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アルジ往戦記  作者: roak
242/300

第242話 廃墟

アルジもエオクシも身震いする。

彼らは急いで拾って身にまとった。

地面に放り投げていた毛皮を。


エオクシ「…行くぜ!」

アルジ「ああ!」

エミカ「どっちに行く?」

アヅミナ「あっちの方にしない?」


アルジたちは歩き出す。

寒く、暗い、町の中を。

歩き続けていると、見えてくる。

静まり返った役場の建物が。

黒く、大きく、静か。

それはまるで大きな壁のよう。

角を曲がって小さな橋を渡る。

今度は円形の建物が見えてくる。


アヅミナ「室内競技場かな。

 それとも演劇場…?」

エオクシ「どっちでもいいが…

 あの中で休むか?」

エミカ「そうしよう」

アヅミナ「アルジ君もいい?」

アルジ「ああ。いいぜ。

 ああいうでかい施設なら…

 設備もしっかりしてそうだしな。

 ちょっと借りるだけなら問題ないよな」

エオクシ「非常事態だ。問題ねえ」

アヅミナ「それじゃ…

 あの建物で休ませてもらおう。

 この夜が明けるまで…」


エオクシが先頭を歩く。

出入口の扉に手をかける。

鍵がかけられていた。


エオクシ「ワリイな。

 非常事態だから勘弁してくれ!!」


壮刃剣を突き出して鍵を壊す。

扉を開けて中をのぞいたその瞬間。


エオクシ「…げ!!」

アルジ「どうした!?……!!」


扉の向こうには人の死体。

積み重なっている。

エオクシは後ろに下がる。

ごろごろと2、3人。

扉の開いたところから落ちてきた。


アヅミナ「…道に死体がないわけだね。

 さっきの魔獣がここに運んだのかな。

 捕まえて殺した人たちを…」

アルジ「なんのために…」

アヅミナ「食料をため込むとか…

 そういう習性があるんじゃない?」

アルジ「…そういうことか」


エミカが光玉で建物内を照らす。

壁に空いた穴を見つける。


エミカ「あれだ…。

 あそこから…魔獣が出入りを…」

アルジ&エオクシ&アヅミナ「………」

エミカ「近くには…いないみたいだけど…」

アヅミナ「…そうだね。別な場所を探そう」


アルジたちは再び歩き出す。

安らげる場所を求めて。

次に見つけたのは町の外れの小さな宿。

そこは廃墟となっていた。

廃業したのは10年以上も前のこと。

それから解体されず放置されていた。


エオクシ「ここでいいんじゃねえのか?」

アルジ「そうだな。少し気味悪いが…」

エオクシ「こんな状況だ。仕方ねえだろ」


正面玄関の大きな扉に向かって歩いていく。

その途中、エオクシは気づいた。

建物の裏手の方へ歩いていく。

呼び止めるアルジ。


アルジ「おい…どうした?」

エオクシ「今…少し見えた」

アルジ「何が見えた?」


エオクシはぐんぐん進み、立ち止まる。

そこには荒れ果てた庭。


エオクシ「…魔獣だ」

アルジ「…!!」

アヅミナ「そんなわけ…」

エミカ「魔力は全然感じられないけど…」


アルジ、エミカ、アヅミナも庭へ。

全部で6頭。

オオジロザルが立っていた。

だが、いずれも一切動かない。

背中を丸め、頭を垂れ、立ち尽くしている。

その姿は何かを思い、願っているかのよう。

6頭の体は、それぞれ別な方を向いていた。

頭に、肩に、薄く雪が積もっている。


アルジ「…どういうことだ?」

エオクシ「全部死んでるみてえだな」

アヅミナ「魔力を感じないわけだ」

エミカ「だけど…どうしたんだろう」


エオクシが1体に近づいていき、蹴る。

すると、オオジロザルは簡単に倒れた。

そして、倒れた体が地面にぶつかったとき。


エオクシ「………」


その形はバラバラに崩れた。

頭も、肩も、腕も、腰も、脚も。

原型を失うほど。

それはまるで泥人形が倒れて崩れたかのよう。


アルジ「…なんだ?こんなにバラバラに…」

エオクシ「腹でも空かして死んだのか?

 それとも寒くて…」

エミカ「多分…そうじゃない」

エオクシ「…なんだ?」

アヅミナ「ここにいる魔獣たちは…

 餓死したわけでも凍死したわけでもない」

エオクシ「…ならなんだってんだ」

エミカ「寿命を迎えたんだと思う」

エオクシ「寿命…?」

アヅミナ「獣魔術の限界…じゃない?」

エミカ「うん」

アルジ「…そういうことか」

エオクシ「………」

エミカ「あんなに活発に動く魔獣を…

 何体もいつまでも生かせるわけがない…。

 いくら創造の杖で魔力を高めたとしても…」

アヅミナ「せいぜい2、3日…

 ってところじゃない」

エオクシ「2、3日…?」

アルジ「寿命が…2、3日ってことか?」

アヅミナ「多分ね」

アルジ&エオクシ「………」

アヅミナ「さっき戦った魔獣たちも…

 体に宿した魔力が失われてる感じがした。

 お腹が空いてなくても、疲れてなくても、

 体に宿した魔力が尽きれば、死んでしまう。

 この魔獣たちはそういう悲しい宿命みたい」

エミカ「ロニの獣魔術で…

 無理やり生み出された魔獣たち…

 もともとが無理のある存在だから…」

エオクシ「…そうか。

 魔獣なんかには同情できねえが…

 ロニってのがクソッタレってこたあ分かった」

アルジ「ロニ…絶対倒す…!」


アルジたちは闘志を燃やす。

廃墟となった小さな宿の扉を開ける。

鍵がかかっている。

またしてもエオクシが壊す。

玄関広間に入る。

エミカが光玉を飛ばして視界を確保。

建物内ははがれた内壁や壊れた什器が散乱。

木彫りの像がほこりを被って倒れている。


エオクシ「こいつはずいぶんと汚ねえとこだ」

エミカ「でも、少し物をどかせば…なんとかなる」

アヅミナ「…そうだね」


アルジとエオクシは汚れた椅子や机をどかす。

アヅミナは置かれていたホウキで掃除する。

エミカは何か使える物がないか辺りを探し回る。


エオクシ「よし、こんなんでいんじゃねえか?」

アヅミナ「なんとか休めそうだね」

エミカ「まだ使えそうな魔灯火を見つけた。

 これを使おう」

アヅミナ「いいね」

アルジ「………」

エオクシ「おい」

アルジ「…え?」

エオクシ「どうした?アルジ」

アルジ「ああ、いや…」

エオクシ「行くぜ!!」

アルジ「え…?」

エオクシ「決まってんだろ。オレたちは見張りだ」

アルジ「…ああ、そうだな。行くぜ!!」

エミカ「ありがとう」

アヅミナ「朝までお願い。2人とも」

アルジ「ああ、任せろ!!」

エオクシ「さあ、行くぜ!!」


アルジとエオクシは宿から出て行った。

広間に残るエミカとアヅミナ。

毛皮に包まって床に座る。


アヅミナ「朝までそんなに時間はない。

 でも、休もう。少しでも」

エミカ「…うん」

アヅミナ「今日は本当にお疲れ様」

エミカ「アヅミナさんこそ」


アヅミナが魔灯火に火を灯す。

灯火の熱が2人の体を暖める。

揺れる炎をぼんやりと見つめるエミカ。

宙に浮かべていた光玉を消す。


アヅミナ「…眠れない?」

エミカ「疲れてはいるけど…」

アヅミナ「そうだよね。

 こんな場所ですぐには眠れないよね」

エミカ「…うん」

アヅミナ「少しお話してもいい?」

エミカ「うん」

アヅミナ「気になってることがあって」

エミカ「…何?」

アヅミナ「さっきどうして大きな声を出したの?」

エミカ「さっき…?」

アヅミナ「…ヤマタンと話してたとき」

エミカ「………」

アヅミナ「彼が話すのをさえぎった。やめろって」

エミカ「ああ…」

アヅミナ「どうしたの?あのとき何を思ったの?」

エミカ「………」

アヅミナ「魔力が…強く揺らいだ」

エミカ「………」

アヅミナ「どうして…?」

エミカ「…認めたく…なかったから」


エミカはうつむいて歯を食いしばる。


アヅミナ「何を認めたくなかったの?」

エミカ「創造の杖は…私の先生の宝物」

アヅミナ「うん」

エミカ「マスタスと戦ったとき、奪われて…」

アヅミナ「うん」

エミカ「そのせいで…ロニの獣魔術が…

 強くなって…古代獣が…現れて…」

アヅミナ「………」

エミカ「あの人の…

 ヤマタンさんの話を認めることは…

 創造の杖を渡してしまった…

 リネさんが悪いってことも…

 認めることのような気がして…

 あのとき…リネさんを止められなかった…

 私も…アルジも…悪かったって…

 責められてる気がして…それが…辛くて…

 本当に…辛くて…我慢できなくて…」

アヅミナ「そうだったんだ」

エミカ「…うん」

アヅミナ「でも、

 それは実際に悪かったんじゃないかな」

エミカ「…!」

アヅミナ「リネという…あなたの先生も…

 エミカちゃんも…アルジ君も…」

エミカ「………」

アヅミナ「そのときは…力不足で…

 どうにもできなかったとしてもね」

エミカ「………」


エミカの目から涙がこぼれる。


アヅミナ「だから…取り返そう」

エミカ「………」

アヅミナ「創造の杖を…」

エミカ「………」

アヅミナ「取り返さなきゃ…ね…」

エミカ「…はい」


アヅミナはエミカに体を寄せて手を握った。

それから、2人は目を閉じて眠った。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 31

◇ HP   3753/3753

◇ 攻撃

 48★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 防御

 45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★

◇ 素早さ

 44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★

◇ 魔力  14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、闘主の鎧

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、

     壮刃破竜斬撃、雷刃剣

◇ 魔術  雷動


◇ エミカ ◇

◇ レベル 27

◇ HP   2415/2415

◇ 攻撃  10★★★★★★★★★★

◇ 防御

  30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、濃色魔術衣

◇ 魔術  火弾、火球、火砲、火樹、火海、王火

      氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷

      雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術


◇ エオクシ ◇

◇ レベル 38

◇ HP   3692/4027

◇ 攻撃

 52★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★

◇ 素早さ

 48★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 魔力

◇ 装備  壮刃剣、戦究防護衣

◇ 技   天裂剣、地破剣


◇ アヅミナ ◇

◇ レベル 36

◇ HP   404/460

◇ 攻撃   1★

◇ 防御   2★★

◇ 素早さ

 42★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★

◇ 魔力

 49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★

◇ 装備  大法力の魔杖、漆黒の術衣

◇ 魔術

  火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火

  氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷

  暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、

  酷死魔術


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 80、活汁 28

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