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アルジ往戦記  作者: roak
24/300

第24話 特別

翌朝。

身支度を終えて広間に行くアルジ。

そこにはエミカもリネもいた。


アルジ「おはよう」

エミカ「おはよう」

リネ「おはようございます」


ミリは台所で朝食を作っていた。

作り終えると4人で食卓を囲んで食べる。

薄切りの肉、ちぎった葉野菜、薄味の汁物。

そして、強い酸味のある一切れの果実。

そんな朝食を4人で食べる。


エミカ「ごちそうさま。おいしかったよ」

ミリ「よかった!」

アルジ「朝早くからありがとう」

ミリ「いいよ、いいよ。

 いつもやってることだから。

 だけど、今日で…」

リネ「そうですね。今までお疲れ様でした。

 私からも改めてお礼を言うね。ありがとう」

ミリ「…いいえ」

リネ「さあ、そろそろ出ましょうか?」

アルジ「そうだな」

エミカ&ミリ「はい」


館を出ると、3人の男たちが立っていた。

腰に手を当て、まっすぐな姿勢。

館から出てきたアルジたちをじっと見ている。

3人とも戦闘服を着て腰には剣を携えていた。

アルジはすぐに気づいた。

彼らは警備隊の隊員たちだと。


アルジ「オレを…逮捕しに来たのか?」


真ん中の男が首を横に振る。


真ん中の男「…私はガウバ」

アルジ「………」

ガウバ「ワノエ警備隊、新隊長のガウバだ」

アルジ「新隊長…」

ガウバ「今日、正式に任命された」

アルジ「………」


エミカ、リネ、ミリは対話を見守る。


アルジ「ナンダスは?」

ガウバ「あいつは…死んだよ」

アルジ「!!」

ガウバ「アルジ…といったね?」

アルジ「…ああ」

ガウバ「今日は君に話があってきた。

 君にもいろいろ事情はあるのだろうが、

 我々としても、伝えたいことがある。

 伝えておきたいことがある。隊長として。

 どうしても。話はそんなに長くならない。

 エミカというのは…」

エミカ「私だ」

ガウバ「君にも聞いてもらいたいんだが」

エミカ「………」

リネ「私たちは外しましょう」

ミリ「はい。先、行ってるね」

エミカ「ああ」


その場から離れていくリネとミリ。

ガウバたち3人は彼女たちには目もくれない。

ただアルジとエミカを見続ける。


ガウバ「…くい…」

アルジ「…は?」

エミカ「…え?」

ガウバ「…くい…!」

アルジ「なんだ?」

ガウバ「…憎いっ!!!」


静かな朝の町にしゃがれた声が響く。


ガウバ「ああ!!憎い!!貴様が憎い!!

 憎いよ!!!よくも!!よくも!!

 よくもぉぉぉおおお!!」


目から涙を流し、顔をゆがめるガウバ。

だが、彼の姿勢は少しも変わらない。

腰に手を当て、まっすぐ彼は立ち続ける。

ほかの警備隊員が布切れを取り出す。

それをそっとガウバの頬に当て、涙をふく。

大声に驚き、ミリが1度だけ振り返った。

アルジとエミカはじっと次の言葉を待つ。


ガウバ「…ここまでだ」

アルジ「?」

ガウバ「個人的な感情はここまで…」

アルジ「………」

ガウバ「ここからは新隊長として話をする。

 さっきは失礼した。

 感情を出さずにはいられなかった。

 ナンダスは幼少期からの親友だったのだ」

アルジ「オレに復讐するつもりか?」

ガウバ「…そんなことはしないよ。

 私は…むしろ礼を言いたいんだ」

アルジ「………」

ガウバ「そして、謝りたい。すまなかった」

アルジ「………」

ガウバ「あいつは…ナンダスは…化け物だった。

 警備隊という組織が育ててしまった化け物だ。

 入隊時から戦闘力で右に出る者なし。

 4年目にして副隊長。

 誰もがあいつを甘やかした。

 当時の警備隊長も町長も。

 誰もがあいつをちやほやした。異常だった。

 結果して何が起きたか。入隊して6年で隊長。

 隊員のほとんどがあいつより年上。

 だが、誰も逆らえない。ますます調子づく。

 もう誰も止められない。化け物の誕生だ。

 あいつが叫べば、多くの人が動いた。

 状況が変わった。大抵のことは通る。

 そして、あいつはますます勢いづく。

 その繰り返しだった。

 あいつは組織が生んだ化け物。

 生んではならなかった化け物。

 昨日の決闘で…あいつは敗れたと聞いている」

アルジ「オレが倒した」

ガウバ「…それも聞いている。

 私はあの場にいなかった。

 本部で雑務に追われていた。

 合流することができなかった。

 君たちには大変な迷惑をかけてしまった。

 隊長として謝らせてくれ。申し訳なかった。

 そして、感謝する。ありがとう。

 我々ワノエ警備隊は救われた。

 あいつが消えたことで救われたのだ。

 これまでの過ちが正されることになる。

 我々は今日この日からやり直していける。

 そう思っている」

アルジ「昨日のことはどうするつもりだ?」

ガウバ「『ナンダスはカクノオウに挑んだ。

 そして、相討ちになった』ということにする」

エミカ「でっち上げる気か」

ガウバ「もともと我々は目をつけられていた。

 正査院から…厳しい目を向けられていたのだ」


正査院は、中央政府の機関。

役人に不正がないか監視、調査する機関。

各国の村や町の警備隊も監視と調査の対象。


ガウバ「近日中に正査院の調査が入る。

 今回の1件もどうにか説明するさ。

 そして…」

アルジ「………」

ガウバ「君たちの活躍があったことも伝える。

 カクノオウにワノエ警備隊は果敢に挑んだ。

 隊長を失ったが、悪党を壊滅させた。

 そこには助けがあった。

 勇敢な剣士と魔術師の助けが。

 彼らのおかげで打ち勝つことができた…と。

 そして、君たちの名を伝えておこう。

 構わないな?」

アルジ「…ああ」

エミカ「好きにしな」

ガウバ「ありがとう。それと、これを…」

アルジ「?」

ガウバ「カクノオウを倒してくれたお礼だ。

 我々警備隊からの…」


革の袋を差し出すガウバ。

中には金が入っていた。

数日間の旅をするには十分な金だった。


ガウバ「星の秘宝とやらを求めているそうだな」

アルジ「ああ」

ガウバ「我々も陰ながら応援しよう」

アルジ「敵討ちは?いいのか?」

ガウバ「いい」

アルジ「………」

ガウバ「挑んだところで、勝てる気がしない」


力なく笑うガウバ。

それから、警備隊の3人は一礼した。

アルジとエミカはその場から立ち去る。

リネとミリの後ろ姿が小さく見えている。

ミリが振り返り、手を振った。


ミリ「早く来てー」


エミカが手を振り返す。


アルジ「…なあ」

エミカ「なんだ?」

アルジ「ミリも…リネの弟子なんだよな?

 エミカと同じで…」

エミカ「ああ。そうだ。

 ミリも私もリネ先生から魔術を教わった。

 先生の館で一緒に住んでお手伝いしながら」

アルジ「………」

エミカ「…どうした?」

アルジ「強い魔力を感じるんだ。

 リネだけじゃなくて、ミリからも。

 もちろん、エミカも強いと思うんだけど」

エミカ「ミリは特別なんだ」

アルジ「特別?」

エミカ「あの子は私とは違う」

アルジ「何が違うんだ?」

エミカ「ミリが先生の館へ来たのには、

 特別な事情がある」

アルジ「特別な事情?」

エミカ「館に来たきっかけが私とは違う」

アルジ「どう違うんだ?」

エミカ「………」

アルジ「…?」


エミカはしばらく考えてから言う。


エミカ「ミリは…実は…」

アルジ「ああ」

エミカ「1度、死んでいる」

アルジ「死んでいる…?」

エミカ「うん。彼女は1度、殺された」

アルジ「殺された…?」

エミカ「………」

アルジ「どういうことだ?殺されたって…。

 一体誰に殺されたんだ?悪党か?魔獣か?」

エミカ「殺したのは…」


歩き続けるアルジとエミカ。

リネとミリの姿は相変わらず小さく見えている。


エミカ「殺したのは…リネ先生だ」

アルジ「え…?」



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 8

◇ HP   347/347

◇ 攻撃  12★★★★★★★★★★★★

◇ 防御  14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 12★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  2★★

◇ 装備  勇気の剣、銀獣の鎧

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃


◇ エミカ ◇

◇ レベル 6

◇ HP   192/192

◇ 攻撃  7★★★★★★★

◇ 防御  12★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 7★★★★★★★

◇ 魔力  14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  魔樹の杖、深紅の魔道衣

◇ 魔術  火球、火砲


◇ ミリ ◇

◇ レベル 5

◇ HP   144/144

◇ 攻撃  4★★★★

◇ 防御  7★★★★★★★

◇ 素早さ 6★★★★★★

◇ 魔力  16★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  魔石の杖、紺碧の魔道衣

◇ 魔術  氷弾、氷柱、氷乱


◇ リネ ◇

◇ レベル 23

◇ HP   678/678

◇ 攻撃   6★★★★★★

◇ 防御  16★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 11★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、創造の杖、聖星清衣せいせいせいい

◇ 魔術  雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療薬 25、魔力回復薬 16

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