ロニ(来たのか…。ついに…来たのか…。

 あの剣士は…大前隊の男…エオクシ…。

 2年前…マスタスの心をへし折った…。

 一緒にいるのは…ナキ村のアルジか…。

 あの2人がともに…ほう…そうか…。

 国潰しをやれば…やはり…そうか…。

 やはり…なるほど…倒しにきたのか…。

 ラッセイムスラを…。この私を…)


目を見開き、翼を広げ、神経を研ぎ澄ます。

そして、彼女は2つの強い魔波を感知する。

小さな廃墟の中から。


ロニ(魔術師もいる…。1人は闇術使い…。

 この魔波…覚えている。覚えているぞ…。

 あの魔術師…魔術院の女…。名は…アヅミナ。

 2年前…マスタスの心をへし折った…。

 もう1人は…ナキ村のアルジと一緒にいた女…)


羽ばたき、空高くへ飛び上がる。


ロニ(来るなら来い…。全員…潰してみせよう…。

 本当の恐怖を…本当の絶望を…教えてやろう…。

 ラッセイムスラの完成まで…あと少し…。

 西雲郷に残された秘力…間もなく吸い尽くす…。

 そうなれば…もはや誰も手を出せない…。

 その脅威は…魔真体と同等…。いや…超える…。

 魔真体を…超える…。まさに私の獣魔術の結晶。

 貴様らは…最初の餌食になってもらおう…。

 完成したラッセイムスラの…最初の餌食に…!)


地面を蹴り、西雲郷へ飛んでいく。


ロニ「あっはっはっはっはっはぁああー!!!」


創造の杖が光を放つ。


ロニ(私の魔力も…ずいぶんと高まったものだ…。

 この創造の杖が…高めてくれた…。相性だ…。

 私の獣魔術との相性が…最高によかったのだ…。

 おかげで…「完全共鳴」の段階に到達できた…。

 これは…ラグアも未だにできていないこと…。

 私こそが…新たな王国の王となるべきなのだ…。

 真にふさわしいのは…この私なのだ…。

 ラッセイムスラがいれば…魔真体など…無用…。

 見るがいい…ラグア。獣魔術の素晴らしさを。

 これは過信でも誤信でもない…。確信だ!!!)



◆ 廃墟の中 ◆

アルジたちは活汁を飲んでいた。

アヅミナの菓子はもうない。

彼らが今摂取できるのは活汁だけ。


アヅミナ「このへばりつくようなしつこい味…

 なんとかならないの?」

エオクシ「オレに言われてもな…」

アルジ「やっと半分飲んだぜ」

エミカ「慣れれば…まぁまぁだ…」


4人がどうにか飲み終えたとき。

アヅミナが立ち上がる。


アルジ&エミカ&エオクシ「…?」

アヅミナ(できる…。ずっと想像していた…。

 飛行中も…昨夜…眠る前も…。

 できてる自分を…。だから…大丈夫…)

エオクシ「…どうした?」

アルジ「?」

エミカ「アヅミナさん?」


アヅミナは3人に言う。


アヅミナ「ねえ、みんな。見てほしいものがある」

エオクシ「…なんだ?」

アヅミナ「あたしの新しい魔術。…見てくれる?」

エミカ「え…?」

エオクシ「おう、見せてくれよ」

アルジ「どんな魔術なんだ?」

エミカ(もしかして…アヅミナさんは…もう!?)


アヅミナは魔力を込める。

大法力の魔杖に。

魔波が形を成す。

黒い球体が生まれる。

彼女のすぐそばで浮かんでいる。

その球体は膨張しながら熱を帯びる。

激しく、より一層、激しく。


アルジ「!!?その魔術は…!!」

アヅミナ(もう少し…!)

エオクシ「…なんだ?やけに熱いな!」


球体の大きさ、熱の激しさ。

マスタスの暗黒獄焼術を大きく上回る。


エミカ「…!!!」


エミカは言葉が出ない。

ただ見ているだけ。

アヅミナは力強く言った。


アヅミナ「名前を考えた」

アルジ&エミカ&エオクシ「………」

アヅミナ「世にはばかる悪党を焼き尽くす…

 そんな…黒い炎…。

 その魔術に…あたしは名前をつけた」

アルジ「名前は…なんだ?」


黒い炎の球体は、ぐるぐると回転し続ける。

それをアヅミナは見つめて思う。


アヅミナ(…行ける。

 これなら実戦でも使えそう)


魔術を解いて彼女は言った。

その新たな複合魔術の名前を。


アヅミナ「獄火ごくか

 この新しい魔術の名前は、獄火」

アルジ「獄火…」

エオクシ「いい名前じゃねえか」

エミカ「………」

アヅミナ「この獄火で…倒す」

アルジ&エミカ&エオクシ「………」

アヅミナ「あたしが…ラッセイムスラを倒す…!」

エミカ「!!」

アルジ&エオクシ「…は!!?」

アヅミナ「……?」

アルジ&エオクシ(倒すのはオレだ!!)


◇ アヅミナは獄火を習得した。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 31

◇ HP   3753/3753

◇ 攻撃

 48★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 防御

 45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★

◇ 素早さ

 44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★

◇ 魔力  14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、闘主の鎧

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、

     壮刃破竜斬撃、雷刃剣

◇ 魔術  雷動


◇ エミカ ◇

◇ レベル 27

◇ HP   2415/2415

◇ 攻撃  10★★★★★★★★★★

◇ 防御

  30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、濃色魔術衣

◇ 魔術  火弾、火球、火砲、火樹、火海、王火

      氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷

      雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術


◇ エオクシ ◇

◇ レベル 38

◇ HP   3692/4027

◇ 攻撃

 52★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★

◇ 素早さ

 48★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 魔力

◇ 装備  壮刃剣、戦究防護衣

◇ 技   天裂剣、地破剣


◇ アヅミナ ◇

◇ レベル 36

◇ HP   404/460

◇ 攻撃   1★

◇ 防御   2★★

◇ 素早さ

 42★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★

◇ 魔力

 48★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 装備  大法力の魔杖、漆黒の術衣

◇ 魔術

  火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火

  氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷

  暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、

  酷死魔術

  獄火


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 80、活汁 24

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