第239話 敗因
◆ ヒジの国 カムテの町 ◆
地上に降り立つアルジたち。
アヅミナはカルスをしまう。
エオクシ「…さみいな!」
そこは、山岳地にある小さな町。
地表には薄らと雪が積もっていた。
アヅミナ「みんな、こっち」
アヅミナは手の上に火球を浮かべる。
アルジ、エミカ、エオクシはその熱で暖をとる。
そして、4人は西の方に目を向ける。
四角い家がいくつも並んで建っていた。
壁や屋根の輪郭が夜の闇にぼんやりと浮かぶ。
アルジ「どこかに大陸猟進会が隠れてるわけか…」
エミカは1個の小さな光玉を頭上に放った。
エミカ「明かりはこんなのでいいか?」
アルジ「ああ、十分だ」
エオクシ「おし、行くか!」
アヅミナ「待って」
アヅミナが合離蝶を放った。
それは大君の城でシノ姫がくれたもの。
放たれるなり、飛んでいく。
大陸猟進会の居場所へ。
パタパタと小さな羽を羽ばたかせて。
人が歩くぐらいの速さ。
ゆらりゆらりと揺れながら飛んでいく。
アルジたちを案内する。
アルジ「これ…全部…人か…」
町には多くの死体があった。
薄らと雪を被り、至るところに転がっている。
焼かれて黒くなったもの。
バラバラにされたもの。
どれも無残な状態。
エミカ(ロニ…絶対に…負けない…)
歩き続けて着いた場所。
そこは、町の外れの古い小さな建物。
閉ざされた戸の前。
合離蝶はとどまり、羽ばたき続ける。
エオクシ「こんなボロい小屋に隠れてんのか?」
アルジ「人が暮らせる場所には見えないぜ…」
アヅミナ「でも、ここだと思う。
この戸の向こうから微かに魔力を感じる」
エミカ「入ってみよう」
戸を開けて中へ入る。
真っ暗だったのでエミカが光玉で照らす。
建物内には何もない。
古びて傷んだ壁と床。
そして、天井が見えるだけ。
そのとき、アルジが気づく。
アルジ「これは…」
エオクシ「ああ」
その床の角には、1つの四角い穴。
その穴は、地下へと通じている。
のぞき込めば、狭くて急な階段。
合離蝶はその階段の上を飛び、下りていく。
エオクシ「行くぜ!」
勢いよくエオクシが歩き出す。
アルジ、エミカ、アヅミナが続く。
たどり着いたのは、小さな部屋。
目の前には黒い大きな戸。
戸の上部には、小さな隙間。
合離蝶はそれをすり抜けて飛んでいった。
エオクシ「行っちまった」
エオクシは戸を開けようとする。
だが、鍵がかかっていて開かない。
エオクシ「ぶち破ることもできるが…」
アルジ「…待ってみようぜ」
アヅミナ「誰かこっちに来てる」
エミカ「この魔波の感じは…」
ガチャンと鍵が外されて戸が開いた。
出てきたのはマオイ。
彼女は疲れ切った様子。
マオイ「あら…どうして…あんたたちが…?」
アルジとエミカの顔を見て彼女は言う。
細々とした力のない声で。
アルジ「大陸猟進会がやられたって聞いた。
それで、オレたちはここへ来た」
エミカ「シノミワさんが教えてくれた」
マオイ「シノミワ…。シノ姫が…?
都に手紙は送ったけど…
どうしてあなたたちが…」
エオクシ「ここへ来たのには事情がある。
だが、今、ここで話してる場合じゃねえ」
マオイ「あんたたちは…」
エオクシ「大前隊のエオクシだ」
アヅミナ「魔術院のアヅミナ」
マオイは弱々しく笑って言う。
マオイ「私は大陸猟進会のマオイ…。
よく来てくれた…。ありがとう。
さあ…こっちへ…。
大陸首位猟師が待ってる…」
エオクシ&アヅミナ「………」
ふらふら揺れながら彼女は歩き、案内する。
その黒い戸の向こうへ。
そこには広い部屋。
細くて低い照明台が部屋のあちらこちらに。
それらには小さな火が灯されていた。
エミカは光玉を消す。
マオイ「ここはかつて開拓者たちの基地だった。
資源を巡って人々が争い合っていた時代…
このような基地はいくつもあった。
ここもその中の1つ。現存する基地の1つ」
座り込んでいる猟師たち。
全部で5人。
彼らは広い床の上で点々と座っていた。
列になることも輪になることもない。
誰かと誰かが隣り合うこともない。
向き合うこともない。
そんな5人がアルジたちを見上げている。
彼らの目にはまるで生気が感じられない。
エオクシ「再起不能とはこのことだな…」
エオクシが何気なく漏らした言葉。
その言葉に猟師たちは強い反感を抱く。
だが、彼らは特に何かをするわけでもない。
つかみかかることも立ち上がることもない。
力なく笑みを浮かべるだけだった。
立ち止まるマオイ。
アルジたちも立ち止まる。
ヤマタン「よう…
ずいぶんと早い到着じゃねえか…」
広い部屋の隅。
垂れ下がった布の向こう。
弱々しい声が聞こえてきた。
エオクシが大股で歩いていく。
布をめくり、取り払う。
エオクシ「おっさん…」
アルジ「!!」
ヤマタンは寝台の上に横たわっていた。
両脚の膝の下から先が失われている。
右腕は肩から先が失われていた。
アルジも彼の近くへ行く。
ヤマタン「…おいおい、なんだ?
なぜお前たちが…
政府の使いが来たと思ったんだが…
アルジ、エミカ、なぜお前たちもここに…?」
アルジ「シノミワさんから頼まれたんだ」
ヤマタン「…ほう」
アルジ「…大丈夫なのか?」
ヤマタン「見りゃあ分かるだろ…」
上体を起こそうとするヤマタン。
痛みに顔をゆがめる。
マオイが駆け寄って支える。
ヤマタンはなんとか上体を起こした。
アルジたち4人を見る。
その目から力は失われていなかった。
ヤマタン「ふぅ…!このザマだ…!!」
エオクシ「おっさん」
アルジ「大陸首位猟師」
ヤマタン「おい…じろじろ見てんじゃねえ…。
打ち負かされた姿を見られるのは…
あまり気分のいいもんじゃねえ…。
分かるだろ…?
このとおり…もう狩りなんかできねえ体だ…。
再生魔術でも無理ってもんだ…。腕も…脚も…
食われちまったらおしめえだからなぁ…!」
アヅミナがヤマタンに近づいて言う。
アヅミナ「教えてくれる?
ラッセイムスラについて。
あたしたちは討伐するためにここへ来た。
大陸猟進会の狩りが失敗に終わったことも、
あなたが再起不能になったことも、昨夜聞いた」
ヤマタン「…ほう。そうかい。
ちゃんと届いたみてえだな…。
オレたちの出した手紙は…!
よかった…よかった…」
エミカもヤマタンに近づいて言う。
エミカ「ロニが…
ラッセイムスラと一緒にいたと聞いた。
そのことについても…教えてほしい」
ヤマタン「…見たか?外の死体…」
エミカ「…はい」
ヤマタンは首を縦に振り、ニヤリと笑う。
ヤマタン「…しっくりくる」
アルジ「…え?」
ヤマタン「ああ…しっくりくるわ…」
エミカ「…何が?」
ヤマタン「お前ら一緒にいるとしっくりくるな…」
エオクシ「何言ってんだ」
ヤマタン「負ける気がしねえ…。
やってくれそうだ…。
どんな狩猟隊よりも…。
倒せそうだ…。どんな獣も…。
覇獣級だろうと…!古代獣だろうと…!
倒せそうだ…!
いくらでも…!倒してくれそうだっ…!!
いつっ…!!いててててて……!」
マオイ「…大声を出すな…!」
マオイがヤマタンの体を支える。
苦痛に顔をゆがめながらヤマタンは言う。
ヤマタン「…だがなぁ…分からねえ…」
アヅミナ「何が?」
ヤマタン「ラッセイムスラにも勝てるか?
というと…それはちっと分からねえなぁ!
おめえらでも…!どうかなぁ…!!」
エオクシ「…勝つ。オレは負けねえ。
あんたが無理でもオレはやる。倒してやる」
ヤマタン「けっ!相変わらず生意気なやつだな」
アヅミナが冷静に問いかける。
アヅミナ「敗因は?」
ヤマタン「………」
アヅミナ「大陸で最も優れた猟師が失敗した。
その原因について、ここで聞いておきたい。
その情報を…あたしたちが活かす」
ヤマタン「…くくくく。ああ…教えてやろう。
役に立つかどうか…それは知らねえが…」
ヤマタンは話した。
ラッセイムスラとの戦いについて。
ヤマタン「…聞こえたんだ」
アルジ「…え?何が聞こえたんだ?」
ヤマタン「戦っているときだ。
声が…聞こえたんだ」
アルジ&エミカ&エオクシ&アヅミナ「………」
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 31
◇ HP 3753/3753
◇ 攻撃
48★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 防御
45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 素早さ
44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★
◇ 魔力 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、闘主の鎧
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り、
雷刃剣
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 27
◇ HP 2415/2415
◇ 攻撃 10★★★★★★★★★★
◇ 防御
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火弾、火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
◇ エオクシ ◇
◇ レベル 38
◇ HP 3692/4027
◇ 攻撃
52★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 素早さ
48★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 魔力
◇ 装備 壮刃剣、戦究防護衣
◇ 技 天裂剣、地破剣
◇ アヅミナ ◇
◇ レベル 36
◇ HP 404/460
◇ 攻撃 1★
◇ 防御 2★★
◇ 素早さ
42★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★
◇ 魔力
49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 装備 大法力の魔杖、漆黒の術衣
◇ 魔術
火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火
氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷
暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、
酷死魔術
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 80、活汁 29




